僕ノ葬式ト彼女ノ生キルセカイ   作:阿佐ヶ谷星空

8 / 10
………………みつ

…………み…………


………………け……
…………みつけた…
………………………


第八譚 包まれた世界の結び目

  嬉々金島は最早修羅の世界となっていた。島の高台は土砂が崩れ落ち、その土砂は坂に降り注ぎ、家々を破壊した。坂を下った先にある、鮫山和尚のお寺にも土砂が降り注いでいた。

「この島はもう終わりじゃ。」

  鮫山和尚が念仏を唱える。ふいに、彼の背後で何かが動く音がした。

「何だ!?」

  そこにいたのは、右半身を吹き飛ばされた豪次おじさんのゾンビだった。背中に幼女のゾンビを載せている!

「ぎゃああああ」

 

  一方、病院は蒸発した。病院にいたペンペンリーフイズデッドのメンバーも、パンク人間達も、ゾンビ達も全てが一瞬にして消えてなくなった。

  病院を蒸発させた張本人である縄文弥生合体ゴッドアラハバキもまた、この世から去っていた。彼はメインコンピュータを破壊され、意識が吹き飛んだ。その巨体だけが地面に横たわっている。

「所詮武器に頼るなぞ弱者の手段。真の剣士は己自身が武器となる。それは少年漫画でも証明されている。」

  クレーターとなった病院の真ん中で、本堂美濃一だけが生存していた。

「島の禁忌が解き放たれてしまった。かくなる上はワシ自身が新たなる禁忌となって島に封印される他あるまい。ならばこの島の人間は全て殺してしまおう。」

  美濃一の精神は魔境に足を踏み入れていた。美濃一は歩き出した。

「あーうー。」

  そんな声が聞こえたのはその時だ。美濃一は振り返ったが、あたりは焦土であり、誰もいない。

「荒引か。」

  美濃一は大地に横たわっているゴッドアラハバキを見た。彼は完全に死亡している。つまり、彼がゾンビとなった可能性は十分にある。

「面白い。やってみよ。」

  ゴッドアラハバキが動き出した!機械の結合を停止、部品達が分離を始める。ゴッドアラハバキは、荒引二水衛門、マレビト、ハバタキに分離した。

「!」

  マレビトに乗った荒引博士のゾンビは街に向かって走り出した、ハバタキもまた、大空を飛翔する。

「あーうー」

「うー」

「二手に別れたか。では私は気に入らぬ若者共を殺してしまおう。」

  そういうと、美濃一もまた走り出した。

 

  高台の本堂家では、修造と麻美乃がまだ変態達と隠れんぼしていた。

  金庫の外にいるのは、ゴリラ剣士 白士剣伝蔵と、貴族風全身タイツを纏った 勝譲治郎だ。

「わんっわんっ」

  勝譲治郎が吠えた。実は二人の関係は勝譲治郎が白士剣伝蔵に仕えるという形なのである。これは強さが全てである本堂家に於いてはおかしいことではなかった。

「おらあっ」

  突然、勝譲治郎は何者かに殴られて死んだ。白士剣伝蔵は発狂して林の中へ駆けていった。

「ワシの名は一郎丸藤正。112歳じゃ。ワシは新参者が気に入らぬ。ワシより歳の若いものは全員殺してしまおう。そうしよう。」

  一郎丸藤正は何やら一人でに呟くと、金庫を殴った。金庫に穴が空いた。

  修造と麻美乃は藤正と目が合った。

「うぬらは何歳じゃ。」

「114歳です。」

  とっさに二人は嘘を吐いた。

「おおおおお。ならばワシは214歳じゃあ。」

  負けず嫌いの藤正老は一郎丸家の人間であり、本堂家の分家、つまり、この島で唯一の本堂家以外の本堂流の血を引く人間だった。そんな彼らは殺戮者の血を高める内に、常人の数倍の勝利願望を持つに至った。

