正義の味方の異世界生活   作:N瓦

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第三話

 

 

 

「さて───。一つ、卿の価値を問おう」

 

 ヴィルヘルムが『鉄の牙』団長リカードがいるテントへ、先の話を伝えに行ったあとの事。当然だがアーチャーはこの質問をされる運びとなる。

 彼の参加決定がしたものの、運用場所を決めなければならない。各小隊は十五人であり、それは揃えるべきだろう。アーチャーをどこにどう組み込むか───考えものだ。そもそも組み込めない、と表現した方が適切であるが。

 あまり時間はない一方、かと言って参戦を決めた目の前の強者を手放すのも惜しいと、クルシュが感じているのもまた事実。

 

「卿は我々に何を提供できる?」

「確固たる戦力を───と言うのは求めてないのだろう?」

「そうだな。あれほど自分を売り込んだのだ。それに見合う『何か』があるのだろう?」

 

 見返りを求めず、討伐の手助けを力強く申し出たアーチャー。しかし今の彼を見るからに、何の装備もない。

 

「あれ?でもアーさんって弓兵なんじゃねーの?」

「……何?卿は弓兵(ゆみへい)なのか?」

 

 そもそも弓とは重宝されない武器として認識されていた。近距離戦闘ならば剣に劣り、遠距離攻撃においては『魔法』に遅れを取る───それが常識。廃れて行くのも必定だったろう。

 

「アーさんの弓と矢はどこにあるんだ?」

「ふむ……それに答える前に、確認したいことがあるのだがいいだろうか?」

「確認したいこと?」

 

 それは、『魔法』について。

 ここに来てから伝えられた『魔法』の存在。その時は目を剥いたものだが、しかし───彼の言う『魔法』とアーチャーの知る魔法との間に食い違いがあるのだろうか。今ではそう考えている。

 

 そもそも魔法とは、並行世界間の移動や時間旅行と言った世界に干渉できる奇跡そのもの。───そこに魔法と魔術の決定的な違い違いがある。

 魔法により生じた結果は、人間の文明力では再現出来ない。故に魔法は、単純な属性区分を設けることも難しい。

 一方、魔術はそれが可能である。例えば焔を操る火の魔術、他者を治療する治癒魔術、出来損ないのレプリカを作り出す投影魔術。そのどれもが再現可能だ。火の魔術はライターや原始的であっても火打ち石を使えば、治癒魔術は医学を以てすれば、投影魔術は製造技術により。

 

 だからこそ魔獣討伐が始まる前に、一度確認すべきなのだ。スバルは気軽な感じで「この世界には『魔法』がある」と教えてきた。

 つまりスバルも『魔法』を、自分の目で見て、体験した筈である。彼の興奮具合を見ると、スバル自身も扱えるのかもしれない。魔法も魔術も知らなかった元日本人が、それと出会い、使えるとしたら。興奮したところで何らおかしくは、無い。

 さてここでよく考えてみてほしい。文明の力をはるかに超えた時空干渉等の奇跡を、人は簡単に体現できるのだろうか?

 

 

 答えはNoだ。

 

 ここまで考えると、結論は一つしかない。

 彼らが解釈する『魔法』の定義と、アーチャーが知るそれが大きく乖離しているからである。そうとしか考えられなかった。

 

「───では聞くが、『魔法』とは火・地・水・風・空という基本五大元素から成り立つ……これで合っているだろうか?」

「ん〜……?ちょっと違うね。そんにゃ事、どこで教わったの?」

 

 フェリスがアーチャーが言った『魔法』に関する誤った知識を正した。

 話を聞くにこの世界の『魔法』の基本属性とは火・水・風・土、加えて陰陽。この六つなのだという。更に属性ごとに詠唱も決まっており、接頭辞として威力を決定する詠唱もあるらしい。

 

「なるほど……魔術とは違いがあるが……問題は無さそうだ」

 

 先程、『魔法』と魔法は別物であるというアーチャーの推論を述べたが、次に考えたのは『魔法』≒魔術という憶測だった。それをもとに、彼の知る魔術の基本元素の質問を投げたのだが───あながち間違いではなかったらしい。

 ちなみに彼が知る機会は若しかしたら無いのかもしれないが、陰属性の極地には空間転移や時間凍結などの奇跡を齎す『魔法』も存在する。彼の考えは全て当たったという訳ではなく、実際は『魔法』≒魔術(+魔法)なのだろう。

