学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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ヴァレンティーノ「原作の単行本はここで終わりであろー。連載元の漫画雑誌も見ても続きなんて書いてないし、連載再開と言っても再会するのはいつのことであろー」

100話目にして最新単行本の最後まで来ちゃったよ・・・
今回は日本支部司令のアレクサンドラとポンコツベースのクズ、腿ちゃんが小学校に来訪です。

声優ネタ的にキューティクル探偵因幡と学園黙示録のコラボを思い付いてしまった自分・・・
もしかして病気かな?


会いたくない奴との再会。

一方、倉庫に戻ったパッキー達に寄って、小室一行とSTG達が自分達と別れた事を知ったリヒターを初めとする軍人一同達。

彼等との別れることを孝が告げる前に離れることを決めていたセルベリアを初めとする第二次世界大戦と似た世界からやって来た者達は、旅立ちの準備を進める。

エイラが机の上に自身のタロットカードを並べ、これからの運勢を占う。

先に別れた小室一行の無事と自分達が何処へ行けば元の世界へ帰れるのかを占うのだ。

彼女以外の人間はこの部屋には居ない。

皆、自分達の荷物を纏めることや自分の相棒とも言える銃や“愛車”の整備で忙しい。

元々占いが趣味な彼女は暇さえあれば運勢を鑑定する事さえあり、こうして占いが出来るのは早めに荷造りを終えたからだ。

裏向きにされた大きめのカードの束をシャッフルしながら楽しそうに口を開く。

 

「ここ最近全く占いなんてやってなかったからナ。まずは小室達の運勢を見てやろウ」

 

シャッフルし終えたカードの束を机の上に置いたエイラ、一番上のカードをそのまま引いた。

 

「なっ、これは・・・!?」

 

尤も不吉な種類を引いてしまい、表情が青ざめるエイラ。

その引いたカードは太陽から竜巻が塔に命中し崩壊、落ちる人や塔から飛び降りる人が描かれたタロットの大アルカナに属するカード番号は16番の塔だ。

フランス語もスペイン語も神の家と意味するが、ネガティブ的な意味合いを持つ唯一のカード。

正位置は崩壊、災害、悲劇を意味し、逆位置は緊迫、突然のアクシデント、誤解を意味する。

エイラが引いたのは正位置だった為、もし占いが当たれば小室一行はこれから崩壊、災害、悲劇を味わうことになる。

引いたカードの意味が分かったエイラは恐ろしくなり、皆に伝えることもなく、ただ神に小室一行の無事を願った。

その頃、貴理子と再会・合流した孝達とSTG達が目指す新床第三小学校に、日本支部の司令官アレクサンドラが来訪しており、エイラのタロット占いが当たる危険性が増した。

 

「遠いところをご苦労様です!」

 

グランドの中央に降りたロシア製多目的ヘリKa-60カモフから降りたアレクサンドラをこの付近で展開しているいつの間にか来ていた旅団の長である腿が出迎える。

 

「楽にしろ。所で、例の一団の一つである高校生の集団が抜けているのは本当か?」

 

「はい。パトロールからの報告では型落ちの屋根付きジープ一台が増えただけで後は確認できないそうです」

 

周囲から警察署からここへ避難してきた避難民がKa-60に我先にと乗ろうとしているが、同じく小学校にやって来た警察官達に寄って止められる。

中歩兵や重装備兵達が手に持つ突撃銃等を上に向けて発砲し、避難民を威嚇する。

小学校の近くにあった駐車場は腿の戦車旅団に寄って占領されており、周りの家は全て戦車兵達の兵舎として活用されていた。

Ka-60がグランドから飛び去った後、学校の屋上に上がって周囲を見渡し、双眼鏡を覗いて小室一行のハンビィーとバギー、ジープを探す。

 

「あれか?」

 

直ぐに検問所へ向かう小室一行を見付けたアレクサンドラは腿に聞いた。

 

