学園都市の中心、多目的ホールの中集まった新入生達が暇そうに、あるいは眠たそうに、はたまた寝てしまいながら、多目的ホールの中心のステージに立つ副校長の話を聞いている。そしてその様子を二階ギャラリーから見下ろす影がいくつかあった。
その中の一人、新任教師でありここ『マーリン魔術学園』の卒業生であるアナスタシア=ペンドラゴンが口を開いた。
「新任がいっていいことかわからないが、今年は・・・なかなかに粒ぞろいだ」
『ああ、違いない』
魔女帽を被ったフィル・ステラータが、顔につけたマスクに声を曇らせながら答える。
烏のようなマントをつけた、怪しい雰囲気の彼は魔法化学-通称『魔化学』-を教える、教師の一人である。
その背後、校舎につながる扉が一人でに開いた⁉︎いや失敬。身長142センチ、教師達の中でもかなり背の低いスピカ=ミルキーハートがその魔法少女のような衣装のスカートを揺らし、端に用意されている彼女のための足場に疲れた様子で足を乗せた。
「どうなさいましたか?スピカ先生?」
「ああ、ペンドラゴン先生。校長がね、期待通りというかなんていうか、防御術式張りまくって校長室に閉じこもってるんだよ」
「ふふっ、確かその話、私の代にもありましたね」
困っちゃうよ、とスピカは柵に顎を乗せる。
そこでアナスタシアは扉を開き、言う。
「私が行きます」
「無理じゃないかな〜?でも頑張れるだけ頑張れ!」
それだけ言うとスピカは席を見下ろす。
ところ代わり観客席、Aクラスの自身の席でつまらなさそうに話を聞くジルは、ちらりと横の席を見た。
菊塵色の極短いボサボサの髪の彼は、豪快にイビキをかいて爆睡しており、寝息にあわせてその青いエクステを揺らしている。
後ろの席からも、彼ほど豪快なものではないにしろ寝息が聞こえる。
起きているのは自分くらいなものだろう。
かれこれ3時間は続いていた副校長の世間話が終わり、校長演説へ入るその時、ステージの階段近くから大きな叫び声が聞こえた。
「いやだぁ!ボクまだねるんだから、はなしてくれたまえよぉ!」
「なりません、これから校長演説だと何度も行っているでしょう?」
「そんなもん副校長にでもやらせりゃいいじゃないか⁉︎」
「とにかく、やってください‼︎」
ひゅーん、そんな効果音が付きそうな具合に投げられた人影は、見事演説用マイクの前に直立の姿勢で立った。
大声に意識を戻された生徒達の視線はステージへと集められる。
青い縞模様のパジャマとナイトキャップを被ったその人物は、欠伸を嚙み殺し言葉をマイクに落とす。
「ボクがマーリン、校長の6代目マーリンだ。あ・・・、うん。思いつかないし、とりあえず卒業おめでとう!」
今日入学式なんですけど⁉︎
会場全体の心が一つになった瞬間だった。
マーリンは一瞬きょとんとした様子を見せたが、すぐに向き直った。
「あ・・・、ごめんごめん、冗談だよ冗談。えっと、入学式だったかな?入学おめでとう、我が魔術学園へ!君たちが此処へきた理由は様々あるだろう。それを成し遂げられるか否か、それはボクは約束しかねることだ。」
難しい表情を垣間見せながら、続ける。
「だが、ここにきた君たちには平等に学び、研磨し、競い合う権利がある!そしてその権利はボクが!マーリンが保障しよう!
それでは、君たちに良き学園生活が待っているよう、願っているよ」
演説としては及第点。だが、最初の素っ頓狂な悲鳴や寝惚けた発言のせいで色々台無しである。
清々しい顔で去るマーリンだったが、後に彼の悲鳴が再び校舎中に響くことになったとか、なってないとか。
ーーーー
入学式が終わり、式中とは同じ人たちがそこにいると思わせないほどの賑やかさを醸し出す食堂。
その中の一つのテーブルに少女が、シルヴィア・セラフィーレが座っていた。食券をあらかじめ買っておいた彼女は頼んでいないが、券売機の一番下で唯一の売れ残り、スパイダーバーガーセット(魔女の煮汁ジュース付き)を腐った目で運ぶ人たちの様子が見える。ついでにその皿の上でバーガーの端からはみ出た蜘蛛の足が時折震えたり、コップの中の赤錆色の液体が泡立ったりしてている様子も見える。
シルヴィアはその悍ましい光景を見なかったことにし、自身のサンドウィッチを食べ進める。
「すいません、ご相席よろしいですか?」
不意に声をかける人物がいた。
確か同じAクラスの、ジルさんだったかな。
頰の傷跡をぽりぽりと掻く彼女は、何処かシルヴィアに対し申し訳なさそうだ。
どうぞ、と少し笑顔を浮かべて席を勧める。
席に座った彼女のお盆の上には、未だに無尽蔵に配布されるスパイダーバーガーセットがあった。一口齧られてある様子を見るに、食べながら席を探していたようだ。
ところで・・・
「ねぇ、それ美味しい?」
「・・・食べますか?」
「い、いえ、遠慮しておきます」
これ以上あれについて詮索するのは良くないらしい。
ジルはシルヴィアと向かい合う席に腰を下ろす。無言で食事を進めはじめる彼女に話を切り出す。
「始業式の校長演説、すごかったよね」
「たしかに、あの綺麗な着地はなかなかの物でした」
「そっちじゃなくて、校長先生を投げた先生の方です」
「ああ、担任のペンドラゴン先生のこ」
「私のことを呼んだか?」
突然背後からかけられた声に、思わず振り返るとペンドラゴン先生がいた。
シルヴィアの横の席に座ると先生は手元のお茶をガブガブと飲み、あっという間に紙コップの中身を空にした。
「どうしてあんなことがあったか知りたいか、シルヴィア女子?」
首を縦に振り、校長の演説までのドタバタを聞き、ジルも含めた3人は談笑する。
ふと思い出したように先生は呟いた。
「そういえば、『デュエルシステム』については知っているか?」
「・・・、中世騎士の果し合いをモチーフに作られたシステムだと記憶しています」
「その通りだ、ジル女子。だが・・・そうだな。口で説明するより、実体験した方が速いだろう。だから」
少し口角をあげて-
「戦ってみろ」
-無茶振りを言った。
第2話投稿完了、しま、したっ・・・(カクッ
ジル「ああ、ひどい状態ですね。これは」
シルヴィア「あの・・・ほっといて大丈夫なんですか?この、人?」
ジル「大丈夫ですよ。後書きでふざけるくらいには体力残ってるみたいですから」
ぺんどら「まぁ、そう言ってやるな。ジル女子」
ジル「本編といい、後書きといい先生よく喋りますね」
ぺんどら「メタ話はそこらへんにしておけ。さて、今回、こいつ自体は5000字程度になってから投稿するつもりでいたようだが、そこまではさすがに終えられなかったらしい」
シルヴィア「それはともかく、次話タイトルコールに行きたいらしいよ」
次回『デュエル・システム』