 

 さておき、この世界は元いた世界とは違い、大気中のマナが十分量あり、かつ安定している。幸い、アーチャーの魔術回路も正常に起動しており、恒常的な魔術の行使もそう難しくないだろう。

 だがここは異世界。ここに住む人に限っては、魔術───いや、『魔法』を発動するまでのプロセスもアーチャーとは違うのかもしれない。

 

「───では私の武器がどこにあるか、だったかな」

 

 本題に入る、アーチャーはそう言うと両手を四人に向けて、

 

 

 

 

「さて。私の武器は───ここにある」

「───は?」

 

 

 

 

 アーチャーの言葉にスバル、レムそしてフェリスがぽかんと口を開けた。

 

「貴方…ふざけているのですか?」

 

 最も早く呆然から戻ってきたのはレム。あの樹の下で、アーチャーに警戒心を抱いてから今の今まで気を張っていたのだ。その反動か、呆れを思わず口にしてしまった。

 

「え、えぇと…アーさん。それはなにかの冗談じゃ……」

「無い」

 

 さらにフォローに入ったスバルすら一刀両断。

彼らはアーチャーになんと言うべきか思議していると。

 

「ふっ───」

 

 不意にアーチャーが笑みをこぼした。

 

「───なっ!」

「あぁ、いやすまない。君たちの反応が面白くてな、つい」

「な、なんだよ!やっぱ冗談なんじゃねぇか!」

「徒手空拳の弓兵だなんて面白い冗談だネ?」

 

 アーチャー自身はなんの嘘も吐いていないのだが───彼らとしてはおちょくられたと思っても当然だろう。弓兵を名乗った男が、あろう事か自らの手を武器と言ったのだから。近接戦闘特化、武道派の弓兵───そんなものを弓兵とは呼ばない。(勿論、アーチャーにとっては耳が痛いことでもあるのだが。)

 

「いや……卿が言った先の言葉は嘘や冗談の類では無いのだろう?」

 

 如何にしてこの場を収めるか。そうアーチャーを見ている三人に正しい解釈を示したのはクルシュ。彼女には───『風見の加護』がある。

 

「勿論だとも。私は、このようなくだらない嘘など言わない」

「卿は勿体ぶるのが好きなようだ」

「私としてはそのつもりは全く無いのだがね……」

 

 アーチャーは苦笑いをしながら肩を竦めた。

 

「所で君たちが『その剣と全く或いはほぼ同じ一品を作れ』と言われたらどうする?鍛冶屋にでも頼むか?それとも───『魔法』で作れるのか?」

 

 そう言って、クルシュが腰にある刀剣に指を指した。不意に投げられた質問に、適当な答えを最も早く言ったのはクルシュ本人だ。

 

「全く同等の剣の作成はほぼ不可能……だが殆ど同じという条件ならば、新たに鋼を鍛えてもらうだろうな」

「『魔法』じゃ作れないってことか」

「いやそれは違うぞ。一つ考えを正そう、ナツキスバル。聞く話では土属性には『複製魔法』がある。故に『魔法』での製造ができない訳では無いのだ」

 

 『複製魔法』───。エミヤが得意とする魔術に近いニュアンスのものだが。それが存在するこの世界で、なぜクルシュは真っ先に答えたのが、一からの作ることだったのか。

 

「ならば『魔法』で作れば良いのではないかね?」

「いや…残念ながら『複製魔法』は使い手が少ない。さらには複製と言うからにはあくまで二次的に作り上げるだけ。性能的にも多少なりとも劣る上、一度それを使えば()()()()()()()()ので武器を作る上であまり重宝されないのだ」

「なるほど。つまり、()()()()()複製魔法はないということか」

「その通りだが……」

 

 ───それが一体どうしたというのだ。

 

 誰もが疑問を抱いてアーチャーを見ると、この問答の末に彼が言いたかったことを口に出す。

 

「私は、それを可能にする魔術が扱える」

「───?」

 

 『魔法』では無く、()()。普通なら使わない言い回しに首を傾げる四名。

 彼らの注目を浴びる中。元いた世界でも異世界でもエミヤのみが唯一人使える魔術を唱える。

 

 

「───投影(トレース)開始(オン)

 

 

