「あっアアアァッ……!!」
あまりの頭痛に、片膝を着いてしまう鬼柳。
あのエクシーズモンスターとやらを拾い、それを見た瞬間、鬼柳はダークシグナーとしての自分を思い出してしまい、途方もない罪悪感に襲われていた。
些細な誤解から生まれた、己の過ち。
一つの目的を達成した事で、チームサティスファクションのメンバーは次の目標を模索し、それぞれの目標と日常を歩み始めた。
彼らは鬼柳からこのサテライトでも、自分達のような者達でもなせる事はあるのだと学び、自分の道を模索し始めた。
だが、自分にとってはそうではなかった。
まだ満足し足りない、もっと仲間たちと一緒に暴れたい。
だから、もっとデカイをしようとメンバーを再結集した筈なのに、仲間は次々と自分から離れていくだけだった。
今思えば当たり前の事だった、なのにそれにすら気付かなかったのは、当時の自分がそれだけ仲間が離ればなれになる事に対して恐怖していたのだろう。
「あぁ、あ……!」
後悔と罪悪の念が鬼柳の胸に込みあがってくる。
何で、自分は今までこうやって呑気に旅をしていたのだ?
旅立つ時、自分はどの面下げて遊星たちに別れを告げたのだ?
「アッ、アッ、アァッ!!!!」
崩れかけの建物の壁を、思い切り、何度も叩きつける。
(仲間だったのに、仲間だったのに……!!)
そう仲間だった。
最高の仲間だった、これ以上にないくらいに。
だからこそ、自分は。
(どれだけ離れていても、オレ達は仲間だって……遊星は言ってくれた筈なのに、オレはッ!!)
どれだけ離れても自分達は仲間だと、彼は言ってくれた。
なのに、自分はそれで満足できなかった。
セキュリティとの争いごとに彼らを巻き込み、更に捕まってしまった自分を助けようとしてくれていた遊星を、些細な誤解から恨み、憎み、裏切り者と罵ってしまった。
そして、ダークシグナーとして蘇り、筋違いな憎しみを増幅させながら彼と、彼の仲間たちを苦しませてしまった。
「何で……」
己の両手の平を眺めて、鬼柳は疑問を投げかける。他でもない自分に対して。
「何でオレは、生きてるんだ……?」
生きている事自体は別に疑問に思わない。
大法、遊星やその仲間たちが尽力して自分達をダークシグナーから解放でもしてくれたのだろう。
「何で、どうして、テメエはここで呑々と生きてやがんだ、鬼柳京介ぇ!!」
眼に止まった水たまりに映った己に対して、鬼柳は叫弾する。
仲間たちだけではい、自分は大勢の関係のない人々を地縛神の生贄にした。例え生贄にした人々が戻っているのだとしても、自分がそれを犯したという事実は変わらない。
「ちくしょう……オレは……オレは……ッ!!?」
その時だった。
両手を地面に付けて後悔の念を口にしていたその時……自分のデッキが紫色の輝きを放っているのが眼に入った。……正確には、エクストラデッキが。
「何だ、一体……」
不思議に思った鬼柳は、己のデッキの中身を確認する。
そして、その中にあるはずのないカードがあった。
「――――は?」
あまりにも信じられない出来事に、鬼柳は思わず口を三角に歪めてしまう。
紫色に、禍々しく輝くそのカードを、鬼柳が忘れる筈もなかった。
先ほど拾ったエクシーズモンスターとやらと同じく、レベルの列が左寄りの、黒い枠のカード。
「どう、して……どうして、オマエがここにいる……?」
目の前にカードに対して、疑問を投げかける。
ダークシグナーから解放された折には、このカードは既に自分の手元から消えていた筈だ。
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』……何でオマエがここに……?」
地縛神と同じく、鬼柳の仲間であった遊星を苦しめたモンスター。
いや、ただ単に恐怖を与えただけの地縛神とは違い、このモンスターは大いに遊星を苦しめた。
仲間を苦しめた度合いでは、地縛神よりもこのモンスターの方が余程高い。
「ッ、これはッ……!?」
あまりの動揺に、手元が滑ってしまい、ワンハドレッド・アイ・ドラゴンの下に重ねてあったカードたちを落としてしまう。
そのカードたちを見た瞬間、鬼柳はさらに混乱してしまった。
「コイツは、ルドガーの奴が使っていた……ソレに、コイツも……は、ははは……」
