~箱根 温泉宿・山海楼閣 男湯~
「はぁ~気持ちぃ~」
「日々の疲れが流れていく」
「ふぅ~」
龍人、伊丹、富田は温泉に浸かっていた。
「やっぱ温泉と言えば日本だよね」
「そうなの?」
「風呂ならローマ式がいいんだけど………温泉はやっぱり日本なんだよねぇ。これで酒でもあればいいんだけど…………まぁいいや。そういや、富田さんは大変だったみたいだね」
龍人は上がると、一瞬の内に身体の水気が消えた。次の瞬間、浴衣も来ていた。共に上がっていた伊丹と富田はそれを見て唖然とする。
「すげぇ」
「2人も拭いて、着せておいたよ。早く飯を喰おう」
「「えっ………」」
伊丹と富田は何時の間にか自分達が着替えていた事に驚いた。
「流石は精密とスピードを持ってるスタンド………全く気付かなかった」
「すたんど?」
「ぁ~後で説明してやるから」
龍人の力に改めて驚きながらも、彼等はこの場を後にした。
~女湯~
「はぁ~」
リオレウス、リオレイア、ロゥリィ、レレイ、テュカ、ピニャ、ボーゼス、梨沙、栗林が温泉に浸かっていた。
普段から龍人以外に表情を見せないリオレウスとリオレイアも気持ち良さそうだ。
「王と共に入りたかった」
「同感ですね」
「あらぁ……貴方達って龍人とはそう言う関係なのぉ?」
「王の御世話は我等の役目。夜伽を命じられれば当然、応える。寧ろご褒美だ」
「「「なななななな」」」
リオレウスの発言に乙女達が顔を真っ赤にしている。
「王が望まれるなら、家事から夜のお世話、殲滅、国崩し、世界の破壊、何でもね。それでどれ程の犠牲が出ようと私は一向に構いません。まぁ、私を始めて古龍全員がそうですけど」
「「「「こっ古龍!?」」」」
リオレイアの言葉に驚いているレレイ、テュカ、ピニャ、ボーゼス。
「どうしたの?」
栗林はそれに対して首を傾げた。
「こっ古龍………古代龍よりも古くより存在している龍。それ等の龍は伝説によると天災そのもの、私達の世界にある最も古い神話にも登場している。人間、エルフ、獣人、問わず全種族が知っている………ただ、誰も見た事がないという」
「たっ確か神話の時代に怠惰と傲慢に身を落とした神々がいて、世界が混沌としていた時に何処からともなく1人の王と龍とが現れた。そして天から神々を引き摺り降ろし滅ぼした………それで若い神々が王に命じられ、今の座についた」
レレイとテュカがそう言った。彼女等にとって、古龍の名は畏敬を持たねばならぬ物らしい。
「でっでは……まさか龍人殿は」
「ここここ」
「【古龍王】よぉ。他にも解放せし者、神殺しの英雄なんて呼ばれてるわねぇ………私達の世界でもぉ、最も偉大な英雄。
唯一古龍を従える事のできる者。彼の怒りを買って、滅んだ国も1つや2つではなくってよぉ」
ピニャとボーゼスの顔が真っ青になる。そして自分達がしてしまった事の大きさを改めて思い知る。龍人の言葉1つで自分達の国は1夜……いや1時間もしない内に地図の上から消えるだろう。
「そう言えば………王はどこぞの女騎士共に殴られ、馬に引き摺られたと聞くが」
「!!!」
「その事については王からもう済んだ事だと聞いているので、どうこう言うつもりはございません。まぁ……王に抱き付いて気の抜けていた愚か者は現在、御仕置き中ですけど」
リオレイアが笑みを浮かべてそう言う。一体どんな事をされているのやら。
「だが………次に王に無礼を働いた場合は殺します。貴方達も………国も、人間も、塵に変えます。例え王が何と言おうとも」
「「なっ?!」」
「横暴だと言いたそうな顔ですね。ですが逆です。あの星は王の為に我等が創り上げた物………それを後から出て来た貴方達が此処は自分達の領地だの、自分達の所有物だと言い合って戦争し、勝手に死んだ。
