いつかどこかの鎮守府で・2   作:華留奈羽流

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前後編のつもりでしたが話が終わりませんでした。
とりあえず中篇?

前回のあらすじ:提督を探して秘書艦になろう!


第4話

ヒトヒトマルマル 鎮守府 場所は伏す

 

「くそっ……どうしてこうなった」

 

提督は息を整えながら小声で悪態をつく。

 

(いや……元はといえば、ちゃんと結論を出さなかった俺のせいか)

 

わかってはいるのだが

簡単に見つけられたくもないという妙な心理状態だった。

 

もちろん、隠れる場所を選ぶことで

ある程度は選んだ娘を秘書艦にすることはできる。

たとえば、野菜畑に隠れれば鳳翔に、酒保に隠れれば隼鷹に

トレーニング室なら長門に、といった具合だ。

 

(はあ……んなことするぐらいなら最初から指名するよな)

 

ならば誰にも見つからないような場所に、とこの場にやってきたのだが

 

(……誰も見つけられなかったらどうなるんだろう?)

 

ちょっと食べ物とか持ってくればよかったと思ったが、後の祭りだった。

 

 

同時刻 鎮守府 酒保

 

「いやー見つからないなー提督どこかなー」

 

棒読みな感じで声を上げながら酒蔵を漁っているのは隼鷹である。

 

「お、大吟醸霧島めーっけ!こんな所に隠れていたとはフヒヒヒヒ」

 

酒瓶を一本、懐にしまおうとしたところで、背後から声をかけられる。

 

「私が隠したんですけどね」

 

「!?」

 

「ときどき、在庫の数が合わなくなるので

 目に付かないところに仕舞ったつもりだったのですけど」

 

ギ、ギ、ギ、と音が聞こえそうな動作で隼鷹が振り返れば

 

「……ほ……鳳翔……さん?」

 

ニッコリと

顔だけ笑っている鳳翔がいた。

 

「探すのはお酒ではなくて提督ですよ?」

 

そう言うと、懐にしまいかけていた酒瓶を回収し、元の場所に戻す。

 

「これでよし。あと、所在が不明になっている在庫についてのお話は

 ゲームの後でうかがいますからね?」

 

そう言うと、ススーッと酒保を出て行く鳳翔。

 

残された隼鷹がうなだれてつぶやく。

 

「悪夢だ……」

 

 

同時刻(?) 鎮守府 厨房

 

「あっさりー、しーじみー、はーまぐーりさーん……は今はどうでもよくて」

 

吹雪は厨房に来ていた。

当日使用する食材を保管するためのスペースはかなり広い。

人一人隠れるには十分な広さがあり

食料があるここなら長時間隠れていても飢えることはない。

隠れるにはもってこいだと、あちこち探していたのだが

 

「あっ……三笠山だーっ!」

 

嬉しそうな声で吹雪が叫ぶ。

見つけたのはどら焼きの銘菓である三笠山。

 

(今日のおやつかな……どうしよう……一つなら今貰っちゃっても……)

 

一つを手にとってしばし考えていたが、思い直して元の場所に戻した。

 

パチパチパチパチ!

 

「うわぁっ!?」

 

突然の拍手の響きに振り返ると

そこには笑顔でこちらを見ている鳳翔がいた。

 

「あ、あの、えと……」

 

「えらいわ吹雪ちゃん!今ちょっとダメな方を見てきちゃったから余計に感激よ!」

 

「ダメなほう?」

 

「誘惑に打ち勝った吹雪ちゃんには、私から特別にこれをあげるわね」

 

そう言って、鳳翔が吹雪に小さな包みを渡す。

 

「あっ、カステラだーっ!うわーっ、ありがとうございますー!」

 

「どういたしまして。それじゃ、私は次の場所に行くけど

 引き続き頑張ってね!」

 

「はい!」

 

鳳翔が去ったあと、カステラをパクつきながら吹雪は思う。

 

(次の場所、ってなんだろう?)

 

 

同時刻(??) 鎮守府 図書室

 

(書架が沢山あるので隠れやすいと思ったんですけど……)

 

書架の間をウロウロする高雄。

 

(隠れやすいって事は探しにくいって事ですものね)

 

はあ、とため息をついて何となく本の背表紙を眺める。

 

(やっぱり戦史系が多いわね……あら?……これは?)

 

書架の一角、一番上の段に

背表紙に何も書かれていない一群の本があった。

一冊を手に取ってみる。

タイトルは「宇佐美総受け」となっている。作者は「オータムクラウド」。

パラパラとページをめくる。

 

(こっ……これはっ!?……これはぁっ……!!)

 

見る見るうちに顔を真っ赤にしながらも

ページを繰る手を止められない高雄の肩に

 

「それ以上、いけない」

 

という声とともに、ポンと手が置かれる。

ビクッとして手をかけた人に恐る恐る高雄が目をやれば

ハァハァと息を荒げている鳳翔だった。

 

「え?鳳翔さん?……あ、あの……

 こ、これは、私たまたま見つけちゃっただけですね!?」

 

「ええ、わかっています。とりあえず、回収しますね」

 

高雄の手から読みかけの本を取り

書架からもゴソッと一角の本を抜き取ると

それらの本を抱え、そそくさと鳳翔は図書室を出ていった。

 

(回収……?没収じゃなくて、回収……?っていうことは……)

 

しばらく考えた後

 

(見なかったことにしよう)

 

賢明な判断をする高雄であった。

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