学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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仕事の忙しさでスランプ気味です・・・


ヴァルキュリアとワルキューレの歌声が聞こえる時

街を抜けたルリ達を待っていたのは多数の旧ソ連時代の様々な戦闘車両だった。

上空には多数のMi-24Vが飛んでおり、歩兵の数も尋常じゃない。

これを双眼鏡で見ていたカールは、セルベリアにどうするか問う。

 

「どうする。強行突破でもするか?」

 

もちろんあれ程の敵の数に強行突破などしない。

 

「するわけがないだろう。だが、ここを潜り抜けなければあの基地には行けない」

 

圧倒的な敵戦力の後ろにある基地にセルベリアは指を差した。

行く手を塞ぐ敵軍をどうにかしない限り孝達もとい小室一行の救出は行えない。

どうするか考えてる間にエイリアスが彼女の隣に来た。

 

「どうした?」

 

「向こうに槍と盾があったぞ」

 

「槍と盾・・・?」

 

それが気になったセルベリアは、監視をカールに任せてエイリアスの後へ続いた。

案内された場所には槍と盾は無かったが、エイリアスが指を差した方向を見ていれば、放棄されたビルの屋上に四人分の槍と盾があった。

 

「あれは・・・!」

 

双眼鏡で良く確かめたセルベリアはそれが見覚えのある物だと気付く。

それは生前自身の秘められた能力を解放するヴァルキュリアの槍と盾であり、形もそのままだった。

直ぐに自分と同じヴァルキュリア人であるアリシアとリエラに知らせる。

呼び出された彼女達は、屋上に今起きている問題を片付けられる物が置かれていることに驚き、直ぐに取りに行こうとしたが、ローバックに止められた。

 

「やめときな、嬢ちゃん達。あれが見えないのか?」

 

ローバックから渡された双眼鏡でビルの周囲を見てみれば、機械と生体が合体した機械なのか生命体なのか分からない物が多数彷徨いており、犬型の戦闘ロボや、先程交戦したソ連の戦闘型も居る。

 

「そんな・・・」

 

「それだけじゃないぜ。向こうも見てみろ」

 

絶望するリエラに、ローバックが浮遊している戦車のような六角形の乗り物が数台ほど彷徨いている。

頼みの綱である槍と盾の入手はもはや絶望的であった。

犬と交戦したことがあるゲイツはこの場にいる全員に対処法を説明した。

 

「あの生命体だか機械だか浮遊する戦車のことは分からないが、犬ことは分かってる。口からレーザーを撃ってくるソ連の索敵型だ」

 

「レーザーを撃ってくるだって?それじゃあ、俺達の防護スーツを貫くじゃないか!」

 

黒人の隊員が、犬型の戦闘ロボがレーザーを撃ってくることを知ると、文句を言う。

 

「そんなの第二次世界大戦まで来るときに何度もあっただろう。忘れたのか?」

 

STGが言った後、黒人の隊員は静かになった。

どうやって敵に気付かれず、槍と盾を入手するのかを考えている間に、女性の悲鳴が聞こえた。

何事かと全員がその場に向かえば、全身銃創だらけのロシア人の女性がワルキューレの軽歩兵の首を掴んで内蔵を引き抜いている所だった。

これまで生き延びてきた賢治とイーディにリコルスであったが、流石にこれは見たことがなかったのかその場で嘔吐している。

 

「あれはなんだ・・・!?」

 

「ソ連のアンドロイドだ。人工皮膚と肉をもった超合金のアンドロイド。以前こいつに俺の部下がやられた」

 

平八が言うと、ゲイツがアンドロイドについて説明した。

その女性型アンドロイドの周りには軽歩兵の死体が多数転がっており、腕や脚が引き千切られて、無惨な死に方をしている。

 

「酷いことを・・・!」

 

「奴らには感情はない。全く誰がこの世界にあんな物を・・・!」

 

BJが口を押さえながら言えば、ゲイツが拳を握り、悔しながら言った。

 

「倒す方法とか、無いんですか?」

 

バウアーがゲイツにアンドロイドの倒し方を聞くと、彼はあると答えた。

 

「あるにはあるが・・・液体ヘリウムが無いと倒せない・・・」

 

そのゲイツが言った事にSTG達は自分らが倒せると分かり、レーザーに指差しながらゲイツに告げた。

 

「レーザーならあるぜ?」

 

「液体ヘリウムで凍らせるよりも、こっちの方が効率が良い!」

 

「それもそうだったな・・・()るなら静かにやってくれよ?」

 

「分かってるさ」

 

