第1話 いつもと変わらない風景
入学式から早1ヶ月、今日も魔術学園はいつも通り休まることもない騒がしさを見せている。
昼休みの食堂でいつものようにリヒャルド・マルコフは子分達に食券を適当に確保してもらうつもりでいた。だが、1時間目から4時間目までの休み時間一度も顔を出さない彼らをおかしいと思い、BクラスとFクラスを訪れると案の定熱を出して休みだということだった。熱が流行っているから仕方ないかもしれないが三人とも同時とはどうなのか。
だが、食堂へ走るリヒャルドの頭の中は別の事柄でいっぱいいっぱいだった。
(スパイダーバーガーセットだけは嫌だッ!)
そう、完全にスタートから遅れていた彼は例の毒物と疑わしきダークマターを食べることになる可能性が高かったのである。
その実、やっとの思いで着いた食堂の食券販売機の前は戦争のような有様だった。ちなみにこの光景は開校以来よくあることらしく、食堂では中央だけでなくそこにもバトルフィールドが用意されている。食券を求めて誰も彼もが餌を与えられた鯉のように群がっている。
だが、この有様であるならば間違いなくマトモな食券は残っているということだ。
リヒャルドは魔法具である二対の蛇が巻きついた様な意匠が特徴的な杖、レボルティオンを取り出し、フィールドへと入っていった。
食券販売機前での現在の戦況はこうだった。Bクラスで犬猿の仲として知られるはずのウルーズとレイラの共同戦線による悪魔的な破壊力を前に男子生徒たちが手を組んでそれを討伐にあたろうとした。
共同戦線へと挑んだ男子軍、卑怯にもその背後からアンリエッタとチャール・エドワードが攻め込み駆逐している。それでも希望はあるッ!と屍の山の中でリュートと数名の男子が奮闘し、それを中央にいるクリス・ウィリアムが苛立たしげに援護している状況だった。
「バカなやつらだな」
リヒャルドは襲い来る数名の男子を召喚した蛇達に相手させ、悠々と食券販売機へと向かっていた。幸い主戦力達には気づかれることはなく、簡単に辿り着く事ができた。
そして、残ったハムレタスサンドのボタンに手を伸ばして押すその瞬間、全く同時にボタンに押す人影があった。
紛争地帯の中央を薙ぎ払って突撃してきたその影は足元に蛇の頭を踏み潰していた。
その人の顔を見てリヒャルドは思わず呟いた。
「あ、レイドリウス家の貧にy「それ以上続けたら問答無用で頭に槍をぶっ刺しますよ?」」
彼の呟きに彼女は殺意のこもった鋭い目で睨みつける。そんなことより、と彼女は相変わらずの無表情で続ける。
「手を退けてもらえませんか?」
「この状況で退かすように見えるなんて・・・案外レイドリウスも頭が悪いんだね?」
「・・・ええ、まぁでも貴方のように道理を理解しないよりは幾分かマシです。それから!私はもうあの一族とは関係ありません。今の私はレイドルフの孤児です」
「なるほど、自分から家を捨てるって名乗るなんて、一族じゃなく君個人が馬鹿みたいだ」
口での言い合いは段々とエスカレートしていく。最終的に殴り合いになりそうな程になった頃、本来の目的を忘れていた二人の腕の下の発券口から覗いていていた券の頭を掴み取られた。そしてやっと彼らは目的を思い出した。
略奪者然とした態度で券をさらっていったのはアンリエッタだ。よくよく見ると彼女の背後には全身火傷かつずぶ濡れのチャールが倒れている。背中の火傷が酷いあたり、背後から攻撃されたのだろう。
アンリエッタの方にハッと振り向くが時既に遅し。彼女は食券を交換するための列へと入っていた。
未だ睨みつけてくる二人に対し、アンリエッタは穏やかな表情のまま口角を吊り上げる。
「卑怯とは言わせませんよぉ〜?レイドルフさんもマルコフくんだって私達がその券を賭けて戦っているのを無視して取りに向かったのですからぁ」
「くっ」
ねぇ?と穏やかに同意を強いる彼女にどちらのものかはわからないが、呻くような声が出る。
スパイダーバーガーセット以外の券がなくなったことで、フィールドが解除され倒れていた生徒たちは立ち上がっていく。そして先ほどの乱戦が嘘のようにちゃんと並んで買っていく。むしろ後ろへ行こうとする姿が見える気がするが気のせいだろう。だが間違いなく言えることはその内の並んでいる生徒たち内たった一人の勝者を除いた全員の目が死んでいると言うことだけだ。
「全く、裏切りとはひどいでござるなぁ?アンリエッタ殿?」