「あ、はい。報告にあった車種です。私の戦車部隊で排除しますか?」

 

「駄目だ、総司令部からこの少女を連れ戻せと命令が来ている」

 

懐から出した命令書を腿に見せながらアレクサンドラは伝え、双眼鏡に目を戻す。

 

「成る程。では、私が歩兵部隊を率いて捕らえに行きます。あの高校生達も我が組織の兵士を傷つけました、充分に敵意を示しております」

 

「いや、待て。検問所に行って確認しに行くだけで良い。あの少女も別れている可能性がある」

 

「そんな・・・クッ、分かりました。確認が取れ次第、自分は元の任務に帰らせて貰います」

 

左手の拳を握りながら悔しがった後、腿は自分より立場が上なアレクサンドラに敬礼し、検問に掛かった小室一行の元へと向かった。

そして小室一行は貴理子の作戦通り、STG達をハンビィーに乗せて武器と一緒に布で隠して、長物の持ち物に見えるよう偽装した後、検問の前に現れた。

検問にいるワルキューレの兵士達は冷戦下のイギリス陸軍空挺兵装備であったらしく、市街戦迷彩仕様のジャンプスーツを着込み、Mk2空挺型ヘルメットを被り、手にはFN FALのイギリス連邦軍モデルの空挺仕様L1A1やブレン・ガンL4、スターリングMk4ことL2A3、PIAT、腰にFN ハイパワーのイギリス軍モデルであるL9A1をガンホルスターに差した分隊規模の女性兵士が小室一行を睨み付ける。

屋根の上にはFN MAGを構えた赤いベレー帽を被った女性兵士が居ることに気付き、バギーに乗った軍オタであるコータが声を上げる。

 

「まるで冷戦下のイギリス陸軍の空挺部隊だ、人数は一個分隊程度か・・・」

 

こちらに向けて止まれと指示を出している眼光が鋭い女性兵士が前を走る孝とコータが乗ったバギーを止める。

 

「何故、動く車に乗っている?ここら一帯はEMPの影響で車は全て動かない筈だが」

 

運転席に座る孝を睨み付ける空挺兵を見ながら、ステン・ガンに似た短機関銃スターリングMk4を持つ空挺兵がバギーを調べる。

コータを見ていた空挺兵がトカレフTT-33の存在に気付き、その自動拳銃を取り上げる。

 

「こいつ等こんな安物拳銃を持ってました!」

 

「貴様等、これを何処で手に入れた?」

 

L1A1の銃口を向ける空挺兵に対し、孝とコータは大人しく答えた。

 

「死んでいるヤクザから拝借しました!」

 

コータが慌てながら答えた後、空挺兵が他に武器は無いのかと質問する。

 

「他に銃器の類は?」

 

「後ろにいる方々も含めて、銃器類はこの拳銃だけです。後は棒と刃物類だけです・・・」

 

他にないかと見渡した空挺兵が孝の答えに納得し、上官に伝えた。

 

「他にないみたいです」

 

「良し、通って良し。次も調べる。早く行きなさい!」

 

指示された孝はバギーを検問の近くに止めてホッとした。

 

「あれがアマゾネスか・・・」

 

「そうだね。きっと、最前線に経つ女性兵士はみんなああなのさ」

 

女性でありながら空挺兵の体格や振る舞いにそう思った孝とコータ、次にSTG達を隠したハンビィーが検問に入る。

 

「この車両は何処で手に入れた?」

 

運転席のドアを開けて、席に座る鞠川に問う空挺兵、聞かれている彼女は笑顔で返す。

 

「お友達から借りました~乗っているのはみんな親戚とお友達です」

 

少し不安になる孝とコータ、鞠川は乗っているありすや冴子、沙耶の事まで話した。

 

「そうか。で、そこで布を掛けている物は?」

 

STG達と銃器類等を隠していた布に気付かれた鞠川達は、少し焦り始め、冷静を保った冴子が答える。

 

