今回はちと難産でして、シリアス(?)を引っ張るかギャグにするかでずっと迷ってました。
でももう迷わない。この二次小説はこれで良いんだ。
というわけでどうぞ(о´∀`о)
深夜零時。
龍賀アギトは馴染み深い教会の中でゴンゴンと鳴る鐘の音をぼんやりと聴き入っていた。
ここに来た理由は1つ。
以前から神崎に依頼していた探し物が見つかった、と優衣伝手に聞いたからだ。
「アギト」
「ああ、やっとか」
椅子に座り、背凭れに身体を預けていたアギトの前に神崎士郎は現れた。
彼はコートから一枚の紙を取り出してアギトに渡すと、さっと踵を返した。
その後ろ姿へアギトは探し物に対する礼を述べた。
「戦え。戦え、アギト」
「……?」
歩みを止め、されど背は向けたまま。
神崎士郎はアギトに告げる、戦えーーーと。
「かつての鏡像の城戸真司や今のお前は、戦い続けることでしか自らを証明出来ない、いわば空っぽの存在。今のままではお前は、いずれ消滅するだろう。……あの時から、もう10年が過ぎた」
案外、時間が過ぎるのは速い、と苦笑を零し、この十数年間共にいた相棒と神崎、そしてカードデッキを託してくれた鏡像の彼を思い浮かべる。
「お前は。……お前はこれまでの並行世界に置いて1つたりとも存在し得なかった特異点。お前のおかげで優衣が生きる可能性も見つかった」
神崎にしてはえらく人を褒めるじゃないか。
何か変なものを食ったのかもしれない。
もしくは優衣に殴られ過ぎて神崎士郎という男を構成するネジがぶっ飛んでしまったのかも。
半ば冗談であったが、アギトにとって神崎士郎は昔から「戦え、戦え」と口煩い男であった。
だから今更その性分が変わるとは思っていなかったので、人が変わったような士郎を興味深く観察していた。
「今更、世界から消えようとするな。この世界に、お前が必要だ」
彼の言葉はどうも解りにくい。
ただ、生きろと。
遠回しに激励されていることは分かった。
無論アギトも死ぬ気など微塵も無い。
しかしそれでも神崎士郎は告げる。
「戦い続けろ。そして、その欲望の果てに。お前が求めた願いはある。必ず」
神崎士郎は嘘を吐かない。
無論多少なりと真実を隠すことはあるが、それは彼自身のコミュ障と口下手からくるものとアギトは長年の経験から解釈していた。
だからこそ、彼の言っている言葉に一筋の希望を見た。
「そ、か。もう少しで見つかるか。ありがとう、士郎。やっと……安心出来た」
年相応の無邪気な笑顔をアギトは浮かべて見せた。
それも直ぐにいつもの表情に変わると、ゆるりと立ち上がって教会を出る。
「戦え」
彼の声に右手を上げて応える。
「戦え、ライダー。……戦わなければ、世界に未来はない」
扉の閉まる音に遮られ、士郎の言葉はアギトの耳に届くことはなかった。
「シリアスブレイクゥゥゥ!!Fooooooooーーーーーーーーー!!!!」
「………」
数日後、契約者一同は教会に集められ、ハイテンションの神崎からバージョンアップしたというカードデッキと例のventカードを受け取った。
「ふおおおおぉぉぉぉ フオオオ(((卍(^ω^)卍)))フオオオ」
狭い教会の中を所狭しとブレイクダンスしている士郎。
開発を手伝った天野銀によると、徹夜続きで理性が溶けたーーとか。
もっとも、幼少期の神崎士郎はこんな風にハッチャケちゃう性格だったのかもしれないし、彼らにとってはもうこれが〝いつもの〟士郎だと契約者一同はシカトすることに決めた。
「常時展開可能と言っても、これを使ってたら他のventカードが使えないんじゃ、って消えたァ!?」
試しに真司がventカードをバイザーに突っ込んでみるとventカードはたちまちに消失した。
機械の故障だろうかと慌ててドラグバイザーを殴るものの、召喚機は昔のテレビではないのでその対処法で治るとは思えない。
ここにも〝いつもの〟安定の天然を発揮するバカ真司を放っておき、蓮もまたバイザーにventカードをセットした。
独特な機械音が流れ、ventカードは消失。
試しにパートナーのミラーモンスターを呼んでみるとその効果が知れた。
「……恵理?」
ダークウィングの姿は彼の恋人、小川恵理に瓜二つだった。
