和風美少女が自決したのと同時に小学校にいたゾンビは、孝やSTG達、乱入してきた美緒によって一匹残らず全滅した。
膝をついて呆然としていた冴子に美緒が近付き、彼女を立たせる。
「目の前で人が死んだのは初めてか・・・?結果がどうあれ君は生き延びた、彼女の分まで生きねばならん」
「は、はい・・・すみません、私が不甲斐ないばかりに・・・」
「気にするな。この世界では仕方のないことだ」
地面に落ちていた村田刀を冴子に渡した後、息絶えた美少女の元へと向かい、右手に握られていた日本刀を取って血を拭く手拭き取り、鞘に戻してから近くまで来た賢治に投げ渡した。
「うわっ!?これマジモンの日本刀じゃないですか!」
美緒から渡された日本刀を見ながら驚き、賢治は大事そうに抱えながら彼女に告げた。
「お前の武器だ、彼女の形見だから大事に扱え!」
「何という無茶ブリ・・・!」
取り敢えず受け取っておく事にした賢治、大鎌を跡形もなく消滅させたルリはその場で固まる全員の元へ向かう。
孝は美緒の元へ行き、助けてくれたことを感謝した。
「すいません、助けていただいて何のお礼も出来ず・・・」
「無抵抗な女子供が襲われて我慢できずに飛び出したまでだ。礼はあの少年と一緒に私を君達の仲間に入れてくれるだけで良い」
「そうですか・・・」
あそこで日本刀を大事そうに抱えてる賢治を親指で指差ししながら言う美緒に孝は苦笑いしていた。
STG達はまだ動くゾンビは居ないか探し回っていた。
「ゾンビは何時蘇るか分からんぞ。しっかり確認しておけ!」
『了解だ、STG』
「僕も手伝います!」
コータも加わった後、暫しの残敵探査が行われた。
その間に狙撃の正体を確認するべく、沙耶はハンビィーの上によじ上って、校門の方角を双眼鏡で覗いた。
そこにはこちらへ向かってくるコンドル装甲車に乗ったアリシア達であり、孝達が見えているのか手を振っている。
「どうやら助けてくれたのはアリシアさん達のようね・・・みんな、迎えが来たわよ!」
大声で知らせた後、自分も降りて孝達の元へ向かった。
やがてアリシア達も来て、それと同時に残敵探査を終えたコータとSTG達が帰ってきた。
全員が揃ったのを確認した美緒は自己紹介を始めた。
「たしか小室君と言ったか、私の噂は芳佳達から聞いているな。初対面の者には自己紹介をせねば、私は扶桑公国海軍所属の坂本美緒だ。階級は少佐。芳佳を追っていたら、霧に呑まれ、この世界に迷い込んでしまった。よろしく頼む。そっちは・・・」
美緒が賢治の方を向いて、それに気付いた賢治が名乗りを上げる。
「どうも、阿波来賢治です。藤見学園の高2で剣道部所属です」
「剣道部・・・?」
冴子は賢治が自分の高校の剣道部に属していた事を知らなかったらしく、思い詰めていた。
「まだ今年からなんで、主将の貴女は覚えて無いと思いますけど・・・」
「あぁ、そう言えばいたな。後輩からは影が薄いと評判の・・・」
「えぇ・・・俺そんな感じで覚えられていたんですか・・・?」
憧れである冴子に言われて落ち込む賢治、ありすがジークを抱えながら慰めている。
正達は賢治の事は理解できたが、美緒とアリシア達の事は理解できなかった。
代わりにアリシアと同行していたカールが説明する。
「成る程・・・別世界からのやって来たのか・・・」
「まるでSF小説みたいね・・・」
カールからの説明を聞いた正と貴理子は納得し、孝の母も、同じく同行していたBJに詳しく問い質して理解した。
次に美緒がルリの方を向いて、先程の戦闘で使っていた大鎌の事を問う。
「それとルリと言ったか?」
「はい、私ですけど・・・?」
「先程、大鎌を使って蘇った亡者共と戦っていたな。あの鎌、いや、あの
その瞬間、ルリの表情が若干固まり、BJとカールが眉を細めた。
先程の質問は地雷と悟った美緒は付け足すように続ける。
「別に言わなくて良いぞ。人にはそれぞれ秘密を抱えている物だからな」
「え・・・はい・・・」
美緒の問いにルリは、秘密を言うか言わないかで迷う。
