暫し時間が経って、雨が降り始めた後、脱線したディーゼル車にて目覚めたルリであったが、更なる危機が訪れた。
脱線した列車を調べるべく、ケストナーの部隊が迫ってくる。
「酷い脱線だな・・・中に
「そんなはずはない。数時間前に我々の一般部隊が殲滅したはずだ」
二人の斥候が互いに会話を交わしながら迫ってくる。
耳に敵兵の声が入ったルリはSG553を構え、敵兵が横転したディーゼル車に近付くのを待つ。
「ひでぇな・・・一体誰が運転してたんだ?」
「噛まれないように気を付けろよ」
G3A4を構えながら一人の敵兵が、ルリが居るディーゼル車に乗り込み、ライトを付けてから辺りを見渡す。
「出てくんなよ・・・!」
そう呟きながら辺りを見渡し、ルリを見つけた。
「礼の小娘がっ!」
外にいる仲間に知らせる間もなくルリに射殺された。
銃声を聞いた外にいた調べに行った兵士と同じG3A4を持った仲間が、ディーゼル車に向けて何発か撃った。
「クソったれ!生きてやがった!」
少し距離を置いた後、無線機を取り出して仲間に知らせる。
その間にルリはディーゼル車から抜け出し、静かに敵兵が向かってきた方向へと向かう。
「
『こちらHQ、手負いの敵兵一人相手に人員は回せない。現状の戦力で対処せよ』
「クソったれ!」
無線機を強引に仕舞った後、M61破片手榴弾の安全ピンを抜いて、ディーゼル車に向けて投げ付けた。
ディーゼル車の中に入った手榴弾は爆発した後、その敵兵はルリがもう居ないことに気付かず、調べに行く。
一方、全世界に居るワルキューレの部隊に新たな指令が下された。
ヨーロッパ方面のワルキューレの本部にて、司令官が命令書を読み上げる。
「総本部からの新たな指令だ。以下の命令文を全世界に展開している我が部隊に発信せよ。直ちに現任務を中止し、各方面軍の精鋭・空挺部隊・爆撃隊を持って日本に集結せよ。日本へ近い方面軍は海上戦力も含め、集結するように。不要な戦力は即時総本部へ帰投させるように。総司令官となったマクシミリアンの命令は無視せよ。彼はわがワルキューレの関係者ではない、反逆者である。各自の精鋭を持ってマクシミリアン並び、彼に付き従う反逆者達を抹殺せよ、例え降伏の意志を見せても容赦するな。以下の命令に従えない場合は憲兵隊による排除が考えられる。それと盟友からルリ・カポディストリアスを保護してほしいと要望があった。日本にいる全部隊は見つけ次第、直ちに保護せよ。以上だ」
司令官が読み上げた後、それを聞いていた配下の士官達は「やっと帰れる」と思い、命令通りに動き始めた。
不要な戦力は元の世界へ帰って行き、精鋭だけが空港にあった輸送機に乗り込み、日本へと向かう。
それに続いて多数のB-17・B-29戦略爆撃機は燃料補給を途中で繰り返しながら日本へ向かうことになる。
こうして、ワルキューレの各方面の精鋭だけが日本へ向けて飛び立っていく。
残された者達は本部をたたみ、残った兵器や機材は直ちに元の世界へ持ち帰り、まるで最初から居なかったように彼等は去った。
その間にルリは、ケストナーが居る仮設基地へ着いた。
「これが敵の本拠地かな?」
双眼鏡を取り出して、覗こうとしたが、脱線したショックでレンズが割れて使い物にならなかった。
仕方なく遠目で仮設基地を確認する。
金網の周辺を迂回しているのはヘルメットを被り、AK用マガジンベストを羽織ったMPi-KMを肩に吊した警備兵一人だけだ。
金網の向こう側を見てみたが、見れる範囲では金網から10メートルくらいが限界だった。
基地に潜入しようと、装備を確認し始める。
「あっ、曲がってる・・・」
脱線した衝撃でスターリングMk7のクリップが大きく曲がっていた。
高い精度と丈夫さを誇るSG553は何処にも以上はないが、スターリングMk7のマガジンは何本か駄目になっている。
「基地で何かあるかな・・・?」
彼女は基地内で武器を調達することにして、基地へと向かった。
