良く晴れた青空、洗濯物がよく乾くであろう天候。通常であれば爽やかな1日を過ごせそうだと思う所であるが、帝国の皇帝並びに貴族、元老院の老人達はそんな事を思うどころではない。
何故なら、現在彼等は、柱だけになった元老院の議事堂にいるからである。
此処は城の近くにあるのだが、議事堂の周辺は完全な更地となっている。加えて城も半壊していた。
モルト皇帝を始め、貴族、元老院達は今にも死にそうな顔である。
「陛下……これからどうされるおつもりか?」
元老院の中でも結構年を経ている老人がそう切り出した。
「ぁあ、分かっている。全ては余の不徳だ……」
そう言ってモルトは下の方にいるボロボロの息子を見た。
現在、彼等が……帝国がこうなっている原因は日本の自衛隊と古龍達の所為である。
夜中の内に、日本の自衛隊の戦闘機等による奇襲により議事堂が半壊、そこに現れた複数の古龍達により、この有り様だ。
勿論、理由もなく自衛隊も古龍が動く訳もない。自衛隊に関しては帝国に戦力差を見せつける為だろう。
それだけも頭を抱えているのに、もっと頭が痛いのは古龍達である。
古龍達が襲ってくるのは、間違いなく古龍王である龍人の怒りを買った為だ。
モルトを始め、貴族、元老院達はその力を知っているので顔も青くするのである。
それもこれも、
「それでどうなさるおつもりですか、陛下」
「日本から連れてきた者達を探す。例えそれが既に死んでいてもだ。
それが最優先だ! 貴族に関わる物の復旧は後回しで構わん!」
モルトはそう言い放つ。元老院達もそれに答えそれぞれ動き出す。
しかしこの中でそれに同調しない者達がいた。散々な目に遭ったゾルザルと取り巻き達である。
(何なんだ!? 奴は!? この俺をこの様な目に合わせおって! しかも父上と貴族達のあの怯えよう一体何者だ!?)
自分をこんな目に合わせた龍人に対して募る憎しみで、龍人が何者なのか頭の回ってないゾルザル。
そんなゾルザルと違い、冷静であったのは弟ディアボと事情を知るピニャであった。
(ジエイタイとやらと古代龍の襲撃……動揺するのは分かるが、父上と年老いた貴族達の狼狽えよう……何かあるな。何にしてもこのままではこの国は終わりか)
兄と違い物事をしっかりと考えるディアボは、父や貴族達の様子から察した様だ。
(もう終わりだ……ジエイタイだけでなく古龍王様を敵に回して……これは夢か、そうだ、夢だ。目覚めよ妾、目を覚まして芸術を見よう)
ピニャは冷静ではなく現実逃避している様だ。
その様子を空から見ている3つの影があった。
「どうやら動き出したらしいな」
「やっとですか……遅すぎる。全く……いっそのこと滅ぼしてしまえばスッキリするものを」
「我等とて同じ気持ちであるが、王の決定だ……一先ずは王への報告だ」
「そうしましょう」
~古龍王の神殿(龍人の住処)~
「以上が報告となります、王よ」
帝国の動きを自分達の主である龍人に報告した3人。
人の姿をしているが、勿論人ではない。龍が人の姿となったものだ。
黒い着物の男、白い着物の女、紅い着物の男、それぞれ凄まじい存在感を放っている。
「そう……それは良かった」
「王……それと、地揺れについてですが」
「ぁあ、やっぱりあの地震はそうだったのか。さて……どうしたものか」
龍人は彼等の言葉を聞くと顎に手を当てて何かを考え始める。
「一番、ハーディ辺りが把握してそうだな。近々行ってみよう……」
「王、あの国潰さなくて良かったのか?」
「無駄に犠牲を強してもなぁ……痛手を負うのは罪もない民達だ。必要ないなら滅ぼしたくはないしな」
「我が王よ、1つだけお尋ねしたいのですが?」
白い着物の女性が凄まじいオーラを出しながら龍人にそう聞いた。
「あっ……うん」
「
女性は龍人を指差した。正確には大きなソファーに座っている龍人に抱き付きながら寝ているロゥリィを差した。
「ぁ~酔っ払って放っておくのもどうかと思って連れて来たんだが……此処でも酒飲んでこの有り様でな」
「亜神風情が王に抱き付くとは……塵にしてやる」
「何時もの事だからいいよ」
「いえ、私ですら我慢しているんです! 何て羨ましい!」
龍人は彼女の両隣の男達に助けてと視線を向ける。
((ハハハハハ! 無理です! 王自身で解決してください、と言う訳でこれで))
2人は足音もたてずにその場から消えた。
「(アイツ等……)はぁ……」
龍人は
~??? ~
1人の女性が何かを見ていた。
「成程……想定より少し早いわね。こっちは……少しずつだけど、広がってる。予定を早めようかしら」
女性は何かを感じると振り返った。
「これは、これは……一体何の用でしょう?」
そこには、2体の骸の様な龍がいた。一体は双頭、もう一体はボロボロの布を被っている様な姿をしている。
【我等ノ王ヨリ】【伝言】
【近い内に王が世界の事について問いに訪ねるとの事だ】
「えっ……我等が父が来られるのですか?」
【ソウダ】【無礼……駄目】
「勿論ですわ……それで父はいつ頃?」
【まだ分からん。何時でも迎えれる様に準備をしておく事だ】
龍達はそれだけ言うと暗闇に消えて行った。
「我等が父のお出迎えをしないと……忙しくなりそう、フフフ」
女性は笑いを浮かべていた。