しかし、ここで言えば彼女の信頼を崩しかねない上、それでもいずれか主の為に彼等を殺めるしか選択肢しかない。
敢えて言わなくても信頼は保てるが、自分にとってはなんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
どうするか迷っている内に、あることを思い付いた。
それはとても単純な答え、嘘をつくことである。
幸いにもルリの演技力はどんな嘘でも本当のことだと思わせる程、プロの女優顔負けの演技力だ。
どのような設定にするか脳内で模索し、どう演じるかによって信じ込ませるのか良く考える。
脳内に自前の脚本が構築できた後、早速ルリに視線を集中させている美緒も含めた孝達に向けて嘘を話そうとした瞬間、迫撃砲が校舎の上に着弾した。
「なんだ!?」
「この機に乗じて襲撃か!?」
孝達を除く全員が武器を構えて警戒する。
「迫撃砲の攻撃だ!お前達は学園の中に入れ!!」
セルベリアがG36Kを右手で構えながら、左手で孝達に校舎の中へ入るよう指示を出す。
孝達が校舎の中へ入って行くが、ルリはSTG達と共にこれからやってくる武装組織の迎撃に向かおうとしていた。
「おい、君はこっちに来るんだ!」
正に襟を掴まれて校舎の中へと連れて行かれる。
アリシア達は迎撃に向かって孝達は校舎の中に避難した。
しかし、その中に地中からやって来たワルキューレの部隊が居るとも知らずに。
時はルリが帰るか残るかで迷っている頃、床主の海岸に特殊部隊専用装備をした集団、アメリカ海軍の特殊部隊SEALsの海軍特殊作戦グループ1に属するチーム1の一個小隊が派遣された。
周囲を警戒し、彼等をここまで運んできた輸送ヘリのCH-53Eが飛び去った後、14名からなる小隊は市街地へとお互いの死角を防ぎながら進んだ。
彼等が進む道に街に残っていた数体の奴らが偶然にも現れたが、SEALs隊員達は慌てることもなく消音器付きHK416のダットサイトを覗いて照準を奴らの頭部に合わせ、小隊長の男にマイクで問う。
「こちらブラック
「よし、許可する。任務の邪魔になる物は全て排除せよ。ただし“静か”にな」
「イェッサー」
射撃許可が下りた為、それぞれの奴らに狙いを定めていた隊員達は発砲を始めた。
銃声は限りなく
ギリギリ聞こえるくらいの銃声に気付いた奴らが小隊の右側から襲ってきたが、M60E4を負い革で吊した隊員が消音器付きM9自動拳銃を引き抜き、正確に頭部に命中させて排除する。
この市街地にいた奴らが全滅した後、小隊はリヒター達が居る倉庫がある地区まで移動を再開した。
何故、彼等がここにいるのか?その目的はリヒター達の偵察と接触の為である。
彼等を監視していたのはワルキューレだけでは無く、アメリカ全軍の情報局も衛星による監視を行っていた。
監視途中、彼等が突然消えた為、調査・偵察・接触の為にSEALs特殊作戦グループ1に属するジェイコブ・ハドソン率いる小隊が派遣されたのだ。
今、ジェイコブ達はリヒター達が居る倉庫の入り口がある公園を見渡せるビルに居た。
「情報部には困った物だ。第二次世界大戦中の枢軸国軍と偵察か接触しろなんて・・・」
バラクラバを帽子代わりに被って、素顔を出している小隊長である白人のジェイコブは、双眼鏡を左手に持ちながら副官である黒人隊員のルイス・ゴートンに愚痴を言う。
「そりゃあ、誰だって信じられないでしょうに。しかし、写真にはクッキリ映ってますよ」
懐から出した写真を上官に渡したルイス、ジェイコブはフルカスタムのSG552を机の上に置いて、写真をじっくり観察する。
「ブリーフィングの時は信じられんかったが、まさか事実だとは・・・」
「うちのそう言うのに詳しい奴に調べさせたところ、本物だって豪語してました」
見終わって写真を返したジェイコブは水筒を口にし、中にある水を飲み始める。
飲み終えた瞬間、若い日系人の隊員、SR-25を背負い、MP5A5を負い革で吊したマイケル・モリタが慌てて入ってきた。
「どうした?」
「隊長!大変です!外を見てください!」
