元士郎憑依譚   作:不知火影
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第三十四話です。
今回はセラフォルーとコカビエルの話。
ぶっちゃけた話、元士郎とソーナ以外の誰か視点は、かなり難しい。
そして、今回の投稿で『元士郎憑依譚』を投稿し始めてから丁度五ヶ月が経ちます。よくここまで続けられたもんだ……と自分に感心している作者、不知火影です。


魔王、辞めよっかな……

俺の名はコカビエル。元【堕天使】で、今はセラフォルー・レヴィアタンの【女王(クイーン)】をしている。彼女は基本的には真面目なんだが、妹のことになると物凄く面倒な女だ。例えば――

 

「ねぇねぇ、コカビエル。これ見て」

「……なんだこれは?」

「ソーナちゃんの写真」

「いや、そうではなく……何故隠し撮りのような写真なんだ?」

「そりゃもちろん、隠し撮りしたからよ」

「……マジか」

 

とか、

 

「ソーナちゃんに会いたい!」

「仕事を終わらせてからにしてくれ」

「……コカビエル、あとはよろしく!」

「おいコラ待て、逃げるな!」

 

みたいなことがそこそこの頻度で起こるのだ……面倒ではあるが、相手をするのが案外楽しいと思ってきている俺はおかしいのだろうか。そんな彼女のことを、いつの間にか好きになってしまった俺は、おかしいのだろうか……

そんなことを考えていたある日。セラフォルーが突然、こんなことを言い出した。

 

「最近、ずっと考えてるんだけどさ」

「なんだいきなり?」

「魔王、辞めよっかな……」

「………は?」

 

セラフォルー、突然の『魔王辞めたい』発言。本当にいきなりだったから驚いた。何故そんなことを考えていたのか訊いてみると、セラフォルーは俺にある映像を見せてきた。

 

「……これ」

 

『おっぱいドラゴン、はっじっまっるよー!』

『おっぱい!』

 

「……これがどうしたんだ?」

「今の冥界、酷すぎる」

 

……確かに。

 

「いくら娯楽に飢えてるからって、『おっぱいドラゴン』はないでしょ……あの子がやってることは、(ただ)のセクハラ行為。でも彼の――赤龍帝のオーラのせいでなのかは分からないけど、みんなはそれを気にしていない………完全に狂ってるわ」

「酷い言われようではあるが……俺も同意見だ」

 

これが元士郎の言う『世界の修正力』というヤツだろうか………本当に酷い世界だな。

 

「それで、魔王辞めてからはどうするんだ?」

「そうねぇ……」

「そもそもの話、魔王を辞めるなんて無理だろ」

「……酷い世界になったものね」

「……だな」

 

『おっぱいドラゴンの歌』を聞いていると、本当に頭が痛くなってきて、何度でも言いたくなる――この世界は完全に狂っている、と……

 

「……話を変えよう。元士郎が『禍の団(カオス・ブリゲード)』の英雄派を捕縛したんだってな」

「試したいことがあるって言ってたから、暫くは元士郎に預けたままだけどね」

「試したいこと?」

神器(セイクリッド・ギア)所有者を殺さずに神器(セイクリッド・ギア)を抜き取る技術を試すって言ってたわ」

「ほう……元士郎の奴、そんなことを出来るようになったのか」

「まだ一度も試したことがないから、英雄派で実験するとも言ってたわ」

 

元士郎、色々なことが出来るようになってきたようだな………もしかしたら、俺の『光の力』も使えるようになったりしてな。

 

「ハァァ………魔王、辞めたいなぁ……」

「辞めたいと言われてもなぁ……いっそのこと、元士郎になんとかしてもらうか?」

「それが出来たら苦労しないわよねぇ……」

「「……ハァ」」

 

マジでどうなっているんだ、この世界は……

 

 

******

 

 

私の名前はセラフォルー・レヴィアタン。現『四大魔王』の一角を担っているわ………今の冥界の状態が酷すぎて辞めたくなってきてるけど。

元士郎に原作世界のことを聞いてなかったら、私の心の中はもっと大変なことになってたでしょうね……今でも充分大変なことになりそうだけど。

そんな私に人間界の時間で八月の中頃、眷属が出来た。彼の名はコカビエル。堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部だった男。そんな彼が何故私の眷属になったのかというと……妹とその眷属のせい、かしらね。