「しねええええ。」

  藤正のパンチが炸裂する。二人は咄嗟に避けるが、これは何とかパンチを避けたというよりも、狭い金庫内で追い詰められたと言った方が正しい。

「藤正おじいちゃんは理性のみで動いているほぼ死体よ。戦って勝てる相手では無いわ。」

  麻美乃が説明する。

「どうすればいいんだ。」

  修造が聞くと、麻美乃は待ってましたとばかりに威張った顔をした。

「歌を歌うのよ。歌はあらゆる生物に通じるわ。理性の塊である藤正おじいちゃんならば寧ろ常人よりもすんなり理解してくれる筈よ。」

「どういうことだ。」

「お経ね。」

  麻美乃は読経を始めた。

「むう、もうこんな時間か。」

  そういうと、藤正は勝手に座禅を組んだ。

「わかってくれたようね。」

  修造はイマイチ納得がいかなかった。

  その時だ。林の中から何か音がする。

「誰かくるわ。」

  二人は再び金庫に隠れた。

  林から出て来たのはゴリラの白士剣伝蔵、ただし、ゾンビとなった白士剣伝蔵だった。白士剣伝蔵ゾンビに続いて林から出て来たのは鮫山和尚ゾンビ、幼女ゾンビ、豪次ゾンビだ。さらに何かが出てくる。それは仏像だった。十一面観音だ。十一面観音がゾンビと化していた。

  鮫山和尚のお寺に安置されていた十一面観音だ。アレもゾンビとなったのか。修造は思った。十一面観音ゾンビは十一の顔面が付いており、近付けばいっぱい噛まれそうだ。

「あれはヤバイわね。」

  麻美乃は冷や汗を流した。

 

  一方、町はハバタキゾンビが上空からビーム爆撃を行って壊滅状態だった。

「あー」

  ハバタキは呻きながらビームを発射する。既に意識は無い。

  荒引博士もまた、マレビトで爆走しながらビームを発射していた。

「あーうー」

  そこまでだっ!!

二体のゾンビの前にヘリが立ちふさがった。それは米軍のヘリだ。

「まさか荒引博士がゾンビ化するとはな。だが知り合いだからと言って容赦は無しだ。しねぇ!」

  米軍のヘリ内で何かのスイッチを押した音がする。有事の際に託されていた荒引博士の自爆スイッチだ。

「さらばだ荒引博士。」

  荒引博士ゾンビは爆発した。

ハバタキはヘリに襲いかかる。しかし、ビーム爆撃程度でへこたれる米軍ヘリでは無い。米軍ヘリは荷電粒子砲を放った。ハバタキは撃墜!所詮数百年前の兵器である。

「この島の住民を皆殺しにしろ。ゾンビ化する可能性がある。ゾンビになった者は全て射殺するんだ。」

  ヘリから特殊部隊AMTFの隊員達が降り立つ。

「状況開始!」

  AMTFのメンバーは五人いる。長官のダグエル・シュリーマンは黒人。責任感のある皆のリーダーだ。紅一点のバジリコ・ペバーミントはヒスパニック。明るく元気なキャリアウーマンだ。しかしやる時はやる。ゲリラ戦闘担当のベトコニアン・ドイモイヤーはチーム唯一のアジア系。真面目で黙々と作業をするタイプだが、実は怒りやすく、やや凶暴な性格だ。メカニックのアイラック・オーシャンマンはイスラム教徒だ。やや個人主義的な傾向があり、チームとの軋轢を生みやすい。ゲバルトキューブリックはチームに欠かせないカリスマ性の持ち主だ。快活なイケメンで、態度もやや飄々としているが、その行動には確かな知性と確実性が伴う。喧嘩っ早いのが玉に瑕だ。キューバ出身。

  五人の前に老人が立っていた。

「馬鹿な、いつの間に。」

  ダグエルは狼狽した。老人はこちらを素通りした。しかし、そこには死体が残されていた。五人の死体が。

「弱い。」

  美濃一は瞬間移動した。

 