マイケルが言ったとおり、ジェイコブとルイスが双眼鏡で公園の方を覗いてみれば、何もない場所からアリシア達の乗っているコンドル装甲車が出て来た。
「なんだこれは・・・!?」
「どういう事だ!?」
マイケルに問う二人、直ぐに彼は事情を説明した。
「サー、自分が見た時は何かの先が飛び出していました。目の錯覚だと思って擦って見てみたらコンドルの先でした!」
「一体どうなって居るんだ・・・!?」
余りにも信じられないことにルイスは少し動揺したが、落ち着きを取り戻したジェイコブが指示を出した。
「お前の分隊はコンドルを追え!俺の分隊はあのコンドルが出て来た場所を調べる!人でを集めろ!!」
「アモーレ!」
指示を受けたルイスは素早く自分の分隊を纏め、アリシア達が乗る装甲車の後を追った。
ジェイコブを含めて7人の分隊は装甲車が現れた空間の亀裂の元へ向かう。
この頃、小学校で孝達がストアー率いるゾンビの大群と死闘を演じ、空が不気味な色に染まっているが、彼等は動ずることもなく目標へと向かっていた。
「ここですか、モリタ兵曹」
「あぁ、ここだよ。ここからコンドルが飛び出してきたんだ」
長距離無線機を背負い、M16A3を持った白人隊員、アーウェン・ジップスが目撃者であるマイケルに聞き、それを彼が答える。
「映画の3Dで見るような亀裂だな?」
ポイントマンである黒人隊員のジェシー・フォルダーがHK416の銃口を亀裂に構えながら言う。
後衛担当のパザード・フレッシュマンもM60E4を持ちながら亀裂を見る。
「そのようだな。誰か入るか?」
周りにいた隊員達にパザードは問うが、全員首を横に振って断る。
「はぁ・・・俺がやるか・・・」
仕方なくパザードがそこらに落ちていた木の枝の先を亀裂に入れ込んだ。
先が亀裂にはいると、その部分だけが消えており、その場にいた全員が驚き、パザードは驚いた衝撃で木の枝を地面に落としてしまう。
「うわっ!?先っちょだけ消えやがったぞ!」
「まさか本当に次元の亀裂か・・・?」
落ちた木の枝の先を見たジェイコブがそれを見て、亀裂を見る。
「どうやら異世界の入り口らしい。先は消えていない、見ろ」
落ちた木の枝の先を指差してジェイコブが言った後、それを見たアーウェンが口を開く。
「本当だ、先が消えてない」
「異世界の入り口なんて映画かアニメ、ゲームしか見たこと無いぞ」
短機関銃を持ってない左手で頭を抱えながらマイケルは少し動揺する。
亀裂を見たジェイコブは迷うことなく部下の静止も聞かずに亀裂へと入っていった。
「おい・・・隊長が消えたぞ・・・!」
一人の隊員が言った後、全員の視線が亀裂に集中する。
暫くすると、ジェイコブの頭が亀裂から飛び出してきて、部下達は驚いて銃口を向けた。
「銃口を向けるな、俺だ。ここに入ってみろ、面白い物が見られるぞ?」
隊長であるジェイコブの言葉で部下達は亀裂の中に入っていった。
入った彼等が見た物はリヒター達が居る巨大な倉庫であり、初見である彼等は驚きを隠せなかったと言う。
その頃、小学校の地中の人工で掘られたトンネルでは、胸元を開けた
彼女の名はリディア・アグーテである。
元の世界で戦死した後、何処かの世界に転移し、軍事組織ワルキューレに拾わる。
二度目の転生の初陣で才能を発揮し、実力を見せ付け、下級司令官にまで上り詰めた。
彼女の向かう先はトンネル工事用のシールドマシンを搭載した掘削機型のブルドーザーが止まっており、小学校のある地点に向けてワルキューレの工兵が上にドリルを刺して掘り進んでいる。
「あっ、リディア様!」
M2ヘルメットを被り、作業着を着た女性工兵が向かってきた女性に敬礼した。
何故、部下に姓名を言わせないのかは元の世界に属していた宗教団から与えられた物で、彼女はこの姓名を酷く嫌って、部下にリディアと様付けで呼ばせているようにしている。
早速リディアは女性工兵に作業の進み具合を問う。
「調子はどう?ここは熱くて蒸れるわ・・・」
左手で胸元を広げて、豊満な胸を見せ付けるかのようにして右手を内輪代わりにする。
もう少しで見えそうになる為、工兵は赤面しながら答えた。