最早、鬼柳は笑う事しかできなかった。
「ハハハ……そうかよ、
何故だろう、あれだけ好きだったのに。
自分の全てだった筈なのに。
今では、そのデュエルが憎い。
仲間を苦しめるデュエルしかできなかった自分が、自分のデュエルが、どうしようもなく憎い。
それなのに。
「
自嘲するように、鬼柳は呟く。
何て無様、と鬼柳は自分を呪った。
その時だった。
「フッ、まだ生き残りがいたか!」
「生き残りのエクシーズ使い風情が、貴様もカードにしてやろう!」
「さあ、
後ろから、声が聞こえる。
鬼柳はソレに振り向く。
青い制服に、仮面をつけた複数人の集団。
デュエルディスクを構えている様からして、自分にデュエルを挑もうとしているのか。
しかし、普通のデュエルではないと、鬼柳は直感的に思った。
ダークシグナーとして闇のデュエルを体験した鬼柳だからこそ、彼らが自分にしようとしている事がただのデュエルだという事ではないと分かった。
故に――――
「……いいぜ」
鬼柳は立ち上がる。
ついさっき拾ったデュエルディスクを展開し、虚ろな目で仮面の集団を見つめる。
「オレを、地獄に送ってくれよ」
その後、彼らオベリスク・フォースの姿を見た者はいなかった。
◇
鬼柳:
LP 1250
手札 0枚
フィールド ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン(☆-8)
伏せカード1枚
少年:
LP 3000
手札 0枚
フィールド グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン(☆10)
捕食植物キメラフレシア(☆7)
捕食植物ドラゴスタペリア(☆8)
捕食植物ダーリング・コブラ(☆3)
伏せカード3枚
『グォオ……!』
異様な召喚法で召喚された百眼の竜を、少年と瑠璃は驚愕の表情で見つめる。
レベルとは違う概念の階級、ランクを持つモンスターならば知っている。チューナーモンスターを含むレベルの足し算で召喚するモンスターを決めるシンクロ召喚もまだ驚きはしなかった。
驚きはしたが、まだ理解ができる範疇だった。
しかし、そのモンスターは異様だった。
《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》
ダークシンクロ・効果モンスター
☆-8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
「レベル……マイナス!?」
レベルは、負の整数の-8。最早デュエルモンスターズの常識の範疇すらも逸脱するモンスターである。見た事のない召喚法で出されたドラゴンの次には、理解不能の召喚法で出された理解不能のモンスター。
いよいよもって、この男が何者なのかを測りかねる瑠璃。
「レベルマイナス……こんなモンスター、アカデミアでは愚か、プロフェッサーからすら教えてもらった事ないんだけど……お兄さん、本当に何者? 最初はシンクロ次元の人間かと思ったけれど……」
さすがに少年もこのモンスターの存在が理解不能なのか、目の前にいる鬼柳に問うが、鬼柳は無言のままデュエルを続ける。
無視された事に少し苛つく少年だが、次の鬼柳の宣言でその思いは千里の彼方へ吹っ飛んだ。
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動。このカードが表側表示で存在する時、墓地の闇属性モンスター全ての効果を得る!」
「「…………………ハ?」」
その余りにも、出鱈目な効果に、瑠璃も少年も呆然としてしまう。
――――何だ、その馬鹿げた効果は?
墓地にいるモンスター次第で、このモンスターは下手すればとんでもない化け物になるのではなかろうか。
「……まさか」
そこで、少年はハッと気付く。
目の前の男の墓地にいるモンスター達の事を思い出した少年は、身体を震わせた。
彼の『手札抹殺』、および『バレット&カートリッジ』で送った闇属性モンスター達……手札0という限定的な状況下でとはいえ、どれもが強力な効果を有するモンスター達ばかりだ。
――――まさか、そのモンスター達全ての効果を使ってくるとでもいうのか?
