いつかどこかの鎮守府で・2   作:華留奈羽流

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今回は前編・後編に分かれます。
まずは前編から~。


第3話

ヒトマルマルマル 鎮守府 提督執務室

 

「いや、環境の変化に慣れるまでは、だな……」

 

「だから、それはもう慣れましたって!」

 

珍しく言い争う長門と吹雪。

提督はオロオロしているだけで口を挟めない状態。

無線機の前の隼鷹と、ソファで読書中の高雄は困り顔。

 

事の発端は、朝礼の後のことだった。

 

吹雪は鎮守府設立のときから、ほとんどの期間を秘書艦として過ごした。

彼女が轟沈してからは、秘書艦は長門が勤めていたのだが

再生されて、大戦後の状況も把握できたから、と

吹雪が秘書艦に戻ると言い出したのだ。

 

長門としては、戦時中とはまた違った苦労のある

戦後の秘書艦をずっとやってきた自負もあり

そう簡単に秘書艦の座を明けわたす気になれなかった。

 

(ケッコンカッコカリもまだなんだし、せめて秘書艦でいないと

 司令官と一緒にいられる時間がなくなっちゃうよ!)

 

(指輪を貰っているのは私だけではないのだ。

 そう簡単に秘書艦というアドバンテージは譲れん!)

 

まあ本音はこんなところである。

 

「提督!」「司令官!」

 

二人が、最終的に決定権のある提督のほうに目を向ける。

そこには空っぽの椅子が残されていた。

 

「ん?」「あれ?」

 

キョロキョロする二人に隼鷹が呆れながら

 

「提督なら、さっきコソコソ出てったけどー?」

 

「なんですって!?」「何故それを早く言わん!」

 

「……なんで怒られなきゃなんないのよ。いいけどさー。

 あと、提督に決めてもらおうってのは無理だと思うよ?」

 

「何故だ?」「どうしてですか?」

 

パタン、と読んでいた本を閉じて、隼鷹に代わって高雄が答える。

 

「そういう、『どれかを選んで残りを切り捨てる』という決断は

 あの人苦手なんじゃないですか?

 だから4人もケッコンカッコカリしておきながら

 まだ誰にも……その、手を出されないのかな、と」

 

「そーゆーこと……なーんで4人まとめて面倒見るって発想にならないんかねー」

 

「ケ、ケッコンカッコカリは今はいいんです!

 今は秘書艦をどうするか、ということで!」

 

1人だけケッコンカッコカリをしていない吹雪が声を荒げたとき

執務室に鳳翔が入ってくる。

 

「あらあら、どうしたの吹雪ちゃん?そんな大声出して」

 

「あっ……あの、司令官と会いませんでしたか?」

 

「提督?……さあ、見かけてないけど……何かあったの?」

 

「実は……」

 

(事情説明中)

 

「そう、そんなことに……」

 

事情を聞いた鳳翔が、困ったわね、と首を傾けたあと

 

「それじゃ、何かゲームでもして決めましょうか?」

 

「は?」「はい?」「えー?」「ゲーム、ですかぁ!?」

 

「だって、決定権のある提督は雲隠れ。話し合いでは解決しない。

 となれば、何らかの勝負で決めるしかないでしょう?」

 

「……確かに、そうかもしれんが……どのような勝負で決めるのだ?」

 

「そうねえ……隼鷹さん、高雄さん、あなた達も秘書艦、やってみたい?」

 

「ほえ?」「わ、私ですか?」

 

急に話を振られた二人は、しばらく考えてから

 

「まあ……できれば、やってみたいかな」「私も……」

 

「これ以上競争相手増やさないでくださいよ……」

 

ぼやく吹雪をスルーして鳳翔が

 

「それでは!今から『提督探し』をしましょう!

 ルールは簡単、提督を最初に見つけた人が勝者です!」

 

「そんな子供の遊びで決めてしまってよいのだろうか……」

 

「確かに遊びですけれど、どれだけ提督のことを理解しているか、という

 秘書艦としての資質を確かめることにもなりますからね」

 

「なるほど……そういうもの、か……?」

 

上手く言いくるめられる長門。

 

「それじゃ、ちょっと構内放送で提督にもお知らせしましょう。

 うふふ、鬼ごっこなんて久しぶりだからちょっとドキドキするわね」

 

「え?……あの、鳳翔さんも……参加するんです、か?」

 

おずおずと問いかける吹雪に

 

「ええ、参加しますよ?私も秘書艦、やってみたいですもの」

 

(そうだった……)(この人……)(見た目より……)(お茶目さんでした!)

 

残った4人は、今、最強の敵が出現したことを理解した。

 

マイクを握った鳳翔が、嬉しそうな顔で語りかける。

 

「あ、あー、提督、聞こえますか?鳳翔です。

 今から、秘書艦の座をかけたゲームをすることになりました。

 皆で提督を探し、最初に提督を見つけた者が秘書艦になります。

 提督は鎮守府の敷地からは出ないでくださいね。

 あと、お手洗いなど中から鍵をかけられるところに篭るのもご遠慮ください。

 それでは、ヒトヒトマルマルにゲーム開始としますので

 それまでに上手く隠れてくださいね、提督。以上です」

 

こうして、鎮守府秘書艦の座を賭けた

「提督を探せ」ゲームが始まったのだった。 

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