GATE 古龍と共に、彼の地で生きる   作:始まりの0

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EP12 キレのいい平手打ち

 ~ピニャside~

 

(あり得ない。協定を結んだその日、数刻も経たぬ内に協定破りとは……しかもあの龍人と言う者、このイタリカとは浅からぬ仲と聞く。

 

 ボロボロになった彼を見た瞬間、メイド長から凄まじい目で睨まれた)

 

「はぁ……」

 

 彼女の前で俯いているボーゼスとパナシュ。2人は何故自分達が自分達が叱責されたのか分からなかった。ピニャは彼女達に事情を説明する。

 

「しっしかし!姫様、私達は協定のことなど」

 

「あぁ、分かっている!……だが知らなかったでは済まされん。アレはやり過ぎだ。馬で引き摺ったり、蹴り飛ばしたり………しかもあの龍人殿、このイタリカの先代当主の代からのご友人だと聞く。日本側とは友好関係とも聞くし………謎の獣を使役している」

 

「獣……ですか?」

 

「雷を操り、一撃で賊共を葬った。それにあの男の魔法の腕も凄い物だった」

 

「「………」」

 

 ―グオォォォォォォォ!!!―

 

「なんだ!?」

 

 何かの咆哮がイタリカ全体に響いた。ピニャ、ボーゼス、パナシュ、ハルミトンが窓から外を見る。星空の見えていた筈の空は何時の間にか、暗雲に覆われ、怪しい風が吹き始めていた。

 

「ん……なんだ、あれは!?」

 

 雲の中で何かが蠢いている。それも1つじゃない、2つ、3つ……未だ増えている。

 

「アレは……古代龍なのか?!」

 

「しっしかし、姫様。あっあの全てが古代龍なのでしょうか?」

 

「わっ分からん」

 

 雲にいる存在は古代龍に似た何かだと分かる。しかし本能が言っている「アレは危険だと」。

 

 だが龍達の姿が消え始め、それに合わせる様に雲も消滅してしまった。

 

「なっなんだったんだ?」

 

 その答えは、彼女達は知る由もなかった。

 

 

 

 

 ~領主の館~

 

「我が主!御無事で何よりです、うわぁぁぁぁん!」

 

 上手い事、イタリカへと潜入出来た一同は首狩ウサギ(ウォーリアバニー)のマミーナとキャットピープルのペルシアの案内で龍人と合流する事が出来た。

 

 キリンは龍人の無事な姿を見て彼に抱き付いた。伊丹や倉田達も安堵していた……これで龍達と自衛隊しいては日本の間に何も起きる事はないだろうと。

 

 落ち着いた伊丹達はペルシアやマミーナ達の姿を見て、歓喜したのは言うまでもない。

 

「このくらいは、日常茶飯事だったし………リンやアマツ達の攻撃に比べたら軽い、軽い」

 

「あっ主?!」

 

「此奴等、初めて会った頃なんて…………今考えると、よく死ななかったな」

 

「いや……あの……アレはその」

 

「まぁ……今ではいい思い出だな」

 

 等と話していると、マミーナの耳が物音を捕えた。

 

 ―ガサッガサッ……ゴンッ!―

 

「ベッドの下に何かいます」

 

 マミーナやペルシアが侵入者かと思い、武器を取り出した。

 

「いたたっ……」

 

「ネルはもう少し落ち着いて行動するべきにゃ」

 

 ベッドの下からは2匹の猫が出てきた。

 

「ネル、ファニ……お前等何処から出て来るんだよ」

 

「ご主人!やっと見つけたニャン!」

 

 2匹のアイルーは龍人を見つけると、その腕の中に飛び込んだ。

 

「なんか、ご主人、ぼろぼろニャ」

 

「まぁ……ちょっとした手違いでな。悪いけど、回復薬Gを出してくれるか」

 

「はいニャ!」

 

 ファニは腰につけている樽の中から緑色の液体の入った瓶を取り出した。龍人はそれを受け取り、飲み干す。すると、不思議な光が彼を包み込んだ。

 

「ふぅ……これであらかた完治したな」

 

「それは一体、どういう仕組みなんでしょうか?」

 

 伊丹の部下、黒川 茉莉は回復薬に興味を持った様だ。

 

「以前の炎龍の時も思いましたが、その薬……一体どう言う原理で治癒しているのか気になりまして」

 

「ぇ~と……黒川さんだったか。原理は分からん……ただ、ある草とキノコを調合して作れるものだ。瀕死の怪我でなければある程度はこれで瞬時に回復できる」

 

 それを聞いて、周りの者達も感心していた。黒川はジッと回復薬Gを見つめていた。

 

「これは渡せないよ」

 

「ッ……」

 

「これが在れば多くの人を助けられるって思うだろうけど………残念ながら、コレの原料は俺の農場で栽培している物でしかできないし、こんな物があると………怪我なんて直ぐ治るんだし戦争したい放題だ!……なんて言うバカが出てくるからね」

 

「そっそれは使い方の」

 

「実際在ったんだ。昔、俺が教えた国は回復薬に改良を加えたりして戦争ばかりしてな。俺はそんな事の為に教えたつもりはなかったんだけどね………まぁ、最後には門に手を出そうとして滅んじゃったけど」

 

 それを聞くと、黒川は顔を真っ青にさせる。

 

「始めは皆の為にと言っていても、欲深い人間なんて幾らでもいる………あんなのはもうごめんだからね」

 

「わっ分かりました……変な事を言ってすいません」

 

「いや……気持ちも分からなくもないからね」

 

 一先ず、気を取り直して皆が交流を深めることにした。

 

「あっあの……そっその猫は?」

 

 栗林がネルたちを見てそう尋ねた。

 

「此奴等?アイルーと言う獣人の一族でね、名前は白い方がネル、青い方がファニだ」

 

「あっアイルー?!それって伝説に出てくる獣人族の名前ではないですか!?」

 

 キャットピープルのペルシアがそう言った。

 

「お前等、何時の間に伝説になったんだ?」

 

 などと言って会話していると、金髪縦ロールの女性が入って来た。ネグリジェ姿で………そして彼女は龍人の元に歩み寄ってくるとその手を振り上げた。

 

「えっ……(あっなんか、怒ってる……避けちゃ駄目な気がする)」

 

 ―パァン!―


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