魔法の世界へようこそ   作:兎詐偽

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第8話 ≪昼休み編≫≪Dクラス編≫

屋上、見晴らしがよく、日当たりも良く、肌を凪ぐ春風が心地よい場所だ。

本校舎の真上、食堂や教室でほとんどの人が食事している為に貸し切りのような状態になっているそこのベンチで、少女は眠っていた。

 

スヤスヤと寝息を立てる彼女のもとに、というより屋上に珍しくも彼女以外の一年生の来客があった。

 

カフェオレのパックを横に置き、鼻歌を歌いながら本を読むアルト・ミュージアだ。彼女は本に集中していることもあってか、端で眠っている少女の姿は目に入っていないようだ。

 

 

少女が歌声からだろう、目を覚ました。彼女の日差しの中伸びをする姿を見て、アルトは漸くその存在に気がつく。

 

アルトは思った。

この人いつも授業中寝てて、しかも起こされたら逆ギレするめんどくさい人だ、と。

今回もこんなタイミングで起きたなら、私の鼻歌が原因であろうとなかろうと、寝起きはいつも猛獣のような彼女に弁明は通用しないでしょう。

 

面倒なことになる前に、と立ち上がった彼女に眠っていた少女-カレン=ディストは声をかける。

 

「おい、ちょっと待てよ・・・えっと、アルト、だったか」

 

ああ、来ちゃいました。彼女のことですからまちがいなくこれは殴られる⁉︎

 

「その・・・歌、もう少し聞かせて欲しかったんだが・・・」

 

まさかのツンではなくデレでしたか。

 

立ち上がったアルトの頭の横に手をつき、屋上の壁に縫い止めるカレン。所謂壁ドンをやってのけた彼女はダメか?と首を傾げて言う。

 

この二人、こうして近くにいると眠たげであったり、やる気なさげな雰囲気が似ている。その一方で、カレンの真っ黒な髪とアルトの真っ白な髪は真反対のコントラストだ。今この状況も捕まえる側と逃げようとする側と、やはり反対の様相を醸している。

まぁ、それ以上にぶつかり合って少し潰れた胸に男子なら目がいってしまうだろうが。

 

突然の壁ドンに驚いていたアルトだったが、首を傾げて言うカレンが、普段の彼女の様子からは考えられない程可愛らしくて思わず、にこりとしてしまう。

 

 

その時、不意に屋上の扉が開き男子生徒、ヴィント=フォルトゥーナが顔を出す。

そして不運かな、壁ドンをする美少女とされる美少女。しかもしている側が普段のツンツンした様子からは考えられないほど落ち着いた様であり、さらにされている側はにっこりとした笑顔だった。漫画であるなら白百合が背景に大きく張り出されるであろうような雰囲気である。

だが、どちらも今はこちらを向いて驚いた様子で沈黙している。痛い、主にカレンからの視線が痛い。

 

「失礼シマシタ」

 

反射的に出た言葉を残し、ヴィントは屋上の扉をそっと閉じると、階段を駆け下りていった。

数秒遅れて扉が蹴り飛ばされ、カレンが追いかけていく。

「待てコラァァァァァァッ‼︎」

「待てと言われて待つ奴がいるか⁉︎」

 

カレンの蹴り飛ばした扉はアルトがしっかりと閉じた。

 

 

 

そして捕まえられたヴィントは再び屋上へと拘束されていた。

スリリングなことは好きなタイプだがドMではない彼にとって、自身を縛り付ける荒縄は不快なものだった。

だがそれ以上に、カレンの先程自身が寝ぼけてやった恥ずかしい行為(壁ドン)を見た奴は生きて返さない、といった逆ギレに近い精神性で詰め寄って来ているのが怖い。

完全に猛獣と餌の様相である。

カレンが口を開く。

 

「一応確認する・・・見たな?」

「み、見てないぞ」

「・・・」

 

じっとりした様子で見つめるカレンと、至近距離の彼女にドギマギさせられているヴィント、そしてその様子を眺めているアルトは面白いですねぇ、と傍観していた。

 

助けて、とアルトに視線を送ってみる。

 

目を背けたことに、さらに怒り詰め寄る猛獣。

 

愉悦を増していくアルト。

 

 

なるほどこれは手詰まりだ。シラをきるしかない。

 

「本当にみてねぇって!」

「・・・何を?」

「そりゃお前らの百合行為をだよ‼︎」

 

・・・あ。

 

「やっぱり見てんじゃねぇかぁぁぁぁッ‼︎」

「やぁぁぁぁぁぁッ⁉︎」

 

「ふふふ」

 

可愛らしいアルトの笑みを尻目に、さらにカオスを深めていく屋上での一幕だった。

 

 

この後に彼は縛られたまま逃げ回ると言う器用な真似をしてのけるのだが、即座に捕まり屋上から吊るされたとか言うのはまた別の話。

 

