「はーい、お待たせ!兵装実験軽巡、夕張、到着いた……あれっ?
提督どうしたの頭の毛真っ白じゃん!?あっ、目も真っ赤!?何、病気!?死ぬの!?」
「……病気じゃないし、死なない。相変わらずだな、夕張。おかえり」
建造ドックから出てくるなり騒がしい夕張を皆が出迎える。
「おかえりバリー」「メロンちゃんおかえりー」
「あ、うん、ただいまー!で、提督のこの様子はいったい?病気じゃないならイメチェン?」
「どんなテーマでのイメチェンだよ」
とりあえず照れながらも提督が事情を話すと
感激したのか、夕張はちょっと目を潤ませる。
「……そっかー。それだけ、私たちのこと想っててくれたってことだよね」
「まあ、そういうことになるのかな」
なおも照れる提督の手をガッシと夕張が握る。
「じゃ、治そう?」
「……は?」
「私も、明石ほどじゃないけど、ちょっとは修理できるから、ね?色々試してみても、いいかしら?」
「いいかしら?じゃねえよ!俺で実験しようとするな!」
「遠慮しなくていいのよ?」
「遠慮とかじゃねえよ!だいたい俺、艦娘じゃないからね!?キミには治せないからね!?」
「やってみなくちゃわからないじゃない!」
「わかるよ!修理とか言ってる時点でアウトだよ!」
「でも、明石だって『提督を修理したい』って言ってたわよ?」
「ああもう、ああ言えばこう言うし!」
ギャアギャアとうるさい二人に高雄がおずおずと近づく。
「あのー……記念写真とか撮ろうと思うんですけど、どうしましょう?」
「あ?ああ、そうだな……じゃあ夕張、隣に」
「はーい」
夕張がピタッと提督の横に張り付いたところで、パシャリとシャッター音が響く。
「えへへー」
嬉しそうな夕張に提督が
「じゃ、今の状況を説明しておくから、一緒に執務室に来てくれ。
そのあと、ここの案内を吹雪に頼む」
「え?ここ鹿屋基地じゃないの?」
「そういうことも含めて、今から説明するよ」
こうして、軽巡夕張の新たな日々が始まったのだった。
およそ1ヵ月後 ヒトマルマルマル 鎮守府 提督執務室
「なんなんですか、こそこそメモで呼び出したりして」
朝食のあと、提督がこっそり夕張に握らせたメモ。
そこには、誰にも告げずこの時間に執務室に来て欲しいと書かれていた。
不審に思いながらもやってきた執務室には、今日の当番の秘書艦の潮も、通信担当の隼鷹もいない。
提督と二人っきりである。
「……は!?まさか告白!?」
「何をだよ……まあある意味告白もするんだが。
実は、お前が再建造された日に、俺宛てに実家から手紙が来ていてな」
「ご実家から?」
白髪頭をボリボリと掻きながらボソッとつぶやくように提督が答える。
「俺に……見合いをしろっていうんだよ」
「へー……お見合い……」
提督の答えをしばらく反芻した後
「ええええええぇっ!?お見合いって、あの、二人でやる合コンみたいなアレ!?」
ビックリするのがちょっと遅い。
「なんかお前の考えてるお見合いはちょっと違うかもしれないが
結婚を前提にしたお付き合いをするかどうか、男女が互いを面接するようなアレだ」
「……オワタ。この鎮守府オワタ。こんなに提督LOVE勢ばっかなのに
肝心の提督が他所の女とお見合いとか、マジオワタ……」
「いやもちろん断ったんだけどな?
ただ、特に理由もなく断れない相手だったんで
もうすでに将来を誓い合った恋人がいる、ってことにしたんだよ」
夕張は少し後ずさる。
「……なんだかすごくイヤな予感がするんですけど?」
「そしたら、相手の写真を送れっていうもんだから……
その……お前の写真を送っちゃったんだよ。
ほら、再建造のときに並んで撮ったアレ」
「なんで私の写真!?」
「他に適当な写真がなかったんだよ。たまたま、撮ったばかりのお前の写真が手元にあったし。
で、写真を送ったら今度は……ここに会いに来るって言うんだ」
「会いに来るって……誰が?」
「オフクロが」
「……誰に?」
「お前に」
少しの間、夕張は考え込むようにうつむいて
そして顔を上げて、爆発した。
「なんで……なんでそんな嘘つくんですかあああぁぁぁ!!」
「いやわざわざ会いに来るとは思わなかったんだよ!」
「アレですか!?こう、事情があって恋人の演技を始めた二人が
次第に惹かれあって本当の恋人になっちゃうとかいう
お約束な展開がご希望なんですか!?ご希望なんですかッ!?」
「別にお前とそういう展開は希望はしてない!」
「ほらお約束!最初は二人ともツンなんですよ!
デレませんよ!?私はデレませんよ!?」
うー、と唸りながら提督を睨みつける夕張に
ため息をつきながらも提督が話を続ける。
「はぁ……まあそういうわけで、オフクロが来てる間だけ
俺と恋人のフリしてくれないか?別にデレなくていいから」
夕張も少し落ち着きを取り戻した。
「もう諦めて、お母様に本当のコト言っちゃったほうがいいんじゃないですか?」
「それだと俺の命がアブナイ」
提督が少し青ざめたのを見て
夕張も冗談ではないと気づく。
「……そんなおっかない人なんですか?」
「一度、戦争初期に俺の住んでる港街に深海棲艦が攻め込んできたとき
陸から竹槍を投げて、100メートル先の深海棲艦を沈めたことがある」
「ナニソレコワイ。そんな人間大砲みたいな人なら
本格的に深海棲艦と戦ってもよかったんじゃ?」
「船酔いするから陸からでないとダメなんだと。
まあ人間大砲の的になりたくなかったら協力してほしいんだが」
「私も的にされるの!?」
「今のところ、お前も共犯だぞ?」
「酷い話ね……しょうがないなぁ、もう。
それで?いつ来るんですかお母様?」
提督が頭を抱え、つぶやく。
「……明後日」
「早すぎるわよォ!?」
もうちょっと続きますよ。