GATE 古龍と共に、彼の地で生きる   作:始まりの0

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EP19 一方的な防衛戦

 ~温泉宿~

 

「いっ偉大なる英雄、古龍王様とは知らず」

 

 

「いっイタリカでは大変なご無礼を」

 

 

「「ほっ本当に申し訳ありませんでした!」」

 

 龍人に対して頭を下げるピニャとボーゼス。レレイとテュカはその横で龍人の事を崇めている。

 

 当の本人は何で知ってるのと言う表情をしている。

 

 リオレウスとリオレイアの方を見てみる、さっと目を反らした。

 

 次にロゥリィの方を見てみる、ニヤッと笑みを浮かべている。

 

「ぁ~何となく理解した……」

 

 

「古龍王?」

 

 伊丹と富田は何の事か分かってない様だ、レレイが状況を説明した。

 

「つまり、龍人君は神様で、神話に出てくる大英雄……」

 

 

「俺は自分でしたい事をしただけで、そんな崇められる事なんてしてないんだけどな」

 

 

「あらぁ、旧神を排して新世代の神々に引き渡すなんてぇ、十分に崇められてもおかしくないことよぉ。

 

 我が神、エムロイも言っていたわぁ。『我等が父がいなければ、今の自分達は此処にいない』って」

 

 

「俺はアイツ等の親になった覚えはないんだけど……はぁ。取り敢えず、頭を上げなよ。アレはちょっとした行き違いから起こった事だ、別にそこまで気にしてない」

 

 

「しっしかし」

 

 

「そんな事で怒ってたら、君の父親の方が酷かったよ」

 

 

「えっ?」

 

 龍人の発言に驚くピニャ。

 

「父上ですか…?」

 

 

「そうそう………イタリカでの事は特に気にしてないから、別にいいよ」

 

 

「でっでは国は」

 

 

「何もしないからな」

 

 

「でっですが、古龍王様に不敬を働いた者達の国は滅びたと」

 

 

「実際は相手が攻めて来たから追い返しただけなんだけど………まぁ家の子達が追撃したのは言うまでもないけどね。民には被害が出ない様にとは言っていたけど………実質、俺が滅ぼしたのって世界を危機に陥れた奴等だし………後虐殺とか、一方的な蹂躙をする奴とかかね」

 

 そう笑みを浮かべて言う龍人、それを聞いて顔を真っ青にさせるピニャとボーゼス。帝国は日本に対して一方的な侵略行為を行った……それは事実。だからこそ、次に龍人の怒りをかった場合はどうなるかなど容易に想像がついた。

 

 先のイタリカの事は怒ってないにしても、次許されるとは限らない………絶対に無礼が在ってはならないと。

 

「あぁ、そうだ。俺の事は誰にも言わないでくれ。数百年前に、正体がバレて神官共や信者共に追われて大変だったんだ」

 

 

「あの時は大変だったわねぇ」

 

 

「バレた原因が、なに他人事の様に言ってるんだ」

 

 どうやら原因はロゥリィらしい、当の本人はワインを飲んで目を逸らしている。

 

「はぁ………」

 

 どうやらロゥリィに反省を求めるのは諦めたらしい。

 

 

 

 

 ~数時間後~

 

「すぅすぅ」

 

 

「かぁ~」

 

 部屋に居る者達は殆ど眠っていた。

 

 ピニャとボーゼスは龍人に許されたものの、不敬を働いたのは事実の為、龍人の機嫌を取ろうとするが、リオレウスとリオレイアに邪魔をされてしまい、最後には酒に酔ってダウンしている。

 

 他の者達も酒で酔って眠っている。

 

 現在起きているのは、龍人と古龍、ロゥリィと伊丹だけだ。

 

「伊丹も少し寝ておけ……明日は早い」

 

 

「あっ……あぁ。そうさせて貰いたいけど……」

 

 

「ん?……あぁ、アレは俺の方でなんとかするよ。勿論迷惑にならない範囲でな」

 

 

「そっか……なら俺もちょっと休ませて貰うよ。昨日もちょっとしか寝てないし」

 

 

「おう」

 

 伊丹もどうやら眠気に負けて眠ってしまった。

 

「……伊丹はアレか、年下好きなのか?」

 

 何故か伊丹は寝ているレレイに抱き付かれていた。そしてこの行為は向こうの世界ではかなり重要な意味を持っていると未だ彼は知らなかった。

 

「まぁいいか…………それよりロゥリィ」

 

 

「「殺す、殺す、殺す、殺す」」

 

 呪詛の様に連呼しているリオレウスとリオレイア。

 

「あらぁ……なぁに?」

 

 

「近いし、見えてる」

 

 ロゥリィは龍人の膝に座り、彼に寄り掛かっていた。浴衣が肌蹴ており、色々と見えている。

 

「フフフ……見せてるのよぉ」

 

 

「はぁ………毎度、毎度良くやるなお前も。言っとくがその気にはならんぞ」

 

 

「子供の身体で王が満足する訳なかろう!王はボッ!キュ!ボン!が好きなのだ!この間なんか、私の」

 

 