視線を向けたゲイツにSTGはピースサインをしながら答え、最後の戦乙女を始末したアンドロイドが居る場所へ向かった。

バイザーの熱源センサーで、アンドロイドの体温を見れば、生きている人間と変わりないことに気付き、ゴーグルの隊員は声に出してしまう。

 

「凄いよSTG。彼女はあれだけ撃たれているにも関わらず、体温は通常の人間と同じだ」

 

「バイオテクノロジーの驚異的進化だな。一斉射撃で仕留める。俺が撃てと言ったら撃て」

 

アンドロイドに気付かれないようにマイク越しで言った後、隊員達は配置に着き、アンドロイドに狙いを付けた。

 

「爆発させるなよ・・・?」

 

レーザーを構える隊員達に告げると、全員が頷いてから数秒後銃口からレーザーが発射され、静かにアンドロイドの撃破に成功した。

それと同時にハイトのP-40キティホーク4が上空から現れ、ルリ達の頭上を通過する。

 

「またワルキューレの空襲か!?」

 

「なんだか違うような気が・・・」

 

驚いた全員が地面に伏せた後、バウアーが頭上を通り過ぎたP-40の様子がおかしいことに気付く。

一方、そのP-40に乗ったハイトは、見覚えのある敵がこの地球に居ることに驚き、声を上げる。

 

「あれは創造主の戦車!?それに歩兵タイプまで・・・見慣れないタイプもいるけど・・・」

 

ハイトは目の前に見える見覚えがある敵に見取れている間に、中東軍の対空砲や、下にいる異性物や戦闘型によるレーザー攻撃を受ける。

 

「攻撃されてる!?」

 

士官候補生時代で学んだ回避術をしながらハイトは敵からの対空射撃を必死に避けた。

当然ながらP-40にフレアが積んでるわけがないので、対空ミサイルが来ないことを彼女は必死に願う。

 

「あれを潰しておけば少しは楽になるかしら?」

 

レーザーを撃ってくる敵戦車の弱点を知ったハイトは敵の対空射撃を避けながら、機銃の安全装置を外し、戦車のフィンに向けて六門の12.7㎜機関銃を撃ち込んだ。

人体を軽く引き千切る12.7㎜弾を何発かフィンに食らった戦車は磁場崩壊を起こし、ただの鉄の塊となった。

 

「やった!徹甲弾が通じた!!次も・・・!」

 

レーザー攻撃を避けながらハイトは次の獲物を狙う。

それを見ていたセルベリアはこれがチャンスだと思い、アリシア、リエラ、エイリアス、イムカと共に槍と盾があるビルに向かう。

ハイトの活躍ぶりに唖然していたBJは彼女達を止めようとしていたが、既に遅かった。

 

「おい、待てよ!行ったら奴らに・・・」

 

その声はルリ達の存在に気付いた中東軍のJS-3の砲撃で掻き消された。

それから連続して中東軍からの攻撃が来る。

 

「敵戦車と装甲車が多数接近!ヘリも歩兵もわんさか来るぞ!」

 

「反撃しろ!スモークを投げろ!!」

 

カールの報告に、ゲイツがセルベリアの代わりに指示を出した。

上空ではハイトのP-40が対空射撃で撃墜され、ヴァルキュリアの槍と盾があるビルの近くまで墜落する。

墜落した機体を調べようと、ビルの付近にいた索敵型や戦闘型、奇妙な機械生命体がハイトの元へ向かおうとしていたが、バレットM82A1に持ち替えたセルベリアが手短に居た機械生命体に向けて撃った。

走りながらの射撃である為か、中心部に命中、辛うじて倒すことが出来たが、索敵型がアリシア達に向けてレーザーを撃ってくる。

 

「クッ、この・・・!」

 

頬にレーザーを掠めたアリシアは、M4A1カービンのフルオート射撃で索敵型を破壊する。

彼女等の存在に気付いたこの時代には合わない兵器群が、一斉にレーザー攻撃や機関銃で攻撃してくる。

バールに徹甲弾を装填したイムカは戦闘型に狙いを付け、引き金を引いて発射。

見事戦闘型を撃破した後、階段へと先に入ったヴァルキュリア人達に先に行くよう告げる。

 

「先に行け、ここは私が食い止める!!」

 

「それじゃイムカが・・・!」

 

「大丈夫だ。この程度の数、どうってことはない・・・!」

 