「これは私の私物です。そして友人のも含まれております」

 

次に沙耶が笑顔で必死にSTG達と武器では無いことをアピールする。

 

「そ、そうなの!ちょっと高価な物だから布を被せてるの!」

 

「ありすのもあるよ。それとこの子はジークって言うの」

 

助士席に座るありすが抱えたジークを空挺兵に見せる。

空挺兵は暫し車内を見渡した後、布の中身を見せるよう沙耶達に指示する。

 

「その布の中身を見せなさい」

 

「え!?そんな大した物じゃありませんよ!」

 

「そうです。これは私達の私物です!貴女に調べる権利は無いはず・・・!」

 

その指示に少し焦り始める沙耶達、鞠川が誤魔化そうとして声を上げる。

 

「あっ、あそこに奴らが!」

 

「馬鹿・・・もう・・・」

 

見守る孝が鞠川の誤魔化し方に絶望し、一瞬にして見破られる。

 

「嘘を付くな!早く布を退かせ!」

 

「は、はい!」

 

自動小銃の大口径な銃口を向けられた鞠川は大人しく後部座席にある布を捲った。

 

「(不味い・・・!)」

 

「(お終いだ・・・!)」

 

「(ここまでか・・・!)」

 

「(こんな健康に悪い世界が最後なんて!)」

 

布を被って、息を殺して後部座席に潜んでいたSTG達は死を覚悟した。

しかし、布が上から被っていた正体は着替えの入った背嚢と鞄だけだったので、空挺兵は諦めて運転席のドアを閉めた。

 

「通って良し!次!」

 

「お努めご苦労様で~す」

 

運転席から感謝の気持ちを送った鞠川は孝とコータが乗っていたバギーの近くに止めた。

 

「先生、もう良いか?」

 

「あんた等、まだ出ちゃ駄目!」

 

椅子の下から沙耶に声を掛けたSTGに小声で怒鳴りつけた沙耶は落ち着く。

最後は麗と彼女の母親である貴理子とルリが乗るジープだ、ルリはワルキューレに目を付けられている為、全身に包帯を巻いて、全身火傷の患者に扮する。

 

「最後は貴様だな?」

 

「はい・・・」

 

ジープに乗る貴理子は大口径の自動小銃を持った空挺兵にそう答える。

助士席に座る麗と後部座席で全身に包帯を巻いたルリが横たわってわり、車内には緊張感に包まれれ、それを見守る孝達も緊張する。

 

「隣にいるのは貴様の娘か?」

 

「そうです、私の娘です。後ろに寝ているのは・・・」

 

「私の妹です、大惨事の時に病院から連れ出してきたので。全身火傷してるから余り動かさないでください」

 

麗が後ろのルリの事を空挺兵に説明した。

車内を覗いて後部座席にいるルリの惨状を見てから納得したが、十文字槍に目を付けた。

 

「その槍は何だ?」

 

「この槍は、あそこの小学校で警官として避難民を守ってる夫の物で。たまたま動ける車があったからここまで来た手筈です」

 

丁重に説明する貴理子、空挺兵は槍を取り上げようとしたが、麗に止められる。

 

「何をする?」

 

腕を掴んだ麗を睨み、殺気に満ちた声で言った。

今まで戦ってきた戦乙女達とは今まで違うと分かった麗は怯まず告げる。

 

「その槍は私のお父さんの物です。あなた方が没収する権利はないはずです」

 

「れ、麗ちゃん・・・!すみません、娘が飛んだご無礼を・・・!」

 

貴理子はここで問題を起こせば不味いと感じ、空挺兵に謝罪した。

しかし、意外な反応が返ってくる。

 

「気に入ったよ、短期間でそれなりの修羅場は潜り抜けたようだ。通って良し」

 

「えっ?あ、ありがとうございます!」

 

ドアから空挺兵が離れてハンドルを握る貴理子がアクセルを踏もうとした瞬間、小学校から来た腿の声が聞こえた。

 