まぁ、私も眷属がいないのはマズイだろうなぁ……とは常々思ってたし、丁度良かったってのもある。それに彼、結構強いし。

強さといえば、私も一応魔王をやってるわけでして、強さには自信があったのだけれど………旧魔王ルシファーの息子に不意を打たれて眠らされてしまった。その間に、ソーナちゃんに危険が及んでいたって話を聞いた。

………強くなろうと思った。幸いなことに、修行相手はコカビエルがいる。彼も私と同じように不意を打たれて眠らされてしまったらしい。私との修行に快く付き合ってくれた………今まで、私の隣に立っていたのは家族だけだった。だが今は、コカビエルが立ってくれる。なんとなく、結婚するならコカビエルみたいな男かな……と思うようになってきたのを自覚した時は頭から煙を吹き出しそうになるほど、私の顔は真っ赤に染まっていたらしい。コカビエルが言っていた………そう、恋心的な何かを自覚し始めてきた時に、その対象が突然現れたのだ。あの時は思わず手が出たわ。それを躱されて、なんとなく怒りが湧いてきたからそのまま戦闘開始になったけど………思いの外強くなってるのよね、コカビエル。最初は少し手を抜いた状態で十分経ったら決着が着いてたのに、今じゃ半日くらい全力の私と戦ってくれるようになっている………最終的には、私が勝つけど。

それでも、強くなってから今までそんな男に出会ったことがなかった。サーゼクスは周りから『超越者』なんて呼ばれてるけど、あの程度なら十分も経たずに鎮圧出来る。

………よく考えてみると、コカビエルって私にとっては結構な優良物件かも?

 

 

******

 

 

最近、セラフォルーの様子がおかしい。

朝、目が覚めると――

 

「ふぁぁっ……ん、なんだこれ?」

「んんっ……すぅ……すぅ……」

「……なんだこれ?」

 

目の前で下着姿のセラフォルーが俺に抱きついたまま寝ていたり……

 

「コカビエル、私は仕事中です」

「だな」

「ですが、今は昼食時……お腹がすきました」

「飯なら一応、作ってきてるぞ」

「食べさせて」

「……はいはい」

 

昼食はほとんど俺が……俗に言う『あーん』というヤツで食べさせていたり……

あっ、ちなみにだが、俺は料理が出来る。得意な方と言ってもいい。セラフォルーは普通らしい。まだ食べたことはないが……

他にもちょこちょこあるが、セラフォルーの様子がおかしくなっているんだ。この前までのセラフォルーだったら、こんなことは絶対にしなかったはずなんだが……正直な話、役得感はあるんだが、ほとんど生殺しに等しい状態だから辛い。

そんなこんなで、今日の晩。ちょっとした面倒なことが起きた。

 

「……何か申し開きはあるか?」

「……」

 

普通に寝ていた俺だったんだが、変な違和感を感じて起きてみると……

 

「なんで寝てる俺に覆いかぶさって、その……ひとり遊びを?」

「ひとり遊びって……まぁ、確かにその言い方も間違ってないと思うけど……」

 

ひとり遊び――俗に言う『自慰行為』というヤツだろうか?――をしているセラフォルーが目の前にいた。

何故そんなことをしてたのかを問いただしたところ……

 

「寝ているコカビエルを見てたら……なんか、したくなっちゃって……」

「……oh」

「仕方ないじゃない……だって好きだもの!貴方のことが!!」

「……はいぃ!?」

「あっ……」

 

なんだその、『言ってしまった』って反応は……しかしまぁ、まさか女性のひとり遊びを目撃して、その女性にその場で告白されるとはな……不思議なこともあるもんだ。

 

「……目を見れば嘘をついてないのはわかる。だが、何故俺が寝てる傍でヤってたんだ?」

「それは………言わなきゃダメ?」

「言え」

「………抑えられなかったのよ、衝動を」

 

そこをなんとか抑えていたら、こんな恥ずかしい目に遭わずに済んだだろうに………コイツはアレだな。残念美人ってヤツだな。何も知らなければ痴女の部類に入ってしまうが……

 

「うぅっ……ぐすっ……もうやだぁ……」

「な、泣くんじゃない……泣きたくなるならヤらなきゃよかっただろうに」

「貴方への想いが変な方向に進んでしまったのよ。でも………ハハッ、もう死のう」

「はぁ!?」

 

なんでそうなる!?つーか、色々ありすぎて情報整理が追いつかん!