優しげと包容力を持った柔らかな笑顔、昏睡前の彼女と同じ身長、体型、どれをとっても小川恵理を彷彿させるもので、髪型と髪色こそ多少の違いはあるものの、蓮の目には小川恵理が写っていた。
「ぁ痛だっ!?」
「!」
突然聞こえた悲鳴にハッと我に帰り、慌てて真司の方を見る。
あのまま見つめていたらダークウィングを恵理と勘違いしていた、そんな確信めいた予感が蓮の中にはあった。
そして逃避先の真司の方ではアギトがまるで女版真司とでも言える女性に殴られていた。
凶暴性が馬鹿の服を着た〝アレ〟が真司のパートナーモンスターのドラグレッダーだろう。
目つきは鋭く目と眉をセットで釣り上げたソレは周りの契約者やパートナーモンスターに向けてメンチを切っている。
まるでもクソもなくチンピラのような女だが、ドラグレッダーもまた顔の造形は非常に整っていて、睨みさえしなければ美女と呼んでも差し支えないだろう、威嚇さえしなければ。
「全員ventカードはセットしたな」
頃合いを見て神崎が仕切った。
契約者は全員ミラーモンスターの美女化、又は美少女化に満足していて神崎もたまには優秀とーーー
「ちょ、ちょっと待てよ。俺のだけおかしいんじゃね?」
発言したのは育ちの良さそうな雰囲気を持つ男、芝浦淳とガタイの良い謎のガチムチ男。
今回物見遊山のつもりで集まった彼は周囲の契約者のミラーモンスターがもれなく美少女・美女に変身する中で彼のモンスターメタルゲラスのみ巨体でガチムチの〝男〟に変身したのだ。
そしてそれを素知らぬ顔で士郎が仕切るものだから思わず声を上げたのだ。
バグが起こっているぞ、と。
しかしそれに対する士郎の答えは素っ気ない。
「メタルゲラスが女形態よりも男を好んだためだ。諦めろ」
「は」
絶句と同時に堪えきれなかったメタルゲラスが芝浦に抱き着き、彼の全身の骨は折れた。
芝浦はあまりの痛みに周囲に助けを呼ぶが、彼の吐き気を催す邪悪さを知っている契約者は皆無視を決め込み、芝浦は気絶してメタルげラスに連れていかれた。
こほんと咳払いを1つ、神崎士郎は気を取り直して本日の目的を話し出す。
「そういうわけだ。お前たちにはこれからライダーバトルではなく契約してるミラーモンスターと×××をして精◯の採集に励んでマラう」
「突然の下ネタ……!お前ほんとに……神崎士郎!?」
「YES I AM!」
ビシィィィィ!!っと某奇妙な冒険のようにポーズを決める士郎、本日何度目かの呆れを見せる契約者。
とりあえず神崎の説明会では美少女化した契約モンスターとちょめちょめしてドッピュンピュンしたものを集めて神崎に送り、それを元に妹の命を作るという頭のネジがぶっ飛んだ方法。
優衣に知られれば士郎は今度こそ殺されれだろう。
「それ以外に何かあるか?」
「ライダーデッキを大事にすることだ。何も美少女に喰い殺されたくはないだろう?」
「「「「………」」」」
デッキを紛失し美少女化した蟹に貪り喰われる須藤……、何故か彼らの中では一番先に喰われそうなのが須藤雅史という男だった。
ムッコロスタジオ
滑舌のよろしくない店員達が働くネットカフェでいつもの常連たちが会していた。
彼らは今後の身の振り方を話し合い、支倉紫穂の百合百合展開やキマシタワ-と叫んで仮面ライダーに変身した紫穂の毒にやられた。
「そういえばあれ、知ってっか」
痺れるだけの神経毒にやられていた黒山が一つの話題とパソコンをカタカタと操作した。
「明日、ここは一体の男を集めて適性検査をやるんだと」
行かなかったら罰金だってよー。
面倒くせえとため息混じりに吐いた愚痴、アルスやゴリラ、銀もISと女尊男卑の世の中に対してあーだこーだ呟いている。
その中ではアギトは、そろそろ迎えに行こうか……とだけ言った。
「迎えにいくって、何を?」
未だ男性陣は話し合いをしている。
その中では唯一興味が無かったか、退屈そうにしていた紫穂はアギトが漏らした言葉を聞き逃さなかった。
だから、達観した顔のアギトへ舌なめずりしそうな気持ちを押し込んで聞いた。
そして彼は言った。
「いつか奪われた。とても大事なものを取り返しに」
次から、次から……!!