ミーンミーンミーンミーン
あちぃ…。
今日は特に暑い。
外のやつらは風にあたれてマシかもしれんが、高温多湿なナナロクの中にいる俺は、戦闘前からもう死にそうだ。
まったく。
戦争はとっくの昔に終わって実戦なんか無いし、こんな世の中でも食い扶持には困らない。なんて聞いたから国連軍に入ったっていうのに。まさか、配備されて2年で実戦を経験するとは。
「はぁ…」
ため息も出てしまう。
『相模、集中しろ!』
ヘルメット越しに車長の怒号が飛んでくる。
いやいや、集中しろって言ったってこの二時間、ずっと海を見つめど、なにも現れやしない。主砲にもカモメが羽を休めに来るほどだ。
俺らしたっぱには、どんな敵が来るかさえ知らされてない。
知らされたのは、第三戦車大隊のほぼ全軍が投入となった事実だけだが、相手は一体どんな大軍なんだ。
旧根府川に布陣してるから、大陸の大国では無いことは確かだが。
もしや南の大陸が?
そんな邪推は突如海に上がった水の飛沫に吹き飛ばされた。
そこには、なんとも形容しがたい怪物がいたのだから。
その怪物は、人のようで、しかし人ではない。
肩幅の広い陣羽織のような化け物だった。
『ナナロク各車、こちらナナロク。目標、海上出現の巨大生命体、脚部。弾種徹甲、中隊集中正面射、指命』
そんなことを考える暇を与えず、中隊長の射撃号令がくだされた。
砲手の俺が照準を合わせる。いつでも来い。
『ナナロク各車、撃て! 次弾装填、続けて撃て!』
俺は引き金を引いた。
俺の中隊だけじゃない戦車大隊の全車が砲撃している。
音と振動で確信する。これが本当の戦争なのだと。
でも、周りを確認する暇はない。装填手が弾を装填し次第撃つ。俺はそれだけだ。
「!?」
4発ほど撃った頃だろうか。
俺は気付いた。
いや、俺以外の誰もが気付いていただろう。
砲弾は敵には届いていなかったことを。
そして、
奴はもうすぐそこまで来ていた。
『ナナロク各車、全車退避!全車退避!』
もう遅い。
それに、こんな狭い道に整列してちゃぁ、退避しようにも出来るわけがない。
目の前に迫った敵はビームを出して、前のナナロクを蹴散らしていく。
外に出たやつもいるみたいだが、声が聞こえないところをみると、もはや死んだのだろう。
仲間は全員死んでいく。
俺は悔しくて、最後の一発を、と汗にまみれた指で引き金を引く。
だが、それが奴には届かなかった。
あぁ、こっちを向いている。
大きな仮面がこっちを。
そこで俺の意識は途絶えた。
国連軍第三師団第三戦車大隊に所属する、とある76戦車改の砲手 相模正幸一等陸士視点の第壱話「使徒、襲来」でした。
自転車漕いでる内に考え付いた話だったので、設定めちゃくちゃだと思います。ごめんなさい。