「そこのジープ、待てっ!」

 

これで試練は潜り抜けたと思いきや、小室一行に新たな試練が科せられた。

腿がFAMAS F1等を持ち、ヘリボーン戦闘服を着てバラクラバを被った中歩兵を数人ほど引き連れて検問にやって来た。

孝達の視線が腿に集中する。

 

「そこの民間人は全員動くな。ボディチェックを開始する」

 

「お持ちを。ここの責任者は私です。あなた方に権限は・・・」

 

「いや、私は支部の司令官に命令されてやってるんだ。ちゃんと命令書はあるぞ?」

 

分隊長が腿に駆け寄るが、命令書を突き付けられてしまい、命令を受けるしか無くなる。

戦車のキャタピラ音も聞こえ、周りを包囲されてしまう。

大人しく手を挙げてボディチェックを受ける。

 

「女は女性兵士の場所へ。男は男性兵士のチェックを受けろ!」

 

気付かない内にAK107等を持ったPMCの様な男達が居た。

男性陣である孝とコータはPMC風味達に連れて行かれ、女性陣はイギリス歩兵風な軽歩兵に連れて行かれる。

 

「(外で何か起こっている・・・?)」

 

STGは外の様子を覗おうとしたが、部下達に止められた。

 

「(行くんじゃない。バレちまう!)」

 

「(熱源ゴーグルには新たな複数の人間が居る。今は出たら皆殺しだ)」

 

「(出たら小室達が皆殺しだ、早く終わってくれ。ここは健康に悪い)」

 

彼等が後部座席の下で息を潜めている間、女性陣のボディチェックが始まった。

 

「はい、スカート捲って」

 

真顔で発言した略帽を被る女性兵士に、沙耶と鞠川は驚きを隠せない。

 

「ちょっと、女性としてもその発言は不味いと思うけど!」

 

「はいはい、早く終わりたければ捲る!」

 

「ヒッ、わ、分かったわよ///!」

 

ステンMk5を突き付けられては従うしなく、沙耶は恥ずかしながらスカートを捲った。

鞠川は何の恥じらいもなく、スカートを捲っていた。

 

「良し!次はその胸に着いている乳袋の中を見せてね」

 

『はぁい!?』

 

確認班のリーダー格の女性兵士の発言に、冴子・ありすを除く全員が驚く。

ありすを抱えた軽歩兵が、上げ下げして何か出て来ないか調べる。

 

「フ・・・異常なし。ご免ね、振り回しちゃって」

 

「う・・・へ・・・」

 

何度も上げ下げされたので、ありすは目を回す。

並ばされたありすを除く、女性陣は胸を触られていき、何も入ってないと分かる。

 

「異常なしです」

 

調べ終えた女性兵士が、腕組みをして麗達を見ている腿に知らせる。

 

「その胸の中に何か入ってると思ったのだが・・・お前達は戻って良し!」

 

ボディチェックが終わった小室一行はそのまま車両に戻ろうとしたが、腿がジープの後部座席に乗ったルリに気付き、そこへ向かおうとする。

 

「まだ一人残ってるじゃないか。あそこの全身包帯のは男か、女か?」

 

「待ってください!娘は全身火傷で安静にしてないと!」

 

「娘と言うから女か。病人でも調べなければな」

 

止めようとする貴理子を払い除けた腿はS&W SW1911を取り出して、ジープの中に入り、全身包帯のルリに銃口を向ける。

 

「何か言ってみろ・・・喉は焼けてないだろう?」

 

包帯に銃口を突き付け、ルリに問う。

対する全身火傷の患者を演じるルリは、相手にそう思わせる為に居たがる振りをした。

 

「痛いのか・・・?ならば嫌と言え、そうすれば止めてやっても良いぞ」

 

真剣な表情で告げる腿に、ルリは喉が焼けたように答えた。

 

