~龍の集う神殿~
「じゃ、皆、準備しといてね」
龍人は自分よりも巨大な龍達に対してそう言い放つ。
―王よ………日本とやらに行くのは構いませんが、何を話すつもりでしょうか?―
他の龍達を圧倒する気配を放つ黒い龍がそう言った。
「何をと言われても……在りのままだよ」
―しかし王よ。人間とは愚かな生き物です、以前の様に王に対して無礼を働く可能性もあります―
「ぁ~懐かしいな。時の王達に追われたっけ」
―笑い事ではありません―
「まぁ、アレはアレで面白かったから良い思い出かな……おっとそろそろ行かないと、レウ!レア!行くぞ!」
―御意―
―御心のままに―
龍達の中からリオレウスとリオレイアが出て来た。龍人はリオレウスの上に飛び乗り跨った。
「じゃあ、皆、宜しくな」
彼がそう言うと、リオレウスとリオレイアはその翼を広げて飛び上がり、神殿から大空へと舞い上がった。
―黒龍よ、どうしましょう?―
黒い龍と同じ姿をした白い龍がそう尋ねた。
ー王のご命令だ。従うー
ーカッカッカッ、世界を滅ぼしうる御主も王の前では形無しじゃのうー
この中でそれなりに大きな龍が笑いながら黒い龍にいい放つ。
ー五月蝿いぞ、翁。ん?蛇王と大海はどうした?ー
ー王の命を受けた瞬間に、熔山、滅尽と共に出ていった。眠い……ー
蛸の様な形をした龍に分類していいのか分からない存在が、ふよふよと宙を漂いながらそう言う。
ーどいつもこいつも忠誠心高いな。我はゲームで忙しいのでこれで失礼するー
神々しい姿の純白の龍がそう言いながら人の姿に変わる。
ーこの引きこもりめー
ー仕方ないだろう、我は外に出るだけで生態系に影響を及ぼすからなー
ーはぁ……随分と丸くなったな。それは我等もかー
ー王が手を差し伸べて下さったあの時からなー
人の姿となった白い龍を見送りながら、黒い龍と金色の龍がそう呟き、昔の事を思い出していた。
かつてその手を差し伸べ、孤独から解放してくれた王の為に古龍達は動き出した。
~午前10時 アルヌスの丘 ゲート前~
「来ませんね」
「来ないなぁ」
準備を整え、ゲートの前で龍人を待っていた伊丹達。特地の使者として、レレイ、テュカ、ロゥリィ、後非公認であるがピニャとボーゼスがいた。
当初はレレイとテュカだけの予定であったが、ロゥリィも自分も行きたいと言い出した。
~回想開始~
「ちょっとぉ、わたしはぁ?」
門の向こう側に行くと栗林達がテュカに説明していると、ロゥリィがそう言い始めた。
「どこかのコスプレ少女連れてきたと言われそうだし」
「亜神と言っても外見は人間と同じだしね」
「だったら
そう言いながら彼女は巨大なハルバートを持ち上げた。彼女の奇跡は現代日本には少々刺激が強すぎる為に、栗林はダメと言う。
倉田と富田が「国会の中だけならいいんじゃない」等と言っているが駄目な物は駄目である。
「あーもう!そんなおもしろいことにわたしぃを………仲間外れにするつもりぃ?」
ロゥリィの瞳がギラッと光る。このまま暴れまわれても困るので伊丹に電話し許可を取った。
~回想終了~
―オォォォォォ!―
何かの咆哮がアルヌスに聞こえた。皆が空を見上げると、輝く太陽光に反射する2体の龍達が翔けていた。
白銀と金色の龍達、彼等はゆっくりと降下してくると伊丹達の前に降りたった。
「待たせたな……よっと」
リオレウスに跨っていた龍人が伊丹達にそう言うと降りてきた。彼が降りたのを確認するとリオレウスとリオレイアは光り始めると女性の姿へと変わった。
「ちょっと用が長引いて遅くなった、すまん」
「いや大丈夫だ。それで今の日本は冬なんで………その恰好で大丈夫か?」
龍人の格好はコート、Tシャツ、黒いズボンだ。現在の日本は冬なので、龍人の格好は少し寒いだろう。
