「遅くなってごめんなさいな。」
悪びれた様子も無く飄々としながら漏れ鍋内のバーの椅子に腰かけているハグリッドに話しかける。
「んぁ?あぁ、お帰りさん。如何だった、?初めての魔法界は。ほれ、こっち」
彼はマスターと何かを話していたようだが、すぐにこちらに目を向いて隣に座るように促してくる。
どうやらカクカクと子鹿のように揺れる私の足を気の毒に思ったらしい。正直、体力はある方だと思っていたんだけど…(孤児院では一番年上だったし、シスターはもう老体だったし…)なんだ自分の世界を壊されたみたいで腹が立つ。
大人しく大人用の高い椅子に登り隣にかけては彼の目を窺った。
「あぁ…ありがとう。えっと、確か…ジネブラ・モリー・ウィーズリーとか言う女の子に逢ったわ。…とても、可愛らしい子だった。あとは、杖も。少し特別らしいわ、箱も一緒に貰ったの」
彼の言葉に、絞る様に脳髄の中から記憶を引き摺り出し彼女の印象を伝える。多少の脚色は必要かとも思ったが、素直に美人だと思ったのでその旨を伝える。
あとは、杖のことも。あれから何度か振ったあと急激に疲れて、と思ったらあの杖が手のひら大の元の大きさになって箱に自分で戻った。正直感動した。
「ほぉ、ウィーズリーの子か。ポッター家に縁でもあるのか…はたまた。杖もいいのが見つかったようで何よりだなぁ」
成る程成る程、と言った様に数度頷いて見せれば、満足げにモジャモジャな髭を掻くハグリッド。何がそんなに面白いの?
「ま、兎も角もう夜も耽ってきた。も一回協会に戻るのは時間が掛かるしな、ここの宿を取っておいたから今日はそこに泊まれ」
「…分かったわ、お気遣いありがとう。」
「いいぞいいぞ、ゆっくり休みな。…あぁ、忘れてた忘れてた、ほれ。お前さんのペットだ。俺からの、まぁ、プレゼントっちゅう奴だな。」
渡されたのは銀の鳥籠に入れられた自身と同じ銀に光る梟。目はゴールドに輝き、高飛車な態度で私を睨み付ける。
「…有難く頂戴するわ。」
それを受け取れば、籠の中を覗く様に掲げ、その様子を眺める。梟はくぎゃあ、くぎゃあと鳴き声を漏らして、私に猜疑心や敵意を向けてくる。
孤児院にも、こんな子がいた。プラチナゴールドの瞳を爛々と輝かせて、私と似ている薄い金の残払頭によく葉っぱをつけていた。
彼女は終ぞ私に懐いてはくれなかったが…それでも、愛い妹だった。少し涙腺がズキズキと痛む。
「名前は何にするんだ?」
「…そうね…考えておく」
苦笑してそんな他愛ない会話をしながら、パブを出て上の宿へ向かう。
あぁ、今日は何時に無く刺激的な一日だったわ。
今日は泥の様に眠れそうね。
楽しみだわ。
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「おーーーい!朝だぞー!」
「ん、ぅ……」
「………………すぅ」
「寝ぼけてんのかー?おーーーい!」
五月蝿いわね。
こっちは低血圧なのよ……お医者様にも、運動した次の日の朝は安静にって…もにょ。
でも、そんなことを言っても聞かないような人だとはなんとなくわかったから、むくりと上体を起こしてベッドからのろのろと出る。
「今開けるから、静かにしてちょうだい。」
掠れ声で呟く様に然う言えば、喉を摩りながら扉を開ける。
「おっ、やぁっと出たか!ほら、汽車に遅刻するぞー!」
元気溌剌ね、貴方。
頭痛がする頭を撫でながら、そう言えば、と手を止め、数度焦り瞬いた後、一言。
「…ぅ、んん。直ぐ行くわ、待ってて…お願い、静かに仕度したいの」
とだけ言えば、ばたん、と扉を閉める。
急いで髪を結わないと。いつもは結わないけれど、でも矢っ張り乙女だものね。
少し浮かれているなんて、悟られないようにしなきゃ。
鎖骨まで長く伸びた前髪を左右に分けてくるんと指先で巻き、長ーい髪の毛をくるくると内巻きに巻いて、足元まで伸びた髪を丁寧に、且つ迅速に梳く。これだけでも一苦労。小さい頃シスターに伸ばすように言われたままに伸ばしてきたが…少し切るのも手かもしれない。その長い長い髪をせっせと編んで一つの三つ編みにすれば、するんと離して手をぱっぱと払う。
昨日普段着用に、と仕立ててもらった短めのトレンチコートに紺のフレアスカート、バルーン袖の薄手のブラウスと中々に洒落っ気のある服に袖を通し、ローブは仕舞って息を吐く。ちょっと疲れちゃった。
身の回りのチェックをした後、ガラガラと革製の少し重たいキャリーバックを荒々しく引いて扉前に行く。
「ん、よし。荷物は、えっと、これで良いのよね…じゃあ、準備完了。」
指差し確認の後、扉を開け、新しい一日の第一歩を踏み出した。
2019/4/7
話筋の変更と台詞、描写の追加
タイトル変更