いつかどこかの鎮守府で・2   作:華留奈羽流

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今さらのお正月ネタです。


第2話

ヒトサンマルマル 鎮守府 食堂

 

「ごちそうさまでしたー」

 

鎮守府の昼食は、朝食とは違い、シフトの都合などもあって

なかなか皆が揃ってとるわけにいかないのだが

流石に正月ともなると、そうそう業務も入れていないため

今日は提督以下顔を揃えての昼食となった。

 

「あ、吹雪、潮、ケイ……ちょっとおいで」

 

食べ終わったころ、提督がテーブル越しに3人を手招きする。

 

「はい?なんですか司令官?」「何か潮に御用でしょうか?」「何々~」

 

「去年までは年末年始もバタバタしてたけど

 今年はのんびりできたから……はい、お年玉」

 

そう言って3人にお年玉袋を手渡していく。

 

「わ、ありがとうございます!」「嬉しいです!」「え、何コレ?何が入ってるの?」

 

軽巡棲鬼―ケイはお年玉の記憶はなかったらしい。

 

「年の初めに、子供たちに配るお小遣いみたいなもんだ。

 この鎮守府にいると、あまり金の使い道はないかもしんないけど

 誰かに頼んで通販で買い物するときにでも使うといいよ」

 

「なるほど……ありがと、パパ!」

 

3人ははしゃぎながら食堂を出て行った。

買い物の相談でもするのだろう。微笑ましい光景なのだが

他の艦娘たちの見る目はちょっと違う。

緊張していたり、異常に高揚していたり、悩んでいたり。

 

「ねー提督ー、アタシの分はいくら入ってるのー?」

 

目をキラキラさせながら、すでに貰えることを前提で隼鷹が尋ねる。

 

「いやお前もう貰う側じゃないだろ」

 

「えっ」

 

「えっ、じゃないよ。毎晩酔っ払ってるようなヤツが、お年玉貰えるわけないだろ」

 

「ヒドーイ!お酒は飲んでるけどアタシまだ子供だよぅ!」

 

「子供はお酒飲んじゃいけません。そうだな……

 もし今後酒を飲まないっていうんならお年玉やってもいいぞ?」

 

「はい!もう飲みません!だからお年玉ちょーだい!」

 

周りが冷ややかな視線で隼鷹を見る。

 

(嘘だな)(嘘ね)(嘘でしょうね)

 

だが、周囲の予想を裏切って、提督はお年玉袋を差し出す。

 

「わかったわかった……ほら、お年玉」

 

「んもー、用意してあるじゃん。サンキュー提督!」

 

喜色満面で隼鷹も食堂を出て行く。

このやり取りで、さらに緊張が高まったのが二人。

 

(あれっ?隼鷹さんが貰えるなら……わ、私も貰っちゃってもいいのかしら……?)

 

隼鷹と年齢的がそう違わないように見える高雄が、そう思うのも無理はない。

チラッ、チラッと提督を見る。が、特に声をかけてくるようなこともない。

 

(ど、どうしよう……隼鷹さんみたいに自分からねだるのは……

 別にお金が欲しいわけじゃなくて、提督から何かを貰うのが嬉しいかな、と……

 あれ?でもアレよね、お年玉貰うってことは提督から子ども扱いされてるってこと?

 じゃあ貰わないほうがいいの?でも提督から貰うのは嬉しいし……

 ああああああどうすればいいのー!?)

 

頭を抱える高雄。

 

(高雄はどこか具合悪いのか)

 

提督がちょっと心配そうに見ているのだが、それにも気づかない。

 

(どうなんだ私は。あげる立場なのか貰う立場なのか、ますますわからなくなってきたぞ……)

 

長門は自分の立ち位置を決めかねて冷や汗を流していた。

 

(あれかな、駆逐艦たちにはあげて、提督からはもらう、とかはアリなのか……

 いやあげるとしたら隼鷹にもやらないとならんのか?

 それは……なんか違う気がするぞ……どうするべきなんだ……)

 

頭を抱える長門。

 

(……長門もか)

 

そして鳳翔は

 

(提督がお年玉を渡すだろうと予想して、提督の後から渡そうと準備はしていたのですが……

 吹雪ちゃんと潮ちゃんのお年玉は準備していましたが、ケイちゃんを忘れていましたね)

 

懐に忍ばせた2つのお年玉袋をそっと奥にしまう。

 

(確かに、あの子もお年玉を貰ってもよさそうですよね。

 提督があげたのに、私はあげないというわけにはいきません。

 ケイちゃんの分を用意して、改めて夕食の後にでも……

 でもいかにも提督が渡したのを見て思い出したみたいで体裁が悪いです。

 何かいい渡し方はないものでしょうか……?)

 

頭を抱える鳳翔。

 

(鳳翔さんまで!?)

 

頭を抱える3人を見て、自分も正月早々頭を抱えたくなる提督に

港湾棲姫―姫が声をかける。

 

「提督ー、私たちにお年玉はー?」

 

言われて我に返った提督が苦笑いを浮かべる。

 

「……あるぞ。正直、姫やセンちゃんには渡すとかえって失礼かなと思ったんだが

 まあ、よかったら受け取ってくれ。ほんの気持ちだがね」

 

「ありがとー!」「あ……ありが、とう……」

 

姫とセンちゃんが受け取ったお年玉を手に

何事か相談しながら食堂を後にする。

 

残ったのは提督と

頭を抱えていたものの、今のやり取りを見て呆気にとられた3人。

 

「あー……まあこの際だからぶっちゃけるけど

 皆の分もあるから……はい、取りに来て」

 

そう言って、提督がポケットから3つお年玉袋を取り出す。

 

「高雄はもうお年玉って感じじゃないけど、正月ぐらいはいいんじゃないか?」

 

「そうですね、ありがとうございます!」

 

「長門も、変に気を回さなくていいからな。部下を労うのは俺の役目だからさ。

 たまには俺に皆を労わせてくれよ?」

 

「そうだな……ありがたく頂戴しよう」

 

「鳳翔さんは、お年玉というよりはご祝儀かな?

 あ、鳳翔さんも、年少の子たちにお年玉とかあげなくていいですからね?

 普段、十分にあの子達によくしてあげてるんだし

 あまり子供に大金を持たせるのもアレなんで」

 

「ありがとうございます……ホント、お見通しですね」

 

こうして皆にお年玉が行き渡り、提督が1人食堂に残された。

 

(正直、この出費は痛い……が、悪い気分じゃないな)

 

冷めかけたお茶を飲み干すと、上機嫌で執務室に戻っていった。

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