ちなみに吊るされるほどにまでなってしまったのは、追い詰められた彼が思わず呟いてしまった、可愛い二人が、という言葉にカレンが照れてしまい、しかもそれを隠すためにさらにキレたからだったりする。

 

 

 

なんと言うか、自身の属性の本質を表したかのような、不運な昼休みを過ごすことになったヴィントだった。

 

 

 

 

屋上での一幕の裏。

校庭ではCクラスの、互いに火に関連した属性の二人が喧嘩腰に戦うのを野次馬が観戦している。

 

次の使用を予約しているアガサ=ベディヴィアは、試合の行われている横でカリヴァン・レプカの刃を磨いていた。

試合が終わったその結果にも興味はなかったらしく、戦闘の終わった二人を素早くフィールドから追い出した。

 

 

一方、実技の演習試合ということで誘われた(強制)アンリエッタ・アリメールはというと。

 

「おぉ、今日はウルさんが勝ったんだ〜」

 

と呑気に試合結果を見ながらお茶をしていた。お茶請けにと用意したお菓子は一緒に座っていたストーリー=グランウェルにほとんど取られてしまっている。

 

 

「アンエッタ、早く来て」

「は〜い」

 

急かすようなアガサの声に、彼女はお茶をしていた皆に手を振りながら前に出る。

前に出る過程で揺れた豊満な胸元に、観客席の約2名が「死ねッ‼︎」と言わんばかりの強力な殺気を放った。

そのAクラスの女子(Dクラス編なので匿名のJ)とロードは互いに顔を見て、次に胸元を確認し、なぜかがっしりと手を握り合った。

そう、貧乳同盟が結成された瞬間だった。

 

 

「準備は、いい?」

「あ〜、ちょっと待ってくださいね〜」

 

あたふたと生徒手帳から魔法具であろう指揮棒を取り出す。

火と水を意匠としたそれは、赤と青のコントラストが美しい。

 

美しい魔法具と言えば、さっきから何度もアンリエッタを急かしているアガサの魔法具も中々のものだ。

黒い持ち手からスラリと伸びた薄緑色の刃は、太陽の光を浴びて凛然と輝いていた。

 

観客席からの応援を受ける二人が準備を整えたのを確認し、フィールドは万全を期して展開された。

 

 

試合スタートの合図が鳴った瞬間、アガサは光迷彩を発動し剣身を隠すと共に、アンリエッタにむけて一直線に突撃する。

対する彼女は指揮棒を演奏しているかのように振るい術式を用いてリジェット・ベアを召喚する。

 

「それいけベアちゃ〜ん!」

「はァッ‼︎」

 

一合目を止まることなく横凪ぎに振るったアガサの剣を、リジェット・ベアは受け止める。熱湯で形成されたその体の温度が剣を通して伝わってくる。

馬力負けから弾かれ、そのままに一、二歩後退するアガサ。

 

二人(?)の衝突を尻目に、アンリエッタは続けて形成の術式を展開していく。

作り上げられた大きな4体の獣人、ヴェイパー・ゴーレム2体とアンチクール・ゴーレム2体は、彼女の指示に従いリジェット・ベアと打ち合いをするアガサを包囲するよう展開していく。

そして包囲が完了次第、リジェット・ベアをすぐさま呼び、その上に腰を下ろす。

ライトノベルなどでは包囲する戦術を取る盗賊や兵士などは敗北を喫することが多いが、現実は違う。いかな達人や豪傑であっても背後に目が付いているわけでもなければ、手が4本あるわけでも無い。

 

ゴーレム達をそのまま打ち合いに合わせて突撃させるだけなら馬鹿でもできる力技だ。それが悪いわけでは無いのだが、仮に相手がペンドラゴン先生のロンゴミアド(極端すぎる例だが)のような高威力の魔術を所持している場合には、まとめて消し飛ばされ、次のゴーレムの召喚を待つまでもなく攻撃でやられるのがいいところだ。

最初、アガサが形振り構わず突撃したのも、一人で包囲網を形成でき、かつ頭が悪くないアンリエッタのことを警戒したが故である。

さらに、リジェット・ベアを手元に置くことで、転移系のような座標指定が必要な魔術に対するアンチとなる。

 

 

勝ち目を着実に潰すやり方は流石アンリエッタと言った所である。

 

だが、兵法的にはそうであろうとも、アガサもこのまま大人しくやられてやる義理はない。

アガサはゴーレム達の熱気に包まれ、その暑さから体力を一気に奪われ汗を流しながらも、天体魔術:裏式を発動させる。

 

ゴーレムの、常人ならすぐにやられてしまうであろう四方八方からの攻撃を、光データの移動として観測し回避していく。

剣を使っていなし、あるいは身をそらして、はたまたジャンプしてまでも躱していく。

こんなことが可能なのはまた、アンリエッタが魔術師として励み、商家の娘であるからだった。つまりは、武術に関する心得が少ない相手であるからこそということだ。

 

