僕ノ葬式ト彼女ノ生キルセカイ   作:阿佐ヶ谷星空

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………………みつ

…………み…………


………………け……
…………みつけた…
………………………


第六譚 町は危機にさらされる

  本土からそれなりに離れた嬉々金島であるが、この島には県立高校が一つ存在した。しかし、県立とされ、公立高校としての体裁を一応とってはいるが、その実、この高校に通うような生徒は、この島の生徒くらいしかいなかった。全校生徒は100人弱。これでも離島に存在することを考慮するとそれなりの人数の生徒が通っている事になる。果たしてこの島では過疎化が本当に進んでいるのかと疑ってしまうほどの人数だ。まだこの島に100人も十代の人間がいたとは。

  この島に住む柿内多和子もまた、この県立先負高校に通う高校一年生だった。クラスはA組。本人は一年A組であることを何となく縁起が良い文字数字だとして深く気に入っていた。

  現在、多和子は島で唯一の病院にいた。病院内は田舎によくあるような木製でなく、リノリウムで出来た床にLEDライトという、全体的に純白で、それなりに清潔感のある造りだ。本当は良くわかっていないが、多和子は病院といえばリノリウムだと考えていた。

  病室の扉の前に立つ。扉には2-D室と中途半端で不吉な文字が大きく書かれた上に、「雲野五郎」と書かれたプレートが貼り付けられていた。

「お邪魔します。」

  病室に入ると、病院のベッドには筋肉質の青年で四肢と顔面と首に包帯を巻いた巨漢と、彼を取り囲むようにして立っているクラスメイト達が4人いた。

「お、多和ちゃんじゃん。」

  そう言ったのは髪が黒髪を宝珠付きのゴムで二つ結いにした長髪の少女だ。いわゆるツインテールという奴である。

  ツインテールの名は九門御所子という。いつも明るく周りに対しても元気な態度で接する、一見好感触の抱かれそうな今時のティーンエイジャーといった感じの女子高生である。

「何だか遅かったですね。」

  御所子の隣、茶髪の、いかにもチャラそうな女が言った。

「ごめんねー。ちょっと居残り練習が遅れちゃって。」

  多和子は釈明した。茶髪は怪訝そうな顔をする。その肌はアフリカのサバンナで日光浴をしてきたかのような黒色に染まっていた。顔面の化粧も、目の周りを中心に、まるで呪術を扱い敵部族を呪い殺そうとするアフリカの戦闘民族から学んできてそうな、白塗りと暖色系の色で描かれた禍々しい不思議な紋様である。唇や耳たぶには骨董屋にでも持っていけば高く売れそうなデザインのピアスやイヤリングが装飾されている。極め付きが背中に背負った竹槍だ。先端部は分厚い動物の皮で覆われており、さらに反対側の先端部にはファーがつけられていた。明らかにこれはコギャルメイクである。田舎の閉鎖性がコギャルメイクを絶滅させずに現存させたのだ。

「まあいいわ。」

  とだけコギャルメイクの女は言った。彼女の名は石田季姫。島の中でもそこそこ金持ちの家に住む。

「まあまあ、いいじゃないの。来てくれたんだしさ。」

  相変わらず怪訝な顔をする石田を、ベッド巨漢と話していたイケメン風の男が諌めた。このイケメンの名は都桐仁正。名前までかっこよ過ぎてどう読んだら良いかわからないくらいのイケメンだ。実際はそこまでイケメンではないが、本人たっての希望でイケメンキャラとして定着している。

「多和子さんでも遅れる事はあり得るんですね。少し意外と言えば意外です。」

  和やかに言ったのは眼鏡を掛けたおかっぱ頭の少女。彼女は磨ヶ瀬 芽。すりがせ めばえ と読む。この土地独特の苗字であり、本土ではそんなに見ない名前だ。

「いやぁー。今度から気をつけるよ。ごめんね。」

  多和子はベッドの男に謝った。

「いや、良いよ別に。」

  巨漢は言った。

「それよりも俺は修造の奴が来てないのが気に食わないね。今日は皆俺の見舞いに来てくれたのにだぜ。なぜ奴だけこない。」

「私たち同じクラスなのにねー。今日は一人で早く帰っちゃったみたい。」

  多和子は言った。同じクラスメイトと言っても、同じクラスなのは目の前の巨漢と、多和子自身と、修造のみである。他はB組だ。

「あいつ忘れてやがんだ。どこに行きやがった全く。」

  巨漢は悔しそうに言った。この男は雲野五郎。修造の親友であり、三日前にパンクライブハウス『デズゴ』で肋骨を折られ入院した。その後、病院を通りかかったパンク人間に救急車が襲撃され、さらに重傷を負ったのである。