周囲を巡回する歩哨の位置を確認し、歩哨の視線に入らないよう別の隠れられる場所へ移動する。
「ン、誰だ・・・!?」
MPi-KMを持った歩哨が一瞬通り過ぎるルリの姿を見た。
ボルトを引いて、初弾を薬室に送り込んだ後、最後に見たルリが居た場所へと向かう。
それに気付いたルリは、直ぐに別の場所へと急ぐ。
「見間違いか・・・?」
ルリを見つけられなかった歩哨は元の位置へと戻っていった。
その間にルリは武器庫を見つけることに成功する。
「(あった!でも、見張りが・・・)」
物陰に隠れて、武器庫の出入り口の前に警備兵が居るのを見て、どうやって武器庫にはいるか悩む。
数秒間考えてから折れて使い物にならなくなったスターリングMk7の弾倉を投げることを思い付き、早速ポーチから折れ曲がった弾倉を取り出し、警備兵の近くに投げる。
「あっ?」
間抜けな声を上げて警備兵は持ち場を離れ、ルリが投げた弾倉の方へと向かっていった。
その好きにルリは武器庫の中に入り込む。
「ん?」
危機一髪警備兵が振り返る前にドアが閉まり、
武器庫に入ったルリは、早速掛けてあるマグプルMASADAを手に取った。
「これ、なんだか強そう・・・」
MASADAを試しに構えてから呟いた後、スターリングMk7と専用弾倉が入ったマガジンベストを木箱の上に置き、弾倉をある程度ポーチに入れ、スターリングMk7に告げる。
「ここの戦いが終わったら、迎えに行くからね」
ある程度弾薬を補給し、ベレッタM92とSIG P226を持った後、何処か出られる場所がないか探し始める。
「何処にあるかな・・・?」
呟きながらルリが探している最中に、外から男の叫び声が聞こえてきた。
『報告にあったウィッチだ!撃ち殺せっ!!』
その後、連続した銃声が聞こえてくる。
怒号や対空砲の砲声も聞こえ、各地に立てられている拡声器からケストナーの声が聞こえ始めた。
『総員対空戦闘用意!魔女が我々を狩りに来たぞ!全力で対処せよ!!』
ドアを見張っていた警備兵も対空射撃に加わっている為、ルリに脱出する隙を与えてしまっている。
ルリは有り難くドアを開けて、ケストナーが居るとされる司令塔まで向かった。
敵兵達が何を撃っているのかが気になって空を見上げれば、別の道を歩んだミーナ率いるストライクウィッチーズであった。
魔法で作ったシールドで必死でケストナー配下の兵士達からの攻撃を防いでおり、全く反撃しない。
地上から見ていたルリは「人を殺すような事はしなかった」だと思った。
「なっ!貴様何処から入った?!」
ルリの存在に気付いた敵兵の一人が手に持つMPi-KMの銃口を彼女に向け、引き金を引いた。
「なにっ!?」
敵兵が連射した二発ほどがルリの脇腹に命中したが、彼女の反応は痛がる程度、地面に倒れながらマグプルを敵兵に向けて数発ほど撃った。
撃たれた敵兵は回りながら地面に倒れた。
直ぐにルリは起き上がって、司令塔まで向かおうとしたが、仲間がやられたことに気付いた一部の敵兵達が対空射撃を止めて、ルリに向けて手に握る銃で発砲してくる。
「侵入者だ!撃ち殺せ!」
空からの雨や銃弾の雨に晒されながら、ルリは走りながらケストナーが居る司令塔まで向かう。
「到着!」
司令塔の出入り口のドアに体当たりして、ルリは司令室の中にはいることに成功する。
外からやって来る敵兵達からの攻撃があるので、壁まで転がり、銃弾を避ける。
少し息を整えるルリであったが、司令塔の中にも敵兵はいるため、声が聞こえた。
『侵入されたぞ!早く仕留めろっ!』
向こう側の通路から複数の敵兵の声や足音が聞こえてくる。
早速ルリは、補充しておいたM67破片手榴弾の安全ピンを抜いて、向かってくる敵兵達に向けて投げ付けた。
『手榴弾だ!』
声がしてから数秒後、手榴弾は爆発、敵兵は誰一人殺傷できなかったが、次にルリは白煙手榴弾を投げた。
「手榴弾か!?」
「違う!