「まずは『インフェルニティ・デーモン』の効果を発動する。特殊召喚時、手札が0枚の場合、デッキからインフェルニティと名のつくカード一枚を手札に加える。俺は永続魔法『インフェルニティガン』を手札に加え、そのまま発動する!」
『インフェルニティガン』……その効果は、実質召喚権を消費しない『インフェルニティ・ミラージュ』と何ら変わらない代物である、強力な永続魔法だった。
「永続魔法『インフェルニティガン』の効果発動。手札が0枚の時、このカードを墓地に送る事で、墓地から『インフェルニティ』モンスター二体を特殊召喚する。出でよ、『インフェルニティ・デーモン』、『インフェルニティ・デストロイヤー』!」
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
☆4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200
《インフェルニティ・デストロイヤー》
効果モンスター
☆6/闇属性/悪魔族/攻2300/守1000
「『インフェルニティ・デーモン』の効果発動。特殊召喚時に手札が0枚の場合、『インフェルニティ』と名のつくカード一枚を手札に加える。オレは『インフェルニティ・ガーディアン』を手札に加える」
次々と色々なカード名が鬼柳の口から宣言される。
手札が0枚であるにも関わらず、この光景はまさしく異様だった。
「そして『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動。墓地の闇属性モンスターの効果を得る。オレは墓地のチューナーモンスター『ユニゾンビ』の効果を得る! 手札を一枚捨てる事で、オレのフィールド上のモンスター一体のレベルを一つ上げる事ができる。オレは『インフェルニティ・ガーディアン』を捨て、『インフェルニティ・デーモン』のレベルを4から5に上げる!」
《インフェルニティ・デーモン》
☆4 → 5
「更に、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果により、墓地の『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果を得る。『インフェルニティ・デス・ドラゴン』は手札が0枚の場合、1ターンに一度、相手モンスター一体を破壊して、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。インフェルニティ・デス・ブレス!」
『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果をコピーした『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の口から、青白いブレスが放たれる。
効果の対象にされているのは……グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン。
「ッ、罠カードオープン! 『フュージョン・ガード』! エクストラデッキから融合モンスター一枚を墓地へ送り、効果ダメージを無効にする!」
『グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』は青白いブレスに飲み込まれ、そのまま爆散するが、少年が発動した罠カードによりダメージは無効となる。
そして、欲深き毒竜はただでは転ばず、フィールドのモンスターを全てを道連れにせんとその効果を発動させる
「この瞬間、グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの効果発動! 破壊された時、フィールドのモンスター全てを破壊し、その攻撃力の元々の攻撃力分のダメージをそれぞれのコントローラーに与える!」
グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの暴発した跡から、毒液が飛び出し、それはフィールド上の全てのモンスターに向かう。
しかし――――
「罠カードオープン『インフェルニティ・バリア』。手札が0枚で、オレのフィールド上に『インフェルニティ』と名の付くモンスターが存在し、相手が魔法、罠、モンスター効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にして破壊する」
鬼柳の場のモンスター達と、少年の場のモンスター達の前にバリアーが現れ、グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの効果破壊は無効にされる。
自分の場のモンスターも一緒に護ってくれた事に感謝……する事は少年にはできない。むしろ、今ので勝負を付ける事ができないのは痛手だった。
「……融合召喚に成功した『グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』が破壊された時、融合素材となった墓地のオフリス・スコーピオを取り除き、墓地からこのカードを特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚された『グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の効果はこのターン無効になる……」
再び場に現れる猛毒竜。
しかし、破壊されても効果が発動しなくなったその竜は、鬼柳にとっては既に的でしかない。
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動、墓地の『インフェルニティ・ネクロマンサー』の効果を得る! 墓地から『インフェルニティ・デス・ドラゴン』を特殊召喚する!」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
シンクロ・効果モンスター
☆8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2400
「そして『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果を再び発動! インフェルニティ・デス・ブレス!」
先ほどと同じブレスが、今度は『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の口から放たれる。既に効果を失っている『グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』はもはや脅威ではなく、効果を発動しないまま発動される。
「グアァッ!」
少年 LP 3000 → 1350
悲鳴を上げる少年。
一気にライフポイントは削られ、既に鬼柳とのライフ差が100ポイントの所まで追い込まれてしまう。
(ふざけないでよ……この僕が、こんな死んだ目をしたような奴に……!)