 それは自身の心象風景に貯蔵されている無限の剣を取り出す、衛宮士郎(エミヤ)にのみ許された魔術の発動。

 「トレース・オン」───スバル以外には、意味の理解もできない言葉をアーチャーが口にした直後、

 

 

「すっっげぇえええ!かっけぇえ!!」

「───嘘っ」

「そんなありえにゃい……」

 

 

 ───彼の空いていたはずの両の手には剣と弓が。加えて、彼の周りに四本の剣が浮いていた。

 

「それは私の剣……?」

 

 見るにアーチャーの手に握られているそれは、間違い無くクルシュの愛剣であるのだが……腰にはしっかりと剣がささっていた。

 

「まさか複製した、のか?」

 

 スバルは同郷のアーチャーが『魔法』を使ったことに仰天し、三人は『魔法』により実現しえないことを容易く行ったアーチャーに息を呑む。……いや。スバルに限っては、それ以上に剣を扱う『魔法』に男のロマンを感じ、興奮したと言う方が正しかろう。

 ここの世界の住人が扱う『魔法』の属性は火水土風陰陽の六つ。目の前で起きた事は、それらの属性では行えない。複製するには、元となる何らかの動作───今で言うならクルシュの剣を手に取るなどの準備段階が必要であり───が無ければ行使できない。

 しかし、アーチャーは抜き身ですらないクルシュの剣と同じ剣を複製して見せた。さらに彼を護るように浮く剣すら創り出した。

ならば、と。その剣は陰属性『魔法』により作られた幻影なのではないか───クルシュはそう考えたが、

 

「さて君のそれは真作、私のこれは贋作。違いが分かるかね?」

「───っ」

「凄い……本当に見分けがつかにゃい…」

 

 刀身を掴んで手渡された剣は確かに実体としてあり。さらにはクルシュは連れ添っている剣と、その贋作(コピー)を見極めることすら困難であり───。

 クルシュの驚きも当然だろう。仮に『複製魔法』で作られたものだとしたら、劣った剣などと見誤る筈もあるまい。

 

「これが私だけが使える投影魔術だ」

()()……か」

 

 クルシュは剣から一度目を離し、アーチャーに向き直ると、

 

「一つ、問を発したい」

「構わないとも」

「卿が、この魔術とやらを使える条件はなんだ」

「ふむ……。私が剣を知っているか否か、だな」

 

 アーチャーが自身の目で()()()()剣を一度固有結界に貯蔵し、そこから取り出している。

 例えば神造兵器はアーチャーであっても解析すら叶わないだろう。故に天地創造の乖離剣や、世界最強の守りたる全て遠き理想郷(アヴァロン)は投影できない。

 

 だが。クルシュが使ってる程度の剣ならば、なんの問題もなく、見分けがつかないくらい同等の贋作は創り出せる。

 さらに人生の中で数え切れないほどの剣を投影してきたアーチャー。最上の大業物でもない限り、鞘から抜かれていなくても彼は投影できる。

 

「───」

 

 渡された剣をマジマジと見ながら、クルシュは目を見開いた。

 彼の知る全ての剣が複製として実態化する───言い換えれば今まで見てきた全ての剣を創り出せる。或いは知識として蓄えた剣すらも。一体、幾つの(つるぎ)を顕現できるのだろうか───。

 

「このように私は魔術で矢……まぁ剣ではあるが、それと弓を創ることが出来る。浮いている(これ)は射出することも可能だ」

 

 そう言って、空中にピタリと静止していた剣は光の粒子となった。

 

「───因みに……魔術全般の才能があるという訳では無いので、そちらには期待しないで頂きたい」

「……こんな現実離れしたことやってのけて『才能がない』だなんて……とんだ皮肉ですね」

 

 為し得ないことが出来るアーチャーの謙遜は、レムや彼らにとっては皮肉に聞こえてしまうのもやむを得ない。しかしアーチャーが行使できる魔術は投影と強化のみ。紛れもなく彼には魔術の才覚は無かった。

 

「クルシュ、私は弓兵だ。討伐の際は外から引っ掻きまわそう」

 

 テントの前には小さいトカゲのような生き物がいた。見るに彼らはあれに乗るのだろう。

 第一、小隊にアーチャーを入れたところで統制は取れないだろうし、トカゲの乗り方も知らない。彼とて、そういう"タチ"でもあるまい。

 ならば、弓兵として遠距離から撃ち続ければそれでいいではないか。それが最も合理的なのだろうから。

 