「嫌ぁ・・・痛い・・・」

 

「そうか、ただの怪我人か・・・引き上げるぞ。各員撤収し、元の任務に戻る!」

 

腿が以上がないと判断した後、配下の兵達は下がろうとしたが、STG達がうっかりして物音を立ててしまった。

物音に気付いた配下の兵士達が、音源であるハンビィーに向けてFAMASを向ける。

 

「なんだこの音は・・・?」

 

仕舞おうとしていたSW1911のハンマーを下ろして安全装置を外し、ハンビィーに向かう。

 

「お前達はここで待て」

 

配下の兵士達に告げ、腿は一人で音が鳴ったハンビィーの後部座席に向かうが、一人の空挺兵が声を掛けた。

 

「そこは調べましたが・・・」

 

「煩い、今物音が鳴ったんだ。何か居るに決まってる!」

 

「止めてください!それは私達の私物です!」

 

沙耶と冴子が腿を止めるが、自分の考えを否定する様なことを言ったので、遂に堪忍袋の緒が切れたのか、彼女は子供のように騒ぎ始めた。

 

「煩いぞ!私が居ると言ったら居るんだっ!!黙って私の言うことを聞けっ!!」

 

「子供みたい・・・」

 

「そうね・・・あの娘は精神年齢は幾つかしら・・・?」

 

駄々をこねているようにしか見えない腿を見て、ありすが行った後、それに便乗するように鞠川が腿の精神年齢は何歳かを考える。

強引に後部座席のドアを開けた腿は、物音が鳴った椅子の下に45口径の自動拳銃を向けて撃ち始めた。

 

「(うわっ!撃たれてる!?)」

 

「(静かにしろ!ばれるぞ!)」

 

「(俺達死んじしまうよ!出させてくれ!)」

 

「(硝煙の香りだ、健康に悪いぞ!)」

 

当然ながら、STG達の着ている戦闘服は特殊素材で出来ており、機関銃程度の弾丸は受け付けない。

故に、45口径のSW1911が使用する45ACP弾さえ、容易く防いでしまうのだ。

引き金を引いても銃声が鳴らず、カチカチとした音しか鳴らなくなった後、彼女の呼吸が乱れる。

弾倉を外すボタンを押して、空の弾倉を出し、新しい弾倉を差し込んで、スライドを引いて初弾を薬室に入れ込み、ガンホルスターに仕舞った。

息を整え、呼吸を元に戻した。

 

「ただの荷物だ。全員戻るぞ!」

 

腿の指示で、その場にいた配下の兵士と戦車は去っていった。

空挺兵が「もう行って良い」と告げ、有り難く孝達は乗車し、小学校へと向かう。

 

「もう終わったか?」

 

ハンビィーの車内で、椅子の下に隠れていたSTG達が身体を起こした。

 

「ちょっとあんた等、まだ敵地に入ったばっかり何だから隠れてなさいよ!」

 

突然現れた為に、沙耶はSTG達の事を注意した。

 

「分かったよ、お嬢ちゃん。みんな戻るぞ」

 

「やれやれ、また椅子の下か」

 

「しょうがない。これも元の世界に帰る為だ」

 

「敵兵が見えないところに来たら、出させてくれ。身体が痛いんだ」

 

沙耶の指示で大人しく椅子の下に戻るSTG達、ジープの車内では全身に巻かれた包帯を冴子に外して貰っているルリ。

全身の包帯が外れた後、深呼吸をして再び寝転んだ。

 

「ふぅ~疲れた~!学校に着いたら起こしてね」

 

「分かった、君も良く頑張ったよ。しっかり休んでくれ」

 

冴子が頼みを笑顔で聞いた後、ハンドルを握る貴理子は、二人のやりとりを見て少し微笑んだ。

小学校に向かうにつれて、ワルキューレの野営地が見えてきた。

バギーに乗る孝が暇潰しに麗に語り掛ける。

 