「罠カード発動! 『エクストラ・シェイブ・リボーン』! エクストラデッキにいたモンスターが破壊された時、そのモンスターよりレベルの低いエクストラモンスターを墓地から特殊召喚する! 再び出でよ、『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!」
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
トークン以外のフィールドの闇属性モンスター×2
自分の進化体のドラゴンの弔い合戦だといわんばかりに、少年の場に再び彼のエースモンスターが姿を現す。
「君の二体のドラゴンは『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の効果を使った事により両方とも攻撃できない! そしてそれ以外の君のモンスターではこの『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の攻撃力を下回っている。よしんば超えてきた所で、そして効果破壊した所で、『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の効果が発動し、君は敗れ去る!
どうだぁ、これじゃあ手も足も出ないだろう!?」
デュエル開始時の余裕は最早何処にいったのか、少年は声は既に震えており、頬には汗が滴っていた。
だが、ハンドレス・コンボの前では、そんなものは無力だった。
「墓地のもう1枚の『馬頭鬼』の効果発動。自身を除外し、墓地からアンデット族モンスター一体を特殊召喚する! オレは墓地から、『ユニゾンビ』を特殊召喚する!」
「……え?」
《ユニゾンビ》
効果モンスター(チューナー)
☆3/闇属性/アンデット族/攻1300/守0
「レベル5となった『インフェルニティ・デーモン』に、レベル3のチューナーモンスター『ユニゾンビ』をチューニング!」
ここで、更なるシンクロ召喚をしてくるのかと、少年は冷や汗を掻きながらその光景を見る。
「地獄と天国の
《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》
☆8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守3000
更に、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』や『インフェルニティ・デス・ドラゴン』と同サイズのドラゴンが現れた。
その巨大な赤みがかった黒い竜体には赤い宝石のようなものが所々に埋め込まれており、その姿は正に煉獄の主そのものであった。
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動、墓地の『インフェルニティ・ドワーフ』の効果を得る。『インフェルニティ・ドワーフ』は、手札が0枚で俺のモンスターが守備モンスターを攻撃する時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値分の戦闘ダメージを相手プレイヤーに与える。『インフェルニティ・デストロイヤー』で、捕食植物ダーリング・コブラに攻撃!」
『インフェルニティ・デストロイヤー』の攻撃力は2300、『捕食植物ダーリング・コブラ』の守備力は1500。これだけならば貫通ダメージを受けても生き残れるように見えるが、『インフェルニティ・デストロイヤー』は手札0で相手モンスターを破壊したとき、相手に1600ポイントの効果ダメージを与える。
その効果を知っていた少年は、最後のリバースカードを発動させた。
「ッ、罠カード発動、『聖なるバリア -ミラーフォース』! 相手モンスターの攻撃宣言時、相手の場のモンスター全てを破壊する!」
「『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』の効果発動。手札が0枚の場合、1ターンに一度、相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」
「ハ――――」
効果を無効化され、フィールドの『ミラーフォース』は無惨にも砕け散っていく。
罠カードを無効化された事で、『インフェルニティ・デストロイヤー』の攻撃もまた続行される。
このままでは貫通ダメージと効果ダメージの両方が少年を襲ってしまうが、それでも負けを認めない少年は足掻く。
「墓地の『タスケルトン』の効果を発動! このカードを除外する事で、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする!」
幸いにも、最初のターンで鬼柳が『手札抹殺』で自分の墓地に落としてくれたカードの効果により、何とか持ちこたえる。
しかし、厄介な攻撃モンスターがまだ残っている。