 

「だって、好きな男に自慰行為を見られた挙句、告白まがいなことを………もうお嫁にいけない」

「俺がもらってやるから大丈夫だ」

「………えっ、今なんて?」

「だから、俺が嫁にもらってやるから大丈夫」

「………本当に?」

「本当だ」

「……うえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

「ちょっ、何故このタイミングで泣く!?」

 

俺、なにか悪いことを言ってしまってたか?

 

「あんな醜態を晒したのに、私を嫁にもらってやるって言われたのが嬉しくて……」

「ああ、そういう……」

 

今セラフォルーが流している涙は、俗に言う『嬉し涙』というヤツか。

 

「……よしよし」

「……子供扱いしないでよ」

「じゃあやめるか?」

「……もっと」

「了解」

 

俺が頭を撫でてやると、セラフォルーの顔が涙目ながらも、物凄くニヤニヤしだして……見ていてなんか面白い。

………俺がわざわざ『ひとり遊び』と言って言葉を濁したのに、さっきセラフォルーが思いっきり『自慰行為』と言っていたのは黙っておいてやろう………言ったら面倒なことになりそうだし。

とりあえず今は、セラフォルーの頭を撫でることに専念しよう。

 

 

******

 

 

物凄く久しぶりに頭を撫でられた気がする……私は大人だから、頭を撫でられるのには若干の抵抗を感じる。

それでも、心地いいのは確かだ。暫くはコカビエルが与えてくれるこの心地よさに浸っていよう。

………あっ、そういえば今さっき、思いっきり『自慰行為』って言っちゃってた………コカビエル、気づいてないよね?気づいてないはず………気づいてないことを祈ろう。

 

「これからよろしくね、コカビエル」

「よろしくな――セラ」

「――ッ!?いっ、今なんて……」

「俺達はこれから恋人になるわけだからな。愛称で呼んでみようかと思ったんだが……ダメだったか?」

「ううん、全然いいよ!これからはそう呼んで!!」

「わかった、セラ」

「~~~~ッ!!」

「おっ、おい、セラ!?」

 

ああ……私は今、世界で一番幸せだわ……

私の意識はそこで途切れた。

 

 

******

 

 

「……気絶してしまった」

 

やっぱり、いきなり愛称で呼ぶのはマズかったんだろうか。セラの様子を見るに、ちょっと刺激が強すぎたみたいだ。

 

「しかし、俺に恋人か……」

 

昔は恋人を作ろうなんてことを考えもしてなかった俺に、恋人か………戦争中――無我夢中に敵を殺していた頃――の俺が今の俺を見たら、何を言うだろうか。

 

「……昔は昔、今は今だ。そんなことを考えるよりも、もっと別の有意義なことでも考えよう」

 

有意義なこと……悪魔陣営をなんとかして抜ける方法とかか?いやいや、無理だろ。セラや俺は【悪魔】だ。セラの家族だって【悪魔】だ………元士郎に頼んで、肉体改造かなんかで【悪魔】をやめる――とか?それぐらいでしか、悪魔陣営を抜けられる方法はないような気がする。

 

「なんにせよ、現実的な話ではないよな……」

 

俺達の苦難はまだまだ続きそうだな………ハァ、憂鬱だ。




気がついたら、セラ姉とコカビエル師匠が恋仲に!?
タグには入れませんが、セラフォルーとコカビエルは結ばれました………若干無理やりな感じで、ですが。
この二人のコンビはあまり見ないでしょう。天使の方だったら、稀に見かけますが。
恋愛描写って、難しいな……
ちなみに、この話は原作十巻直前の出来事です。
……そういえば原作十巻の時期に、シトリー眷属ってシークヴァイラ・アガレスとレーティングゲームしてたんでしたっけ?はてさて、どうしようか………やる意味ある?


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