笑顔で答えたイムカが敵側の方へ振り返った瞬間、飛んできたミサイルがリエラの前に着弾し、イムカを助けられなくなる。

少し火傷してしまったリエラであったが、槍と盾を手に入れない以上、助けられないと分かり、直ぐに屋上へと上がる。

その途中、ナチゾンビアーミーが行く手を遮るように現れる。

無論、彼女達は自分達が持つ銃で行く手を遮るゾンビを撃って強行突破する。

ゾンビは何故かコンクリートの床から這い出てくるが、彼女達は問答無用で撃ち殺す。

そして一気に屋上に到着し、もう少しで槍と盾が手に入る。

一番先頭にいたアリシアが手を伸ばし、槍と盾を持った。

手に取った瞬間、槍に埋め込まれていた青い鉱物が光だし、アリシアの全身を覆い、髪と瞳が銀髪赤眼に変わっていく。

マシンガンゾンビが変貌したアリシアにMG42で撃ったが、全く彼女には効いていなかった。

そのまま槍に串刺しにされ、元の死体に戻される。

中東軍からの砲撃を受けながらもビルの屋上が光っていることに気付いたルリ達は唖然し、中東軍も攻撃を止めて、その光に目を取られる。

 

「なんだあの光は・・・!?」

 

唖然するカール、その光に見覚えのあるイーディが叫んだ。

 

「あの光は・・・ヴァルキュリア人の物ですわ!」

 

「ヴァルキュリア人?戦乙女(ワルキューレ)の一人の名前か?」

 

聞き慣れない単語にBJがイーディに質問した。

 

「違いますわ。私達の世界で、最強の人種と呼ばれている伝説的な民族ですわ!」

 

この場でヴァルキュリア人を知らない者達に説明するイーディであったが、途中でマリーナに止められてしまう。

 

「同時にヨーロッパの覇者と呼ばれている・・・」

 

「台詞を取らないでくださいまし!」

 

自分の上官であるイーディに怒られながらもただ黙っているマリーナ。

粗方、ヴァルキュリア人のことが分かったBJ達は、いつの間にかゲイツが居ないことに気付いた。

 

「おい、ゲイツの奴が居ないぞ!」

 

「あの人ならワルキューレの歌声が聞こえるとか言って、敵陣に突っ込みましたけど」

 

ゲイツを探し回り、声に出すローバックに答えるように、ルリが知らせる。

 

「どうして言わなかったんだ?!」

 

「だって・・・イーディさんが話してる最中だったし・・・」

 

「私の所為ですの!?」

 

ローバックに怒られるルリが答え、イーディは自分の所為にされたと叫ぶ。

そんな彼等は放っておき、槍と盾を入手してヴァルキュリア人に覚醒した四人は、襲ってきたこの時代ではオーバーテクノロジーな兵器達を造作もなく破壊していく。

リエラは真っ先にイムカの救出に向かった。

行く手を遮るように現れたゾンビ達を排除しながら進む。

 

「退けぇー!」

 

光の速さでイムカの元へ着いたリエラは直ぐさまその場にいた戦闘型や索敵型を槍の先端を向け、連続したビームで全て排除する。

一発一発のビームの火力が尋常ではないので、装甲が意味をなさない。

全ての敵を排除したリエラは、イムカに寄り添う。

 

「大丈夫、イムカ?」

 

「問題ない・・・このまま・・・」

 

ヴァールを杖代わりにして立ち上がろうとするイムカの脇腹から血が出ているのを見たリエラは、直ぐに止める。

 

「負傷してるじゃない!それに血がこんなに・・・!」

 

「問題ないと言っている・・・!クッ・・・!」

 

「駄目よ!これ以上戦ったらイムカが死んじゃう!これで止血して!邪魔な奴はみんな片付けたから!」

 

無理をして立ち上がろうとするイムカに、リエラはポケットから取り出した治療器具を渡し、イムカを座らせる。

 

「じっとしててね、直ぐに終わらせてくるから・・・!」

 

壁にもたれ掛かって座り、自分で治療を行うイムカにそう伝え、リエラは戦場に向かった。

ハイト救出に向かったエイリアスは、彼女にトドメを差そうとしている敵を鞭状にもなる槍で次々と排除していく。

浮遊した戦車ですら、立った一振りで大破する。

墜落したP-40から見ていたハイトは、青い炎を纏った少女が自分からしたら難敵だった生命型機械を意図も簡単に粉砕する姿を見て驚きを隠せないでいた。

 

「一体何がどうなってるのよ・・・!?」

 

今、ハイとが言える事はそれしかなかった。

一分もしないうちに敵を全滅させたエイリアスはハイトをコクピットから出す。

 

「助けに来たぞ。お姉ちゃん、大丈夫?」

 

何かに引っ掛かって開かなかったキャノピーを瞬時に外したエイリアスは、ハイトが無事かどうか問う。

 

「大丈夫よ。それより貴方は一体・・・?」

 

自力で立ち上がって、エイリアスに質問した。

 