あの星の空気も、石も、木も、総てが我等が王の物です。そもそも貴方達が存在していられるのは王の慈悲が在ってのもの、身の程を弁えなさい」
「レイア、人間共に関しては王が既に決定済みだ。我等が口出す事ではないぞ………まぁ王に無礼を働く者共にはあの星から出て行って貰いたいと思うがな」
リオレウスは横目でピニャ達を見ながらそう言う。
「そうでしたね………まぁいいでしょう。今は警告だけで済ましておきます、次はないと思いなさい」
リオレイアはそう言うと、近くに在った桶を手に取った。
「フン!」
彼女は外に向かって桶を投げた。
「「「?」」」
「全く乙女の入浴を覗くなんて」
「王なら歓迎……と言うか一緒に入りたかったな」
リオレイアとリオレウスはそう言うと、風呂を後にした。彼女達が居なくなった後、梨沙が話しかけた。
「ねぇ、古龍王って?」
「私達の世界で最も古い神話」
レレイが語り出した。
―未だ世界に神々が肉体を持ち居た時代。その力故に、神々は人間や獣人族達を畏れさせた。人間や獣人達も神々を畏れ敬う事で自分達も護られると考えていた………だが時の流れの中で、神々は自分達が敬われ、祀られる事でその心に傲慢と怠惰に侵された。
自分達は力を持つ故に、他の種族を従えてもいいのだと。時にそれは生贄、時に天災、時に神託による戦争と言う形で地上に生きる者達に影響を及ぼした。神々にとってそれは遊戯の様な物だった、だが人間や地上に生きる者達にとっては命の問題だ。逆らった者もいた、だがそんな者達は疫病や災害により死んだ。
そんな時、何処からか複数の龍を引き連れて1人の少年が現れた。少年は龍達と共に、神々を蹂躙し始めた。神々もその力で少年と龍達に向かい、国1つを簡単に消し去る神の一撃を放った。
だが、その一撃は無意味だった。彼の者達はその一撃を受けても傷1つ負う事はなかった、突如現れた正体不明の存在、世界の頂点に立つ筈の自分達が手も足も出ない事に恐怖した。そして少年は言い放った。
「貴様等は自然の理より逸脱した。神としての役割を放棄し、私欲で地上の者達を苦しめ悦とした。貴様等に神の資格はない。俺が貴様等をその座より引き摺り降ろす」
龍達は神々を蹂躙し始めた。神々は必死に抵抗する、だがそれは無意味だった。自然を破壊する天災そのものの様なその力で神々を喰らい尽くした。そして残ったのは若い数人の神々だった。
少年は若い神々に言った「お前達が新しい秩序を、法を作り、新たな時代を始めよ。しかし覚えておけ、お前達がまた堕落した時、我等は再び現れる」と。少年はそう言うと龍達と共に去った。
若い神々は龍達を畏怖して【古龍】と呼んだ。そして少年を新たな時代を切り開いた英雄としこう呼んだ。
強大なる古の龍を従えし英雄【古龍王】と―
「古龍王の詳細な名前は不明。だけどその名は神々と共に様々な経典に登場する」
「エルフにも部族によって少し異なるけど彼の王は登場するわよ。確か、初めてやって来た男女のエルフに道を示し、理を説いた者として」
「本人はぁ、そんな風に言われるのは嫌いらしいわぁ。でもあの世界で生きていきたいならぁ……アイツを怒らせない方が身の為よぉ」
レレイ、テュカがそう言うと捕捉でロゥリィが伝えた。ロゥリィの言葉がピニャとボーゼスを更に絶望の色に染まる。
「わたわたわた………私は何て事を」
「ハハ………ハハハ……アハハハハ」
ボーゼスは自分の仕出かした事の大きさを再認識し、ピニャは正気では居られなかったのか現実逃避している。
「まぁアイツは殴られたくらいで国を滅ぼす程、器が小さい訳じゃないから安心なさい………そうねぇ……年長者としてぇ助言して上げるわぁ。悪い事をすればぁ………ちゃんと謝りなさぁい」
ロゥリィはそう言うと温泉から出て行った。
「「ぁ」」
ロゥリィに言われてピニャとボーゼスは思い出した、そう言えば龍人にちゃんと謝罪をしていないと。