僕ノ葬式ト彼女ノ生キルセカイ   作:阿佐ヶ谷星空

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第十譚 新たなる生活

第十譚  新たなる生活

 

  2014年、10月10日。あれから2年が経った。西日本で発生したゾンビは瞬く間に大阪を支配した。大阪府全域に巨大な壁が築かれ、大阪以外のゾンビはすべて殲滅した。この出来事により日本の国会は自衛権を強く主張、核爆弾がゾンビ殲滅に多大な貢献をもたらした事もあり、日本は再軍備化への道を歩んでいた。

 

  京都府京丹波地区、ここでは鳥人間コンテストが開かれていた。

「さあー始まりましたー今年の鳥人間コンテストー!!では参加者を発表しましょう。」

  司会の女性が促すと、次々と鳥人間達が会場に入ってきた。観客達が悲鳴を挙げる。

「まずは一番、鶏との合成人間、MG4500だぁー!!」

「ぐぇぇぇぇ」

「続いては二番、鳩を人工進化させたP820だー」

「ぐぇぇぇぇ」

「お次は三番、経歴不明!WW4Xⅱだーっ!!」

「ぐぇぇぇぇ」

「最後は人間に鳥類のDNAを注射した検体番号七七一号だー!!寿命は2年になります。」

「殺してくれ。」

  観客達が拍手を送る。

「では一番から!最初は4億円からになります。」

  観客達が次々と数字を提示していく。ゾンビパニック以降、荒引博士の秘密研究が公のものになった事もあり、各国の違法な研究が次々と明るみになった。そのため、こうした資金稼ぎが公然と行われるようになったのである。

「一番は15億円で落札!」

 

  鳥人間コンテストは大盛況だった。司会のAYACOは2年前、ゾンビに襲撃された嬉々金島の出身だ。島が襲撃された時、彼女はいち早くすべての住民を見捨てて島を脱出した。だからこそ今の生活がある。その後島がどうなったかなど知りたくもない。

  そもそも島を出てパンクバンドとしてメジャーデビューしたかった彼女だが、メンバーは全員犯罪者だったのだ。ゾンビに襲われた事はむしろすべてに見切りを付けるいい機会だったのかもしれないとさえ思うようになった。

  AYACOは自らの美声を活かして、本土ですぐに職を見つけた。真っ当な仕事ではないが、島での生活と比べればかなりマシだ。

  現在、AYACOは京都市のマンションに住んでいる。深夜、帰宅すると仏像がいた。

「えっ」

  AYACOは仏像に見覚えがあった。この仏像はかつて嬉々金島にあった物だ。その仏像がなぜここに。昔メンバーと一緒にアサガオの種を仏像の顔面に植えた事がバレたのだろうか。

「きゃあああああ」

  AYACOは叫んだ。しかし、気がつけば彼女は和室にいた。バカな。今まで自室の玄関にいたはずなのに。

「やっと現れましたね。あなたが最後ですよ。」

  和室には大勢の人がいた。全部で11人。自分も含めれば12人だ。

「私はタカオ。あなた達をお呼びした十一面観音の精霊です。」

  和服の男が言った。

「今日はせっかくなので同窓会という事で、私が思念を取り込んだ人間で現在生きている物達を呼ばせて頂きました。」

  見ると、一部の人間達には見覚えがあった。バンドのメンバーだ。

「久しぶりだな。AYACO。」

  シリウス岡部が言った。

  尺八の音も聞こえる。曽良だ。

「オオババババブブブ」

  松尾・セクシュアリティ・芭蕉が喚く。

「お前たち生きていたのか。」

「みんな刑務所行きさ。」

  メンバーは笑った。

 

  一方で本堂家の人間達も同窓会をしていた。

「まさかマックス函館が総理大臣になるなんてな。」

  お圭は笑った。今、お圭はお幸と共にピコピコ動画の踊り手として活躍している。

「今度アメリカ軍を皆殺しにするよ。」

  マックス函館はさらりと言った。マックス函館は20代にして総理大臣となった期待の星であり、自らの主張を通すためには殺人も辞さない覚悟が人気の秘訣だ。

「アメリカ軍と言えば、あの時アメリカ軍のヘリが助けに来てくれなかったら核爆弾で俺たちは全員死んでいたな。」

  修造が言った。修造は東京の高校に通っている。叔母の元で居候生活だ。

「藤正老は実験台に連れていかれたけどね。」

  魔弥乃が悲しそうに言った。魔弥乃は埼玉県のゾンビ被害者受け入れ地域に身を寄せている。夕乃とお由もまた同じところにいる。

「本堂家も無くなって我々も自由。それでええやないの。」

  夕乃があっけらかんと言った。

「僕は都に出てスター女優になる。」

  二十年後、お由は新宿二丁目の怪物と呼ばれ恐れられる事になる。

「ではあなた達の命を頂きましょうか。」

  タカオが言った。

「何だって。」

「このタカオは対となる十一面観音像タカシと精神がリンクしていた。つまり、貴様らの精神とリンクしている。貴様らの肉体を乗っ取り、私は人間になるのだ。」

  タカオが邪悪な笑みを浮かべる。

「馬鹿な、やめろ。やめろおおおお」

 

  AYACOはそこでベッドから起きた。周囲を見渡す。AYACOの部屋だ。和室ではない。記憶もちゃんとAYACOの物だ。つまりAYACOはAYACOだ。

「なーんだ、夢か。」

  AYACOはベッドから出た。洗面所に行くと、天使がいた。

「しねええええ仏像めがあああ」

  AYACOは槍でさされた。

「ぐああああなぜ私がAYACO・ではないと気が付いた。精神擬態は完璧だったはずだ。」

「神の目はごませぬうううう」

  天使はAYACOもといタカオの心臓を引きずり出そうと必死だ。しかし、AYACOは光だした。

「この肉体の代わりなぞいくらでもいる!ゾンビがいくらでもいるようにな。自爆して貴様を道連れにしてやるわ!」

  その日、京都市のとあるマンションの一室で爆発があり、中に住んでいた元町綾子さん(32)の屍体と身元不明の男性の屍体が見つかった事は言うまでもない。

  ゾンビはどこにでもいる。気がつけばそこにいるのだ。それは自然現象に近く、人間の力では止められない。

 

  僕ノ葬式ト彼女ノ生キルセカイ

 

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