仮面ライダーリュウガ ー無限の鏡界線ー   作:人類種の天敵

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お久しぶりです。本当にお久しぶりです。
最近余裕ができてきたので投稿を再開しようと思います。

因みにドラグブラッガーやその他オリミラーモンスターの挿絵をこちらの活動報告でイラスト(仮)みたいな感じで乗せてますのでどうか覗いてやって下さい
一年も経てばちっとは画力が上がったのかなぁと思う今日この頃です。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=206919&uid=96708


原作より明らかに仮面ライダーの数が増えた理由 2

 

日本行きの飛行機。

その飛行機の最上クラスの席に座った女性が窓に映る自分に頭をコツンと当て、「程々にしてね」と言ったきり目を瞑った。

 

彼女の名前は茅生美雪。

世界的な動物学者で現在は世界各地を回って調査をしている女性だ。

 

「日本は久しぶりですね」

 

彼女の足元に置かれた旅行鞄の中には長方形のカードデッキが収められている。

本来神崎が適当に配布して回っている、ミラーモンスターと契約して仮面ライダーになるデッキを美雪は持っていた。

 

「各地の生態系や気象現象の揺らぎも、兄さんが行方不明になった理由も日本にある」

 

動物学者の美雪は研究の際に各地の動物達がなんらかの原因で個体数を年々減らしていることに気付き、その原因がミラーモンスターとミラーワールドにある事を突き止めた。

 

そして数年前に美雪の元へ突如現れたミラーモンスター〝リンドヴルム〟から兄が彼女の故郷日本にて兄が行方不明になったことを知り、ようやく学者の仕事を終えて日本へ帰ることにしたのだ。

 

「兄さんからの言葉、神崎士郎に気を付けろ……それにしても一体誰なんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

都内の病院にて、白衣を着た若い男が忙しく走り回っていた。

 

「先生!〜室の患者さんが突然発作を起こしました」

 

「黒沢くんが?分かった。後10秒下さい」

 

「す、凄い。日本外科医の大権威でも匙を投げ出す治療をこうもやすやすとこなすなんて…」

 

「よしOK。後は任せます。それで容体は?」

 

「あ、はい。朝の散歩の際に突然発作を起こしたらしくて今病室で安静にしてます」

 

「うんわかった。それを見たら丁度次の手術になるか」

 

秒刻みのスケジュールをこなしているのはこの病院の院長でもある青海遥。

 

整った容姿に神の手、奇跡、絶対手術成功させるマン、などの異名を持つ医者だ。

 

「うん、良く分かりました。多分だけど朝の散歩の時に少しはしゃぎすぎたのかも知れないね。次の手術で最後だと思うから、それまでは安静にするように」

 

病室のベットに横たわる少年に苦笑まじりのお小言を乗せ、青海は少年の両親を連れて廊下に出る。

 

「きっと手術の不安が出てしまった所為でしょう。精神的な不安の最中でつい体を動かし過ぎたのが直接的な原因だと思います。手術の日までは出来る限り側で支えてあげて下さい」

 

伊達眼鏡を外して胸ポケットに突っ込みつつ、青海は人を安心させる笑顔を浮かべて力強く言った。

 

「手術は成功させますよ。必ずね」

 

後日、その言葉は少年とその親の歓声によって事実となる。

 

「あ、青海先生。お疲れ様です」

 

休憩室に入ると、先に座っていた看護師が朗らかな笑顔を浮かべ青海を歓迎した。

青海もまた軽く頭を下げて近くのソファーにゆっくり腰を下ろす。

 

「うん、お疲れ様です。明日の予定はどうですか?」

 

「午前までで10件、午後から診療と、いつも通り忙しそうです」

 

熱く入れたブラックコーヒーお盆に乗せた看護師が翌日のスケジュールをスラスラと口にする。

しかし青海の顔には忙しさへの苦痛はなく、寧ろ楽しそうでもあった。

 

「それは何よりで、ところで何か変わったことはありますか?」

 

「そうですねぇ……ああ、こんな話知ってますか?先生」

 

