僕ノ葬式ト彼女ノ生キルセカイ   作:阿佐ヶ谷星空

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………………みつ

…………み…………


………………け……
…………みつけた…
………………………


第二譚 闇の支配

第二譚  闇の支配

 

  角園村の海岸沿いに長々と続いている坂は村人達から「黄泉転がり」と呼ばれている。何故そう呼ばれるようになったかは、今となっては定かではない。近くの波止場から高台まで、急勾配の坂道が何十メートルと続いている。また、坂を下った先にある波止場は主に漁師達が船を停める為のもので、本土からの定期便はこの波止場に来ることはない。つまり、この辺り一帯は基本的に島の住人達しか寄り付かない地域だった。

  黄泉転がり坂の中伏辺りに居を構える、佐渡島豪次は漁師だったが、この日は家の窓から奇妙な光景を見ることになった。

「何だあれは。他所者かいな。」

  豪次が見たのは、波止場に止まっている、見たことのない一隻の船だった。豪次は続いて坂を見た。日が沈んで来たのでよく見えないが、若者二人が坂を全速力で駆け上がっていた。

「さては本土の悪ガキどもが断りもなく上陸したか。」

  豪次はそう呟くなり、壁に立て掛けてあった猟銃を手に取って外に出た。何故、漁師の家に猟銃かあるのかと言うと、万一の時の為に常に備えているからだ。

「他所者んがぁー!!ぶっ殺してやるらぁーー!!」

  ドラッグタブレットからドラッグを摂取して興奮状態に陥った!

  最早そこにいるのは人間などではなく一体の狂った獣でしかない。

  狂獣は右手に猟アサルトライフル、左手に灯油を持って若者二人に駆け寄った。

「あ、佐渡島おじさん。」

「おお、本堂さん家の麻美乃お嬢ちゃんじゃねえか。」

  豪次は即座に理性を取り戻した。なぜなら、本堂家は島内でも有数の実力者でもあり、豪次は権力と可愛い女の子に弱い正義漢だからだ。豪次はロリコンだった。

「なぁんだ。麻美乃ちゃんなら大丈夫だな。」

  豪次は笑った。麻美乃はしかし、そんな場合ではないと言った様子だった。麻美乃の隣にいた学生も恐怖に顔が引きつっていた。

「ゾンビがこっちに来ているんです。」

「何だって!?」

  豪次は驚くと同時に波止場の方へともんどりうっていた。薬物使用の弊害か、今の豪次に自己を省みる余裕はない。

「ぶっ殺していいのかぁー!!」

  次の瞬間銃声!興奮しきった豪次はとりあえず適当に動くものを撃ったのだ。それも走りながら!だが、猟銃がたまたま連射式であった為か、薬物摂取状態の運動能力が常人のリミッターを超えてしまったのか、四秒半で坂を下りきっていた豪次の撃った弾丸は何かに命中した!ゾンビだ!

「ああーうー」

  ゾンビは醜く腐り切ったおっさんだった!船に乗って島にやってきたのだ!どうやって!?多分適当に運転してたらここに行き着いたのだろう。この辺りは他に島も多い。

「あーうーうー」

  顔面を破壊されたゾンビはなおも呻きながら豪次にパンチを繰り出す。しかし、日々の漁と狩りで鍛えた豪次の肉体は一流アスリートの四倍は強いだろう。少なくとも豪次はそう考えている。豪次はパンチを受け止め、逆に自らの持つアサルトライフルを勢いよくフルスイングした。

「ああー!!くたばりぃ!!やがれってぇっ、くしょーぁーっ!!」

  最早ゾンビよりも呻いている豪次のスイングはゾンビの頭部を完全に破壊した。ゾンビは活動を停止!肉やら液体やらが豪次に降りかかったが、特に気にもとめていない。

「次は船だ。」

そう言うと、船に乗り込む。次の瞬間また銃声!別ゾンビだ!今度は一撃でゾンビの頭部を破壊した。

「ゾンビ如きが俺に叶うわけないだろうが。幼女のゾンビが出てきたら別だけどな。」

  そう言う豪次は船内の操縦室に入り込んだ。中には幼女のゾンビがいた!

「ぐああああー!!助けてくれー!!」

 

  本堂麻美乃と山岡修造は既に豪次の家近くから離れ、寺をも通り越して、高台へと登っていた。それにしてもこれ程までにこの坂の傾斜が激しかったとは。普段から運動を怠っている二人にはあまりにも辛い試練だった。耳には豪次の物と思われる悲鳴が聞こえてくる。

「やはりあやつ程度では足止めにもならんかったか。」

  今更だが、この二人は戦略とか合理的な行動とかそういう考えは一切持ち合わせていなかった。

「誰だったんだあのおっさん。」

「本土で凶悪犯罪を起こして島流しになった佐渡島豪次さんよ。」

  修造は詳しく聞かない事にした。

  高台は木々に囲まれていた。よくわからないまま高いところに登ったが、これはどういう事なのだろうか。修造は麻美乃を見た。

「さっき豪次から気づかれないうちに灯油を拝借してきたのよ。」

  そう言うと、麻美乃は灯油を坂にぶちまけた。

「これで奴らは登ってこれないわ。」

「下にいる人たち全滅じゃないの。」

「まって!何か聞こえてこない?」

  確かにそうだと修造は思った。何か聞こえてくる。戦車?いや…これは、チャリオット!

