インフィニット・ストラトスに対するアメリカ合衆国の対応 作:Inbound
2026年 アメリカ合衆国 ニューメキシコ州
地下へと続く隠蔽された門、それは、最先端の科学を研究するBlackMesa研究所への入り口だ。
2016年、何者かによって日本を目標とする2000発以上の弾道ミサイルが発射され、インフィニットストラトスと呼ばれる人型ロボットがそれらの約半数を撃墜。
自衛隊を含む周辺各国の軍部隊がそのISを捕獲もしくは破壊するため攻撃を仕掛けたものの、ISはそれらを一切の死傷者を出さず無力化した。この、世界中がISに注目しISの導入を決定する切っ掛けとなった事件、それが白騎士事件だ。
米本土、さらに作戦行動中だった数隻の原子力潜水艦からミサイルを発射され、在日、在韓米軍によってISへの攻撃も行ったアメリカ合衆国もISの導入を決定したが、ここである問題が生じる。ISの製造に必須であるコアが、僅か467個しか世界に供給されなかったのだ。世界中に軍事力を展開させている米軍にとってそれはあまりに少なく、しかもその僅かなコアをさらに世界中で分割すれば、米国が使用できるコアはそれこそ100個にも満たない。であるならば、替えが効かないISを軍事力の中心には置かず、従来の通常兵器をより進化させればいい。幸いにも、ISという驚異的な兵器の登場で国防予算は大幅に増額されている。さらに、フランスやイギリス、そしてロシアや中国までもがISの熱に浮かされ、通常兵器ーー戦車、戦闘機、駆逐艦などーーを急速に退役させている。世界各国がISの研究に注力し、通常兵器の進化を止めてしまうのならば、アメリカは両方を研究すればいいのだ。ISは主に象徴として、また弾道ミサイルへの対処に使用し、他国のISに対する戦闘は次々と設計される新兵器が行う。合衆国の力を用いれば不可能ではないはずだ。激動の時代において生き残るには、他国よりも一歩先に進まねばならないのである。
...そういった思いを抱き、合衆国は行動を開始した。ISが世界に広まる中、退役し廃棄された各国の兵器を買いあさり、ロボット、エネルギー、宇宙開発などにも莫大な量の資金を費やしながら。
ISが広まってから僅か10年で世界には女尊男卑が蔓延し、先進各国の軍はますますISに対する依存度を高めている。
そのような状況だからこそ、アメリカは世界の灯台とならなければならない。仕事を失った軍人、科学者達を受け入れ、タダ同然で売り払われた兵器を購入し、力を蓄える。その日がくるまでに。
...そして、その様な状況下。アメリカ政府によって創設された最先端技術を研究する施設の一つであるBlackMesa研究所に、ある一人の研究者が着任した。
彼の名はゴードン・フリーマン、後の世にその名を轟かせる、物理学者である。
「カードの提示をお願いします」
拳銃を持った警備員が言う、私はそれに従い、ポケットからセキュリティカードを出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
今日から私はこのBlackMesa研究所に所属する事になる、以前噂で、アメリカのどこかに巨大な秘密研究所があると聞いたことがあったが、どうやらそれは真実だったようだ。
この受付に来るまでにいくつかの検問を通ったが、それら全てに戦車が配備されていた。
アメリカ政府は本気でISに対抗する科学技術を研究しているらしい。私がその国家的プロジェクトに関われるのは光栄なことだ。
「ありがとうございました、ゴードン・フリーマン博士。奥に進みモノレールにお乗りください」
「分かりました」
そう言ってカードを受け取り、施設の奥へ進んでいく。
しばらく歩くと、そこには一両のモノレールが待機していた。
誰も乗っていないそれに、私は乗り込んだ。
1分ほど待つと、モノレールは自動で動き出す。外の様子を眺めながら、私は研究所での仕事に胸を膨らませた。