俺は拳を前に突きだし構える。事情はよく分からねぇがとりあえず従弟が危険ってことは分かる、けどそれよりも俺は。
「………貴様、己よりも強いものが現れた時に興奮する戦闘タイプだな。王とまったく同じだ」
「オウ?ってのは誰かは知らねぇがお前は強いんだろ?最近つまんなくてよぉ。少しだけ俺の相手になってくれ」
後ろをチラリと見るとリトは震えている、それに対して桃髪の女は何事もないかのように自然体でいる。
「悪いが私は後ろにいる地球人がララ様に見合う男なのか確かめねばならない、そこをど、っけ!?」
俺は鎧イケメンの顔面目掛けて右の拳を放つ。油断していたのか鎧イケメンは後ろに大きく下がった。
「驚いた、地球人は貧弱と聞いてたが。いるにはいるのだな、しかしこのデビルーク星王室親衛隊隊長の首は容易く取れん」
「どーだか、これでも伊達に魔王なんてあだ名で呼ばれてねぇから、な!!」
お次は右のストレートと見せかけ顔面目掛けてハイキック、しかし相手も相当な手練れだ。簡単に避けられた。
「………チッ!当たれよ、んで死ね」
「急に口が悪いな、まぁ私もデビルーク星ではNo.1の戦士と呼ばれていてね、そう簡単には当てられないさ」
そして俺は気づいた。俺のハイキックは避けて上の線路へと着地した鎧イケメンなのだが。
「ん?どうした地球人構えを解いて」
「あぶないよー」
ズドッ!という音を響かせ鎧イケメンは宙を舞った。そのままコンクリの壁に激突。
「こてつっ!?」
と、とても情けない叫び声と共に鎧イケメンはズルリと地面に倒れた。
「なんだ、やっぱギャグなのか?これは」
「うおおぉぉぉぉぉおお!!!」
「おわっ!」
急に雄叫びをあげて起き上がった、頭からは血がドバドバ出ている。錯乱したのか?今度は剣をブンブン振り回してきた。これじゃあキチガイに刃物、めっちゃあぶねーな。
「ヌベッ!!」
また転んだ、今度はララと呼ばれる桃髪の女が足を引っかけて、いじめか。
「ら、ララ様?」
鎧イケメンは困惑した目でララと呼ばれる女を見る。ララは怒ったような表情で言った。
「んもぉー!デビルーク星No.1の戦士って呼ばれてるザスティンに地球人が勝てるわけないじゃない!」
「し、しかしララ様。これは」
なんだ、さりげなく俺は勝てない発言されたんだが。まぁ、それはいいとしてリトも走って追いかけてきたようだ。
「これはララ様に見合うかどうか確めるものでして」
「もう!婚約、婚約って!パパへどーせ私より後継者の方が大切なんでしょ!」
「そ、そんなわけ『いい加減にしろっ!!!』
その時、滅多に怒らないリトが怒鳴った。珍しいこともあるもんだと思い俺は怒るリトを眺めていた。
「人のことかってに縛りやがって、普通の生活させろよ!もうこれ以上好きでもねー奴と結婚とか。……だから、もう帰ってくれ!」
俺はその時、鞄を河川敷に置いてきたことを思いだしグローブを外して静かにその場を去った。去り際にリトの怒号が聞こえてきた。
自由にさせろよ、と。
◆
湯船に浸かり今日あったことを思い出す、ザスティンと呼ばれる戦士に様付けされているララとかい桃女にデビルーク星と言われる星。
「宇宙人とでも言いたいのかよ」
でもだとしたらあの身のこなしはどう説明するのだろうか、電車に跳ねられても平気でいられるほど頑丈な体。
たぶん、普通にプロボクサーの選手や空手家などが正面から電車にアタックしても軽傷じゃ済まないと思う。
「面白くなってきた」
今まで抜けてた何かが埋もれたような気がした。
◆
うわぁ!!そんな声が俺の目覚まし時計となった。その声の発信源はむかえのリトの部屋だ。
「ん、朝からうるせぇ、な」
俺はリトの部屋に入り忠告しようとしたのだが、リトのベッドにはもう一人。桃色の長い髪に大きな胸、そして腰の辺りから生えている黒い尻尾。