「何か薄情よねー。修造くんって。」

  九門御所子が言った。

「馬鹿野郎っ、あいつはそんなんじゃねぇよ。」

  雲野が叫んだ。

  その時、病室のドアが開いた。

「死ねえええ」

  マサカリを持ったサラリーマン二人が乱入してきたのだ!サラリーマンの胴体には穴が空いている。

  多和子は死を目前にしたサラリーマンが発狂して無差別殺戮を開始してしまったのだと思った。ここは病院なので、死にかけの人がいてもおかしくは無かった。

「ぐああああ」

  鮮血が純白のリノリウムに飛び散った。サラリーマン一体の顔面がコギャルメイク石田の竹槍反撃によって破壊されたのだ。

「死ぬのはてめえだあああ」

  サラリーマン矢部さんの顔面に刺さった竹槍はそのまま貫通し、背後にいたもう一人のサラリーマン、牧原さんの顔面に突き刺さる。

「ぐああああ脱出しなければ」

  矢部さんのマサカリは竹槍を切断した。 そのまま倒れこむ勢いでコギャルメイク石田は竹槍の切断面を矢部さんの心臓部に突き刺した。

「ぎゃああああ」

  だがこれが命取りとなった!牧原さんは手に持っていたマサカリを破れかぶれで投擲した。マサカリは都桐の顔面に直撃した。

「逃げよう。」

「ああ。」

  そう言って、竹槍によって連結した二人は死ぬ前の最後の気力を振り絞って病室を脱出した。二人が逃げた後の病室には顔面にマサカリの突き刺さって即死した都桐の死体が残された。

「うわ。」

  多和子は狼狽した。

「何これヤバイんじゃないの?埋めるの?」

  御所子が狼狽える。

「待って、それよりもさっきの奴らよ。一体なんなの。この病院の隣はパンクライブハウスだから、騒ぎを聞きつけたパンク人間達が暴動を起こしちゃうじゃない!」

  石田は急ぎながら病室を出る。

「バリケードよ。病院にバリケードを築くの。」

  その時爆発音が鳴り響いた。

「遅かったか。」

  病院内にパンク人間達がなだれ込んできた!その様子は病室の窓からも見えた。パンク人間達が病院に押し入ってゆく。彼らは病院の隣に建てられたパンクライブハウス『ヘルオンド』の常連達である。後列でギターを振り回しているのは、モヒカン刈りの上半身裸のおっさんだ。

  彼の事は柿内多和子もまた知っていた。彼は大人気パンクバンド、ペンペンリーフイズデッドのベーシスト、goroに違いない。全身に施されたモヒカン装飾がそれを物語っている。『ヘルオンド』は現在ナンパーワンのパンクバンド、ペンペンリーフイズデッドの活動拠点でもある。そこにgoroがいないはずが無かった。

「きゃーgoroよ。」

  突如として、病院内でgoroのゲリラライブが始まったのだ。これは過激なゲリラだった。goroに続いて後方より現れたのは神輿だ。これはgoroの実家の近所にある神社から拝借してきた物だ。神輿には棘タイヤや鎖、電気網やモーターエンジンなどによって禍々しい装飾が施されている。神輿の上に

立っているのはただのパンク人間だ。彼は危険な装飾を掻い潜って勝手に神輿の上に登り、わけのわからない言葉を避けんでいた。

  神輿の中から聞こえてくるのは虎の鳴き声であろうか。そういえば最近、島の動物園から動物が消失したとのニュースが報道されていた気がする。神輿を取り囲むように、槍や鋤、鍬や三叉を掲げたパンク人間達が神輿を警戒していた。

「ヤバイ。本格的なゲリラライブじゃない。」

  既に入り口の方では派手な銃撃戦が始まっていた。ナース連合が小銃を放っている。次々とパンク人間達の肉体が破壊されていく。だが、パンク人間達の物量に押されつつあるのが現実だ。ナース連合は通称AK47と呼ばれる。いまや世界中で大人気のアイドル小銃、AK47からその名前を決めているのは言うまでもない。

