いつかどこかの鎮守府で・2   作:華留奈羽流

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第1話

マルナナマルマル 鎮守府 提督執務室

 

「おはようございます、司令官!」

 

執務室の朝。元気な駆逐艦・吹雪の声が響き

まだ眠たげな提督の声がそれに答える。

 

「ああ……おはよう、再生吹雪」

 

吹雪が盛大にずっこけ、提督に食って掛かる。

 

「その再生ってのやめてくださいよ!」

 

「だって実際に再生されて出てきたんじゃん」

 

いわゆる「最終決戦」で、他の多くの艦娘とともに

一度は轟沈した吹雪だったが

なんだかんだあって、それまでの記憶などを引き継いだまま

自分で勝手に建造ドックから出てきたのである。

 

「それはそうですけど!なんか悪の組織の再生怪人みたいじゃないですか!

 たいてい再生怪人って最初の登場時より弱くなっててカマセなんですよ!?」

 

「でも再生されても、どこか強化されたわけじゃないんだろ?そんな様子はないよな」

 

そう言って提督が吹雪を見つめる。主に胸部装甲のあたりを。

 

「ちょ、どこ見てるんですか!?……少しは強化されたもん(ボソッ)」

 

「えー?全然変わってないような……」

 

吹雪はバンバンと執務机を叩きながら叫ぶ。

 

「元のサイズも今のサイズも知らないのにわかったようなこと言わないでください!」

 

興奮する吹雪の後ろから、目頭を押さえ戦艦・長門が執務室に入ってくる。

 

「朝から騒がしいなお前ら……」

 

「あ、おはようごさいます長門さん」「おはよう、長門」

 

「おはよう、提督。おはよう、吹雪。

 人が減って、寂しくなるな、とか思ったが……かえって騒がしくなった気がするぞ」

 

「えー?昔からこうでしたよ?」

 

轟沈した艦娘たちが、慰霊碑の建立をきっかけに再び建造が可能になったため

宇佐美の鎮守府に集まっていた艦娘たちのうち

元々は別の鎮守府の所属だった者たちは

本来の所属鎮守府に帰っていったのだ。

 

現在、宇佐美の元にいる艦娘は、元から配下だった

戦艦・長門。軽空母・鳳翔、隼鷹。重巡・高雄。駆逐艦・潮。

そして再生吹雪の6名……

 

「だから再生言うなー!」

 

「……誰に言ってるんだお前」

 

「まあ騒がしいのは吹雪だけのせいではないのだろうが……」

 

と、長門が口にしたとたん

 

バアン!と勢いよく執務室のドアが開かれる。

 

「おはよー、提督ー!」「おはよう」「おはようパパー!」

 

入ってきたのは港湾棲姫、戦艦棲姫、軽巡棲鬼の3人だった。

 

「……騒がしい原因の二つ目が来たか」

 

戦いが終わってから、彼女たち深海棲艦は

鎮守府のある島から少し離れた別の小島に居留地を設けられ、そこで暮らしていた。

だが、艦娘たちが各鎮守府に散り散りになり

ここに残った艦娘だけでは、保護という名目での監視もままならなくなった。

そこで、所属する鎮守府に戻っていく艦娘たちに同行するかたちで

深海棲艦もバラバラに連れて行かれることになり

残ったのはこの3人だけとなった。

 

3人だけで離れた島にいるよりは

部屋の空きも増えたこともあり

鎮守府の一棟をあてがわれ一緒に暮らすことになったのである。

 

「ああ、おはよう、姫、ケイ……えーと、戦艦」

 

「待て、私の呼び名だけなんかおかしくないか!?」

 

港湾棲姫。通称「姫」。軽巡棲鬼。通称「ケイ」。

 

戦艦棲姫は最終決戦で撃沈されていたが

姫が強く希望して建造ドックを操作し、再生されたばかりだった。

提督の中では彼女を何と呼ぶか決めかねていたのだが

だからといって「戦艦」という呼び方は

さすがに引っかかるものがあったらしい。

 

「いやだって、名前とか知らないしさぁ……姫は普段、なんて呼んでるんだ?」

 

「ま、待て、言わなくて……」

 

「呼び方?『センちゃん』だけど?」

 

戦艦棲姫が止めようとするが間に合わなかった。

 

「そうか。おはよう、センちゃん」

 

「お……おはよう」

 

ニッコリ笑いかけて挨拶する提督に

顔を赤くしてうつむくセンちゃん。

 

(可愛いな)(……可愛いぞ)(なんか可愛いです!)

 

挨拶が済んだところで長門が姫たちに問いかける。

 

「ところで……お前たち、もうちょっとこう……喋り方がぎごちなくなかったか?」

 

姫がニッコリ笑って答えるには

 

「上達したの」

 

「いや、なんかこう……文字にするとカタカナになるような喋り方だった……」

 

「上達したの」

 

「……そうか」

 

そう、上達したのである。決して書き手が面倒になったとかではない。

 

そうこうするうちに、他の艦娘たちも執務室にやってくる。

 

「おはようございます、提督」「おはようございます、鳳翔さん」

 

「おはようございます提督!」「おはよう、高雄」

 

「おはようございます、提督……少し、遅れちゃいました……?」「大丈夫、おはよう潮」

 

「あー……おはよー提督ー……」「また二日酔いか……おはよう隼鷹」

 

最後の隼鷹が入室したところで、長門が提督に声をかける。

 

「皆揃ったぞ、提督」

 

「あいよー。じゃまあ、今日も一日、無事故でよろしくー!」

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