~荒野~
焚火を囲んでいる男達。彼等は先のアルヌスに出兵した騎士や領主がいなくなった影響で活発化した盗賊たちである。
民衆達が抵抗する手段をないのを良い事に彼等は好き勝手に暴れていた。
「コダ村か。炎龍が出たって言うんで逃げ出てんのは羊の群れか」
彼等は次の標的について話し合っていた。
「はぁい、おじサマ方ぁ。今宵は生命をもってのご喜捨、どうもありがとぉ………主神にかわってお礼を申し上げますわぁ」
斧を持ったゴスロリ少女が突然現れて、そう言った。
「あっ?なんだ、てめぇ」
「おい、待て!?……間違いねぇ、アレはエムロイの神官服だ」
「って事は死神ロゥリィかよ!?」
これまで人を殺し、女を凌辱していた彼等はこの少女を恐怖していた。
「にっ逃げろぉ!!」
1人が逃げ出そうとし、他の者達もそれに合わせて逃げ出そうとした。その時……
―グオオォォォォォォォォォォォォォオオオオォォォォ!!!!―
耳を貫く咆哮をが聞こえてきた。
「あらぁ?何かしら?」
ロゥリィと呼ばれた少女は咆哮のした方向を見ると、ドスッ!ドスッと言う凄まじい音と共に何かが近付いてきたのを見た。
「アレは……」
「なっなんだありゃ?!」
「ばっ化物だ!」
現れたのはドス黒い緑色に血が乾いた黒ずんだ気味の悪い鱗、異常に発達した巨体を支える筋肉の塊の様な脚。大木よりも巨大な尾、刺々しく、血で赤黒くなった鋭い凶悪な顎。圧倒的な殺意と力を孕んだその眼光。
日本側の人間が見れば「ティラノサウルス」に似ていると言うだろう。
「なっ何よ……此奴……いや、待って……まさか」
盗賊達から怖れられたロゥリィと呼ばれる少女がこの龍を見て、驚いている。
「ふぁ~……何だ、イル……人が気持ちよく寝ていたのに。咆哮しやがって、鼓膜破れちまうじゃねぇか」
欠伸と共に巨龍の上で何かが動く。
『王様、すいません。つい面白い事になってたので』
「……ん?」
巨龍の上にいたのは人間……青年と言うには少し幼い顔付の少年だ。彼は龍の上から周囲の光景を見た。
「あらぁ……お久しぶりねぇ、龍人」
「げっ……ロゥリィ」
「久しぶりに会ったに『げっ』はないんじゃない?」
「そっそうですね………それよりもこれはどう言う状況?」
「このおじサマ方は盗賊……主神がおじサマ方の命を欲したから私は此処に来たのよぉ」
「ふぅん………」
龍人はそれを聞くと、目を細めた。そして巨龍から降りると、首を回す。
「イル……このおじサマ達に一方的に奪われる痛みを教えてあげなさい。半分はロゥリィに残す様に」
『分かりました』
巨龍はそう言うと、盗賊達を見降ろした。
―グオオォォォォォォ!!!―
巨龍……暴龍・イビルジョーが咆哮を上げると盗賊達に襲い掛かった。
「いっいぎゃやぁぁぁぁ!!!」
「ぐわぁ!?うぎぃぃぃぃぃ!!!」
「ああぁぁぁぁっぁ!!!」
一方的な暴力により盗賊達は次々に蹂躙されていく。
「たったすけ……」
―グルルル―
イビルジョーが脚で踏んでいる男が助けを乞う。
『お前達だって楽しんでいただろう?』
「えっ?」
『向こうの岩陰に倒れていた女達……アイツ等を襲い、一方的に嬲って楽しんでいただろう?』
だからオレも楽しむよ……お前達で―
男はイビルジョーの目が本気で楽しんでいるのが分かった。それがとても恐ろしかった。
「やっやめ」
グシャと音を立てて、男は人生の幕を閉じた。
「はい!終わり!後はロゥリィに任せるよ」
「あらぁ……ちゃんと残してくれてありがとぉ」
「じゃ、そう言う事で」
残りの盗賊はロゥリィに任せ、その場を去ろうとする龍人。彼女と何か在ったらしい。
「あらぁ……話は終わってないわよぉ」
「……」
『王、面倒ならオレが喰いますけど?』
「いや……いい。はぁ……分かったよ。待ってるからさっさと終わらせろよ」
龍人はそう言うと、イビルジョーに寝る様に言う。イビルジョーはそれに従い、その場に寝転ぶ。龍人はイビルジョーを背もたれにする様に座り込んだ。
「じゃあ……再開しましょうか?」
「ひぃ!?」
残った盗賊達は此処でその命を散らせるのであった。
~数時間後~
「朝か……」
「終わったわねぇ……もう少し早ければ助けてあげられたんだけどねぇ」
ロゥリィの目の前にある3つの墓、これは盗賊達に襲われた家族の物だ。
「あぁ……」
龍人はそう言うと懐から水晶の棒を2本取り出すと、それを打ち合わせた。
―キィーン!―
と金属をぶつけた様な音がすると、墓から3つの光が現れた。
「せめて……来世では幸せになれる様に」
3つの光はそのまま天へと昇って行った。
「ねぇ……それ【冥魂石】じゃないの?」
「うん……」
「冥界の宝物………なんで、貴方が持ってるのよぉ?」
「まぁ気にするな………それより、俺に何の用だ?」
「ちょっとアルヌスに連れて行って欲しいのよぉ。いいでしょ?」
「まぁいいけど……」
『亜神風情が、王様にタメ口………殺すぞ』
イビルジョーがロゥリィに向かい凄まじい殺気を放ちながらそう言う。
「ぁ~いいの、いいの。此奴とは700年前からの付き合いだから」
『しっしかし、王様!』
「いいから……取り敢えず、お前は戻れ」
『えっ?!』
「アルヌスは門が在って、ナズ達の報告では自衛隊が展開してる。お前に乗って行くと大変な事になる……お前、攻撃されたら我慢できずに仕返しするだろう」
『うっ……分かりました』
イビルジョーはそう言うと、足元に魔法陣が展開しその場から消えた。
「ねぇねぇ……さっきのは何て龍なの?」
「アイツは【暴龍・イビルジョー】……古龍の中でも最も暴れん坊だ。まぁ……仲間だと認識すれば、仲間の為に動く奴でな……根はいい子なんだが、加減を知らないんだ」
それを聞くと、ロゥリィは顔を真っ青にさせた。
「じゃあ……行くとするか」
顔を真っ青にさせているロゥリィを抱える。
「ちょ……ちょっとぉ」
「空を飛んだ方が早い」
龍人がそう言うと、2人は風に包まれ、空へと消えてしまった。