バスで学園を脱出してから紫藤は安心しきった顔で毒島に問う。
「助かりました、リーダーは毒島さんですか?」
「そんな者は居ない、皆の力で協力しあっただけだ」
その答えに紫藤は笑みを浮かべて口を開く。
「それはいけませんね・・・生き残るためにはリーダーが必要です。目的をハッキリさせ、秩序を守るリーダーが・・・!」
「後悔するわよ、絶対に助けた事を後悔するわよ!」
麗は孝の腕を掴み、憎しみの表情で言う、この麗の言葉にルリは紫藤という男はとても嫌な奴だと悟った。
だが孝は紫藤の事を知らない、そのままバスは学園を離れていく。
「だいたいよっ!」
脱出してから周りが安心感が浸ると思いきや、問題が発生した。
コンビニを通過した直後、バスの車内では以下にも不良な少年が怒鳴り散らしている。
「何で俺達まで小室に付き合わなきゃならないんだ?」
「へ、勝手に乗ってきて良く言うぜ」
不良の言葉の後に誰かが小声で言った。
その少年は階段で助けられた1人で、姓だけだが西寺と言う、誰にも聞こえないように言ったので不良の言葉はまだ続く。
「お前等が勝手に街に戻るって決めただけじゃねぇか!寮とか学校の中で安全な場所を探せば良かったんじゃないか!?」
その言葉に反応したのか、地味な男子生徒が口を開いた。
「そうだよ。このまま進んだら危険だよ、さっきのコンビニに立て籠もった方がr」
男子生徒の言葉が終わる前にバスは急停止した。
その所為か、誰か悲鳴を上げている、それは嫌みの正論を吐いた西寺だ。
頭をぶつけたのか、運転席に居る鞠川に怒鳴ろうと思ったが、突然温厚で天然なハズの鞠川が激怒したためか、小さくなる。
「いい加減にしてよ!これじゃ運転できない!」
怒りそうもない彼女が怒ったためか、ルリは不思議がっている。
怒鳴った鞠川を見て不良は黙り込み、次なる八つ当たりをする相手を目で探し、孝に目を付けた。
「ならば君はどうしたいのだ?」
「んだよ、やろうってのか!?」
毒島は不良に呆れながら質問する。
「コイツが、気にイラねぇんだよ!偉そうにしやがって!ムカツんだよ!」
怒鳴りながら孝を睨み付けた不良、この時平野がネイルガンを不良に向けていたが、高城に止められた。
この無茶苦茶な答えに孝も流石に反論する。
「何だよ、僕がいつお前に何か言ったか?」
麗が立ち上がろうとするが、ヘルメットを外したルリが突然立ち上がり、不良の前に出たことで行動を止めた。
「あっ!?コスプレの餓鬼が何の用rブゴォ!!」
ルリは弾が無くなり、拉げたkar98kの銃座で思いっきり不良の腹に叩き込んだ。
金属部分の底で殴られたためか胃液を履いて藻掻き苦しむ。
「ルリ・・・」
孝は不良を潰したルリを見て言う、そして一部始終を見ていた紫藤が拍手をしながら近付いてきた。
「素晴らしい!見事なチームワークです。そこの可愛らしいお嬢さんとお二方!しかしこの様なことが二度と起きない様にしなくては。そう、我々にはリーダーが必要なのです」
「で、候補者は1人って訳?」
この高城の言葉にやや動揺したが、仕切り直して言葉を続ける。
「なにを言ってるんですか、私は教師でよ。貴方達は学生や未成年の部外者です。資格の有無はハッキリとしております。私にはこの一団を責任持って率いる義務があります。どうです?皆さん、私なら問題は起きないことを約束しますよ?」
悶絶していた不良がまるで天使を見てるかのように紫藤を見ていた。
後部座席にも彼を舞い降りた天使のように見る学生達もいる。
「で、あいつはただの噛ませ犬ってことか」
西寺の言葉に紫藤は図生だったのか、小さく舌打ちをした。
しかし西寺の行動が裏目に出た様で、紫藤を崇めていた学生達から睨まれ、孝達の方へと移動する。
この行動を見た紫藤は笑みを浮かべて口を開く。
