GATE 古龍と共に、彼の地で生きる   作:始まりの0

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EP20 古龍襲撃

 ~アメリカ~

 

「大統領!大変です!各地基地に……かっ怪獣が出ました!」

 

 

「ひっ被害拡大中!未知の生命達達には既存の兵器が全く効きません!」

 

 

「いっ一体なんだと言うのだ」

 

 現アメリカ合衆国大統領ディレルは現実を受け止められずにいた。

 

 彼は支持率が低迷しており、国民に成果を示す為に特地から得られる利益と資源を狙って工作を仕掛けた。その手始めとして特地の人間であるロゥリィ達を招待と称した誘拐を行おうとしていた。

 

 だが工作員達(CIA)との連絡は途切れ、アメリカ全土の基地が襲撃され始めた。彼等は知らぬ為に怪獣と称しているが、実際には古龍にである。

 

 そして既存のどんな兵器も古龍には全く通用しなかった。

 

「失礼」

 

 

「なっ何者だ?!」

 

 困惑している彼等に声を掛けた存在がいた。この場には大統領とその補佐達しかいない筈……だと言うのに、彼等の目の前に杖をついた着物を着た髭の長い老人がいた。

 

「儂は王の家臣が1人でゾラ・マグダラオスと申します。勿論、人間ではございません」

 

 ゾラ・マグダラオスと名乗った老人はそう言うと一礼した。

 

「にっ人間ではないだと……それに王?」

 

 

「はい、御存じだと思われますよ。我が王、狩矢 龍人を」

 

 

「なっ!?」

 

 

「此度は王の御命令により此方の方々を御返しに上がりました」

 

 マグダラオスはそう言うと指を鳴らす。すると彼の後ろに魔法陣が出現し送り出した工作員達が出現する。

 

「確かにお返し致しました。そして我が王よりの伝言をお伝えします。

 

【どうも、大統領。俺は言ったよね、力ずくで事を起こそうとしないでくれと。約束通り相応の対応を取らせて貰うよ】との事です。

 

 そして此方を」

 

 ゾラ・マグダラオスは鏡を取り出した。鏡を見る大統領とその補佐達。鏡には本来自分達が映る筈だが、そこには自分達でなく自国の基地が襲われている場面が映っていた。

 

「これは遠視鏡と言う物でして、名の通り遠くの物を見る為の道具にございます」

 

 銀色の龍が凄まじい速度で動き戦闘機を落としていく姿、戦車が砲撃を繰り出すが平然としている龍は凄まじい風を起こして戦車を戦闘不能にしていく光景が大統領とその補佐達に現実を刻む。自分達の最新の技術力で作った兵器がいとも簡単に壊されていく。

 

 自滅覚悟の攻撃でさえも龍達に傷1つ付けることも出来ていない。

 

「あぁ、ご安心を…………我等は人を傷付ける事は王より禁じられております。故に派手に見えますが、死者は出ておりません。

 

 あくまで、此度は………の話ですがね」

 

 

「ッ?!」

 

 マグダラオスがそう言うと、大統領は唾を飲み込んだ。

 

「我等は王の命により人を傷付けぬ様に行動します。されど………我等は愛する王を侮辱されたり、傷付けられますと怒りのあまり何をするか分かりませぬ。

 

 この言葉の意味………貴方達にお分かりになりますかな?」

 

 ゾラ・マグダラオスがそう言うと、長い毛に隠れていた眼が見えた。その瞬間、マグダラオスから凄まじい熱気が放たれ部屋の温度が一気に上がり、大統領達は滝の様に汗を流し始めた。

 

「あっ……がっ……」

 

 

「おっと……王以外の人間にはこれは辛いですかな。ホホホッ」

 

 ゾラ・マグダラオスの眼が隠れると、熱気が収まった。

 

「はぁはぁ………うっぐ」

 

 

「おやっ……少しやり過ぎましたかな?」

 

 マグダラオスはそう言うと、大きな大統領室の扉の方へと歩いて行く。そして軽く杖で扉を叩いた。

 

 ―ドガッ!―

 

 その動作とは裏腹に大きな扉は吹き飛んだ。

 

「なっ………ぼっ防弾仕様の扉が………」

 

 

「この音なら人も集まって来るでしょう…………さてと、儂は王の元に帰るとしましょうかな。ホホホ」

 

 マグダラオスは杖を突きながら、その場から去った。

 