「それに───弓に関しては、一定の自負を持ち合わせているのだよ」

 

 

 

 

「あ、でもアーさん」

 

 ふと。アーチャーが魔術を使ったという事実に対してスバルが疑問をぶつけた。

 

「『魔法』をなんで使えるんだよ。……まさか日本にも『魔法』があったのか!!?」

「厳密には魔術だが……些細なことは置いておこう。スバルの質問に答えるなら───『ある』、だな」

「うわぁ………まじか…」

 

 全てはファンタジーの出来事だと思っていた魔術が、実は元いた世界に存在していた。その事実はスバルを落胆させる。

 若しかすると、生きていく中でそれと出会えたかも知れ───

 

「───ないかなぁと思ったけど、俺引きこもりだったわ…」

 

 そこまで考え自分のかつてを振り返り、閉ざされた可能性に再度肩を落とした。

 

「なに、スバルが特別気を落とすことは無い。そもそも魔術とは秘匿された存在だ。普通に生きていれば出会うことはまず無いだろう。

……それに魔術が、君が思うようなものかと言われれば……全面肯定は厳しい」

「いや……それでも『魔法』には夢があってだな…」

 

 スバルの『魔法』に対する理想は、魔術を知らない者は一様に持っているだろう。

 

 しかしそれは、理想であって現実ではない。

 

 

「───君は、冬木市の大火災を知っているかね」

 

 

 魔術とは決して万能でも無いし、その全てが人々の救いになる訳でも無い。

 

 

 

 

「…なんだ、アーさん。藪から棒に。まぁ常識として知ってるぜ」

「フユキシ?」

 

 「冬木市」という聞きなれない単語に首を傾げるレムの頭に手をポンと置き、スバルはその火災を思い出す。

 あれは日本に名を残す大災害だったと記憶している。九州に位置する某県冬木市で起きた大火事。数百もの人が亡くなり、生き残りは数える程しかいなかったはずだ。

 これほどまでに凄惨な「人災」───基本的に火事とは地震落雷等と違い、人間が原因である───は僅かのみ。あくまで知識としてそれを持っているのみなのでその程度しか知らないが。

 そのスバルの知識に新たな、そして驚くべき情報が追加される。人災は人災でも、火の消し忘れなどという可愛らしい原因ではなかった。

 

「あれは、魔術師の争いが起因した災害だ」

「なっ───!」

「魔術師達が己の欲望を叶えようとした結果が、あれだ」

 

 厳密に言えば違うが、スバルに説明する分にはなんの間違いもないだろう。

 冬木の大火災は魔術師達による戦いが───正確に言えば、あの破綻者が望んだ厄災なのだ。一歩間違えたら、被害は冬木に留まらなかったやもしれない。

 

「今のは一例であるのだが……故に魔術が、そして魔術師の全てが良いと言えば答えは否だ。勿論、何事も使い手によるがな」

 

 守護者として何人もの悪を企んだ魔術師を殺してきた経験もある。一方───善なる魔術師と言えば真っ先に思い浮かぶのは、衛宮士郎(自分)を託した彼女の姿だ。世界中の誰もが彼女のように優しければ争いなど生まれないものを───そんな幻想を夢見たことも少なくない。

 

「魔術も異世界生活も、夢と希望だけじゃないって訳か…」

 

 

「───失礼します」

「あ、ヴィルヘルムさん」

 

 と。そこへ、リカードのもとに行っていたヴィルヘルムがちょうど戻ってきた。

 

「…戻ったか。さて、返答は予想できるが一応聞こうか、ヴィルヘルム」

「はい。リカード様も快く御承諾なさいました」

「それは良かった。彼」───アーチャーの方を一度見て───「が参加してくれたのは嬉しい誤算のようだ」

「それは。私としても嬉しい限りでございます。リカード様はミミ様とへータロー様をお連れして、数分したらいらっしゃるとのことです」

「そうか」

 

 クルシュはもう一度、先程の光景を思い出し───

 

「っと。これは卿に返そう」

「む」

 

 手に持っていた複製体をアーチャーに返した。

 

「本当にこれで合っているかね?」

「無論だ。自分の愛剣を見間違えては武人の名折れだ」

 

 笑いながら言うクルシュを見て、アーチャーとしても簡単に見分けられないと自信をもっていたのだが───そこでふと、彼女が宿す『風見の加護』を思い出した。恐らく彼女に言わせれば、真作と贋作では纏う『風』が決定的に違うのだろう。

