とある魔術の幻想曲<ファンタジア>   作:瑠璃色ss

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序章 プロローグ
不幸はいつも突然に


 12月19日 午前6時04分

 

 『人的資源』の一件から約一カ月が過ぎたある日の夜明け頃。

 

 ()()()()()()()()()()()()()、上条当麻は病院のベッドの上にいた。

 

 (う………ん………?)

 

 寝る前に窓を閉め忘れたのか、初冬の冷たい風が上条の頬をなでる。

 

 「……まだ6時か………」

 

 時計を確認し、窓を閉めるために上条はベッドから起き上がった。

 

 「う~寒ぃ寒ぃ」

 

 窓を閉め、長時間開けっ放しにされていたらしく冷え切った部屋から逃げるようにベッドに潜り込み、睡魔に身を任せるように瞼を閉じる。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 午前6時31分

 

 (…………ん?)

 

 上条が再び目を覚ました理由は至極単純。ふにゃ、と腰のあたりに細くて柔らかくて温かい、()()()()()()()()()()()()()()()を捉えたからだ。

 

 (まさか……いや、ここ病院だぞ………ッ!?)

 

 上条は普段、学生寮ではユニットバスに鍵を掛け、浴槽の中で眠るという生活を送っている。なぜなら寝惚けたとある居候娘が上条の布団に侵入してくるのを死守するためだ。

 

 上条が入院している間その居候娘は、彼の担任であるミニマム女教師、月詠小萌に預かってもらっているはずなのだが………

 

 「たしか小萌先生の家からここまではそう遠くねえっ!!」

 

 彼女のお布団侵入癖―というより夢遊病―に頭を抱えつつ、上条はとりあえず腕の中から抜け出そうと試みる。

 

 しかし、

 

 「むがっ!?」

 

 服を掴まれ再びベッドに引き戻される。

 

 しかも今度は向かい合う形で。

 

 ただでさえ布団侵入罪は健全な青少年上条当麻の精神にとてつもない影響を及ぼすのに、今回は向かい合ってしかも抱きつかれているため無防備にイロイロな所が触れ、上条は精神に途轍もないダメージを与えられた。

 

 「(うおおおお!?ちょっ、いっいくら寝惚けているとは言え、さすがにコレはアウトだろ!!)」

 

 上条は周囲の病室に聞こえないよう小声で―と本人が思っているだけの結構な大声で―抗議するが、

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 応答はなく、すうすう、と小さな寝息が聞こえてくるのみ。

 

 (くそ、こうなったら少しでも身の安全を確保するしか………ッ!)

 

 上条は無理に起き上がろうとせず、ジリジリと体を動かし毛布の中の少女から離れていく。

 

 すると、動く上条につられてか、毛布が取り払われ少女の姿が露わになった。

 

 そこには、

 

 「むにゃ・・・・・・この夢は星二つです・・・・・・・・・すぅ・・・・・」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 目の前、吐息がかかるほど近く

 

 下着姿で。

 

 「…………」

 

 思考が停止すること数秒、

 

 「……はっ!?」

 

 我に返った上条は自身が今どういう状況にいるか自覚し、慌てて彼女の腕から脱出する。

 

 「なっ!わっわわ、わっ痛!?」

 

 最後のはベッドからずり落ちて頭を強打したためである。

 

 「なっ、えっ何?寝起きドッキリ?」

 

 頭を打ったからか、寝起きだからか、元々バカだからか。変なことを呟く上条にベッドの上から声がかけられた。

 

 『ああ、ようやく目覚めましたか上条当麻』

 

 「わっ、だっ誰!?」

 

 上条が起き上がると、ベッドの上に体長30センチほどの巨大な白いゴキ

 

 『カブトムシですよ上条当麻?』

 

 考えを読み取ったのか、軽く殺気を放ちつつゴキb……もといカブトムシは答えを先取りした。

 

 「なっ何でここに居るんだ?しかもこっちはその………」

 