「ザ・ワールド」

 

 龍人は時を支配するスタンド、ザ・ワールドを呼び出し時を止めた。そして何処からかテープを取り出しリオレウスの口に☓印で張り付け、ザ・ワールドを解除する。

 

「何を言うつもりだお前は」

 

 

「もがっもがっ」

 

 

「亜神の分際で王に擦り寄るなど……まぁ所詮は幼児体型、王の寵愛を受け止めきれません」

 

 

「どういうことぉ?」

 

 

「王のぷれいは、とてもh「ザ・ワールド!」もがっもがっ」

 

 リオレイアも同じ様にテープを貼られた。

 

「お前等なぁ………人前で変な事を言うのは止めろ」

 

 

「もがっもががっ(しかし王)!」

 

 

「もがっもがっ(事実です。王はとてもはg)「それ以上言うなら強制帰還させるけど?」」

 

 リオレウスとリオレイアはそう言われると黙ってしまった。

 

「全く………ん?」

 

 ―パスッ!バスッ!キュン!―

 

 何かの音が龍人の耳に聞こえてきた。

 

「ねぇ……龍人」

 

 

「言わなくても分かってる。でも止めろ、折角の温泉地が血生臭くなる」

 

 

「でもぉ……このままじゃあ蛇の生殺しよぉ!我慢できないわ!龍人!私に殺らせなさい!」

 

 

「お前がやると、絶対にこの温泉宿に迷惑だから」

 

 

「ならぁ……貴方がなんとかしないよぉ」

 

 龍人にどうにかして貰うか、何かをさせないと収まらないらしい。

 

「全く……」

 

 龍人は何かを呟いた。すると、綺麗な月が見えていた庭に霧が立ち込め始めた。

 

「お前等は此処で待機だ。よいしょ」

 

 龍人がリオレウスとリオレイアにそう言い、ロゥリィを抱えて庭へと出た。

 

 

 

 

 ~庭園~

 

「奴等、一体どこの国だ!?」

 

 

「知るか!」

 

 

「異世界、ドラゴン、創造主を名乗る奴まで出てくるし!この世界はどうなっちまったんだ!?」

 

 

「くそっ!」

 

 アメリカ、中国、ロシアの工作員達が山海楼の庭園で銃撃戦を繰り広げていた。

 

「ハイデッカー!どうする?!」

 

 

「此処まで来たらやるしかねぇだろ!ん……なんだ?霧?」

 

 周囲に霧が出て来た。

 

「お~い、おっさん共」

 

 

「「「「「はっ?!誰がおっさんだ!」」」」」

 

 

「こりゃ失礼」

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 岩の上に立つ龍人とロゥリィ。それを見て、工作員達は唖然とした。なんせ、今回のターゲットの内2人が目の前に居るのだから。

 

「因みに、言葉が通じるのは君等の頭に直接言葉を話しかけてるからだぜ」

 

 

「誰に言ってるのよぉ?」

 

 

「気にするな………さてと、おじさん達。折角の温泉が台無しになるじゃないか………今直ぐにその手に持ってるのを捨てるなら見逃してやってもいいんだけど」

 

 龍人は工作員達にそう言う。しかし彼等も上からの命令で此処に来ている為、退く訳にはいかない。彼等は銃を龍人とロゥリィに向けた。

 

「はぁ………残念だよ。無駄に命を散らせるなんて………ロゥリィに任せよう」

 

 

「ねぇ、いいの?もういいの?」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ウフフフフフフ…………アハハハハハハハ!」

 

 まずロゥリィはハルバートを持ち岩の上から飛び上がり、近くに居た工作員を真っ二つにした。

 

「ウフフフ……こっちよ、こっち!」

 

 ロゥリィは銃撃を避け、岩に隠れてやり過ごし、再び飛び出して工作員達を斬り裂いていく。

 

「この化け物がぁぁぁぁ!!!」

 

 

「アハハハハハ!」

 

 5分もしない内に工作員達は全滅した。

 

「はぁ……」

 

 

「何、血塗れで余韻に浸かってるんだお前は………」

 

 余韻に浸かっているロゥリィにそう言う龍人、彼はロゥリィの顔の前に手を持っていく。

 

 ―パチッ!―

 

 龍人が指を鳴らした。

 

「えっ?」

 

 次の瞬間、ロゥリィを我に帰った。先程までの高揚が消え失せている事に気が付いた。そして自分のハルバートを見てみる、人を斬った感触は在った、銃弾にも撃たれた、だと言うのにハルバートには一切血は付いていない。加え、銃弾に撃たれた跡も、返り血も一切付いてなかった。

 

「えっ…………えっ?!」

 

 

「どっどうなってるんだ?!」

 

 

「たっ確かに死んだ感覚が在ったのに」

 

 そして先程の戦闘で確実に死んだ者達も何故か生きており、一箇所に集められていた。彼等は確かに死んだ感覚が在ったのに、何故だと考えていた。

 

「殺すのは一瞬で事足りるけど、命を育むのは時間が掛かるからね。なんでさっきまでの事はなかった事にしてある……………でも抵抗したりすると、後ろの子達が黙ってないよ」

