~イタリカからアルヌスへ帰る道中~
「ふぁ~」
―にゃ~―
「随分、眠そうねぇ」
―にゃ~―
「寝てないからな………しかし」
装甲車の後ろで眠そうにしている龍人に声を掛けたロゥリィ。龍人の膝にはネルとファニが装備を外した状態で乗っており、彼に撫でまわされていた。ロゥリィは何故か彼にもたれ掛かっていた。
そして彼は向かい側に座っている
(なんで、この皇女さん達は態々ついて来るんだ?)
ピニャとボーゼスは日本と深い関わりを持っている龍人に無礼を働いた事を謝罪する為に、非公式ながらも共に来る様になった。
「えっと………なっなにか?」
ピニャは龍人に見られている事に気付きそう言った。
「いや………別に」
「ご主人、そこはだめにゃ~」
「にゃ~ん」
龍人はピニャから視線を外し、ネルとファニを撫でる事に意識を戻す。
「なぁ、伊丹」
「はい?」
「俺達は今から日本に行くんだよな?」
「あぁ……国会に出て貰う為に向こうに行く事になる」
「国会って言うと、国会議事堂だよね?」
「うん、まぁ……そうなるな」
「だよねぇ………となると、この恰好はないな」
龍人は自分の服を見た、黒い皮のコート、シャツ、黒いズボン………流石にこの服で国会に出席するのはどうかと思った様だ。
「かと言って鎧を着ていく訳にはいかないし」
「「鎧……ぉ~」」
伊丹と倉田は鎧と聞いて、ゲームで出てくる様な鎧をイメージした。
「俺の持ってる服って似た様な物ばかりだし………スーツでも作るか」
「すーつ?」
「ぁ~簡単に言うと正装の1つ………お前で言う所の神官服みたいな物だ」
「へぇ~………どんなのか見てみたいわぁ」
「機会があればな……おっそろそろ着くか」
そんな話をしていると、どうやらもうアルヌスに着いた様だ。
「あの杖…イタミらのと同じ物のようだがジエイタイの兵は皆、魔導師なのか?」
「もしかしたらジエイタイには希少な魔導師を大量に養成する方法が……」
ピニャのボーゼスが自衛隊員が訓練しているのを見てそう呟いた。杖と言うのは小銃の事である。
「違う、アレは魔導ではない。「ジュウ」や「ショウジュウ」と呼ばれる武器」
レレイが銃についてそう答えた。
「「武器?!」」
「原理は簡単……炸裂の魔法が封じられた筒で鉛の塊をはじき飛ばしている」
ピニャはそれを聞いてある考えが浮かんだ。
「武器であるなら作る事ができる………とすると全ての兵に持たせることも」
「可能……現にジエイタイはそれを成し、「ジュウ」による戦い方を工夫して今に至っている」
《ジャキ……ダダダダダッ!》
ピニャは先の戦闘で見たジエイタイの銃の威力を思い出した。
「戦い方が根本的に違う。我々の戦意と戦技を磨いた戦列も「ジュウ」を前にしてはただ無意味なだけに違いない」
「そう……だから帝国軍は負け、連合諸侯国軍も敗退した」
ピニャはそれを聞くと唾を飲み、横に立てかけてある銃をチラッと見る。
「何としても戦況を一方的にしない為にも「ジュウ」を手に入れなければ」
「それは無意味……」
「なに?!」
レレイが杖で外を差す。
外に現れたのは、暴力を体現するかの様な鉄の塊だった。鉄の分厚い装甲、巨大な砲、全てを踏み潰しながら進む車輪、【74式戦車】である。
「「ショウジュウ」の「ショウ」とは小さいと言う意味。ならば対となる大きい「ジュウ」がある」
ピニャとボーゼスはレレイの言葉が信じられなかった。本当にあの様な巨大な物が火を吹くのかと。もしそうで在れば、先に見た
「何故、こんな連中が攻めてきたんだ?」
「それは帝国がいきなり戦争を仕掛けて来たからだろう」
今まで黙っていた龍人がそう言い放った。