 上条はカブトムシの殺気に気圧され顔を青ざめさせながら、先程見た少女の姿を思い出す。

 

 「……下着姿で………」

 

 不埒な幻想を頭に過らせる上条だが、カブトムシは跡形もなく打ち壊した。

 

 『私が屋内に入るよう勧めたのです。彼女も相当眠たかったのか、ここの窓が開いていたので侵入するや、服を脱ぎ散らかしてそのまま寝入ってしまった。要するに偶然です。』

 

 どこに入ろうか考えていた時にAIMストーカーに似た『機能』でここに上条がいると分かって入った事や、眠りについたときの表情がとても穏やかで起こすのも憚られた事は、変な誤解を招くため、言わない。

 

 「窓から?ここ3階だぞ!?」

 

 そんなカブトムシの考えには気付かず、上条は驚いた様子で質問した。

 

 『はあ…彼女なら造作もないことだと思いますよ?なにせ「四枚刃」を素手で壊し回ったほどですし。』

 

 呆れたように言うカブトムシ。たしかにそんな事もあったような無かったような………。

 

 「う、ん………朝……です、か…………?」

 

 二人の会話のせいか、フロイライン=クロイトゥーネが目を覚ました。纏めずに寝たのか、髪が素の肩にばさばさと掛かる。

 

 『ああ、おはようございます。よく眠れましたか?』

 

 「おはようですカブトムシさん。今朝の夢はあまり美味しくなかったです」

 

 彼女はカブトムシをギュッ、と抱きしめて挨拶をすると、

 

 「おはようです上条当麻さん。ベッドを借りさせてもらいました」

 

 今度は上条に向かって腕を広げながら近付いてきた。

 

 「ちょっ待て!ちょっと待って!?まさかお前、毎朝起きる時にこんなことやってんの!?」

 

 「はい、おはようのハグです」

 

 面食らう上条をお構いなしに、フロイライン=クロイトゥーネは平然と上条に正面から抱きつく。

 

 ひぃいいっ!?、と情けなく叫ぶ上条は自分の顔が火照っていくのが分かった。先程は毛布越しだったが、今回は直で。しかも下着姿で抱き付かれているため、彼女の鼓動や体温、胸のふくらみの感触などがダイレクトに伝わってきて上条は心臓が止まるかと思った。

 

 「…………ん?」

 

 二度の精神への甚大なダメージを受け、全身の神経がおかしな具合に逆立つ上条は、フロイライン=クロイトゥーネがいつまで経っても自分から離れないことに不安を覚えて顔を覗き込む。

 

 すると、

 

 「…………すぅ………」

 

 彼女は上条の胸に頭を預けて再び眠っていた。

 

 「二度寝してるぅぅぅ!!」

 

 上条は腕の中から抜け出ようとするが、後ろで組んでいるのかまったく外れる気配がない。

 

 「一体どうすれば………ッ!?」

 

 『ああ、一度ベッドへ寝かしてあげれば良いのでは?そうすれば自然に外れるかもしれません。』

 

 対処法に悩んでいると、カブトムシが少々不機嫌そうな声で助言した。

 

 「あ、ああ……」

 

 助言に従い、フロイライン=クロイトゥーネを抱っこする形でベッドに運ぶ。

 

 「よっこらせっ、おわっ!?」

 

 彼女を下ろそうとした刹那、()()()()床に落ちていた毛布に足を滑らせ、二人は折り重なるようにベッドに倒れこんだ。

 

 「痛つ、つ………」

 

 咄嗟にフロイライン=クロイトゥーネの頭を守ったため、両手が使えず顔面からベッドにクラッシュする上条。痛みに任せてのた打ち回ろうとしたが、目の前に少女の顔があることに気づく。

 

 両者の唇の距離はおよそ4センチ。

 

 キュバッ!!、と首を折りかねない速度で顔を逸らす上条だが、カブトムシの周りに殺伐としたオーラが漂ってきているのは気のせいだろうか。

 

 「むにゃ…………すぅ……………」

 