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 工作員達はそう言われて後ろを見る。

 

 ―グルルルルルッ―

 

 黒い謎の光を放つ銀色の龍が忌々しそうに工作員達を見降ろしていた。

 

 天彗龍・バルファルク、龍気と呼ばれる赤い炎の様な光を放つ力を使い音速の空を翔ける古龍。音速で翔け敵に突進する、その衝撃を受け止める為に防御力もとてつもない物だ。

 

 

 ―ガアァァァァァ―

 

 全身から無数に生える黒い棘と太く発達した双角の龍が今にも工作員達を殺しそうな眼で睨みつけている。

 

 滅尽龍・ネルギガンテ、古龍の中でも極めて好戦的で尚且つ凶暴な性格の古龍だ。特殊な力を使わない代わりに、肉弾戦がメインで棘を使い滅多刺しと言う事も行う。今此処で暴れないのは龍人がいる為だ、彼が居ないならこの場は地獄と化しているだろう。

 

 

 ―キュルルルル―

 

 全身毒々しい紫色の表皮と鱗、何処かカメレオンを思わせる様な姿の龍は工作員達に興味がないのか、龍人を見ている。

 

 霞龍・オオナズチ、古龍の中でもかなり特異な力を持つ龍で、擬態能力と毒、もう1つ特殊な力を有している。

 

「抵抗はしないでくれ。もう面倒は御免だし………抵抗するなら、後ろの子達の餌になるよ。お分かり?」

 

 笑みを浮かべてそう言う龍人、工作員達は滝の様に汗を流しながら勢いよく頭を縦に振っている。

 

「素直で宜しい……さてと、自己紹介の必要はないよね。君等は分かって来てるんだから」

 

 

「ねぇ……今、何したのぉ?」

 

 

「さっきまで霧が出てたろ?アレは、そこにいるオオナズチの能力の1つなんだ。そしてあの霧の中ではオオナズチの想うがままに現実を改変できる。なんで、さっきのお前の奇跡はなかった事にした」

 

 

「事象の改変………神でさえも上位の存在しかできない事を簡単にやってのけるなんてぇ」

 

 

「さて………と」

 

 

「「「「!?」」」」

 

 ロゥリィとの話を切り上げ、工作員達を見る。彼等それによりビクッと身体が跳ねる。

 

「じゃあ、国籍と名前………君等の上司と目的について吐いて貰おうかな。喋りたくないって言うなら黙秘権を使って貰ってもいいけど……」

 

 龍人が手を上げると、バルファルクがその翼から出る光で森の一部を吹き飛ばし、ネルギガンテは近くに在った巨石を握り潰した。オオナズチは液体を吐きだし、それが岩に触れると音を立てて溶けだした。

 

「あんなふうになっちゃうよ?だから正直に話してくれるとありがたいな……因みに嘘を吐いても分かるからね、長生きしてるからそう言うのは分かるしね。ナズチ、それ直しといて」

 

 オオナズチは再び霧を放つとボロボロになった庭園が元通りになった。

 

「じゃあ、俺の質問に答えて貰おうかな」

 

 

「たっ例え拷問されようとはっ話す訳がないだろう」

 

 

「まっましてや創造主を騙る輩に」

 

 彼等もプロだ、国を売る訳にはいかない。尋問や拷問に耐える訓練も受けている、例え殺されようと話さないだろう。

 

「別に騙ってる訳ではないんだけどな…………事実を話しただけだし。話さないなら仕方ない」

 

 そう言うと、彼はハイデッカー達のポケットの中を漁り始めた。

 

「フム………この写真、君の家族かな。可愛い娘さんだ」

 

 

「なっ何を」

 

 

「俺は無駄に血を流す様な事はしたくないし、嫌いなんだよ。

 

 君等が話してくれないなら別にいいんだよ。日本の人達に聞くからさ……それで俺を怒らせるとどうなるかを、君等の国に教えるだけだから」

 

 そう言いながら彼等から取り上げた写真を振る。

 

「いっ一体何をするつもりだ?!」

 

 

「見せしめに民と国の領土を消滅」

 

 

「「「「っ!!!」」」」

 

 

「なんて事はしたくないんだ」

 

 笑みを浮かべてそう言う龍人。工作員達はその姿に恐怖した。

 

 この男は何を言っているんだ?そんな事が可能なのか?いや、それよりも何万と言う命を殺すと言うのに何故、こんな笑みを浮かべているのだ?

 

 だからこそ、彼等は龍人が人間の皮を被った別の何かに見えた。

 

「(さて、これで折れてくれればいいんだけども。これ以上、面倒はしたくないんだけどな)……それで話してくれるかな?」

 

 当の本人は軽く脅しているだけのつもりでいるが、他の者達から見ればそうは思えなかったのだろう。

 

「わっ分かった………だっだから頼む、我が国と家族は」

 

 

「勿論。まぁ多少なりに俺の力を知って貰う必要があるけど。犠牲は一切ださない事を誓おうじゃないか」

 

 こうして、工作員達は自国と身内の安全を引き換えに総てを話した。


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