君の、名前は――   作:えばんす

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第3話

瀧は人生の岐路に立っていた。

高校を決めた時よりも、大学を決めた時よりも、就職先を決めた時よりも、いや、就職先はここしかなかったから選びようがなかったな。

そんなことを思い苦笑いしていると、目の前の問題を思い出し苦虫を噛み潰したような顔

に戻ってしまう。

 

仕事を終え、いつもなら真っ直ぐ家に帰るはずだが、今日は違う。

悩んでいるのは朝出会った彼女――宮水さんに連絡をするかということ。

今朝会ったばかりなのに、その日の夜に連絡をするのはがっついていると思われるだろうか、会って話をしたいと言ったらチャラい男と思われるだろうか――

考えれば考えるほど、不安な気持ちがふつふつと沸き上がってくる。

今日はやめておこう――そう思った時、ふと気づく。

 

朝、眼が覚めるとなぜか泣いている。

こういうことが俺には、時々ある。

そして、見ていたはずの夢は、いつも思い出せない。

ただ、何かが消えてしまったという感覚だけが、目覚めてからも、長く、残る。

 

何かを忘れているのか、何かを、いや、誰かを探しているのかは分からない。

明日も、起きた時に泣いているかもしれない。

でも、根拠も、理由もなく、もう二度起こらないだろうと思った。

頭で考えても何故なのかは分からないけれど、俺の体が、心がそう確信している。

今、彼女に会わないとまた戻ってしまう。

毎日が何か物足りなくて、何かを、誰かをずっと、ずっと探していたあの日々にまた戻ってしまう。

それに気づいた俺の手は自然に動き始めていた――

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

三葉もまた、人生の岐路に立っていた。

上京するのかを決めた時よりも、大事な選択だと思っていた。

 

仕事終わり、同僚から飲みに行かないかと誘われたけど、今日はそんな気分じゃなかった。

彼に会いたい、会って話がしたい。

ただ、それだけだった。

仕事中は、何を話そうかとか、もう連絡しても迷惑じゃないかなとか、余裕があったのに、いざ連絡するとなると手が全く動かない。

急に連絡したら、迷惑かな、驚くかな。

彼は、いやがるかな。

今日は連絡をやめて飲みに行こう――そう思った時にふと気づく。

 

朝、眼が覚めるとなぜか泣いている。

こういうことが私には、時々ある。

そして、見ていたはずの夢は、いつも思い出せない。

ただ、何かが消えてしまったという感覚だけが、目覚めてからも、長く、残る。

 

朝起きた時に、何か大切な、とても大切なものを忘れてしまうあの感覚。

いつからだったか、もう忘れてしまったけれど、何かを、誰かを探している。

その誰かというのは彼――立花くんのことなのだろうか。

おそらく、いや間違いなくそうだろう。

頭で考えても何故なのかは分からないけれど、私の体が、心がそう確信している。

彼に連絡をしよう、そう決意した時――

 

ぴろり〜ん。

 

スマホが鳴った。

 

「ひゃっ!」

 

始めてケータイを買ってもらった小学生が、始めてのメールに驚いたような悲鳴を小さく上げる。

周りの人がちらりと見てくる。

少し顔が赤くなるのを感じながら、誰からの連絡なのかを確認する。

その差出人は――

 

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