「あぁ、問題ない。このコートは龍の皮で作られている、夏でも涼しく、冬は温かい、なのでこれで大丈夫だ」
「りゅ……龍の皮!?」
龍の皮と言われて、心を躍らせる伊丹と倉田。是非とも触ってみたいと顔に書いている。
「ちゃんとした正装は持ってる。ではそろそろ、行くとするか」
「あっ、あぁ」
龍人がそう言うと、伊丹から向こうに行く際の事を説明され、彼はそれを聞いた。まずはリオレウスとリオレイアの事だ、彼女達が暴れると危険なのでそれをさせない様にしてくれとの事だ。
「王に無礼を働けば殺します」
「一国が滅びようと問題ない」
「全くお前達は……大丈夫だ。人の居る場所では暴れさせないから」
龍人はそう言うが、皆は「人がいない場所だったら暴れさせるのかよ」と思った。だがあえて、何も突っ込まなかった。
「では往こう」
そうして、彼等は日本へと向かった。
~日本~
テュカやレレイ達、特地から来た彼女達にとって、高層ビルを見て唖然としていた。彼女達の世界の建物よりも遥かに高く、ガラス張りになっていた。空には鉄の塊である飛行機が飛んでいる。
ピニャとボーゼスはそれを見て自分の世界との技術に圧倒的な差があるのは嫌でも理解できた。
伊丹は日本に入国するのに必要な手続きを行っているとスーツの男が声を掛けて来た。
「情報本部より参りました、駒門です。皆さんの案内とエスコートを仰せつかりました」
伊丹は彼から感じる雰囲気が普通ではないと感じ取った、龍人も同じ様だ。リオレウス達は興味無さそうに空を見上げたり、ビルを見たりしている。
伊丹が考案の人間かと尋ねるが、それに対して駒門は笑みを浮かべ返し、伊丹の経歴を言い始める。
(へぇ……伊丹が
伊丹の経歴を聞いた、栗林が衝撃が大きかったようで叫びだすと近くのフェンスまで走り出し、金網を揺さぶりガシャガシャと音を立て始め、この世は間違っているなどと言いだした。その現実逃避はバスに乗ってからも続いており、いい加減に鬱陶しくなったのかリオレウス達が彼女を引き裂こうとしたが龍人がそれを止めた。
それから、牛野屋と言う牛丼屋で昼食を済ませた。なんでも今回の参考人招致は出張扱いで食費は500円以内らしい……世知辛い世の中である。龍人はリオレウス達がそれでは足りないと知っていたので、自分の懐から金を出し追加した。その際に伊丹達が龍人の財布の中身を見て驚愕した、何故なら彼の財布の中には諭吉さんが一杯居たからだ。彼曰く、本来ある財産のほんの一部だそうだ。
食事を終えた彼等はAIYAMAと言う服屋に入る。本来で在ればエルフの使う正装が在ったのだが、例の炎龍の件で焼けてしまっている為に、代用としてスーツを買う事にした。レレイは普段着が正装の様な物だ、ロゥリィにしても端から見ればゴスロリにしか見えないが、しっかりとした正装だ。
龍人は普段の姿だが後ほど着替えるらしい。15時から参考人招致が始まる為に、移動を開始した。
~国会議事堂~
バスから降りた伊丹達はそのまま中へと入って行く。ピニャとボーゼスは非公式で此方に来ている為に別の会合場所に行った。
「えっとそれで……」
「あっ……服か」
伊丹が龍人を見る。彼は直ぐに何の事か分かった様だ、彼は指を鳴らすと足元に魔法陣が現れる。魔方陣がゆっくりと彼の身体を昇って行くと服装が変わっていく。
「すっすげぇ」
「これが俺の正装、レウ、レア」
彼の現在の服は、白をメインにした服で金等で装飾されている服だ(イメージはルルーシュの皇帝服)。リオレウスとリオレイアの方を見ると、彼女達は頷いた。彼女達の足元にも魔方陣が展開し、服装がそれぞれの色のドレスになった。
「では行こうか」
龍人はそう言うと進み始めた。