魔法の世界へようこそ   作:兎詐偽

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第3話 ≪入学式編≫≪Aクラス編≫

 

 

突然のペンドラゴン先生の無茶振りに周囲の視線もこちらに集まる。

ん?戦いたいのか?と視線を返すとほとんどはその目をそらす。だが、その中でも依然としてこちらを見つめる目があった。彼の目はサングラスのように目元を隠す眼鏡によって見えないが、立ち上がりこちらへ来たことからも戦う気があるのだろうと予測できた。

その彼の後ろを、ヨハンが困ったような笑みを浮かべてついてくる。

 

「本当にやるつもりですか?ドラグバルニ君?」

「当たり前だ!説明だけでなく実体験できるならばやってみるに越したことはないだろう?」

 

少年-グラエム・ドラグバルニの不敵な笑みを浮かべる様子を見て、ジルは小さくため息を吐いた。

そんな彼女の様子を尻目に、ペンドラゴン先生は話を続ける。

 

「ではグラエム男子、ジル女子。説明の前に少し移動するぞ」

 

食堂内の中央、不自然に開けたスペースへ二人を誘導し、床に描かれた線の外に彼女は出る。

 

「説明を始めるとするぞ。

 

一つ、デュエルシステム使用の際には、教師などの監督者最低一名以上の元で行うこと!

 

二つ、如何なる状況であれ、どちらかが敗北を認める。または意識を失うまで戦闘は必ず継続すること(下記の場合を除く)!

 

三つ、事前に生徒手帳に登録している魔法具のうちの一つのみの使用を認める。それ以外の結晶石、および登録内外の魔法具の使用の一切を禁止する。これを破った場合、即座に敗北と判定し、生徒指導室へどのような手段をもってしても連行すること。

 

四つ、フィールドバリアが破壊された場合、再生までの数秒間、戦闘行為を中断する。

 

五つ、敗北者および勝利者には戦闘終了時、フィールド側から回復魔術がかけられるが、回復が足りない場合や回復できない状況である場合、保健室送り(転移)になるので心配ならそちらへ確認するように。

 

六つ、上記全てを守り、技術の限りを尽くし、勝負を行うこととする!

 

いいな?」

 

二人が頷き、学生手帳を使い魔法具を出すのを確認すると、教師用タブレットをフィールドの横。小さく窪んだ場所へと当てはめる。

薄く、しかし、硬いフィールドバリアが張られ、カウントが始まる。

 

1

 

 

2

 

 

3

 

 

Start‼︎

 

 

 

開始の合図と同時に、ジルとグラエム二人は周りを侵食するように術式を開いていく。

 

「やぁッ‼︎」

 

先手はジルだった。魔力放出による加速を伴った重い一撃。グラエムは一瞬遅れて発動した焔纏述式・ルーン、その効果を纏った剣でその一撃を迎撃する。

 

トラックがぶつかったような大きな音が鳴り響き、フィールドがビリビリと音を立てる。

まだ一合目、それだというのにこの威力。この衝撃。燃えるフィールド内でことも無さげに立つ二つの影。

ジルの正面に貼ったスフィア・シールドが、ガラスのような音を立てて割れる音だけが響く。

燃え盛る足場を気にすることなく、ジルは2、3、4と次々にスフィアシールドを展開し、魔力放出で発射する。

グラエムはそれらを躱しながら、斬りはらいながら、距離を詰めていく。

 

「大したものです」

「ふむ、俺に初撃を当てた貴様がいうことか?」

 

4発目の後ろ、隠された5発目の掠った頰に小さな傷を作りながら彼は笑いながら、術式『穿貫炎槍・ゲイボルグ』で胸を穿とうと開放し、勢いのまま剣、否炎の槍を突き立てる。

ジルの目の前、何重にも張られたシールドを容易く貫く。炎で一瞬遮られた彼の視線の前にすでに彼女の姿はない。だが、同時に地面に突き立てられたヴァイトを見て、グラエムはその行き先を知った。

槍に沿うようにして払われる剣はー

 

しかし

 

ー空を切った。

 

『ミスディレクション』。

真横から腹に蹴りを入れられた彼の脳にそんな言葉が過ぎる。

姿勢の崩れたグラエムへと、抜かれた槍がバッドのようにして強打する。魔力放出を伴ったそれにシールド付近まで弾き飛ばされながらも、『灼熱烈波・フラガラッハ』により追撃のスフィアシールドを破壊する。

すぐさま起き上がり、彼女を見据える。

ゆっくりと歩み寄るジル。

 

 

 

フィールド外、ペンドラゴン先生は声を張り上げた。

 

「今の状況どちらが有利に見える⁉︎」

 

