今にも日本と帝国の戦闘が始まろうとしていた時、皇宮に飛び込んできた
「久し振りだなぁ、
リオレウスの上から降りた龍人は皇帝に軽く話し掛ける。
「古代龍?! ……それにお主は…………」
「あれっ? 俺の事を覚えてないと」
「いや……まさか…………」
皇帝モルトとその周りにいた高齢の貴族達は始めは古龍達を見て驚いていたが、龍人の顔を見て段々とその顔からさぁーと血の気が退いて行った。
「きっ貴様は!? あの時の!」
皇帝の息子ゾルザルは龍人を指差し叫ぶ。
「はて…………誰だったか? 何処かで会ったか?」
龍人はゾルザルを見てそう呟く。
「ぁ~そう言えば、ウォーリアバニー族を奴隷にしようとした奴か…………確か名前はぞ……ぞ……ゾルゾルだっけ? なんで此処にいんの?」
「誰がゾルゾルだ!? 俺は帝国の第一皇子! ゾルザル・エル・カエサルだ! この無礼者が!」
ゾルザルが龍人を指差しそう叫ぶ。
【【【グオオオオオォォォォ!】】】
ネルギガンテ、リオレウス、リオレイアがゾルザルの言葉に反応し殺気と共に、鼓膜が破れるのではないかと言うくらい凄まじい咆哮をあげる。
その咆哮でゾルザルは腰を抜かし、彼の回りにいた兵達も恐怖のあまり硬直してしまった。ネルギガンテが硬直しているゾルザル達に近付くと、その前足を振り降ろした。
―ドゴォォォォォ!! ―
何かが爆発した様な音と共に、ゾルザルの横の床に巨大な穴が開いていた。ゾルザル本人は目に見えて分かる程、足がガクッガクッと震えていた。こんな一撃普通の人間が食らったらペチャンコである。
【あまり調子にのるな人間風情が……次は叩き潰すぞ】
ネルギガンテは唸りながらそう言うと、穴から前足を引き抜き元居た場所に戻った。
「ぇ~と…………コホン、では気を取り直して。
久し振りだな。モルト…………元気そうで何よりだ」
「おっ御久しぶりにございます。ほっ本日はどういった御用でしょうか?」
龍人に頭を下げながらそう言うモルトと高齢の貴族達。モルトは未だ何とか平然を装っているが、後ろの貴族達の殆どが顔を真っ青にしている。
「なんだ、来てはいけなかったか?」
「いっいえ、その様な事は…………」
「そう、なら良かった……さて、アレはお前の息子か?」
「はっ……はい、我が長子にございます」
「そうか、それにしても……ロクな教育をしてこなかったと見える」
龍人はそう言いながら、ゾルザルの方を見る。正確には彼が持っている鎖に繋がれた複数の女性達を見てみた。
女性達は人間から亜人まで沢山の種族がいるが、ボロボロで服すら着ておらず、彼女達がどういう扱いを受けたのかは察する事ができる。
それを聞くと、流石のモルト皇帝の顔も青くなった。
会話より分かる様に、モルトと高齢の貴族達は龍人とは面識があり、彼の正体を知っている。加えて、彼等はその力がどの様な物かを知っていた。
「よっと……」
龍人は何処からともなく、太刀を取り出すとゾルザルの鎖に繋がれている女性達の元まで歩み寄り、片手で太刀を振り上げ……振り下ろした。
ーキィンー
と音と共にゾルザルの持っていた鎖が断ち斬られた。彼の身体を金色のオーラが包み込むと女性達の怪我が治癒し、それを確認すると腰のポーチから複数の綺麗な布を取り出し彼女達に被せる。
そして、女性達の中に黒髪の女性に近付いた。
「怪我は治したけど痛い所はないか、お嬢さん」
「えっ……日本語? はっはい」
「お嬢さんは日本人だね、君の他にもこっち側に連れて来られた人間はいるかな?」
「はい、恋人がいます。それに何人かの日本人がいました」
「そう……」
龍人はそれだけ言うと、伊丹達に彼女を任せる。そして、ゾルザルの方を向く。
「さてゾルゾルくん、残りの日本人達は何処かな?」
「ゾルザルだ! この」
ゾルザルが名前を間違えられ、腹が立ったのか龍人を殴ろうとしたのだが古龍達に睨まれ固まった。
「どうやら素直に話しそうにないな。栗林さん」
「はい?」
「素直になる様にO☆HA☆NA☆SHIしてあげなさい。あっ、これどれだけやっても死なない不思議グローブね」
龍人はそう言って、栗林にポーチから出したグローブを渡す。
「……ぁあ、そう言うこと。はぁ~い、喜んで!」
どうやら栗林は全てを理解した様でにやっと笑い龍人から貰ったグローブを装着してながら、ゾルザルに近づく。
龍人は古龍達に視線を向けると、古龍達は殺気をおさめた。
「ふっ、女が俺の相手だと?」
ゾルザルは小さい栗林を見下ろし、鼻で笑う。
「たかが、小娘が舐めるな!」
ゾルザルは栗林に殴り掛かるが、避けられカウンターでアッパーを食らわせる。
「ぐほっ!?」
殴られ倒れたゾルザル。直ぐに栗林はゾルザルに跨がり、マウントポジションをとる。
「まっ待て待て! 皇子たる俺にまた手をあげるつもりか!?