「今は関係ないと思うけど・・・僕のお袋の同僚は今も左翼活動やってるのがいてさ。学校で起きたいじめは見て見ぬ振りをするような反戦主義者だったよ」

 

「孝のお母さんの同僚はとんだ反戦主義者ね・・・」

 

話を耳にしていた麗は、M3A5リー中戦車を巫山戯て水洗いをしている自分と年が差ほど離れていない少女な戦車兵達を見ながら言う。

少し退屈そうにしている麗を見た孝は、そのまま続けた。

 

「今向かってる小学校でお袋は一年生のクラスを持ってるんだ。何があっても生徒が居る限り逃げないな・・・そう言う人だ・・・」

 

「そう言えばそうだったわね。それとお母さん左翼系の活動してたっけ?それとも日教組?」

 

「まさか!僕のお袋だぜ?麗も覚えているだろう。若い頃は」

 

『イチャイチャしてますか~?』

 

歩道を歩く自分達より一つ年下な大戦時の米軍のような戦車兵ようの野戦服を着た少女達が孝と麗を冷やかし、語りを強制的に中断させた。

 

「な、なんだよあれは・・・?」

 

突然見ず知らずの少女達に声を掛けられた孝と麗は赤面し、戦車がある方向へと向かっていく少女達を見る。

同時に上空から小学校に向かう陸上自衛隊のCH-47Jが見えた。

彼等に少し希望が沸き、同時に申し訳ない気持ちが沸く。

ようやく目的地である小学校に着いた孝達は、周囲を警戒する警官とそこで自衛隊を待つ避難民を見て、安心感を抱き、麗は自分の父親を探し始める。

 

「着いた・・・」

 

「そうだ、お父さん探さなきゃ。お父さん!何処?!」

 

麗の高い声に気付いた避難民と警官は一瞬、彼女に視線を向けるが、直ぐに自分の作業に戻る。

STG達も出て行こうとしたが、車内には出るなと沙耶に告げられ、そこで身体を伸ばす羽目になる。

何度も呼び掛ける麗に反応したのか、彼女の父親らしい警官が彼女の元へ向かう。

 

「麗・・・お前か・・・?」

 

「あっ、お父さん!」

 

自身の父親を見付けた麗は直ぐに父親に抱き付き、涙した。

 

「おぉ、麗・・・生きていたのか・・・?良かった・・・!それに貴理子も・・・!」

 

「えぇ、締め出されている所を麗ちゃん達に助けて貰ったの。正ちゃん、そっちの方は大丈夫だった?」

 

自分の夫に抱き付く娘である麗を優しく引き離した後、正に元気なのかを聞いた。

 

「あぁ・・・警察署に奴らが大挙して押し寄せてここに避難して、上空でキノコ雲が上がって電気や水道が駄目になった後、とても不安になったがあのPMCの連中のお陰で今は安心だ」

 

「私も大変だったのよ。お父さん、あれから携帯が繋がらなくなって、どれだけ心配した事か・・・」

 

「お前も大変だったんだな・・・済まない、孝君と勘違いしてしまって」

 

麗に謝罪する正の元へ、孝がやって来て事情を説明する。

 

「いえ、あの時のことは気にしてません。兎に角、貴方が無事で良かった」

 

「麗ちゃん、お父さんとお母さんに会えて良かったね!」

 

孝が正に告げると、ありすが麗の近くに寄って、笑顔で言った。

ルリも冴子に起こされて車内に出た途端、二度と聞きたくもない声が聞こえた。

 

「おやおや?あなた方はもしや、小室君達では・・・?」

 

その声がした方向に小室一行の視線が集中する。

そこに居たのは高城邸脱出から一度も見ていない紫藤一行の面々だった。

思わぬ出会いに孝達の表情は憎しみの表情に変わり、紫藤の顔付きに殺意を感じるのであった。




※追加しました。

しかし、ここで終わるとは・・・なにかあるんじゃないのか・・・?

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