「『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』で、『捕食植物ダーリング・コブラ』に攻撃。『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』は自身の効果を使用したターン、エンドフェイズ時まで攻撃力が500ポイントアップする!」
《煉獄龍 オーガ・ドラグーン》
攻3000 → 3500
「
オーガ・ドラグーンの口から放たれたブレスが、捕食植物ダーリング・コブラを飲み込む、このままでは2000の貫通ダメージで少年のLPは0になってしまう。
だが、まだ生き残る手段が少年にあった。
「墓地の『捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ』の効果発動! 墓地の『捕食植物』モンスターと除外されてるモンスターを入れ替え、戦闘ダメージを半分にする!」
少年 LP 1350 → 350
「……すごい」
その様子を見ていた瑠璃は、思わずそう呟いた。
男の正体など関係なしに、手札0枚の状態からここまで逆転させたこの男のデュエルの腕に、単純に見惚れてしまった。
「これが、『インフェルニティ』……あの人の使うモンスター達」
まるで、モンスター達が自然とあの人に集まっていくみたいだと、瑠璃は感嘆する。
しかし、瑠璃のそんな思いとは裏腹に、鬼柳は表情を変えず、虚ろな目で自分の場に並んだ三体の龍を見やる。
(やはり、デュエルは、俺を離してはくれないのか……)
「だが、これで君のバトルフェイズは終了する! まだデュエルは終わって――――」
「いや、これで終わりだ」
「……え?」
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果発動。墓地の『インフェルニティ・ミラージュ』の効果を得る。『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』をリリースし、墓地の『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚する!」
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
☆4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1200
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
チューナー(効果モンスター)
☆3/闇属性/悪魔族/攻0/守2000
「『インフェルニティ・デーモン』の効果により、デッキの『インフェルニティ・バースト』を手札に加える」
「……いい加減にしてよ。いつまで君のターンを続けて――――」
延々としたコンボを見せつけられ、苛立つ少年。
最初は自分を適度に楽しませてから、自分から自滅してくれる少年の理想の相手かと思いきや、自分をくだらない博打に巻き込み、あまつさえこんな長々と相手のターンを見せつけられては、さしもの少年の堪忍袋の緒が切れる所だった
「これで最後だ。手札から魔法カード『インフェルニティ・バースト』を発動。俺の場の『インフェルニティ』モンスター一体につき、800ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える」
「なッ……」
一枚の魔法カードから発動される効果ダメージにしてはあまりにも高すぎる数値に、少年は絶句してしまう。
「一体につき……800ポイント?」
「俺の場には『インフェルニティ・デス・ドラゴン』、『インフェルニティ・デストロイヤー』、『インフェルニティ・デーモン』、『インフェルニティ・ネクロマンサー』の計4体の『インフェルニティ』モンスターが存在する。
――――よって、お前に3200ポイントのダメージを与える」
赤いエネルギーの奔流が、少年へと襲いかかる。
もうこれ以上のダメージを防ぐ手段など、少年には持ち合わせていない。
場にも、墓地にも、なに一つとして使えるカードはなかった。
「ハ、ハハ……」
自分が負けるという可能性を万に一つたりとも信じない少年にとっては、逆にそれが新鮮なのか、それともこの男が操るデッキの狂い具合に呆れただけなのか、どちらにせよ笑いがこみ上げてくるしかない事に違いはなかった。
3200ポイントものダメージの詰まったそのエネルギーの奔流が、自身へ迫ってくるのを見て、少年はようやく、己の敗北を認識する。
「僕が、敗ける? ハ、ハハハ、アハハハハハハハハッッッ!!」
少年 LP 350 → 0
狂ったように嗤いながら、少年の身は赤いエネルギーの奔流に飲まれていった。
鬼柳さんが『バレット&カートリッジ』で落としたモンスター
馬頭鬼×2
ユニゾンビ
ダブルコストン
……あれ、いつから満足さんのデッキはアンデットインフェルニティになったのだ?
けどダブルコストンは満足さんが使っていても個人的に違和感なさげでした(ゴースト・トークンとか、ソウル・トークンのイメージとか強いので)
ちなみにこのデュエルでおっさんは二回犠牲になりました(デスドラとアイドラの素材として)