「お前等が話し合いをすることなく、門から出てきて虐殺行為を行い『この地の征服と領有を宣言する!』なんて言うからだ」
「まっまるで見て来た様な」
「見てたよ……と言うより、その場にいたからな。帝国兵が虐殺行為を行っているのを見た、本当に質が落ちたものだな」
「なっ!?」
「あっ貴方、帝国の兵に手を掛けたと言うのですか!?貴方もこちらの世界の人間でしょう!?」
龍人の言葉にピニャとボーゼスが驚愕し、ボーゼスがそう言い放つ。
「それは正確な答えではない。それに虐殺を見過ごす理由にはならない、あの場にいた日本の人間達は唯そこにいただけの一般人だ。それを突然に、一方的に、理不尽に殺した。特に子供とそれを庇おうとしていた母親を殺そうとしていた兵士は親子を見て下卑た笑みを浮かべていた。だから俺が殺した」
彼はピニャとボーゼスにそう言った。
「俺の事をどう思おうとお前達の勝手だ。だが覚えておけ、兵士は戦場に出る以上は死を覚悟をしているかも知れんが、一般人はそうじゃない。いきなり自分達の住んでいる場所が戦場になって、一方的に虐殺される。俺はそれだけは許せない………ただそこに居たと言うだけで、特に理由もなく、突然に殺される。そんな事、許されると思うか?」
龍人は目を細めてそう言った。銀座事件の際に、あそこで殺された者達は殆どが一般人だ。ただ、そこに居た………と言う理由で殺された。龍人も庇ったからとは言え、理不尽な理由で命も奪われた。だからこそ許せなかった、一方的な虐殺なんてものは。
彼の口から言われた言葉、それが彼女達に圧し掛かる。そしてピニャは思っていた、今現在の彼の帝国に対する印象は最悪だと。もしこのまま彼が日本の
~アルヌス 自衛隊駐屯地~
駐屯地に到着した一同、車を降りた所で龍人が何かを思い出したかの様に手を叩いた。
「あっ………伊丹」
「?」
「向こうに行くのは明日だよな?」
「あぁ、明日の午前中には行くつもりだ。国会は午後からだから……っとその前にテュカの服を用意しないと」
伊丹はテュカの方を見る、Tシャツ、ジーパン、龍人もそうだが流石にこの恰好で国会に出席させる訳にはいかなかった。
「少し用を思い出したんで、一度俺は自分の場所に戻る。明日の朝には帰ってくるから、構わないか?」
「ぇ……ぁ~分かった、上にはそう伝えとくよ」
「ありがとさん……じゃ」
龍人は伊丹に礼を伝えると、ポーチから緑色の玉を取り出し地面に投げつけた。そして割れた玉から緑色の煙が出現し、それによって彼の姿は消えてしまった。
「なっ!?」
「今のは魔法か?!」
「多分違う………あんな物は見た事も聞いた事も無い」
龍人が使ったのは【モドリ玉】と言うアイテムで、本来はキャンプまで戻る為の物なのだが、彼はそれに手を加えた物だ。そんな摩訶不思議な道具が、あるキノコから作られた物だと言う事は誰も知らない。
「一体、あの男は何者だ?」
「あらぁ、貴方……彼の事知らないのねぇ」
ロゥリィがピニャの言葉に対してそう言った。
「貴方は知っているのか?」
「えぇ………けど教えないわぁ」
「何故だ?」
「そうねぇ……彼はあまりあの名前で呼ばれる事が好きではないからかしらぁ…………でも忠告はしてあげるわぁ。もし彼を敵に回すならぁ………世界を敵に回すと考えなさぃ」
そう言うロゥリィはイタズラする子供の様な笑みを浮かべていた。ピニャやボーゼス、伊丹達でさえその言葉の意味は理解できなかった。
(なんせ、龍人は神々さえも恐怖する古龍達の王…………神話にも出てくる存在、それを知った時、貴方はどんな顔をするかしらねぇ?私の時は……)
ロゥリィはかつて龍人と出会った時の事を思い出し、今度は年頃の少女が見せる笑みを浮かべた。