「う~ん、今は忙しいから後で答えるね。それじゃ」

 

ハイトの質問に答えず、エイリアスは光の速さで戦場へと向かった。

連続した長期現象に、ハイトは頭を抱えてその場に倒れ込んだ。

 

「頭でも打ったのかしら・・・?」

 

後ほど、その超人が実際に存在していることに驚くハイトなのであった。

一方、主戦場に降り立ったアリシアとセルベリアは、中東軍の前に居た。

 

「なんだこの女達は・・・!?」

 

「あ、青く燃えているぞ!」

 

二人の異様さに戸惑う中東軍の兵士達であったが、指揮官の言葉で纏まる。

 

『怯むなぁー!敵はたったの二人だぞっ!!撃てぇー!!!』

 

指揮官がアリシアとセルベリアに攻撃するように拡声器を使って指示を出した。

命令を受けた中東軍は二人に一斉射撃を行う。

T-55の56口径100mmライフル砲D-10T2Sの砲声が鳴り響いた後、連続して122㎜や85㎜の戦車砲が唸りを上げる。

さらにカチューシャによるロケット攻撃も開始され、上空からもMi-24Vのロケットやミサイル攻撃が始まる。

機関砲や小火器による攻撃も開始され、二人が人間ならば、確実に跡形もなく消えているはずだった。

凄まじい攻撃が止み、衝撃で起こった爆煙が晴れていく。

 

「やったか?」

 

戦車兵の一人が言った後、土煙からうっすらと青い光が見えることに、それに気付いたAKMを持った歩兵の一人が叫んだ。

 

「まだ生きてるぞ!!」

 

その直後、爆煙の中から強力な水色のビームが上空を飛ぶMi-24Vに命中し、貫通した後、空中爆発を起こした。

ビームの衝撃で爆煙が晴れ、そこからアリシアとセルベリアが中東軍に突っ込んでくる。

 

『撃てっ!撃ち殺せぃ!!』

 

指揮官が拡声器に叫ぶよう指示した後、時間が止まったかのように固まっていた中東軍はアリシアとセルベリアに向けて一斉射撃が行われる。

ヴァルキュリア人となった彼女達には全くの無意味だ。

一振りで多数の歩兵が吹き飛ばされ、先方に居た数量のT-34/85が連射ビームを食らって大破する。

上空に居たMi-24Vは飛び上がったアリシアに次々と撃ち落とされていく。

重装甲のIS-3ですら意図も簡単に粉砕されていくのを見て、中東軍は恐怖のどん底に叩き落とされる。

 

「ば、化け物だ!」

 

「悪魔だ!青い炎を纏った悪魔だ!!」

 

次々と破壊されていく味方の戦闘車両を見た歩兵は我先へと武器を置いて逃げ出し始める。

指揮車に乗っていた指揮官も、自分の所に来るのではないのかと思ってしまい、叫びながら次々と逃げ出していく兵士達と共に逃げ出す。

 

「うわぁー!助けてくれー!!」

 

指揮官がパニックを起こして逃げ出した為、中東軍は混乱を極め、さらにやって来たリエラとエイリアスに各個撃破されていく。

それを見ていたルリ達は、ただ唖然しているしかなかった。

一方、ゲイツは何処から手に入れたPKMと4連装ロケットランチャーを担いで、前哨基地を一人で襲撃していた。

 

「ワルキューレが聞こえる・・・!」

 

ゲイツの脳内には洋楽のワルキューレが響いていた。

今のゲイツはワンマンアーミー、パンツァーゲイツに覚醒している。

立ち向かった敵兵が次々とPKMの乱射で倒れていき、ロケットランチャーの攻撃で、停車していた装甲車が大破する。

ヴァルキュリア人にも負けないような活躍をしていた。

最後の敵兵が倒れた瞬間、ゲイツはPKMとロケットランチャーを捨て、デザートイーグルを取り出し、基地司令官が居る部屋に突入した。

 

「敵が入ってきたぞ!撃ち殺すんだ!!」

 

部屋の中にいた数人の中東兵がゲイツに向けて56式自動歩兵槍を撃とうとしたが、その前にデザートイーグルで頭を吹き飛ばされていく。

そして最後に残ったのは基地司令官だけとなった。

 

「た、頼む!命だけは!!」

 

命乞いをする基地司令官は机の下から自動拳銃を取り出そうとしたが、あっさりとゲイツに見破られ、その場にあった大きめな木の破片を投げ付けられた。

胸に破片が刺さった基地司令官は呻き声を上げながら崩れ落ち、動かなくなった。




次回は敵陣に攻撃するリヒター達を書こうかな?

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