「酷いだなんてそんなこと言わないでくださいよぉ?私が前を歩いていたら奇襲する気満々だった人に言われたくないのですよ〜」
「えー、バレてるとかありえないわー」
「まだまだでござるよぉ?」
「まだまだでござったなぁ?」
チャールとアンリエッタは互いに笑顔で会話をしているが、話の内容からは二人共裏切る気満々であったことが滲み出ている。レイラに付き添ってきていたアキがその会話を真後ろで聞くこととなり、苦笑いを浮かべている。
そんないつもと何一つ変わりのないように思えた食堂の風景だったが、この昼休みに既に異変は始まっていた。
あ、ちなみに異変というのはただ一人笑顔でスパイダーバーガーセットをおかわりするシャルロット・ランスロートのことではないので悪しからず。それを見てマリアが引きつった笑みを浮かべているところまで日常風景だからだ。
昼休みも後半にさしかかり、残り20分に差し掛かった図書館では最終戦で仲間割れをして負けたレイラがウルーズのとなりでぐでーっとしていた。ちなみに
「それにしても、本当に壮絶な味だよねぇ・・・」
「それに関してだけはアンタの言うのに全くもって同意するね。・・・負けたのは間違いなくアタシのせいだけど」
「何言ってるんだい・・・僕の方が悪いに決まってるじゃないか。最後の言い合いは僕から始めちゃったことだし・・・」
「はいはい、ストップ。また君らそうやって自分が悪いって言い合ってどっちが悪いかとかで喧嘩しだすんだろう?いつもなら構わないけど図書館だから、ね?」
そう、この二人の喧嘩はだいたいそんな感じのものばかりである。
同時に手に取ったプリンの譲り合いで喧嘩になるなど馬鹿らしいものが大半で、その上戦っている途中で笑いながらやり合っているのだ。だからこう言われる。
「・・・やっぱり君たち本当は仲いいだろ?」
「「違うっ!」」
アキのからかいに声を揃えて否定をする二人。似た者同士であるのはまず違いないだろう。
さて、今日彼らが図書館に来ているのには理由があった。
風邪が流行っている学園内では、なんと風邪をひかないことで有名なペンドラゴン先生まで午前中の授業を休んでいた。そのために国語科で特別な課題を代わりに出されたのだ。それは本に関して読書感想文のようなものを書き、1週間以内に提出というものだった。勿論、そういった類の感想文は後回しにしてしまいがち、ということもあるのだが、今回の課題では別の問題があった。
800年代の著名な作家の一人であるファニー・ヴァンプの作品を読めという課題なのだ。彼女の作品はどれもこれも哲学地味た側面があって読みづらく、しかも古語で書かれているため訳す必要まであるのだ。
そこまで来ると予習していたはずのアキでさえお手上げということになり、とある人物の手を借りに図書館へやって来ていた。
「待たせたわね」
「おーユリア先生だ!」
「ユリア先生だ、よろしく」
「・・・ユリア先生はやめなさい」
図書館にいつも通い、本の場所まで覚えている彼女ならば、と頼み込んだのだ。もちろんタダではなくちょっとした約束をして教えてもらうことになったのだが、それはまた別の話。
さて、話は戻るが沸点の低いことで有名な彼女の苛立たしげな声に、ビクリとするアキ。だがレイラは無邪気に続ける。
「教えてくれるなら先生って言わなきゃ失礼になるかと思って」
「それなら、構わないけど」
まんざらでもない、といった具合になった彼女に内心若干身構えたウルとアキはそっと胸を撫で下ろした。
二人の様子に気づくことなく、ユリアは三人の座る机に三冊の本を置く。
「とりあえずパッと聞いた感じでそれぞれに合ったのを持ってきたわよ。アドバイスとかはメモして挟んであるから、わからなかったら聞いて頂戴」
そう言ったっきり、もう一つの席へと座り込んだ彼女は本を読み始めた。
レイラは頑張って本を訳し始めた。その手始めに題名に取り掛かる。
その題名は『
無属性の尖兵「やっと始まりましたね、第2章。予告から本編をやるまでなにしてやがったんですかねぇ、この駄兎は?」
えぇ、と?虹六とか、その色々面白いものがあり、プロット制作も大変で・・・
無属性の尖兵「・・・まぁ、そういうことにしておきましょうか。あ、このスマホのやっていないであろうfgoとかいうゲーム消しときますね?」
ヤァァァァァァ⁉︎
闇の龍「見るに耐えない自業自得だねぇ?」
謎のヒロインJ「てめぇ次ふざけたこと言ったら○すからな?」
闇の龍「わかった!わかったから首元に槍を突きつけるのをやめろ⁉︎」