「ばっ………ばけ……も……の」

 

 

 

 

 

 

 ~日本 サービスエリア~

 

 箱根の温泉宿から出た、一同は渋谷に戻る為に車を奪い走らせていた。そして途中のサービスエリアで休憩していた。

 

 車の中には伊丹、富田、梨沙、龍人が居た。栗林、ピニャ、ボーゼスは車の中にいるが、眠っている。

 

 ロゥリィ、テュカ、レレイは飲み物等を買いに行っている。

 

「ふぅ」

 

 

「それにしても………魔法って便利だな」

 

 伊丹は車を奪う際に使用した、敵を眠らせる魔法を思い出していた。

 

「こっちの世界の人間は使えないぞ」

 

 と話していた伊丹と富田にそう言う龍人。

 

「そうなのか?」

 

 

「こっちの世界の人間の魔法を使う為の回路は、かなり昔に閉じちゃってるから。まぁ、稀に開いている人もいるにはいるけど………閉じたものを、無理矢理開こうものなら…………激痛のあまり、廃人になるかな。

 

 上手くいけば、回路開くけど………伊丹、試してみる?」

 

 

「遠慮します!」

 

 

「そう………残念」

 

 

「ねぇ、神様」

 

 本当に残念そうな顔をしている龍人に話しかける梨沙。

 

「だから、神様は止めろと言うのに…………それでなんだ?」

 

 

「明日、銀座に着いてからの事です。またさっきみたいな事になるんじゃ」

 

 

「それについては大丈夫だろう。十分、()()が効いてるだろうから」

 

 物凄く悪い笑みを浮かべている龍人。

 

(((何したんだろう?)))

 

 ―コンッ、コンッ―

 

 3人が龍人が何をしたのかと考えていると、車の窓を叩くする音がした。それを聞いた龍人は迷う事無くドアを開いた。

 

 そこには頭を下げた老人が立っていた。

 

「ご苦労様、首尾は?」

 

 

「確実に行いましたぞ。アメリカには熔山龍()、天彗龍、風翔龍、中国には老山龍、浮岳龍、幻獣、ロシアには、雅翁龍、滅尽龍、熾凍龍が向かいました。

 

 3国の主力基地を壊滅させ、代表と話(と言う名の脅し)を行いました。勿論、犠牲者は出しておりませんので御安心を」

 

 

「あぁ、助かったよ。ネルギガンテ辺りは暴走しなかったか?」

 

 

「王の命なのですからのぅ……事ある毎に、王の事を話したら借りて来たアイルーの様に大人しくなりましたわぃ」

 

 

「そう…………ナナ達に酒とか、料理を用意させてるから向こうに戻って休んでくれ」

 

 

「そうですか、一仕事した後の酒は美味いですからのぅ。では王、儂はこれで」

 

 

「あぁ、そうだ。ナナ達には数日したら戻ると伝えておいてくれ」

 

 ゾラ・マグダラオスは龍人一礼して、杖で地面を叩くと魔法陣が出現し、その場から消えた。

 

「今のお爺さんも、もしかして」

 

 

「ゾラ・マグダラオス。人の姿の時はヨボヨボの老人だけど、実際はデカい古龍だ」

 

 伊丹達は先程の老人がどんな龍になるのだろうと考えていたが分からないので、考える事を止めた。

 

「ねぇ………さっき、凄い力を感じたんだけど」

 

 どうやら、ロゥリィ達が戻って来た様だ。

 

「気にするな」

 

 

「あなたが堂々としてるってことはぁ……古龍関係ねぇ」

 

 

「まぁね……それより外は寒いだろう、さっさと入れ」

 

 ロゥリィ達にそう言うと、彼女達をそれに従い車の中に入って来た。

 

「まぁ、明日はこのまま行くとしよう。攻めて来る事はないだろうからな」

 

 ニヤッと笑みを浮かべる龍人に、一同は少し不安を感じながらも明日の為に今は休む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、銀と金の龍達はぁ?」

 

 

「温泉宿の後始末だよ。流石にアレを、あのままにしておけないしな」

 

 

「あぁ……」

 

 ロゥリィはボロボロになった先程まで居た温泉宿を思い出し笑みを浮かべた。

 

「引っ付くな……」

 

 

「いいじゃなぁい、こわぁい龍の居ぬ間になんとやらよぉ」

 

 ロゥリィは彼女達が居ない間に龍人に引っ付き、眠る事にした。


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