 それに、渡した時どちらの手で持っていたか覚えていればただ見比べただけで終わる。

 

「なるほど。───確かに正解だ」

「これ程までに精巧な複製は見たことが無かった。卿がどこから流れてきたのか、本当に気になるものだ」

「そうかね?」

 

 光の粒に変わる剣を見てクルシュは、想定外の戦力に心から感謝する。彼が創り出す無限の剣は彼らにとって、最高の攻撃の一つになるだろうから───。

 

 

 

 

 それから数分。クルシュ達が控えるテントに男───正確には「獣男」と二人の子供が入ってきた。

 

「失礼するで。───おぉ、アンタが樹にいたっちゅう兄ちゃんか」

「おおー、あかーい!くろーい!しろーい!」

「お、お姉ちゃん…初めにそれは失礼だよ」

 

 アーチャーが見上げるほどの大柄な男と、恐らく姉弟だろう二人。一人は無邪気にはしゃぎ、一人は姉を宥め。

 

「ワイは『鉄の牙』団長のリカードで、こっちのちっこい二人が副団長のミミとへータローや」

「ミミなのだー!」

「へータローです、お願いします」

「こちらこそよろしく頼む」

「よろしゅう頼むわ」

 

 アーチャーはリカードと握手すると、次にミミとへータローを見た。

 彼らのような小さな子供が、世界から恐れられる魔獣と戦うという事実にアーチャーは感嘆している。さらに、二人は魔獣討伐に関わる傭兵団の副団長ときた。

 

「よろしく頼むよ、副団長殿」

 

 アーチャーはそんな二人と目線を合わせるため、しゃがんでそう言った。

 

「ミミとへータローは二人そろえばチョーツヨイ!オニーさんもやっぱりツヨイ?」

「ああ私は強いよ……それなりにね」

「うーん……?それなり?それなりー?」

 

 ミミは杖を抱き抱え、少し考え込むように顔を傾け、

 

「嘘はいくないってお嬢が言ってた!おにーさん、だんちょーよりぜったいつよい!」

 

 ぴょんぴょん飛びながらアーチャーに、嘘は良くないと。そして彼の強さを見抜いた根拠は理論的なものではなく、彼女の直感。

 また見ず知らずの男より弱いと言われたリカードは、あくまで陽気だった。

 

「───ハッハッハ!兄ちゃんを見た時にそうも思ったんやけど、実際言われると傷つくわ!」

「ま、この中だとスバルきゅんがダントツで一番弱いけどネ」

「…え?ここで俺に話振る!?おかしくね!?」

「でも私はスバルくんを頼りにしてますよ。だからレムにスバルくんのことを白鯨と戦う時は守らせてくださいね?」

「レムぅぅこんな俺を頼りに……って、待て。なんか矛盾してない?」

 

 ───場が笑いに包まれる。

 今の彼らは、とても四百年間討伐がされずにいる怪物を相手取る一団には見えない。リラックスしていて───とても良い精神状態とも言えるだろう。

 

「───フッ」

 

 祭りの前、人は高ぶる。

 今の彼らくらいの緊張が、魔物を狩るには丁度いい。

 

「さてナツキスバル。時間も差し迫っているのだろう?」

「そうだな───じゃあみんな」

 

 スバルが仕切り、

 

「とりあえず白鯨討伐に向けて最後の詰めをしますか!」

 

 討伐に向けた最終確認。各隊の立ち回りや、白鯨に関する情報のすり合わせを今から行うのだ。

 それぞれの陣営の代表である彼らの間でそれを行い───そしてフリューゲルの大樹が見守る野で魔獣の出現を待つ。

 

「私はここに居てもいいのかね?」

 

 そんな場に居ていいのか。アーチャーはそう聞くも、

 

「卿は是非いてくれないだろうか?」

「───」

「それに、卿は白鯨についてそこまで詳しい訳では無いのだろう?」

 

 あまりに愚問であり。クルシュはそんな彼に即答した。是非とも力を貸してくれと。白鯨に勝つために。

 

「───承知した。私で良いならば、幾らでも力を貸そう」

「感謝する」

 

 ───『正史』とは異なるこの世界。果たしてどのような道を辿るのか。

「さあ白鯨の野郎にぶちかましてやろうぜ!」

 

 

▷▷To be continued

 

 

 

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