いつかどこかの鎮守府で・2   作:華留奈羽流

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夕張編の第3回。
まだ終わらないよ!


第8話

フタマルマルマル 鎮守府 サロン

 

夕食後、夕張によってサロンに艦娘と深海棲艦が集められる。

事情を説明するのに女子だけのほうがいい、という夕張の意見で提督はいない。

 

「……というわけで、私と提督が恋仲っていうお芝居に協力してもらいたいの」

 

皆の顔色をうかがいながら夕張が結論を述べる。

艦娘はほぼ全員、ムスッとして黙っている。

提督がいれば文句の一つも言いたいところなのだろう。

しばらくして、長門が切り出す。

 

「事情はわかった。不本意ではあるが、仕方あるまい。皆はどうだ?」

 

「まあ……仕方がありませんね」

 

ため息をついて鳳翔が賛同し、皆もうなずく。

 

港湾棲姫―姫が手を上げる。

 

「ゴメン、そのお見合いというのがよくわからないんだけど」

 

深海棲艦には説明不足だったかと夕張が捕捉しようとする。

 

「あ、そうか……えっと、合コンってわかる?……わけないか」

 

「あ、合コンならわかるわよ?」

 

「わかるんだ?えっと、二人でやる合コンみたいな?」

 

「それってデートじゃないの?」

 

「段取りつけるのが親だったりするからちょっと違うかも?」

 

「ふーん……で、お見合いすると最終的には提督は

 その相手の女と結婚しちゃうわけね」

 

「まあ……そうなる確率が高い、かな」

 

「じゃあ私も協力するわ。提督がこの中の誰かを選ぶならともかく

 他所の女に取られるのはイヤだもの」

 

全員がウンウンとうなずき、ホッとした夕張が

 

「それじゃ、細かい段取りとかちょっと話していきましょ!」

 

 

2日後 ヒトフタマルマル 鎮守府 桟橋

 

鎮守府への補給をする定期便船とは別に

一隻の水中翼船がやってきていた。

 

「……提督のお母さんって、ひょっとしてすごくエライ人なんですか?」

 

迎えに出ていた提督に、供をしている夕張が尋ね

苦虫を噛み潰したような顔で提督が答える。

 

「民間人なんだけど、親父も爺さんも軍人だったし

 オフクロの家も軍人の家系だからけっこう顔はきく……らしいんだが

 まさか船一隻チャーターさせるとは思わなかった」

 

「あ、降りてくるみた……ええええっ!?」

 

「どうした……何ィッ!?」

 

降りてきたのは病人を搬送するキャスター付のストレッチャー。

そこには和服姿の年配の女性が横たわっていた。

 

「あれ、お母様なの!?」

 

「そうだけど……まさか病身でやってきたのか!?」

 

二人が思わず駆け寄って

 

「どうしたんですか!?」「いったい何が!?」

 

と尋ねると、付き添っていた乗員が苦笑いを浮かべ

 

「いや、まあ……船酔いをされまして」

 

それを聞いて提督も夕張もガクーンと脱力する。

 

「このまま、ストレッチャーはお使いください。

 次の定期便に乗せてお返しいただければ結構ですので。

 では、私はこれで」

 

「……どうもすみませんでした」

 

階級的には提督のほうがかなり上なのだが

私事ということもあって深々と頭を下げる。

 

と、横たわっていた女性が少し眼を開けて

 

「ああ……忠孝?……ごめんなさい、やっぱり船はダメ……だったわ」

 

青ざめた顔で力なく笑う。

 

「母さん……船弱いのわかってるんだから、わざわざ来なくても」

 

「……そんなわけにはいきませんよ……ああ、貴女が……夕張さん?」

 

そばに控えていた夕張に気づき、顔を向ける。

 

「は、はい!」

 

「よかった……死ぬ前に、貴女の顔が見れて……」

 

「いや母さん死なないよね!?いまだかつて船酔いで死んだ人っていないよ!?」

 

「じゃあ……私が第一号、ね……ギネスブックに載るかしら?」

 

顔を見合わせる二人。

 

(……大丈夫そうだな)

 

(……そうね)

 

「さあ、夕張さん……もっとよく顔を見せて……?」

 

「はい……おそばにいますよ」

 

近寄って手をとった夕張の顔を、もっと良く見ようと上体を少し起こして

 

「ああ……あの忠孝が、こんな……可愛い……うぉっぷ!」

 

「え?……ギャー!?」

 

取り合った手の上に盛大に戻した。

 

「うわ、ちょ……あ、吹雪、バケツ!バケツ持ってきて!」

 

提督が近くで入港手続きをしていた吹雪に叫ぶ。

 

「え、バケツですか?わ、わかりました!」

 

提督が母親の背中をさすっていると、すぐに吹雪が戻ってくる。

 

「持ってきましたー!」

 

その手には、高速修復材の入ったバケツ。

 

「違う!そのバケツじゃない!いやバケツはバケツだけどもその中身はいらん!」

 

吹雪は重いバケツを揺らしながらなおも走りより

 

「ええっ!?でもバケツって言ったらったったったひゃあ!?」

 

転んだ。

転んだ拍子に吹雪がバケツを放り出す。

バケツが宙を舞う。

 

ガィン!

 

「ぐあっ!?」

 

バケツは提督に。

 

バシャーッ!

 

「ひゃあ!?」

 

中身は夕張に。

 

「うわわわわわ、ご、ごめんなさーい!」

 

起き上がってワタワタしながら詫びる吹雪。

 

「ああ、うん、まあ……洗い流せたから、いいわ」

 

夕張は高速修復材でびしょ濡れになったまま引きつった笑いを浮かべる。

 

「っ痛ー……とりあえず、ほら、母さん、バケツ」

 

提督が頭をさすりながら母親にバケツを差し出すが

 

「あ……ちょっと楽になったわ。もう大丈夫よ」

 

「ソウデスカ」

 

「ま、まあ、とにかく……鎮守府へようこそ?」




そしてまだ続く……
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