けっ警護兵! こいつを取り押さえろ!」
とゾルザルが周りの兵達に言うものの、兵達は古龍に睨まれて動けないでいる。
「まっまt」
トゴッ! バキッ! ゴスッ! ベキッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!
抵抗する間もなく殴り続けられるゾルザル。
十数発殴ると、栗林は立ち上がり彼の胸ぐらを掴み上げる。そして、思い切り殴り飛ばす。
「ごはっ……あひー……ひー」
ゾルザルの顔は酷いものへと変わり果てていた。鼻の骨は折れ、前歯は全て折れ、血塗れになっている。
栗林は更にゾルザルの左手を掴むと、薬指と小指をへし折った。
「うぎゃぁぁぁ!」
その光景を見たピニャ、モルト皇帝、兵士達、宮仕えしている女中達は顔を青ざめさせる。
「栗林さん、ご苦労様……はい、タオル」
「あっ、どうも……」
栗林は龍人にそう言われ止めようとしたが、最後に「女なめんな!」と言いながら、ボロ雑巾の様になったゾルザルを睨み付けた。そう言われゾルザルはひっと小さい悲鳴を上げ、身体を震わせる。
彼女は龍人からタオルを受けとると離れた。
「さてと……そろそろ話したくなったかな?」
ニコニコしながら龍人はそう聞いた。ゾルザルはその笑顔を見て、背筋がゾッとする。
「のっ残りの奴隷は市に流した……しました」
「そう……さて、モルト」
「はっ……はい」
目的の事を聞けた龍人は次に皇帝へと視線を向けた。
「無謀と蛮勇に関しては若い頃のお前にそっくりだな。ただ、若い頃のお前の方がまだ賢かったぞ」
龍人はそこで言葉を区切ると、前髪をかきあげる。
「子育てを間違えた様だな……ウォーリアバニーへの戦を仕掛けた時の事は俺が止めたからお前やコルト達に免じて何も言わなかったが……今回の事、そして銀座での事は誠に赦しがたい」
彼の正体を知る皇帝や貴族達はこの世の終わりの様な顔をする。
「だがその前に……そこの愚息には罰を与えなければな」
そう言うと、龍人はゾルザルの方を向き歩を進め始める。龍人の正体を知らないものの、連れている龍や以前の事に加え先程の栗林に殴られた事もあり恐怖に顔を歪めている。
「さてと……」
「ひっひぃ!」
傍まで来た龍人に怯えているゾルザル。だがこの皇子、変な所で頭が回る様だ。
「きっきしゃま! どこの誰だかひらんが、皇子である俺に……こっこんな状態のおっ俺に何をするつもりだ!?」
と言った。一般人の女性や奴隷を無理矢理辱しめ、暴行した男の台詞とは思えない。
恐らく自分が何故こんな目に合っているのかまだ理解してないのだろう。第一皇子であるこの男は今まで殆ど諫められた事などないのだろう。皇子であるが故に自由勝手に、我儘放題で生きてきた。皇子である自分が弱者である者達を犯そうと、傷付けようと、殺そうとも許されると思って生きてきた。だからこそ、人の痛みも、苦しみも、していい事も、悪い事も、分かっていない。
そういう地位で、環境で育ち、自分を叱る存在も居なかった。居たのは彼の地位にすり寄る貴族だけ……こう育ったのも納得がいくのだが、目の前に居る
「確かにそんなボロボロの奴を殴ってもな……なら」
龍人の身体から紫のオーラが被う。
『ドラァ!』
その瞬間、龍人から
「ぐほっ……なっなんだ、何をした?!」
「怪我を治してやった」
「えっ?」
ゾルザルは自分の身体を触る。先程まで、血塗れだった顔、折れた指、歯が元通りになっている。
「こっこの能力は……クレイジーダイヤモンド!?」
龍人がスタンド能力を持ってる事を知っている伊丹は直ぐに何が起こったのか理解した。
「その通り……さて、モルトの息子よ。怪我が治ったんだ、これで卑怯じゃないよな?」
「たっ確かに……はっ!?」
「これで、お前をボコボコにしても問題ないなよな。普通の人間ならしないんだが……お前の様なクズには容赦しない」
龍人からオーラが溢れだし、出現したのはスタンド・スタープラチナだ。
『オオオォォォ!』
スタープラチナは雄叫びを上げ、大きく息を吸う。
「まっ待て、皇子の俺を」
「知ったことか……オラァ!」
始まった。何が?
オラオララッシュがである。
スタープラチナが凄まじい速度でラッシュを始めた。
それをまともに受けたゾルザルは悲鳴を上げる間もなくボコボコにされていく。
数十秒間のラッシュの後、スタープラチナの渾身の右ストレートによりゾルザルは吹き飛ばされた。
『オオオォォォ!』
スタープラチナが雄叫びを上げる。
「お前がこんな目に合う理由はただ1つ。『テメェは俺を怒らせた』」
龍人がそう言うと、彼の横に学生服を着た誰かの姿が重なった様に見えた。