 彼女は少しだけむずがると、上条から腕を離しそのまま眠り込んだ。

 

 

 

 「ふう………」

 

 ようやく危地から脱し一息つくと、上条は床に転がった毛布を取り上げる。

 

 「……こうして見ると、やっぱただの女の子だな………」

 

 『…ええ、彼女も学園都市の子供たちと同じ。ただ特別な能力を持っただけの人間です』

 

 上条が呟くと、カブトムシが穏やかな声で返した。

 

 和やかな空気が病室を満たし、上条がフロイライン=クロイトゥーネが冷えないよう毛布を掛ける。

 

 その時だった。

 

 「とうま7時なんだよ!早く起きてほしいかも!!」

 

 その平穏を破るようにズバーン!、と勢いよく病室のドアが開け放たれた。

 

 ビックゥ!!、と体を震わせそのまま硬直する上条。ベッドとの間のカーテンで顔は見えないが、小さな人影がこちらに向かってくるのが分かる。

 

 (ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい………ッ!!)

 

 厳密には6時45分だとか、朝っぱらから大声出してんじゃねえとか、今はそんな事どうでもいい。

 

 「グッドモーニングなんだよとうま!本日は快晴なりな、ん……だ。よ………?」

 

 今重要なのは、上条のベッドでフロイライン=クロイトゥーネが寝ている事。その彼女が下着姿な事。上条が彼女の腿の辺りまで毛布を掛けてそこで止まっている事。

 

 そして、

 

 「そこで何をやっているの、とうま?」

 

 シャッ、と小気味よく開けられたカーテンの向こうに立っているのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女の名前はインデックス。

 

 現在上条の学生寮に居候をしている女の子だ。

 

 「何をやっているの、とうま?」

 

 再び訊ねるインデックス。訊く度にゴゴゴゴゴッ!!、と気迫が満ちていくのは気のせいではないだろう。

 

 「イイイイインデックスさん!?ここっこれには色々と訳がありまして………」

 

 「何をやってるの、とうま?」

 

 「この子は深夜に窓から進入して私のベッドに潜り込みまして、何で下着姿かは彼女が自分で脱いだだけで私はなにもやっておりませんし」

 

 

 「何をやっているの、とうま?」

 

 「つまり私上条当麻は決して不埒なマネはしておりません!!いや途中でちょっとドキッとした時もあったけどそれは結果であって、とにかく私はひぃいいいいっ!!」

 

 冷や汗と弁明を垂れ流しながら土下座モードに移行していく上条。最後のは、インデックスがガシッ、と両手で上条の頭を持ったからである。

 

 「……とうま…………」

 

 とても低ーい声が発せられる。俯いていて表情は見えないが、口から覗く歯がギラギラと輝いていた。

 

 「なっなんでございますか姫?」

 

 上条が恐る恐る尋ねる。

 

 「前に、これと同じような夢を見た気がするんだよ。」

 

 「は、はあ……」

 

 「その時は、とうまはそんな節操無しじゃないって思ったんだけど………」

 

 インデックスは一度言葉を切り、顔を上げる。

 

 彼女の顔には笑顔があった。

 

 奥にいつ噴火してもおかしくないマグマのような怒りを秘めた笑顔が。

 

 「やっぱりとうまは、とうまなんだね?」

 

 直後、猛獣と化した白いシスターさんに、分厚いステーキを噛み千切るかの如く頭を噛み付かれた。




 はじめまして瑠璃色ssと申します。

 とある魔術の幻想曲(ファンタジア)楽しんでいただけたでしょうか?

 今思うと!や?を使いすぎかなという感じがします。

 それと、『あれ?この表現どっかで見た気が……』という方、すみません。ある小説から少し(?)表現をパク…オマージュさせていただきました。

 それでは、今回はこの辺で目を休めていただいて。

 次回も見ていただける事を願いつつ。(パクリ)

 批評・酷評、感想や意見、質問などお待ちしています。

 次章は一ヵ月後になると思います。
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