トレーを抱きしめ、数秒考えこんだ看護師が青海に向けて意地の悪そうな、悪戯顔を浮かべた。

 

「最近、この病院を徘徊する亡者の噂」

 

「亡者?……ちょっとちょっと、勘弁して下さいよ。私の病院に、そんな患者は出させませんから」

 

青海が自身の病院を開業してから手術で死人を出したり治療の甲斐なく死んでしまった、という事例はない。

誰もが放り出す末期ガンや難病も、果てには死にかけ寸前のご老体もこの男が治してしまうからである。

 

「それが違うんです。深夜に度々と夜勤の子や患者さん、それに警備員さんが見るんですって!」

 

「……そういう話は別の意味で苦手なんですが」

 

「それに、ほら。以前雇っていた警備員さんも1人居なくなっちゃったじゃないですか」

 

「あの人は前から勤務態度が悪いと話が挙がっていたので会社の方に話していたんですが、それで引き上げたんじゃないんですか?」

 

「それがですね。なんの報告や連絡もなく、家や携帯に電話しても繋がらないんだとか」

 

正に恐怖体験。

このまま七不思議にならないといいのだが、と青海は青い顔で考える。

 

「ーーそれに、失踪する前日。異様に周囲の鏡を気にし出して、持ってるスマホを地面に叩きつけたらしいですよ」

 

「………へえ、そうですか」

 

それまでの反応と異なり、素っ気ないその言葉遣いに看護師は驚かし過ぎたか?と顔を伺うも、青海は仕事があるので、と早々に席を立った。

 

「ーーーあの時と同じ。今度こそは」

 

席を立った青海はトイレに駆け込んだ。

そして用を足していると、その隣にコートを着た胡散臭そうな男が並んだ。

 

「戦え、戦え!戦わなければ、生き残れない!」

 

「え?なんですかいきなり」

 

誰と言ったら神崎士郎、ファーストコンタクトでいきなりこれである。

その彼はギョッとした青海に顔を向けてポケットから取り出した資料数枚と手を洗っていない手で取り出したカードケースを青海の白衣のポケットへ忍ばせようとする。

 

「ちょ、ちょっとなんですかいきなり!私はこれでも医者なのでその、清潔というか、用を足したのに手を洗ってないのに触られると困るんですよ。あ!ちょっと!あのー!!」

 

「戦え、戦えーーー(バタン)」

 

用を足したかと思えば、次は大きい方が男を襲ったようだ。

邪魔しちゃ悪いと青海は考えて仕方なく次の手術までの時間を自室で潰すことにした。

 

「ーー!これって」

 

コーヒーを片手に読みはじめた先ほどの男が渡してきた資料には、連日の怪奇現象の正体と彼が学生時代にあった行方不明事件の真実、そしてそれを解決するための方法が載せられていた。

 

「仮面ライダー…‥…」

 

この力があの時あったなら、未来はまた、変わっていたのかもしれない。

 

友達だった、青海が直すはずだった、不治の病を持ちながらも気丈に振る舞う可憐な少女を暫し思い浮かべ、やがて青海は決断した。

 

「もう、奪わせませんよ。私の手は、その為にある」

 

その日、一つの怪奇現象は姿を消し、やがて忘れられることとなる。

 

その日、また1人の仮面ライダーが誕生した。

 

 

 

 

 

 

「おい、才羽!見たかよこの特集!」

 

「やれやれ。朝からなに?」

 

「『仮面ライダーの登場により女尊団の権力低下か』だってよ!仮面ライダー様様だぜ!」

 

なんのことはない登下校時、朝から元気な友人に絡まれた少年はやれやれと肩を竦めた。

 

才羽光輝、年齢16、都内の高校に通う一年生だ。

彼は幼い頃に女尊団のテロによって両親を亡くし、現在は母方の親戚の家でお世話になっている。

 

「こんなことくらいじゃ、あいつらは大人しくならないさ」

 

「そんなことは分かってるよ。でもよ、分かるだろ?」

 

才羽に同意を求める男子高生もまた、女尊団の活動によって働いていた会社に圧力を掛けられ、辞めさせられた経緯を持つ。

 

