魔具科の授業、それは有り体に言ってしまえば技術・工作の授業である。
Cクラスの白板に名誉講師であるジェームズ・ライヘンバッハは、魔法具の簡易構造を描いていく。
「さて、生徒諸君。魔法具において絶対的に必要なものは何かね?」
ジェームズの図表では市販で売られている剣の魔法具が描かれていた。本当に一般的なタイプのものであり、とくに難しい質問をされているわけでもない。
だが、どうしてか、ここで答えると間違えにされると断言できるレベルの胡散臭さがあった。
そのような空気の中、その質問に応えようと手をあげる勇者がいた。
「む、答えてくれたまえ。ミス・カラヒメ」
「金属ないしはそれに準ずる触媒だと私は考えます」
立ち上がった空姫はキリッとした顔で言い切って見せる。
ジェームズ先生はニヤリとして続ける。
「では触媒の最低限のラインがどの辺りまでとされているか知っているかね?」
「・・・?最低限の、ラインでありますか。
木に術式を描いただけのもの・・・でしょうか?」
「ふむ、惜しいとしておくとしよう。座りたまえ、ミス・カラヒメ」
リンゴの絵を描いて、赤色で内側を塗りつぶす先生。
すこし笑いながら彼は言う。
「天然由来のものになると最低レベルはそのままの果実なのだ。
実る木自体の魔力を多く盛り込んで作られるそれは、存外に魔力との親和性がいい!その実別のクラスではリンゴを魔法具として使うものがいるということを聞いた!
私自身がその論文を書いたとはいえ、理論上の話を実践してみせる子が出てくるとは!本当に凄い時代になったものだよ・・・!」
興奮してからか、更年期特有のそれからか、息切れした様子をみせるジェームズ先生。
落ち着いてから、再び講義が再開される。
といっても残り時間は少ないため、課題か何か出す程度であるようだ。
事務員さんに運んできてもらった箱の中身は、様々な魔術触媒のものがあった。といっても鉱石類の類しかない。
「では本日の課題は授業前半で紹介した術式をこれらに刻んできてもらう。期限は二週間。無論、提出後は君らの自由につかってくれればいい。
なんせ買うお金は君らの学費からだからネ」
わらわらと教卓の前の箱に集まる生徒たち、どれにしようかな、といった声なども聞こえる。
そんな中マリアはさっさと拳大の通電性のいい、茶色っぽい鉱石を選ぶ。
少し離れた所から見てみると、イース・アストラルが綺麗な青い鉱石を選んでいた。
彼女の宝石の魔術は戦う度に観戦に集まった生徒たちを驚かせるような、美しさと細やかさを兼ね備えていた。
「アストラルさんは選ぶの早いわね」
「さきに選び終わっていた貴女に言われると・・・なんだか変な気分になりますわ」
鉱石を手元で転がしながらそう言うイース。
そういえば彼女はお茶会などで自作のお菓子なども出していると聞いた。宝石を削って綺麗なものを作りだし、お菓子を焼けば甘く美味しいものを出す。
・・・割と細かさには自信があったのだけれど、彼女には勝てる気がしないわね。
「・・・顔に何か付いてます?」
「い、いえ、そう言うわけではなくって。そういえば、どうしてそちらの鉱石になさいましたの?」
マリアは露骨な話題変換をする。
そのことに首を傾げながらも、イースは答える。
「ほかの鉱石よりも少し輝いて見えたの。この子は磨けばきっと、宝石にも劣らない輝きを見せてくれる、そんな予感がして」
「・・・ふふっ」
宝石を見てきた彼女がそんな風に言うのが面白かった。
それに間違いなく・・・
「?何かおかしかったかしら?」
「いえ、イースさんがそう言うのですから、間違いなく、綺麗なものができるでしょうね」
そんな二人の様子を生徒達からの質問を受けていたジェームズは見つめた。
そんな中、愛用のゴーグルを首にかけたマイス・スタークは、手に取った鉱石を見つめどんな魔法具にしようかと悩んでいた。
ぶっちゃけて言うならば、術式よりも外の形態をどんな風にするかということの方が彼の興味の中心にはあった。
その時、視界の端に桐生 幸人の姿があった。彼の姿より彼の魔法具が思い浮かべられた。かなり特徴的な彼の魔法具・・・。
「銃でも作るか・・・?」
作るものが決まった彼は、課題なんてことは忘れ去り、やはり設計ばかり考えるのだった。
マリア「そういえばさっき事務員さんに聞いたんだけど、残りを持って資材室にいこうとしたジェームズ先生が、持ち上げた時のショックで腰をやっちゃったらしいわ」
姫ちゃん「何というかご愁傷様だな」
イース「それ以上言わないであげて!腰の噂をされてる気がするって、医務室で血反吐吐いたんだからね⁉︎」
マイス「そんなことより加工だーい!」
次回、Dクラス編突入!