「後4分で標的が隠れている地点に到着します」
答えた女性工兵の後ろにはドイツ国防軍の野戦服や迷彩スモック等を着て、頭にドイツ兵の象徴的なシュタールヘルメットを被った旧ドイツ軍装備の二個分隊ほどの人数の擲弾兵が待機していた。
シュタールヘルメットのデカールにはワルキューレの兜が描かれ、下にはラテン語でワルキューレと文字が書かれている。
彼女等の手に握られているのはkar98k、MP40、、MP41、kar43、StG44だ。
腰のガンホルスターにはワルサーP38、ルガーP08、ワルサーPPが収まっており、ベルトにはM24柄付手榴弾が一本挟まってる。
準備が万端と見たリディアは小学校がある地点を見上げて、考え込んだ。
「(なんで小室孝を初めとする学園からの脱出組を捕らえるように指示したのかしら?まぁ、私が考える訳じゃないけどね)」
視線を前に戻して、小学校への近道が開通するのを待った。
コンクリートの底が見えた為、ドリルを停止してコンクリートの底が見えたことを知らせた。
「コンクリート発見!」
「良し、
MP40の負い革を肩に掛けて、M43戦闘服着てM43ズボンを履き、M43規格帽を被った隊長らしき女性兵士が左手を振り下ろして後ろにいた集団に指示を出し、工兵の声が聞こえてきた穴に入っていった。
吸い込まれるように入っていった擲弾兵達は、工兵が居る場所まで来た。
上のコンクリートがタイル状になっている事が分かった工兵はそれを開けようと、溶接部分をスコップで切り取ってゆっくりとタイルを持ち上げた。
「え・・・なに・・・?」
偶然にもその部屋にいた鞠川は、突然タイルが浮いた事に驚いて、距離を置いた。
もちろんそのタイルを動かしているのは地中から侵入してきた擲弾兵達を待たせている工兵である。
「これ・・・動いてる?」
取り敢えず鞠川は四つん這いになってタイルに近付き、ゆっくりと動くタイルを見ていた。
浮かび上がったタイルが隣に置かれた後、そこからMP40を構えた童顔の擲弾兵がゆっくりと現れる。
「あっ・・・」
「へぇ・・・?」
四つん這いになって豊満な谷間を見せるようなグラビアポーズを取る鞠川と、まだ幼さが残る擲弾兵の目が合って、時間が止まったかのように二人は口を開けて固まっていた。
先に動いたのは擲弾兵の方であり、直ぐに鞠川に飛び掛かった。
「まだ兵隊さんが地下からー!」
叫ぼうとした鞠川の口を抑え、開いたタイルから続々と出てくる味方の擲弾兵と共に暴れる彼女を拘束する。
「ウー!ウゥ~!」
口を抑えられ、擲弾兵達が出て来た穴に鞠川は連れて行かれた。
鞠川の悲鳴で敵の侵入に気付いた孝達は迎撃に向かおうとしたが、始めに出て来たコータが麻酔弾仕様のkar98kを撃たれ、刺さった麻酔弾を見る。
「ウッ・・・?これは麻酔弾・・・!?」
その後コータは床に倒れ、擲弾兵達に連れ去られる。
「撃たれた・・・?」
残る者達も麻酔銃で撃たれ、コータと同じく連れ去られてしまう。
正、貴理子、孝の母は麻酔銃で撃たれたが、そのまま放置されていた。
二階から狙撃しようと考えていたルリは、外敵の侵入に気付き、直ぐに一階へ駆け付けたが、もう既にジークも含む孝達はワルキューレの擲弾兵達に連れ去られた後であった為に間に合わず、最後尾のMP40やMP41を持った擲弾兵達と交戦した。
「例の少女です!連れて行きますか?!」
kar98kのボルトを引いて次弾を薬室に送っていた擲弾兵が隊長にルリも捕獲するかどうか問う。
「いや、早く撤退した方が良い。囮部隊が退却を始めた。銃で抵抗されては連れて行くのに時間が掛かる!」
隊長は入ってきた穴に指を差して答えた。
その擲弾兵は納得して穴に入って退却した後、ルリを足止めしていた擲弾兵二名の断末魔が聞こえた。
「敵が来る!」
ルリが来る前に穴に飛び込んだ後、小さい梱包爆弾に信管を刺してから置き、リディアが居る場所まで戻る。
部屋にやって来たルリは、穴を見付けて入ろうとしたが、梱包爆弾が爆発、孝達を連れ去った擲弾兵達を追うことが出来なくなってしまった。