生徒達の中ではジルを推す声が続いていくが、ヨハンは逆だと返した。

 

「ほう、どうしてわかった?ヨハン男子」

「それは、彼女が無属性以外極端に魔力がなく、彼が火を得意とするからです」

 

シルヴィアは、なるほどと思った。

通常、固有属性などであったとしても火の魔力は体内に存在する。それらの数だけ、火に対する耐性は高い。周囲の環境の変化程度ならば、温度が50度近くなる程度なら問題はないのだ。

だが、入学時に公開されていた名簿の中でのジルの火の魔力量、それは極少量。一般の魔術師をもはるかに下回るそれはフィールド内についていけているのかどうか、それは彼女の姿を見ればわかった。

 

身体から尋常ではないほどの汗を流し、皮膚をフィールドの熱で焼いた彼女の足には血が滲んでいる。

だが、それに対してグラエムの肌や皮膚は炎による傷跡もなく、運動したことによる少しの汗しか流れていない。

しかも、食堂のフィールドバリアは他に比べて狭く、熱がこもりやすい状況にあった。

 

どう考えても不利。

 

 

「シルヴィア女子も理解したようだな。

絶対的に不利になるのだ、アイツの魔力というのは。水属性相手でも、雷属性が相手でも、基礎属性のそれらに本来抵抗するはずのそれらを持たない魔術師。どうだ、見苦しいだろう?」

 

だが、と続ける

 

「奴は諦めない」

 

 

 

 

 

ジルは考えていた。

これ以上は身体がもたないと。熱中症からか、頭が痛い。火傷からか、足が痛い。

諦めるのか?

 

 

ー違う。

 

まだ試合開始から1分も経っていない。

私は、体なんて動きさえすれば、魔力が残ってさえいればどうでもいい。

この程度では、諦められない。

 

 

ジルは再び立ち上がったグラエムの前で構える。グラエムは答えるように剣を向ける。

「『熱焼乱切・デュランダル』」

 

連続する剣戟、蜃気楼さえ伴うそれをジルはスフィアシールドを貼り直した槍で捌き続ける。髪を焼く。蜃気楼でぼやけ、まともに見えない剣を横腹寸前でとめる。

魔力放出による後押しをうけ、無理矢理に槍を弾き続ける。

 

魔術が終わった瞬間、2分が経った瞬間。止まったグラエムに槍は・・・突き刺さらなかった。寸前で消えた。

デュエルシステムの判定により、意識を失った彼女の魔法具が自動で収納されたのだ。

目の前の少女に、たったまま気絶したジルにグラエムは呟いた。

 

「魔力放出の回数は32回、スフィアシールドは52回」

 

フィールドに示された魔力残量と使用回数。それでもなお半分の魔力が残った彼女の無属性。

 

「馬鹿げている」

 

魔力放出もスフィアシールドも大量に魔力を使う魔術。それがなぜこんなに魔力が残っている。

火属性、一度も使われなかったそれは。その量をはるかに下回る。

過去にこんな極端な奴がいたことはなく、そんな奴が戦った記録もない。

フィールドバリアが解除され、回復魔術により、ジルは起き上がる。

「悔しいですね。負けました」

「何を言う。実質勝っているではないか」

「いや、違うな」

 

ペンドラゴン先生は振り返ったグラエムに言った。

 

「魔力量も魔術師の力量の一つ。それが足らずジル女子は負けた」

「だが」

「だがではない!勝ちは勝ち、負けは負けだ。優遇も迫害だ。間違えるな」

 

グラエムは納得させられた。たしかにそうだと。

 

「今度また、手合わせお願いします」

 

ーーー

 

 

 

昼食の残り、魔女の煮汁ジュースを飲み干し、スパイダーバーガーを食べ尽くしたジルが、保健室へと運ばれた後。

 

「実はな、ジル女子は私の弟子なんだ」

 

ふと漏らしたペンドラゴン先生の言葉に、席を移動し話していたヨハン、そしてシルヴィアは驚かされる。だが、グラエムは一人納得していた。

 

「だから俺の連撃を槍技だけで防げたのか」

「ああ、似たような技を使う奴が私の世代にいてな。私が風属性で真似て突いていたら防ぎ方を覚えたのだ。」

 

そんなに簡単にできるもんじゃないだろ!との周囲のツッコミを無視して彼女の弟子自慢は止まらない。

 

「俺もまだまだだな」

 

最後にグラエムは闘志を燃やして呟いた。

 

 

 




胃痛治りました(キリッ
ジル「うるさいですよ」(グサっ
グラエム「なんだそれは?兎か?焼くか?」
シルヴィア「やめたげてよ」
ヨハン「次回・・・Bクラス編いきます」

また、みて、くださ・・・(ボウッ
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