スタープラチナのラッシュにより吹き飛ばされたゾルザル。
スタープラチナは雄叫びを上げた後に、その役目を終え龍人に重なる様に消えた。
なので、彼の力を知らない人が端から見ればゾルザルが勝手にぶっ飛んだ様にしか見えないのである。
因みに伊丹は彼の力を直接聞き、知っているので何が起きたのか理解出来たのか目を輝かせている。
「さてと……次は」
ゾルザルをボコった後にクルッと身体を回転させ、モルト皇帝や貴族達の方向を向く。
「「「!?」」」
龍人が自分達の方に向いたので、ビクッも身体を震わせた皇帝と貴族。この国において、権力を持っている人物達なのだが……流石の彼等も龍人には逆らえない。
何故なら彼等は知っている、彼が古龍王であること……何よりその力を。
事の始まりは古龍王の神殿……つまりは龍人が古龍達と共に住んでいる場所で起きた。
この世界に伝わる伝承では古龍王の神殿には膨大な量の宝や伝説の剣等が納められおり、それ等を手にした者はこの世界の覇者となる等々と言われている。実際に宝やアイテム、装備を龍人が所有しており、どれもこの世界の技術を遥かに越えている物ばかりの為、強ち間違いとも言えず、昔からその神殿へと向かった者達が帰ってくる事がなかったので、その伝承は信憑性を高めている。勿論、戻って来なかったのは古龍達により排除されたからである。
この世界において古龍王は神々と同じ様に信仰されている。彼の神殿は基本的に禁足地であり、入っていいのは神々の使徒……つまりロゥリィ達の様な存在だけ言うことになっている。と言うのも、龍人本人が噂によりやって来た者達を悉く返り討ちにしていたのだが、面倒になった本人がロゥリィの主神エムロイや他の神々に相談した所、神々な自分達の使徒に命じてそう言う取り決めをしたのだ。
それが行われたのが500年程前で、つい最近までそのお陰で平和に過ごしていたのだが、それも数十年前に破られた。
その理由はモルト皇帝と貴族達である。
彼等がまだ若い頃の話しだ。モルトは先帝である兄が亡くなり、先帝の息子……モルトからすれば甥にあたる者が帝位を継ぐ筈だったのだが、まだ未熟だったので、モルトは中継ぎで皇帝になった。そして、皇帝の地位に固執する彼は様々な手を使い甥を廃嫡し皇帝の座に居座ったのである。
更に彼は自分の立場を確実な物にする為にある宝を求め禁忌を犯す。それこそ古龍王に関する宝である。それを手に入れれば、自分の立場が確固たる物となり、伝承通りであれば自分は世界の覇者となれると思い込んだ。
そこで若き日のモルトと貴族達は宝を求め禁足地へと踏み込んだ。普段であればそんな大それた事をすれば、神々にも目をつけられどの様な事をされるか分かったら物ではないものの、当時の彼は全てが上手くいっており、今回も上手くいくだろうと考えていた。つまりは『天狗になっていた』のである。
だがその鼻も直ぐにへし折られる事になる。
当時のモルトは古龍王の伝説は信じていたものの、未だに本人と古龍が存在する等考えもしなかったのである。
龍人と古龍に初めて相対した時、龍人は眠っており古龍達も人の姿でそれを見守っていた。そしてモルト達は彼等に「此処は聖地である、即刻出ていけ」等と言った。これが普通の人間や亜人相手なら未だしもはこの地の主だ。その言葉に怒った古龍一同、その場で元の姿に戻り、モルト達は唖然。
古龍達のブレスにより、一瞬で兵は全滅し運が良かったのか、わざとなのかは分からないが生き残っていたモルトと数人の貴族達。
そしてモルトと生き残った者達は命乞いをする。
古龍達のブレスの轟音で目を覚ました龍人は古龍達に何があったのか尋ね、古龍達はモルト達の事を話す。
龍人はまたかと呆れるとモルト達を見た。運が良かったのか、それともわざとかは分からないが生き残ったモルト達、龍人は一先ず彼等の傷を治すと、彼等の名前などを聞きそのまま帰る様に言った。
それから幾度か龍人が帝国を訪れ、国の発展などに関わったのだがそれはまた別の話。
時は現代に戻り、龍人は笑みを浮かべながらモルト達に近付く。
「かつての罪を許し、国の発展の為に手を貸し、色々な事を教えてやったのに……息子が阿呆で、そこを正そうとせずにこの始末とは……あの時、お前達を許したのは間違いだったか?」
「っ!」
「お前等がすべき事は俺が言わなくても分かるな?」
「はっはい! 全霊をかけまして愚息の仕出かした事を納めます! 勿論! 市に流された奴隷の者達も直ぐに日本の方々にお返しします!」
モルトを始め貴族達がそう言った。
「ならば直ぐに動け……万が一、死んでいた場合等は亡骸だけでも回収しろ、いいな?」
龍人の言葉に床に額を擦り付け返答するモルトと貴族達。彼の言葉が終わると慌ただしく動き始めた。
「伊丹達はそれでいいか?」
「えぇ、問題ありません」
「そうか……もし次に同じ様な事があれば……」
視線を皇帝達の方に向けると、彼等はひぃと言う悲鳴を上げる。
「……次はないぞ」
龍人はそれだけ言うと、古龍達に目を向ける。
古龍達はその視線が何を意味するのか理解したらしく、リオレウスとリオレイアは翼を羽ばたかせて外へと飛び立った。
こうして、日本と帝国との初の顔合わせは最悪な形で終わった。