トップ校に入ったけど全裸の同級生が居てとてもつらい 作:なっふば
名だたるトップヒーローを輩出した雄英高校といえど所詮はこの程度か。高校生活が始まり個性把握テストを終え、彼はそう考える。
彼はこのテストを通して判断した結果、自分がクラスの中で1番個性を使いこなし最も才能があると思っていた。
爆破の個性をそれなりに使いこなしていた彼やバイクを作り出した個性を持つ彼女は多少、ほんのちょっと、百歩譲って認めてやってもいいが、他は全て微妙な個性、もしくは強力な個性を持っていても使いこなせない、あるいは使わない半端者、と何様のごとく思っていたほどであった。
彼は入試で主席を取れた訳ではないし個性把握テストで目覚ましい記録を残した訳でもない。が、とにかく自分が心身共に最も優れていると信じて疑わなかった。
実際のところ彼は爆破の個性の持ち主とは違った方向で不遜な性格をしていることを除けばそれなりに優秀である。彼は所謂由緒ある名家の出で、顔に火傷痕のある彼と同じく個性婚をした両親との間に生まれたハイブリッドであり、当然個性もそれなりに強力なものをもっていたからだ。
だが、そのことを知っているものは少なくともこのクラスにはまだいない。
なぜなのかはよくわからない。今の今まで自分から誰かに話しかけるようなこともせず、間が悪かったのか誰からも話しかけられることもなかったからだというのは彼の名誉にかけて誓って違うと言わざるを得ないだろう。
そしてそんな彼は個性把握テストの翌日の今日、この日の午後の授業にて。同級生を見下しにかかるクズでまだ人生で友だちといった友だちができた覚えのない彼に転機が訪れることになる。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
ヒーロー基礎学。ヒーローの卵を育てるため、雄英にて最も重要視され最も必要単位数の多い授業。その授業に筋骨隆々で作画の違う大男がやってきた。
彼の名はオールマイト。全能、あるいは絶大な力といった意味の名前を持つ目下No.1人気ヒーローで、今年度から雄英へと赴任してきた教師である。
そんな絶大な人気を誇るオールマイトの登場に教室が盛り上がる一方で件の彼はそれを冷めた目で見ていた。
どこからその自信が湧いてくるのかは甚だ謎ではあるが彼はオールマイトですらあと数年もすれば自身より劣っていると見なしていた。彼はどこまでも不遜な男なのだ。あるいは愚者と言ってもいいかもしれない。
当然そんな風に一生徒から見られていると知らないオールマイトは『BATTLE』と書かれたプレートを掲げ授業の説明を続ける。
「早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!!そしてそいつに伴って・・・こちら!入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた…戦闘服コスチューム!!」
それを聞いた生徒たちは戦闘服の配布に色めき立つ。被服控除というシステムから各々特別に作られた自分だけの服を受け取れるのだ。色めき立つなと言う方が無理な話だろう。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!!」
オールマイトの言葉にクラスメイトは元気良く返事を返し自分のロッカーへと向かっていく。もちろんこの時、彼も静かに立ち上がり服を受け取るとそれを着替えに向かっていった。
ちなみに彼の服は彼の要望が忠実に再現された結果、彼のセンスが全体的にありありと現れている。それがどう言うことかどうかはご想像にお任せするとしよう。
彼はそのセンスの表れた服に身を包むと、集合場所へと向かう。
ここからが本番だ。彼は一人ごちる。
今の今までは様子見をしていたが、ここらで私の力を見せつけてやろうではないか、と彼は思っていた。
この授業はおそらく対人訓練となる、そして対人ならば誰が相手だろうと私に負けはない、と彼は意気込む。
その時の負けた庶民の顔はきっととびきり笑えることだろう、と彼は妄想し愉悦に浸ってすらいた。
そして彼は今日というこの日の授業を、まさかまるで実力を発揮することなく、無様に保健室につれていかれることでリタイアするとは、ついぞ一片も考えることはなかった。
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グラウンドに全生徒が集まった後にオールマイトから今日の授業の詳しい内容の説明があった。