  船だ!その瞬間、船が爆発した

!辺りはすっかり暗くなっていたが、その爆発はまるで太陽が西から登ってきたかのような錯覚を覚えるほどの激しさだった。

  それよりも、足音だ。チャリオットのような足音は段々とこちらに近づいて来る。

「豪次さんだ!ヤバイ!豪次さんが来ちゃった!」

  麻美乃が叫んだ。豪次さんは火だるまで坂を駆け上がっていた!

「ヤバイ!何も考えてなかったわ。」

  やっぱりそうだったのだ。麻美乃はわりと後先考えないところがあった。

「うおあおお!!」

  豪次が坂にぶちまけられた灯油に触れた。

「うわ」

  坂が爆発した。修造と麻美乃も吹き飛ばされた。咄嗟に修造は麻美乃を抱えるようにして林の茂みに飛び込んだ。生木は燃えにくい。

「やったぜ。」

  坂を見ると、そこには焼け焦げたアスファルトと肉片が転がっていた。

「きゃー爆発よー」

  そこら中から悲鳴が聞こえる。既に、辺りには騒ぎを聞きつけた野次馬やパンク人間達が集まりつつあった。

「なんだなんだ。」

「祭りか?」

「祭りなのか?」

  パンク人間達は松明とかを持ち出していた。このままでは騒ぎに乗じた暴徒達によって街は破壊されてしまうだろう。それはゾンビとどっこいどっこいの恐ろしさだ。

「うおおお殺せー!!」

  突然、一人のモヒカンがそこらへんにいた若者をギターで殴った。

「殺せー!!」

「殺せー!!」

「人間どもは殺せー!」

  モヒカンの暴力を合図に、パンク人間達は一斉に凶暴化した。

「あのモヒカンは。」

  修造はギターで若者を滅多打ちにするモヒカンに見覚えがあった。あれは。

「あれはアーマードドラゴンインペイルメンツのメンバーの人じゃないか。どうしてこんなところに。」

「この島狭いからね。」

  麻美乃は冷たく言った。そう、この島は狭いので、超有名バンドの人とかも普通にスーパーとかで会うのだ。

「あの人はアーマードドラゴンインペイルメンツの人なんだよ。名前は忘れたけど。」

  修造は興奮気味に言った。

「私、ペンペンリーフ派だから。」

  この瞬間、二人の間に名状し難き緊張感が生まれた。

  一方、暴徒達の蜂起はなおも激しさを増しており、既に高台は大パニックに陥っていた。

「早くここから脱出しないと。」

  そう言うと、二人は林の中を進んで行った。何か暴徒達に突っ込んで行く影が見えたような気がしたが、そんなことはよくあるので無視した。

  修造と麻美乃はとりあえず林を抜けた先にあるという麻美乃の家に向かう事になった。麻美乃の家は権力があるので、暴徒達も躊躇して襲撃することができない。また、知能の低い暴徒達では罠の張り巡らされた林を抜けられない。これで安全は確保されたのだ。

「まさかお前金持ちとかなのか。」

  修造は本堂家の門の前で言った。木造りの広々とした家で、全貌が見えない。

「何か問題でもあるのかしら。」

  麻美乃が相変わらず冷たくいう。どうやら先ほどから起こっているようだ。

「悪かったよ。ペンペンリーフもそれなりに良いと思ってるからさ。」

  修造は適当におだてて見た。

「本当にそう思って行ってるのかしら?…まあいいわ。ここから先は下界とは違うと思って最大限の敬意を払って行動することをオススメするわ。」

「敬意ってなあ…なんだよそれ。」

  麻美乃はカバンから家の鍵を取り出した。

「彼らは自分たちのことを神様だと思っているのよ。」

  修造は麻美乃の家に泊まる事になった。麻美乃の家は大きいので、客人一人くらいは余裕で泊められるらしい。全ては修造が色々を考えを巡らせるよりも早く決まった。

「気を付けてね。」

  と、麻美乃は言った。

  雲が月を覆い、闇は一層濃くなった。果たして日が登るまでに米軍はこの島まで辿り着けるのか。米軍によるゾンビ掃討作戦まであと七時間。




……………
まっ………………
……………………


……………………

って………………

………る…………
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