「これ外に出れないんじゃない。」

  磨ヶ瀬が絶望ながら呟いた。

  戦いはどんどん激化してゆく。パンク側、神輿よりも後方のパンクライブハウス『デスオンド』の壁が爆発した。中から飛び出たのはバギーカーだ。バギーカーの上部には、玉座が取り付けられていた。玉座に座っているのは、ペンペンリーフイズデッドのベーシスト、nogchだ!nogchは華美な装飾が施された黄金の鎧を着込んでいた。nogchは玉座の上に座り、優雅に足を組んでいた。バギーカーは先程の爆発によって運転手がいない。加速しながら一直線に病院めがけて突っ込んでゆく。しかし、その前方には神輿が!神輿とバギーカーが激突!しかし、加速を続けるバギーカーは、神輿を押しながらナース連合AK47と衝突した!バギーカーは爆発炎上!神輿からは虎が飛び出し、先程まで神輿の上にいたパンク人間を喰い殺しながら病院内へと侵入した。

  虎を皮切りにバリケードが完全崩壊した。パンク人間達が次々と病院内に入ってゆく。ベーシストのgoroがギターを振り回しながら周囲の人間に危害を及ぼす。ベーシストのnogchに至っては玉座に座ったまま腕を組んで思わしげに笑っている。ゲリラライブの開始だ。

 

  一方、病院から少し歩いた場所

にある高台の林、そのさらに内部にある古い屋敷では、ロボット対炎の鎧を纏ったサムライの戦いが繰り広げられていた。

  この屋敷で二人の戦いを目の当たりにしていた、山岡修造と本堂麻美乃は既に客間を出て、比較的安全な金庫に移動していた。

「さっきも客間は安全だとか言って無かったっけ。」

  修造は麻美乃に言った。

「あの科学者は予想外だったのよ。」

  麻美乃は言い訳した。その顔はこんな事は日常茶飯事ですわ、とでも言いたげな顔だった。

「でもこの金庫は多分大丈夫よ。この金庫には島の禁忌が封印されている。島の禁忌に触れる人間はそうはいないわ。」

  そう言って麻美乃は金庫室の扉に手をかける。

「あの科学者は何者なんだよ。」

  修造は当たり前の疑問を口にした。

「あいつはおそらく荒引二水衛門という、この島を追放された弱者よ。元々叔母様と夫婦で禁忌の秘密に迫ろうとしてたのそれで島を追放されたのよ。でも強くなって復讐しにきたみたいね。」

  修造はこの麻美乃の発言を聞いて、島の禁忌とはどういう物なのか気になった。島の禁忌は複数ある事は知っているが、その中でも人間一人を島から追放させてしまうほどの隠された秘密とは何なのか気になった。

「あれっ無くなってる。」

  麻美乃が驚きの声をあげた。修造が金庫内部を見ると、そこには確かに何も無く、禁忌と呼べそうな物も見つからない。

「どういう事だ。」

「誰かが持ち出したのよ。一体誰が。」

  その時である。轟音が鳴り響き、高台の広場の方で土砂が崩れ落ちる音がした。

「まさかっ誰かが禁忌を解いたというの!?」

  その時、二人が見た物は上空を飛翔する鋼鉄の鷹だった。

「禁忌が解かれたわ。」

  麻美乃が何か言い出した。

「禁忌に触れようとする人間ってそんなにいないんじゃないの。」

「重大事件ね。恐らく島中の人間がこの家にくるわ。このままじゃ島民全員皆殺しよ。」

  その時だ!二人の背後で誰かが歩いている音がした。

「家の人間がいるわ。とにかく隠れないと。」

「全然安全じゃ無かったね。」

  修造が言うと、麻美乃は修造を無視して金庫の中に隠れた。

「早く扉閉めるわよ。」

「金庫って内側から開かないんじゃないの。」

  そうこうしているうちに、林の中から男が一人飛び出した。その男は貴族風全身タイツにマントという、奇妙な出で立ちの40代後半のおっさんだった。顔面は金箔で覆われてギラついており、頭部にシャチホコをイメージしたような兜を被っている。

「彼はこの家の剣士の一人、勝譲治郎よ。あの珍妙な姿で気を緩めた人間を容赦なく殺戮する狂人よ。白士剣 伝蔵とコンビで行動してるから、今も一緒にいるはず。」

  森からさらに出て来たのは抜き身の刀を掲げたゴリラだった。

「奴が白士剣伝蔵よ。動物園から拉致して来た動物を調教したらしいわ。」

「そんな馬鹿な。」

  とにかく金庫にいる事がばれたらゴリラと変態に殺戮されるであろう事は目に見えていた。




……………
まっ………………
……………………


……………………

って………………

………る…………
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