話をまとめるとヴィラン側とヒーロー側に別れ2対2の対人戦闘訓練をする、とのことだ。
ヴィラン側は核を所有していてそれ故に制限時間があるという設定もあるが、それを彼は特に問題はない、と聞き流していた。誰が相手だろうが時間が余ることは間違いないだろう、という自信からだった。
2対2ということで必然的にコンビ相手を組むということには友だちのいない彼は一抹の不安を覚える——おそらく彼は不安を覚えたことを否定するだろうが——が、コンビ相手はくじ引きで決める、とオールマイトが言うとすぐに持ち直した。
そしてオールマイトから差し出された箱からクジを引く。
この時彼ははい、二人組組んで〜!!とオールマイトに言われたらどうしようと不安に思っていたことなどなかったかのように組む相手が誰だか知らないがせいぜい私の足を引っ張ってくれるなよ、とまで思っていた。
引いたクジにはにはローマ字で大きく『I』と書かれていた。
オールマイトから、君はIだ!と声が上がるとすぐに後方から声がかかる。
「あっ、君が私の相方かぁ!凄い服の人!」
その快活な高い声を聞き、彼は眉を顰める。
女か……。彼の心中はあまり穏やかでなかった。
実のところ彼は女性が苦手である。なぜ苦手なのかは長くなるので省くが、大方は彼の家庭環境に原因があると思っていいだろう。
そしてただでさえ人との交流が少ない彼は、自分の理解が及ばない女性のことをまるで違う生物か何かだと見なしていた。
それが理由であまり女とは組みたくなかったのだが、しかし貴族に苦手だからという理由での逃走の二文字は無い、と自分に発破をかけ、声のした方へと向き直る。
そして凄まじい衝撃を受けることになる。
「私は葉隠透って言うんだ!よろしくね!」
葉隠透という女性は彼に
そんな彼女の
一目惚れだろうか。
「私の個性は見ての通りだけど、わかるかな?」
「見ての……とおり……?」
おどけた
ちなみにこれが彼の雄英での生徒同士での初会話である。
「ま、透明人間ってやつだね。直接戦闘は無理だけど隠密行動は得意だから任せてね!」
人懐こい
彼女の個性は『透明』。文字通り透明で普通には誰の目にも見えない透明人間になれる個性だ。もちろん服までは透明化できないので個性を生かすため彼女のコスチュームは手袋とブーツに収まり、基本は何も着ていない。
何も着ていないのである。
女性倫理的にどうなのかと同級生に思われる彼女は、しかし普通の人間には今まで誰にも見られなかった透明人間であるからこそ問題ない、と服を着ないことを物心ついた時から気にしたことなどなかった。制服を着るのもせいぜいおしゃれ程度に考えていた。
しかし両者にとって不幸だったことに偶然にも彼は、持っていた。
それを可能にする肉体を、個性を、その目を、持ってしまっていた。
今一度改めて状況を説明しよう。
彼の"目"には一人の女性が前に立っているのが見える。
そしてそれは刺激が強いことに一糸まとわぬ姿の、細かくいうと手袋とブーツだけ身につけた全裸の同級生であったのだ。
なぜ?なぜ裸?痴女?個性?透明人間?これは私が悪いのか?
彼の脳内は混乱の極みを見せていた。彼は家が厳しかったのでその手の記憶媒体などを見ることもなく裸の女性など、小さい時分に母親と入った時見た程度であったからだ。当然免疫などできているはずもない。
周りの生徒がクジを引き振り返ってから全く動かなくなった彼を怪訝な目で見始めた頃、彼はようやく混乱した思考を一段落させたのかただ一言、発した。
「破廉恥……である……」
そしてその言葉を最後に彼の目の前は血に染まり、意識を手放すと後方に倒れ臥した。
突然の出来事で目の前でクジ箱を持っていたオールマイトも反応ができなかった。もちろんその他の生徒、当の葉隠本人も状況を理解できてはいなかった。
ただ一人なんとなくではあるが何かしらの電波を受け取ったかのごとく状況を理解できたのは、丸いもぎもぎの小さい男子生徒だけだったという。
かくして彼は顔を鮮血で染めた状態で保健室へと運ばれていき、本来なら訓練後使う予定だった小型搬送用ロボ『ハンソーロボ』を学校創立以来初めて訓練が始まる前に鼻血で倒れ利用したという伝説を打ち立てたのだった。
あの子の姿が見えたらなぁという欲望のもと書いたので主人公の名前も個性も決めていない超絶見切り発車。
名前は陸奥 理助平太郎でいいですかね?