  上空ではヘリが何とかダイアナ和尚のお寺に着陸した。

「ありがとうございました。和尚。」

  雲野五郎、柿内多和子、石田季姫、九門御所子、磨ヶ瀬芽はダイアナ寺に降り立った。寺内は坊主達が慌ただしく駆け回っている。

「ダイアナ和尚。ご無事でしたか。」

  ダイアナ和尚に寄ってきたのはマックス函館。雲野五郎の学校の先輩だ。

「マックス函館先輩。」

  雲野は驚いた。

「おや、雲野では無いか。お前も入信しないか。」

「喜んで。」

  雲野は入信した。

  美濃一が現れた。

「しねええええ。」

  美濃一の突きが雲野の心臓を貫いた。

「本堂美濃一!」

  ダイアナ和尚が驚愕する。すかさずマックス函館が手裏剣を投げた。手裏剣は美濃一の額に突き刺さる!

「バカめ、ワシはこの程度では死なない。普段から体を鍛えているからな。体を鍛えているからアカシックレコード(大宇宙の知識)ともつながる事が出来た。」

  美濃一は燃え上がった。

「ワシは神になったのだ。よってこの肉体も最早不要。」

  美濃一は手をかざした。全てを滅ぼそうと言うのか。

「お待ちください。この島には現在ゾンビが溢れかえっています。」

  ダイアナ和尚は美濃一に語りかけた。

「ゾンビはやがてこの島を、この星を埋め尽くしてしまうでしょう。神であるあなたがこの事態を感化する事はけして無い。」

  ダイアナ和尚は炎上した。一瞬で灰になった。

「ふん、ゾンビだと。」

  美濃一の手から電撃が走る。手から出て来たのはダイアナ和尚のゾンビだった!

「神となった私はこんな事も出来るのだぞ。」

  神となった美濃一はゾンビを作り出す事すら容易だった。これも地道な鍛錬の積み重ねである。

  その時、何かを呟くような声が聞こえた。坊主達が念仏でも唱えているのだろうか。

  否、磨ヶ瀬だ。磨ヶ瀬が聖書の文言を唱えながら天に祈りを捧げている。

「こうなれば私達の勝ちよ。この男は神になった。つまりこの男は唯一神様に喧嘩を売ったのよ。この世で唯一神様に勝てる人間は存在しないわ。ほら空を仰げば。」

「!」

  美濃一は空を見た。何者かが高速でこちらに近づいてくる。少なくとも人間では無い。あれは、神話に出てくると言う大天使ミカエルでは無いか?

「しねええええ」

  ミカエルは槍で美濃一を突いた。美濃一は血を吐いた。

「神に逆らう悪逆の悪魔めええ地獄に堕ちて永遠に苦しみ続けるがいいいい死ねええええ死いねねええええ。」

  ミカエルは怒り狂いながら美濃一の突き刺さった槍を高く掲げた。美濃一は即死である。これは聖天子ミカエルの聖性によるものだった。神の力の前にはあらゆる他教の神は悪魔として扱われ無力だ。

「ほおら、ほおら、苦しいだろぉぉぉ~。辛いだろおぉぉぉ。だが許さん!神に代わって神を名乗るなぞ何たる不敬!悪魔めぇ、この世を穢す悪魔めぇ。出来るだけ苦しんで死ぬが良い。ほぉれ、ほぉぉれ。」

  ミカエルは美濃一を地に叩きつけた。その衝撃で周りの人間達は吹き飛ばされた。

「ふひひひひ。楽しいのぅ。非キリスト教徒を処刑するのは楽しいのぅ。」

  ミカエルは磨ヶ瀬の方を向いた。

「この者たちよ。貴様らはキリスト教徒か?」

「この坊主達は違います。」

  磨ヶ瀬は即答した。

「正直でよろしい。非キリスト教徒は全て殺してお終いなさい。」

  そう言うとミカエルは消えた。あとには美濃一の死体と恐怖で狂った坊主達だけが残された。

「うおおおお!キリスト教徒を殺してしまええええ。」

  寺内では大暴動が起こった。

 

  本堂家屋敷ではゾンビパニックだった。




……………
まっ………………
……………………


……………………

って………………

………る…………
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。