「そんなことより今日は先に帰るぞ。居候先で手伝いしなきゃならないんだ」

 

「なんだぁ?あの可愛い彼女とイチャコラする気だろ!ゴラァ!」

 

「うわバカやめろ」

 

現在の才羽は居候先で出会った少女との交流で両親を亡くした悲しみと怒りを癒すことが出来ている。

そして今はその少女を守れる力となれるようこの国の暗部として活動しているのだ。

 

(仮面ライダー。あの都内にモンスターの出現した日、俺は非番だったから見てないけど、暗部の実力者たちが仮面ライダーに恐れをなしていた。映像も見たけど、ミラーモンスターと仮面ライダーか、忙しくなるな)

 

つい、内心で溜息を吐きたくなった才羽の隣を男がスゥーッと通り過ぎる。

 

ーーその時だった。

 

「(仮面ライダーを)や ら な い か 」

 

「っ!!?」

 

ゾクっと背筋が凍りつく感覚ののち、振り返ればそこには誰もいなかった。

 

得体の知れない恐ろしさに額に垂れた冷や汗を拭おうとすると、その手にいつのまにか謎のカードデッキが握られていたことに気付く。

 

(これって、例のーー??)

 

嫌な予感がひしひしと募る中、不信感を持った友人が「どうしたんだ?」と才羽に声をかける。

 

「いや、なんでもない」

 

こうして才羽光輝もまた、神崎士郎の手によって仮面ライダーの世界へとその身を投じることとなるのだった。

 

 

 

 

 

その男は何処にでもいるようなモブだった。

 

「………」

 

何処にでもいて、けれど誰からの関心も寄せられないような、そんな男だった。

 

その男は人ごみの中においてもモブ的な存在であり、しかし人は男に関心を持たないまでも自然と男を避けるようにその脇を通り過ぎる。

 

「鏡 大我。今この星は迫りくる危機に対して戦う力を失っている」

 

その男の顎から下にかけて、狂気的な紋章が描かれている。

それでも、やはり男はモブであり続けていた。

 

「神崎士郎か。例の件ならお断りだと言った」

 

「鏡界が開かれようとしている。千年前、お前が取り零した落とし前をつけろ」

 

男の目の前に、明らかに胡散臭い格好をしている男がいた。

 

その男、神崎士郎は、鏡 大我という非常識な人間を知る数少ない人間だった。

 

「もう、そんな時期だったか。あの頃は俺の他にもいたんだがな。もうこの地球上に狩人はいない……か」

 

「そうだ。だからこそ仮面ライダーシステムを作った。アレに対抗するために」

 

「仮面の騎士。それならアレに勝てるとでも?」

 

「戦わなければーーこの世界は生き残れない」

 

男は笑った。

 

千年以上を生きる彼にとっても、鏡界という単語は特別なものを含んでいた。

 

「全ては心の赴くままに……だ」

 

「………」

 

男はそのまま人ごみの中に消えていく。

 

その手に、仮面の騎士の証を掲げてーーー。

 

 

 

 

 

 

相手に右の頬を打たれたら相手の左の頬にコークスクリューブローを返せ。

 

「ぐああっ!?」

 

それが彼の昔からの流儀だった。

 

「ったく、二度とうちの孤児院に近づくんじゃねぇ!分かったか!」

 

水無月朧、とある孤児院出身の探偵で、その日は孤児院に圧力をかける政治家が雇ったチンピラを返り討ちにして仕事に戻ろうとした時だった。

 

「な、なんだこれは!?」

 

ついでだからと孤児院に顔を出そうとした朧の目に映ったのは家中所狭しと張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣。

 

そしてそこに捕らえられた弟妹たちが苦しそうに悲鳴をあげる場面だった。

 

「おい、一体何があった?晴哉!おい!」

 

近くで気を失っていた弟に声をかけると、気絶していた晴哉は青い顔を浮かべて朧に敵の存在を伝えようと力を振り絞る。

 

「お、朧にぃ……鏡、鏡の向こ、う……に……化けもんが」

 

「鏡…?っ、なんだ!?」

 