「………学校休むか?」
「ちがーーーう!!!」
リトの声は家中に響いた。
◆
「ふーん、結局お前は宇宙人なのか」
俺はあのあとリトに直接話を聞いた。ララ・サタリン・デビルークは宇宙を支配するデビルーク星のお姫様。んで婚約すんのがイヤで地球に避難したら偶々、リトと出会い惚れたと。あ、ちなみ惚れたのなんだのはララから聞いた。
「なー、お前のパパってやつ。デビルーク王は強いのか?」
「んー、強いよ!たぶんこの宇宙で一番強いと思う!」
その言葉を聞いてますます面白くなってきた。宇宙最強の男、いったいどんな奴なんだろうか。
「レイトはなんでそんなに強いのー?」
「んぁ?俺か…………まぁ、自然とこうなったかな。喧嘩ばっかしてたし」
そんな俺の返答にララはふーんと頷く、聞いておいてその反応ですか、ともツッコミたくなったがそれじゃあもう終わりそうにないのでやめた。
◆
昼休みが終わり午後の授業の最中、クラスの皆は全員俺を見ている。
「え、えぇと。江崎くん?」
「あぁ?」
俺が午後の授業にいるのがそんなに珍しいのか、担任の先生は困惑していた。
「ひや、なんでもありません」
昨日も俺は学校にはいたが、授業をサボっていない訳ではない。
「…………ん?」
外を眺めているとグラウンドでは女子が体育の授業を受けていた。だが、それよりも違和感を感じるものがあった。あれは、
◆
その日の放課後、俺はリトと共にザスティンの元に来ていた。
「んだそれ?」
ザスティンが持っているのは宙に浮く結晶。ザスティンをそれについて説明し始めた。
「今日は結城リトそして江崎レイト、君たちに王直々からメッセージを持ってきた」
「俺も?俺は結婚だのには関係ねーんだけど」
まぁ、聞いてくれとザスティンは言う。ザスティンは例のデビルーク王について話してくれた。
「ようは全宇宙を支配する凄い人なんだろう?」
「そういうことだ、では心して聴くように」
ブォンという起動音をたてて音がなった。
『よぉ、結城リト』
威厳のある声、リトの方をチラリと見ると少しだけ震えている。緊張しているせいか。
『ザスティンから話は聞いてるぜ。てめぇをララの
やはりそういう話か。分かってはいたがこういう話なら、俺は尚更いらねぇのでは?と思ってしまう。
『地球人は貧弱らしいがな、あのララが初めて好意を抱いた程の男だ。……俺はお前の器に期待している』
話がどんどん大きくなってくるな。リトは冷や汗ダラダラだな、だがそれがどれほど重要なのか伝わる。
『いいか、いずれ俺が決める「婚姻の義」。それまでララを守りとおして見せろ。………そして江崎レイトだっけか?』
ん?俺にも何かあるのか?いや、俺は無関係なんだが。
リトの方を見るがリトは横に首を振る。
『てめぇにララおよび結城リトの護衛を任せる。言っとくがてめぇに拒否権はねぇ』
は?さっきリトにララを守りとおして見せろとかどーのこーの言ってただろ、なんで俺。
『てめぇのこともザスティンから聞いてる、なんでもザスティンと渡り合ったそうじゃねぇか。その実力を見込んでのことだ。結城リトのことは既に全宇宙に伝わっている、こいつを狙う輩がやって来ることはもう一目瞭然だ。婚姻の義まで守って見せろ、もし他のやつにララを奪われたりしてみろ、そんときはてめぇらの命とこのちっぽけな
ブツンと切れてしまった。ザスティンは結晶をしまい俺たちを見る。
「言っておくが、かつてデビルーク王の怒りを買った輩がいたが、そやつは母星ごと消された。………すなわち、君たちが王の期待に背いた場合、地球は消滅する」
デビルーク王、とんでもない男に目をつけられたな。俺としては面白くなってきたので申し分ないが、リトはどうもダメみたいだな。
「ち、地球が消滅」
俺は白くなって倒れるリトを放って家へと帰ったのだった。