膠着状態のそれに堪え兼ねたアンリエッタはゴーレム達に命令する。

 

「ゴーレムちゃん達、ロケット・パンチファイアー!」

 

武術のそれなど関係のない四方八方からの一斉射撃(?)。ゴーレム自体の熱湯の、または蒸気の体が未だ道を塞いでいるため、逃げることは困難だろう。

再展開を可能とすることなどのために比較的近いところから命令を出していたアンリエッタの元に熱い風が吹き、蒸気が辺りを覆う。

豪快な破砕音に彼女は思わず呟く。

 

「やりました・・・?」

 

 

 

 

だがそれは間違いなく悪手だった。

 

「チェック」

 

アンリエッタは何もない、いや、霧でほとんど見えないが僅かに歪んだ背後から胸を刺し貫かれた。

 

彼女はしまったと感じると共に自身に対し怒りを感じた。

変身魔術:光による擬似転移と、全身に広がった光迷彩に対しては視界の悪い状況下では、こちらからの確認が難しい以上リジェット・ベアをもってしても対応は困難であるということ。そして何より決定打になる視界状況に関しては自分自身が原因なのだ。

 

刃が引き抜かれ、一気に吹き出た血と痛みから意識を失ったアンリエッタ。それに伴い、ゴーレム達は形を失い解けるように姿を消す。

霧の晴れたそこには、光迷彩を解いたアガサが、気絶したアンリエッタをお姫様だっこで抱きしめ立っていた。

 

 

 

勝者、アガサ・ベティヴィア。

 

 

 

観測魔法に擬似転移、短期決戦だったとはいえ、馬鹿にならない魔力消費量だ。加えて熱による熱中症でくらくらする頭が、フィールドからの回復魔術で、スッキリとする。

アンリエッタの方を見てみる。

 

「悔しいなぁ〜」

 

そんな風に呟く割には相変わらずののほほんとした表情で、ある意味ポーカーフェイスなんかよりもタチが悪いと感じさせられる。

二度と戦いたくないと思わせられる程、相性の悪い、いや、頭の回る相手だった。

 

 

アンリエッタが座っていた観客席に戻ると、ストーリーがおかえり、と声をかける。

 

「試合すごかったよ〜」

「負けちゃいましたけどね〜」

 

彼女の後ろ、アンリエッタが用意していた菓子があった皿の上からは綺麗に何もなくなっていた。

後から聞いた話によるとCクラスのレイラさんなんかも食べていったらしい。

 

「ところで5時間目って、なん分からだったっけ〜?」

「確か20分頃からの・・・」

 

相変わらずのストーリーのアホの子具合に、笑って答えながら、今なん分だったかと目を向けて固まった。

時計の針が指す時間、それは紛れもなく17分だ。教室に戻るまでにかかる時間、だいたい5分くらい。5時間目、国語の、それもペンドラゴン先生の授業だ。

あの体罰という言葉が通用しない、遅れたものやサボりにはやたら口うるさい彼女の授業だ!

 

普段はゆるいアンリエッタが覚醒したように焦った顔で走り出した。

「きょうそう?はっしれー‼︎」

 

ストーリーが馬鹿みたいな速さで走っていく。今ばかりは彼女の運動神経が羨ましい。

 

 

 

結果、予想通り授業に遅れたアンリエッタは、授業中ペンドラゴン先生の怒りによりダダ漏れとなった魔力による暴風の中、授業を受けるハメとなった。

 

 




第9話ご投稿に関してもうしわけありまs
オレっ娘カレンちゃん「申し訳ありません、申し訳ありませんって、うるせぇ」
ゲボラっ⁉︎復活早々殴るなんてひど
アルト「えいっ」
アンラッキーな人ヴィント「うわっ、氷漬けになってら」
オレっ娘カレンちゃん「・・・おい、どうやって縄解きやがった?」
アンラッキーな人ヴィント「・・・(逃走)」
アルト「カレンさんまた追いかけていっちゃいましたか」

謎のヒロインJ「貴女という同志がいて心強いです、ロード」
無駄乳(キョニュー)スレイヤーL「ええ!主に身体格差ばっかり生む神へ復讐を!」

そんなに睨まないでくださいよ、JはともかくLさんの方私が作ったわけじゃないですからね?
え?どっちにしろ『私が貧乳なのはお前の所為』?
ちょっ、まっ、氷漬けの上にそれはまずいですって、ダメッ⁉︎砕けるって待ってぇぇぇぇぇぇぇぇッ⁉︎


アホの子「せんせいすごくおこってたね〜」
計略系ゆるい人「・・・」
光の剣士「だから私はさっさと戻ったのに・・・。っていうかなんでストーリーさん元気なの⁉︎」

次回 Dクラス編つっづく〜
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