魔法の世界へようこそ   作:兎詐偽

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第12話 ≪授業編≫≪放課後編≫≪Fクラス編≫

 

Fクラスの今日の魔化学科の授業は、実験室で行われていた。厚いカーテンで覆われた部屋の中で生徒たちはパラケルス・ハイム先生の白板の指示に従い、魔力回復薬であるハイポーションを製作していた。

 

このクラスでは以前にポーションを製作しており、その際にそれぞれの班で2本ずつ作るよう指示していたので、自分で飲んで試して見るという荒っぽい効果試験に使ったのとは別のもう一本がそれぞれの手元にある。

そこへマンドラゴラとナツメグ、ドラゴンモドキなどの香草や薬草を放り込んで煮ると、ポーションは海のような青い色からハイポーション特有の血のような赤い色に変わる。そうなれば実験成功であり、効果を試すために試飲するだけである。

 

そのはずなのだが・・・

 

「どうして・・・こうなった・・・」

 

カトレアの班の鍋の中では泥のような色合いの謎の液体、名付けて廃ポーション★が完成していた。

煮込み時間は確かに三分、タイマーで測ったから間違いはないはずだ。すでに自分の役割を終えて暇そうにしていた班員数名に目を向ける。

 

「な、なんでハイポーションからこんな臭いするの⁉︎」

 

鍋からの悪臭に涙目になっているヤヨイ・イエローショウル。

 

「すごい、これはすごいものを作ったものですな!」

 

何故か楽しげな表情で鍋を覗き込むシェイル・ドイル。

 

「初めて作ったのだけど、これは失敗って言う領域を超えてると思うわ!」

 

窓を開いて、ケホケホと咳き込んでいるメアリー・F・クロミコン。

 

「はてさて、一体どうしてこんなことになったんですかな?」

「私が知ってるわけないでしょ!あとさっきから興奮してうるさい!」

 

我輩気になる、と意気込むシェイルがうるさいので取りあえず黙らせる。

巡回してきたパラケルス先生が面白いものを見つけたという表情で、ニコリとしながら寄ってきた。

「これはまた面白いことになっていますね」

「「先生〜!」」

 

先生は泣きついたヤヨイとメアリーの二人を軽く手で退けると鍋から一杯分コップで攫う。

すくいあげられたその液体はガラスのコップの中でドロリとした感触をより鮮明に伝えて来る。ビジュアル的には完全に嘔吐物である。

何を思ってか先生は軽くコップのそれを口に含みそして・・・飲み込んだ⁉︎

 

「ちょっ、先生⁉︎」

「なるほど、舌が焼け付くような塩酸の感覚と、詰まった排水口に溜まった汚水のような風味が、甘酸っぱい味をさらに改悪していて・・・ゲボラッ⁉︎」

 

パラケルス先生は倒れた。

先生の頚動脈にすかさず手を当てるシェイル、そして脈がありませんな、大変ですぞ!力尽きてますぞ!とまた楽しげに言う。

流石にウザいのでシェイルの口にコップの残りをぶち込む。

 

「ゲファぁッ⁉︎」

 

血反吐を含んだものを彼が吐き出すのを傍目に、生徒手帳で二人分の担架を出してもらい、そのまま病院まで運んでもらう。

残った廃ポーションは三人で分けて瓶に詰めて置いておいた。

 

それにしても、何が悪かったのだろうか。

私が加えたのは味を整えるのに何か入れていいと言われてから激辛スープの素を入れただけだ。

時間はちゃんと守っている。

 

 

 

「もう、絶対に実験でカトレアちゃんと組まないのぉ!」

「激しく同意するのだわ!」

 

何故か意気投合しているヤヨイとメアリーを傍目に、騒然とした実験室をチャイムの音と共に後にするカトレアだった。

 

ちなみにその鍋の残りはちゃんと瓶に入れて保管されている。世にも珍しい不味さで人が蘇るポーションとして、のちに展示されることになるのだが。まぁ、どうでもいいことだろう。

 

 

 

放課後、カトレアは美術室で水刃を使い、様々な形を作っている。それが日課だ。

昨日の続きを、と生徒手帳の収納機能から手のひらサイズの長方形の木材を出す。

人型にまでは切り出しておいたそれを前に誰を掘り起こそうかと悩む。学園に入ってからは確かリュート・D・ブレイブのを作った。彼のは本人よりもおまけで作るつもりだった竜モードの方に手が入ってしまい、蛍光塗料とかも塗って製品化できそうな感じにしてしまった。そのおかげで1週間完成が遅れた程だ。ただ気に入らなかったのはやはり本人の写真だけで作ったという点だろう。実物を見て作る方がやはりいいものができそうな気がする。

 

そこまで考えてやはり教室に戻ってだれかにモデルを依頼しようと思い、顔をあげるといつのまにか学級委員長のレイカ・ブルーツリーやダ・ビンチ・ローズフィールドがこちらを遠目で見ていた。

木の塊はそのままに二人の方へ行く。

 

 

「・・・珍しいわね、私の作業を見に来る人がいるなんて」

「リュート君の木像掘ってた時から見てたましたよ?」

「君がなかなかいい木像を作ると聞いて見にきたのさ」

 

ダ・ビンチの言葉には、私の方がうまいけどねと言う含みがあるのは顔を見ればわかる。

レイカの方は集中していたからか、全く気がつかなかった。

そういえば、レイカはリュートと一緒にいるのをよく見かけるなぁと思った。それに見学に来た理由も彼の像を彫っていた、ということである辺り彼女はリュートのことが好きなのだろうか?それなら・・・。

 

「次の像だれにするか悩んでるんだけど、貴女に頼んでもいい?」

「え?別に構いませんよ」

「もしかしてブレイブ君の像と並べて置く気かい?」

 

ダ・ビンチの言葉にそうよ、と答えるとレイカが先ほどよりも積極的になる。

そういうわけで、彼女をモデルとすることが決定し、作業を始める。

まずは四方八方から彼女を眺め、絵に描き起こして行く。写真のようにただ描いていくだけではなく、体の足や太ももの身長に対する割合などもこと細かに付け加える。

 

カトレアの手がこそばゆくて、レイカは少し動くと睨まれた。睨まれるのが怖いのですぐに姿勢を戻す。

そのやりとりが二時間ほど続き日が暮れる頃になってやっともう大丈夫という声がかけられました。

私はモデルを承諾したから、あんまり文句を言うつもりはないですが、同じ姿勢ってキツいんだとはっきり思い知らされました。

 

「今日はこれで終わりだけど・・・明日も、来てくれる?」

「はい・・・」

 

背を向けて道具を片付ける彼女が、はいと言う一言の返事に対して何処と無く嬉しそうでした。

 

 

 

 




水の彫刻師「それにしても本当にどうしてこんなポーションできちゃったのかしら・・・?」
泣き虫元気娘、黒魔術の申し子「「まだ自覚ないの⁉︎」」
第一犠牲者・元素の魔術師「・・・本当にすごいポーションですね」
第二犠牲者・劇作家「全くですぞ・・・」

委員長「まだ腰が痛いです・・・うぅ・・・」
万能たる美しき人「まぁ、私も作る側だと同じこと言うだろうから、それはしょうがないと思うよ?」
委員長「もう少し考えてから、許可するべきでした・・・」



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