第5話
Bクラスの月曜日の四時間目それは教師プラムが受け持つ魔術科の時間だ。
魔術科では基本的に魔力のコントロールや術式へのアドバイスなどが基本的に行われる。そういうわけで・・・
「とりあえず、皆んなの魔力コントロールが見たいから先生がちょっとしたおもちゃを用意したよ〜!」
教師用の机の上に大きな箱が置かれる。その箱には授業用魔動人形とあった。
プラムが箱の中から木製の人形を取り出し、そこから伸びた五本の糸を指に絡める。すると、人形は飛び上がり教室中を歩き回って飛び跳ねる。
雪のような白い髪をもつ生徒、スノウ・ホワイトは思わず、え?と声を出してしまった。
このような人形操作は幼児がやるレベルのものではなかろうか?との考えが追従する。
「どうしたの?ホワイトさん?」
「・・・なんでもないのじゃ、です」
「・・・やってみる?」
スノウを前へと呼び出し、箱から一つ人形を取らせて動かしてみるように指示する。
スノウは今更これをもって何とする?と考えながらも、人形の糸を指に絡めていく。
「あっ、そうだ。それ子供用だから気をつけてね」
そう言ってにっこりとした彼女。
スノウは助言を知っておる、と聞き流し魔力を込め、足を動かそうとした。
その瞬間だった。
人形の足が千切れ、とんでもない速度で前に吹っとんだ⁉︎
自身の顔の横、すれすれを飛んだそれに顔を青くするカルマ・デイズの顔が見える。相変わらず、女子のような顔じゃの。
「もう、だから気をつけてねって言ったでしょう?」
人形に壁に刺さった足を引き抜かせ、もって来させるプラム。
彼女はその足をスノウの人形につけながら続ける。
「このおもちゃはね。赤ちゃんのような少ない魔力での運用を前提としてるんだよ、だからね、ある程度大人になるとコントロールがすっごく難しいの!魔力を多く込めすぎるとさっきみたいに吹っ飛ぶし、少なすぎると動かないの。
魔力値1〜10位で普通に動かせるから、みんな頑張ってね」
魔力値1〜10、それは通常の生徒がもつ魔力量1050より遥かに下回る、魔術では使われない極少量の魔力。
これをやることの難しさは立てた10円玉の上に1円玉を乗せるようなことである。もちろん横からの支えはない。
配られた人形の虚ろな目を見つめて生徒達は思った。この先生見た目幼女なのにやること鬼畜じゃね?と。
教室から破裂音が何度も鳴り響く。飛んだ手足で怪我をした生徒に回復魔術も使用される中、やたら元気な人形が何体かいた。
レイラの人形はその中の一体だった。
「何でみんなあんなに苦労してるんだろう?」
「あはは・・・」
諦めたように笑うアキの手元で、人形の首が飛び、天井に突き刺さる。
勿論これには理由があった。
普通、魔術を使う家系では魔力量を増やすトレーニングとそれを操る訓練が行われる。それらで用いられるものは10単位で動かすものなのだ。小学校や中学校でも教育ではそれを用いるのに、突然1〜10を使えと言われたら誰だってできない。
だが、レイラは違った。
彼女の部屋にあったフィギュア、あれも実はこれとほぼ同質のものである。普通フィギュアでも規格がもう少し大きいものなのだが、あれは幼少時に彼女が父親に買ってもらったもの。それをずっと持っていて、たまに誰も見ていない時に遊んだりするのでコントロール能力は抜群である。
ちなみに同じ授業がAクラスで行われた際、ジルは指に巻きつけた段階で四肢と首がもげ、真上の校長室にまで貫通。
若い男性の情けない悲鳴が響いたとの話があるが・・・まぁどうでもいいことだろう。
レイラは暇を持て余し、もう一体もらって人形劇をやり始めたのを見て誰かが呟いた。
逸汎人め、と。
クラスの大半はそれに同意した。
そんな彼女の人形の近くに寄ってくる人形があった。なんか赤いオーラを発している。
レイラの人形が飛び蹴りをするとその人形は素早く躱し、胴体を殴りつけて吹き飛ばす。
「ちぃっ!」
「露骨に舌打ちすんじゃないわよ、レイラ」
ウルーズがいつにもなく、楽しそうな表情で彼女の方を見る。
レイラは片方の人形のコントロールを手放し、もう片方に集中する。
擬似的な組手が始まった、ウル(人形)の殴りを横に逸らし、クロスカウンターで殴り返すレイラ(人形)。
クロスカウンターを上体を大きくそらして躱すが、胸元に擦っていく。一旦距離を開けたウルは爪楊枝を持たせる。
それを見てレイラも同じように弁当の割り箸袋から爪楊枝を取り出し、持たせる。
第1次爪楊枝対戦が始まった・・・?
彼女達の戦いはこれからだ(出落ち感)。
無駄に技術の高い勝負の横で日本人の少年、有馬嵩幸は人形をあれこれと動かしながら教室を眺める。
有馬が見た先では他の生徒ができない生徒に教えている姿もあった。
殊勝なことだ、と1人関心していると前方の席でスノウが人形を動かしている姿が見受けられた。少しまだ動きがぎこちないが、先ほどまでと比べると凄い進歩だな。
そう思っていると首が飛んだ。普段の近寄りがたい雰囲気がさらに悪化している。
普段妹談義をする友人が困っているのだ。少し手を貸そう。
「ホワイトさん」
「っんぐ⁉︎なんじゃ、アリマか」
手元の人形の足が外れた。
「ちょっとそれ貸してみてくれ」
人形の足と首をしっかりとはめ直すと、スノウの人形の糸に触れる。
「人形を動かす時のアドバイスだが、カラダを動かすようにその場所だけ動かすんじゃなく、魔力が水みたいに人形の体を流れるイメージで」
ゆっくりと魔力を流していく。
人形は起き上がるとぴしっと敬礼をした。
それをみて、スノウは試しにやって見ることにした。
「ふむ、水とな・・・」
有馬が指を離すと体勢が崩れた。
スノウは水、流れと呟きながら、ゆっくりと人形の足を動かす。
腕や足なども動くのが早くなっていく。かなりうまくいっているようだ。
彼女のうれしそうな顔をみて、すこし満足させられた。
レイラ「くらえ!ウルトラスーパーファイナル音速速度マシマシブースターロケットセイバーラストエンドオブファイアー爪楊枝ソード」
アキ「略して?」
レイラ「剣」(効果:相手の人形の糸に剣を当てて魔力を流し込んで爆散させる)
ウル「くっそ⁉︎卑怯な真似してくれるじゃない」
スノウ「わしもあれくらいできるようになるのかのう?」
アリマ「(遠い目)」
次回 Cクラス編