異質な何かに見られている気配、弟を抱いて前方へ飛んだ直後、孤児院の床を巨大な質量が落ちたような耳をつんざく轟音が響く。

 

「ーーーーは?」

 

そこにいたのは正しく蜘蛛の怪物だった。

 

「なんなんだこいつは!くそっ」

 

舌打ちを一つ、外に弟を連れ出そうとした朧の背中を蜘蛛の怪物が唸り声と共に弾き飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

 

リビングから続く廊下を飛び、玄関のドアを弾き飛ばして外へ。

 

受け身も取れないままに地面に倒れこんだ朧へ蜘蛛の怪物の追撃が迫る。

 

「っ、こんなとこで死ねるか!」

 

間髪で蜘蛛の怪物の攻撃を避け、十分に距離を取る。

 

周りを見渡すと孤児院から響いた轟音に近所の住民が様子を伺いに来たようで、人の気配が集まってきた。

 

蜘蛛の怪物はそれを煩わしいとみたのか孤児院の中へ逃げ込んで行く。

 

「朧兄……中に、まだ、雨音が……」

 

「!」

 

晴哉の言葉に妹分の危機を知った朧は意を決して蜘蛛の怪物が待っている孤児院の中へ侵入する。

 

「雨音!聞こえるか!」

 

リビングに入り蜘蛛の巣を見渡す。

かつて団欒があったリビングは怪物の脅威を表すような惨劇を遺しているばかり、その危険地帯の中に朧は彼の妹分の姿を発見した。

 

「雨音ーー!!」

 

『キャキャキャ』

 

「うっ!」

 

何処からか朧の体に巻きつく蜘蛛の糸が彼をリビングに飾り付けてあった姿見の中へ誘い込んでしまう。

 

こうして強引にミラーワールドの中へ連れ去られた朧は自身の目の前で舌舐めずりをする怪物の姿に恐怖と怒りで動けなくなってしまう。

 

「お前が、俺たちの孤児院を……!!」

 

今すぐにでもこの怪物の顔面にコークスクリューブローを喰らわしてやりたいが、彼の身体は蜘蛛の糸でぐるぐるに縛られていた。

 

「くっ、一体どうすれば…!?」

 

焦る朧、彼を嘲笑う怪物、そして怪物の背後に神崎士郎、この時点で既にこの物語は悲劇ではなく喜劇へと変わりつつあった。

 

「戦え、戦え!」

 

「『!?』」

 

長身の、コートを着た不審な男だ。

そいつは背後から怪物を抱きしめ、思いっきり持ち上げてしまった。

これには朧も怪物もびっくりだ。

 

「戦えばなんでも出来る!ふぬぁぁぁ!!」

 

ドガン!と放り投げられる蜘蛛の怪物。

 

口が開いたまま何も言うことができない朧に対して神崎士郎は爽やかな笑顔でカードデッキを放り投げた。

 

「グッドファイト!さらばだ!」

 

「え、ちょ、あの」

 

なんの説明もなくライダーデッキを渡しミラーワールドを後にした神崎士郎……あの、色々と説明は?

 

「何がなんなのかわからないが……いやマジで何がなんなのか分からん!?」

 

混乱した頭とは裏腹にその手は淀みなくライダーデッキをVバックルに装着し、

 

「マジで分からんぞ!?ーーー変身!」

 

マジで何も分からないまま朧は変身するに至ったーー神崎さん、チュートリアル始めるなら今ですよ?

 

『キシャァァァァァァ!!』

 

『何がなんなのか分からないけど、分からないけどおおおおお!!』

 

 

相手に右の頬を打たれたら相手の左の頬にコークスクリューブローを返せ。

 

 

その流儀に則った朧のパンチが怪物の顔面を抉る。

 

『お前は家族を傷つけた。それで殺す理由は十分だ』

 

こうして朧は仮面ライダーになると同時にブランク体でミラーモンスターを倒す快挙を成し遂げるのであった。






色々と神崎さんが迷走中。
久しぶりの投稿は作者の文章力までブランク体に変えてしまうんだね

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