~都内の高級ホテル~
都内でも高級ホテルの一室に龍人と銀髪の女性がいた。
「何時まで此処にいるつもりで?」
「ん~……どうしようかね?」
正確には、高そうなベッドの上で銀髪の女性に膝枕されている龍人がいた。
「この世界も、向こうの世界も我等をもってすれば天で威張り散らしている神々さえも殺し尽くし、貴方の意のままにできると言うのに…………貴方はどうして何時もこうなのですか?」
「だって世界を滅ぼしても面白くないし、皆と楽しくする方が面白いだろう?」
物騒な事を言っている銀髪美女にそう言う龍人。
「我等は貴方が居ればそれでいいのですけど………そう言えば、此度は何故この世界に?」
「同人誌に、ゲーム、その他諸々を買いに来た筈なのに………何でこんな所にいるんだろうね、本当に………はぁ、落ち着く」
~伊丹side~
伊丹耀司……年齢33歳。職業:陸上自衛隊 二等陸尉である。趣味:アニメやゲーム……自他共に認めるオタクである。
「趣味に生きる為に仕事をしている」と言ってもいい人生を過していた。
銀座事件の際にも同人誌を買いに行ったのだが、結局は中止になった。
そして彼は現在、先の事件の重要参考人である狩矢 龍人と名乗る少年に会いにホテルを来ていた。
「伊丹君。よろしく頼むよ」
と満面の笑みで上司に言われたのが地獄の始まりである。
―銀座事件の英雄となってしまった俺は上司達の陰謀により狩屋 龍人に会う事になった。
同人誌即売会は中止され、挙句に増える仕事。
極めつけは訳の分からない子供の世話と来た。しかも連れの女性はドラゴンになったとか。
女性の方が凄まじくおっかないと聞く、何でも俺より前に接触した自衛隊の鬼教官が股間を抑えて内股で出てきたとか………少年に武器を向けたら、近くに在った車を素手でぶち壊したと言う。無礼を働けば殺されるかも………俺、生きて帰れるかな?
少年の方は温厚だと聞くが………考えても仕方ない。行くか―
伊丹はホテルの一室……スイートルームの扉をノックした。
『どうぞ、入って』
中に入ってみたのは、銀髪美女に膝枕される少年の姿だった。彼は思った……「羨ましい」と。
~side out~
「本日はお日柄も………」
挨拶しようとして伊丹は銀髪女性の睨みによって黙ってしまった。
「レウ、止めなさい。よいしょっと……えっと初めまして、俺は狩矢 龍人です」
龍人は身体を起こすとそう挨拶した。
「えっはい……私は伊丹耀司であります。宜しく……でいいかな?」
「はい、宜しくお願いします」
「君の事は何と呼べばいいかな?」
伊丹は大人の対応として、優しい口調で少年に接した。
「狩矢でも、龍人でも、いいですよ……見た目はこんなガキですし」
「見た目?」
「千年以上生きてるけど、中身は永遠の15歳ってね」
「千年……」
千年と聞いて顔を引き攣らせた伊丹。
「とっ年上だったとは……失礼しました」
「別にいいよ、普通で………俺もタメ口、貴方もタメ口でどうだろう?ちょっと待ってね、本を片付けるから」
龍人はそう言うと、ベッドから降りて持っていた本を机の上に置こうとする。
だが伊丹はその本が何なのかを見逃さなかった。
「そっそれは!?人気だったが、内容が生々しく教育上良くないからと販売中止になったコミック!?しかも応募で10人しか貰えない筈のサイン本だと!?それにアレは今はもう絶版となった魔法少女の同人誌!?」
「これ結構マニアックな物なんだけど……もしかして………妹12人」
「シ〇プリ!」
「〇ロウカード」
「CC〇くら!」
「あれ、1つだけだから。選んでくれて、買ってくれた物だから。初めて、パパが」
「クラ〇ド!」
龍人は伊丹にゆっくり近づくと、伊丹もまたゆっくりと龍人に近付く。そして互いに固く握手すると、抱擁した。
「「同志!」」
銀髪女性が伊丹を殺しそうになったが、直ぐに龍人に止められたのは言うまでもない。
「いやぁ~、まさか……自衛隊に同志が居ようとは。自衛隊って日々鍛えてるってイメージだったから………喰らいやがれ、赤こ〇ら!」
「ぁ~良く言われる。自衛隊って外に出るのは休みか任務の時だから……結構いるんだよ、オタクって……クソッ、避けられなかったか。ならキ〇ー!」
「へぇ~……ならば!ス〇ー!」
龍人と伊丹は現在、マリ〇カートをしていた。
「チッ!」
と後方で銀髪女性が盛大に舌打ちをしていた。どうやら龍人と伊丹が仲良くしているのが気に入らない様だ。
「俺、嫌われたのかな?」
「そうじゃないよ、あの子は基本的に人間嫌いだしね……ゴール!」
「はぁ~……また負けた……はっ!?」
「どうかしたかな、同志・伊丹よ?」
「俺、仕事しに来たんだった………」
「あっ……」
楽しみすぎて、自分が此処に来た目的を忘れていたらしい。
「コホン………えっと本日此処に来たのはお話を伺いたく」
「ぁ~……そうだったね。どうしようかね………ん?」
龍人が何かに気付き、足元を見ると、そこに穴が開きそこから2匹の猫が現れた。
「「にゃん!」」
「猫………!?」
そしてその猫達は、四足歩行ではなく2本足で立ち上がったのである。しかも、兜やら鎧を身に着けている。
「やぁ、お前達。どうかしたか?」
「ご主人、大変ニャ!」
「エルベが動きだしたニャ!」
「喋った!?」
伊丹は猫達が喋った事に驚いている。
「此奴等はアイルーと言う種族で、あちらの世界でも希少な種族でな……絶滅しそうになっていた所を助けたら、俺に仕えるって言い始めてな。白い毛並の方が【ネル】、青い毛並の方が【ファニ】だ。
人語を理解してくれる、向こうの言葉と日本語両方を話せる」
「向こうの世界には色んな種族がいるんだな……」
と驚いている伊丹。
「それにしても、どんな事が起きたか分かってないのか、アイツ等………」
「それが帝国が協力を求めたみたいですニャ……」
龍人はそれを聞くと、頭を抱える。
「はぁ………やれやれ、同志・伊丹。どうやら門の向こうで動きが在った様だ、お偉いさんにそれを伝えるといい。向こうの国は戦争するつもりで来るみたいだから」
「えっ!?」
「俺の事は少し置いてといて……あぁ……そうだ、これ」
と伊丹に本と紙を渡した。
「俺が、向こうの世界で使ってた言葉の翻訳本だ。もし向こうの連中と話し合うなら使うといい………後、こっちは向こうの世界の国がどう言った物かという詳細だ」
「あっありがとうございます」
「うん……じゃあ、俺は向こうの世界に行くから……上手く言っておいてね」
「えっ?」
「じゃあ、帰るよ、レウ」
「はい」
銀髪女性が龍人の傍に来ると、彼は地面に向かって玉を投げた。その玉が爆発すると、緑色の煙が出現した。煙は数秒で消える……龍人と銀髪女性の姿も消えていた。
「………どう報告しよう、これ?」
と残された伊丹が呟いた。恐らく上司には怒られるだろうなと考えながらその場を後にしたのである。