「まぁ、今更遅いようですしね。では皆さん、私がリーダーで宜しいですか?」
紫藤は後ろを振り返り、自分を崇めていた学生達を見た。
学生達は紫藤が神にでも見えたのか賛成と言わんばかり手を上げた、満面な笑みを浮かべて紫藤は孝等の方を見る。
「と・・・言う訳で、多数決で私がリーダーに成りました。手を上げてないのはあなた方だけですよ・・・?」
「出来レースでもしてんじゃないか?」
「てめぇ!リーダー様に逆らうつもりか!」
勝ち誇った表情を見せつける紫藤に対して西寺は一言吐き捨てたが、不良に睨まれ、また黙り込んだ。
麗も我慢できなくなったのか、叫び出す。
「先生開けて・・・私ここで降る!降ります!」
「え、でもまだ・・・」
鞠川が戸惑っている間に麗は反対側のドアから降りてしまった。
何故か一緒にルリも降りている。
「・・・・麗っ!?ルリも!?」
孝はルリが止めに行ったと思ったが、彼女は麗と一緒に行動したいだけである。
「嫌よ!そんな奴と一緒に居たくない!」
嫌がる子供のように泣き叫ぶ麗を見た紫藤は白々しい困り顔で口を開いた。
「行動を共に取れないのであれば仕方ないですね・・・」
「あんた、何言ってんだ!?」
その発言に孝は反論する。
「街まで、街まで我慢するだけじゃないか、それに歩きは危険」
「だから後悔するって言ったのよ」
「だから今は我慢して・・・で、どうしてルリは麗と一緒にバスを降りたんだ?」
孝は少し睨むようにルリを見て質問した。
「あいつ、気に入らないもん。お姉ちゃんより酷そうだし・・・それに麗ちゃん1人なら危ないもん」
「最後が尤もだが、気に入らないって・・・」
孝の言葉が終わる前にバスのクラクションが聞こえた。
最初は仲間が乗るバスが戻ってこいと鳴らしてると思ったが、連続して聞こえるので、直ぐに違うと判断した。
向かってくるバスの車内は奴らで溢れかえり、地獄絵図で、奴らに喰われてる運転手はブレーキを踏めないでいる。
橋のトンネルの前にいるルリは麗を守るためか、暴走するバスに向けてMP40を乱射した。
だが、フロントガラスを割って中にいる生き残りと奴らに当たるだけで意味がない。
弾切れとなり、次にワルサーPPkを取り出し、再びバスに撃ち続けるも何の意味も無かった。
孝は直ぐに麗とルリを庇う、トンネルの方へその衝撃でルリは持っていたMP40とワルサーPPkを落としてしまった。
バスは横転していた車に衝突し爆破し、周りは火の海と化し、橋のトンネルに入ることは出来なくなる。
幸いなことに3人はトンネルに入って無傷であった。
毒島がマイクロバスから降りて、無事を確かめるために大声を出す。
「小室君!大事ないか!?」
その答えに孝は咳き込みながら答える。
「警察署で、東署で落ち合いましょう!」
「時間は?!」
「午後5時!今日が無理なら明日も同じ時間で!」
「分かった!鞠川校医、ここはもう進めない」
その後、バスのエンジン音が聞こえた。
燃え上がるバスの中から全身に火を纏った奴らが出て来たが、やがて力尽きる。
そして孝、麗、ルリはトンネルから抜け出す。
一方、この光景を上空に飛ぶ多目的ヘリUH-60Jから見ている者が居た。
それは日本の国益の為に極秘裏に冷戦終結から設立された極秘特殊作戦部隊オメガ・グループの隊員の1人オメガ7こと小松だ。
彼はバスに乗って去る生存者達を見た後、視線を機内に戻した。
「何を見てたんだ小松」
オメガ8の平岡が小松に問う。
「いや、ただ下を眺めていただけだ」
小松はその問いに答えた。
機内には小松と平岡の他にもオメガ20の田中、他にも3人MP5SD6や対人狙撃銃を装備した隊員が居る。
UH-60Jはそのまま目標に向かった。
オメガの目的は今は秘密です。
次は街に入る孝達を書いた後、転移した者達を書こうかな?