どれくらいの長さになるかわからないので前編とか言わない。
ヒトヨンマルマル 鎮守府 サロン
「はーい、今回の郵便物でーす。各自取りにきてくださーい」
高雄が郵便物の束をテーブルに広げる。
離れ小島にあるこの鎮守府では
郵便物は週に一度の定期便でまとめて送られてくるのだ。
「あ、雪風ちゃんからだ」「あら、妙高さんからも」
これまでこの鎮守府に在籍していた艦娘たちや
「やりました!佐世保で、愛宕が再建造されました!」
「おー、おめでとう。どうだ高雄、佐世保ならそう遠くないし、会いにいったら?」
「あ、ありがとうございます提督!ちょっとスケジュール確認しますね!」
姉妹艦が再建造された報せなどが届き、喜びの声でにぎやいでいた。
「提督、司令本部からも来てるぞ」
長門が一通の封筒を提督に差し出す。
「ああ、どうせしょうもない通知だろ。まったく、普通郵便で送るなっての。
あれ、まだ俺宛てが……」
提督が一つの封筒を手に取り
差出人を確かめようと裏返す。
「あ、実家から手紙だ」
「ほう。そういえば、お母上はご健在なのだな」
「ああ、うん、そのオフクロから。
まあこれは後で部屋で見るわ。とりあえず、司令本部のヤツを、と」
そそくさと実家からの手紙をポケットにしまい
司令本部からの封書を開く。
と、パァッとその表情が明るくなった。
「やった!皆、建造許可が出たぞ!」
皆がオオーッと歓声をあげた。
戦時中、艦娘の建造は、各鎮守府の判断で
資源が許す限り自由に行われていた。
もちろん、事後承諾のようなかたちで政府の認可も得ていたが
深海棲艦に唯一対抗できる艦娘の建造について
その管理運用を任されていた鎮守府に意見をするものもいなかったのである。
しかし、戦争が終わり状況は変わった。
吹雪たちが慰霊碑建立のさいに突発的に建造されたのは例外として
それ以降の艦娘建造は、政府により厳しく管理されることになったのである。
戦いが終わったのに、兵器である艦娘を増産する理由はさしてなく
他国との軍事力バランスを考えればそうそう建造はできない。
さらに、資源もまだ潤沢とはいえない現状では
建造を制限されるのもやむをえないことで
以前のように鎮守府が独断で艦娘を建造することはできなくなっていたのだ。
また、宇佐美の鎮守府は他の鎮守府に比べて艦娘が多く
所属艦娘の少ない鎮守府に優先的に建造の許可が下りていたため
吹雪のあと、これが最初の建造許可だった。
「それで、どんだけ使っていいの!?」
隼鷹が勢い込んで尋ねる。
どれだけ使うか、というのは建造の際にどれだけ資源を使うか、ということだ。
空母や戦艦といった大型艦は、ある程度の資源を投入しないと建造できない。
提督が書面を読み進め、ちょっと落胆して
「えーと……ああ、うん……オール30で」
ああ~、というため息が周囲から漏れる。
許可された資源量は、最低水準のものだった。
もちろん、これでは空母や戦艦は建造できない。
「あ、でも私はちょっと嬉しいかな」
吹雪が落胆する皆を励ますかのように笑顔を見せる。
「そうですね、駆逐艦仲間が増えるかも、ですね」
潮の言うように、最低水準の資源量で製造されるのは
駆逐艦であることが多いのだ。
「とりあえず、工廠行ってみるか!善は急げって言うしな!」
「はいっ!」
皆がそろって工廠に向かった。
ヒトヨンサンマル 鎮守府 工廠
「こいつを動かすのも久しぶりな気がする……」
提督が建造ドックの操作パネルの前に立ち
感慨深げに巨大な機械を見上げてからパネルを操作し始める。
「オール30、と……よし、建造……開始!」
ごぅん、という始動音の後、機械が唸りを上げ始め
「建造時間は?」
すぐにパネル上の表示板を見上げると
01:22:00
「お、やった。夕張だ」
オール30の最低限の資源量でも
一部の軽巡洋艦が建造されることがある。
中でも、1時間22分という建造時間は軽巡夕張だけのものだった。
「夕張さんとなら、遠征任務のバリエーションが増やせますね!」
「うん、これで海上護衛任務もできるようになるよ!」
吹雪と潮は嬉しそうだ。
遠征には艦隊の中に軽巡を組み込む必要がある任務が多く
今まで軽巡が不在だったこの鎮守府としては夕張の建造はラッキーといえる。
「メロンちゃんかー。また装備の整備、頼めるなー」
ニヒヒと笑う隼鷹を提督がジロリと彼女を睨んで
「こら、あまりアイツに仕事押し付けるなよ?」
「いいじゃん、本人が喜んでたんだし」
夕張は軽巡洋艦でありながら
趣味で装備の整備や改造をしていた。
工作艦である明石ほどではないにしても
彼女の働きは宇佐美の鎮守府で大いに役立っていたのだ。
「……また変な改造されても知らんぞ」
そう、問題があるとすれば
ときおり妙な改造を装備に施すところか。
「そういえば長門、あの『連装砲さん』ってのはどうなったんだ?」
「いちおう、完成して装備倉庫にしまってある。あまりアレは使いたくなくてな」
「あ、『連装砲さん』って、夕張さんが作ったっていう
島風ちゃんの『連装砲ちゃん』みたいなのでしたっけ?」
吹雪の問いかけに、提督が思い出しながら答える。
「確か、半自律式砲塔の41cm連装砲バージョンだったな。
便利そうだと思って許可したんだが、長門はなんで使わないんだ?」
「いや……私よりデカくてゴツイし
そのゴツイのが、図体がデカイせいか
いつもすぐそばで息をハァハァしてるんだ……」
「それは、ちょっと……いや、かなりイヤだな。ていうか、息してるのかアレ」
「おまけに、砲撃のときに『あぁん三式弾出ちゃう~!』とか
『もうらめえぇぇ撃っちゃうぅ!」とか言うんだ……」
「廃棄しろよそんなの!?」
「そう思ったんだが、半自律式のせいか廃棄しようとすると逃げられてしまってな」
「……ろくでもなさすぎる」
「提督ー、高速建造使わないー?待ってるのダルイー」
もう飽きたのか隼鷹が催促を始めた。
「またお前は……まあいいか、皆待たせてもしょうがないしな。
よし、高速建造……開始!」