GATE 古龍と共に、彼の地で生きる   作:始まりの0

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EP25 動き出す世界

 良く晴れた青空、洗濯物がよく乾くであろう天候。通常であれば爽やかな1日を過ごせそうだと思う所であるが、帝国の皇帝並びに貴族、元老院の老人達はそんな事を思うどころではない。

 

 何故なら、現在彼等は、柱だけになった元老院の議事堂にいるからである。

 

 此処は城の近くにあるのだが、議事堂の周辺は完全な更地となっている。加えて城も半壊していた。

 

 モルト皇帝を始め、貴族、元老院達は今にも死にそうな顔である。

 

「陛下……これからどうされるおつもりか?」

 

 元老院の中でも結構年を経ている老人がそう切り出した。

 

「ぁあ、分かっている。全ては余の不徳だ……」

 

 そう言ってモルトは下の方にいるボロボロの息子を見た。

 

 現在、彼等が……帝国がこうなっている原因は日本の自衛隊と古龍達の所為である。

 

 夜中の内に、日本の自衛隊の戦闘機等による奇襲により議事堂が半壊、そこに現れた複数の古龍達により、この有り様だ。

 

 勿論、理由もなく自衛隊も古龍が動く訳もない。自衛隊に関しては帝国に戦力差を見せつける為だろう。

 

 それだけも頭を抱えているのに、もっと頭が痛いのは古龍達である。

 

 古龍達が襲ってくるのは、間違いなく古龍王である龍人の怒りを買った為だ。

 

 モルトを始め、貴族、元老院達はその力を知っているので顔も青くするのである。

 

 それもこれも、ゾルザル(愚息)とその取り巻き達の所為だ。

 

「それでどうなさるおつもりですか、陛下」

 

 

「日本から連れてきた者達を探す。例えそれが既に死んでいてもだ。

 

 それが最優先だ! 貴族に関わる物の復旧は後回しで構わん!」

 

 モルトはそう言い放つ。元老院達もそれに答えそれぞれ動き出す。

 

 しかしこの中でそれに同調しない者達がいた。散々な目に遭ったゾルザルと取り巻き達である。

 

(何なんだ!? 奴は!? この俺をこの様な目に合わせおって! しかも父上と貴族達のあの怯えよう一体何者だ!?)

 

 自分をこんな目に合わせた龍人に対して募る憎しみで、龍人が何者なのか頭の回ってないゾルザル。

 

 そんなゾルザルと違い、冷静であったのは弟ディアボと事情を知るピニャであった。

 

(ジエイタイとやらと古代龍の襲撃……動揺するのは分かるが、父上と年老いた貴族達の狼狽えよう……何かあるな。何にしてもこのままではこの国は終わりか)

 

 兄と違い物事をしっかりと考えるディアボは、父や貴族達の様子から察した様だ。

 

(もう終わりだ……ジエイタイだけでなく古龍王様を敵に回して……これは夢か、そうだ、夢だ。目覚めよ妾、目を覚まして芸術を見よう)

 

 ピニャは冷静ではなく現実逃避している様だ。

 

 

 

 その様子を空から見ている3つの影があった。

 

「どうやら動き出したらしいな」

 

 

「やっとですか……遅すぎる。全く……いっそのこと滅ぼしてしまえばスッキリするものを」

 

 

「我等とて同じ気持ちであるが、王の決定だ……一先ずは王への報告だ」

 

 

「そうしましょう」

 

 

 

 ~古龍王の神殿(龍人の住処)~

 

「以上が報告となります、王よ」

 

 帝国の動きを自分達の主である龍人に報告した3人。

 

 人の姿をしているが、勿論人ではない。龍が人の姿となったものだ。

 

 黒い着物の男、白い着物の女、紅い着物の男、それぞれ凄まじい存在感を放っている。

 

「そう……それは良かった」

 

 

「王……それと、地揺れについてですが」

 

 

「ぁあ、やっぱりあの地震はそうだったのか。さて……どうしたものか」

 

 龍人は彼等の言葉を聞くと顎に手を当てて何かを考え始める。

 

「一番、ハーディ辺りが把握してそうだな。近々行ってみよう……」

 

 

「王、あの国潰さなくて良かったのか?」

 

 

「無駄に犠牲を強してもなぁ……痛手を負うのは罪もない民達だ。必要ないなら滅ぼしたくはないしな」

 

 

「我が王よ、1つだけお尋ねしたいのですが?」

 

 白い着物の女性が凄まじいオーラを出しながら龍人にそう聞いた。

 

「あっ……うん」

 

 

()()は何でしょうか?」

 

 女性は龍人を指差した。正確には大きなソファーに座っている龍人に抱き付きながら寝ているロゥリィを差した。

 

「ぁ~酔っ払って放っておくのもどうかと思って連れて来たんだが……此処でも酒飲んでこの有り様でな」

 

 

「亜神風情が王に抱き付くとは……塵にしてやる」

 

 

「何時もの事だからいいよ」

 

 

「いえ、私ですら我慢しているんです! 何て羨ましい!」

 

 龍人は彼女の両隣の男達に助けてと視線を向ける。

 

((ハハハハハ! 無理です! 王自身で解決してください、と言う訳でこれで))

 

 2人は足音もたてずにその場から消えた。

 

「(アイツ等……)はぁ……」

 

 龍人はロゥリィ(酔っ払い)と女性をどうするかと頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~??? ~

 

 1人の女性が何かを見ていた。

 

「成程……想定より少し早いわね。こっちは……少しずつだけど、広がってる。予定を早めようかしら」

 

 女性は何かを感じると振り返った。

 

「これは、これは……一体何の用でしょう?」

 

 そこには、2体の骸の様な龍がいた。一体は双頭、もう一体はボロボロの布を被っている様な姿をしている。

 

【我等ノ王ヨリ】【伝言】

 

 

【近い内に王が世界の事について問いに訪ねるとの事だ】

 

 

「えっ……我等が父が来られるのですか?」

 

 

【ソウダ】【無礼……駄目】

 

 

「勿論ですわ……それで父はいつ頃?」

 

 

【まだ分からん。何時でも迎えれる様に準備をしておく事だ】

 

 龍達はそれだけ言うと暗闇に消えて行った。

 

「我等が父のお出迎えをしないと……忙しくなりそう、フフフ」

 

 女性は笑いを浮かべていた。

 

 

 

 


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