敵兵の一人が白煙手榴弾を蹴ろうとしたが、そうはさせまいとルリは蹴ろうとした敵兵に向けてSG553に取り替え、単発にして足を撃った。
白い煙が通路中に撒き散らされ、視界が完全に防がれる。
「煙だらけで何も見えない!」
敵兵達は少し混乱しており、ルリはマグプルを乱射しながら強行突破する。
「殺せ!」
何人か撃たれて倒れたが、敵兵は負けじと反撃してくる。
後ろから撃たれながらもルリはケストナーが居る最上階へと急いだ。
もう少しで司令室に到達する所で、防弾チョッキや対爆スーツを身に付け、軽機関銃、短機関銃、散弾銃などを持った複数の敵兵がルリを見るなり発砲してきた。
「近付けるな!撃ち殺せ!!」
流石に肉が裂けるほどの銃弾は食らいたくないので、ルリは近くにある壁に隠れて反撃の機会を待つ。
階段から上がってくる敵兵達が足音を立てながらルリの元へ向かってくる。
挟み撃ちに遭うと、再生に時間が掛かるほど肉塊にされるので、ルリはありたっけの手榴弾の安全ピンを抜き、出入り口を固めている敵兵達に向けて投げまくった。
無数の破片が飛ばされ、何名かの敵兵が息絶えたが、対爆スーツを身につけた者はまだ動いていた。
「この小娘がっ!」
対爆スーツを着た敵兵達はRPKやM240をルリに向けて乱射してくる。
直ぐさまルリは対爆スーツを着た男達に向かって突撃した。
相手は気でも狂ったかと思ったが、ルリは武器庫で回収した二挺の拳銃をガンホルスターから抜き、至近距離で対爆スーツを着た敵兵を撃つ。
何発か弾かれるが、掴まれる前に首に銃口を向けて発砲した。
至近距離で首を撃たれた対爆スーツの敵兵達は息絶えた。
残り一人となった対爆スーツの男はルリを掴み、右手から軽機関銃を離し、小柄の少女の首を締める。
「死ね・・・!」
ルリに向けて告げた敵兵は首を掴む右手の力を強め、絞め殺そうとしたが、ルリが左手からSG553を取り出し、銃口を頭に向けて撃った。
無数の銃弾は対爆ヘルメットを貫通、そのまま頭を撃たれた対爆スーツの敵兵はルリを離して地面に倒れ、力尽きた。
直ぐにルリは司令室に入り、ケストナーの周囲にいた兵士達に発砲し始める。
「お前は・・・!?」
ケストナーが言い終える前に護衛の兵士がルリの手によって次々と撃ち殺されていく。
「クソっ!これでも食らえ、化け物がっ!!」
机の上に置いていたパンツァーファウスト44を掴み、ルリに向けて発射した。
飛ばされた弾頭は彼女に向かって飛んできたが、ルリは撃つ前に床に伏せ、爆風から身を守った。
ケストナーの方は後方から排出された高熱ガスを食らって軽い火傷を負っていた。
ルリは直ぐに起き上がり、ケストナーに向けてマグプルを撃とうとするが、ケストナーがホルスターからワルサーP88を取り出して、撃つ方が早かった。
「クソ・・・!これでお終いだ!小娘め!!」
銃声が鳴り響き、ルリは引き金を引く前に左耳を撃たれて床に倒れ込んだ。
「耳に当たったか、直ぐに楽にしてやる」
近付いてくるケストナーを見たルリは尻のポーチに仕舞ってある迫撃砲の砲弾を取り出し、右手に持って信管を床に叩いた。
「ン、小娘、貴様何を・・・?」
ケストナーがルリの右手に握られている物を見て驚き、直ぐさま引き金を引こうとしたが、時既に遅く、ルリはケストナーに向けて砲弾を投げ付けた後だった。
「うわぁぁぁぁぁ!!ワシは今度こそ死ぬのかぁー!!?」
そう叫びながらケストナーは迫撃砲の砲弾に当たって爆発した。
直ぐにルリは爆風から顔を両手で守る。
爆風が収まった後、ルリはケストナーが居た位置を見た。
「あれ、肉片が飛んでない・・・?」
驚いたことにケストナーは跡形もなく吹き飛んでいた。
それも肉片は残さず、髪の毛数本だけを残して。
想像していた物とは違う結果となったルリは、訳が分からなかった。
もちろんこの衝撃で、また彼が別の世界に飛ばされたのは言うまでもない。
ルリは起き上がって、外の状況を見た。
地上へと降り立ったストライクウィッチーズが、よく訓練された兵士達を意図も簡単に倒しているのが目に入り、ルリは「これが異世界から迷い人であるウォッチの強みなどだろうか」と心の中で思った。
そして、ルリはストライクウィッチーズと合流に成功するのだった。
ここから暫くボスラッシュが続きます。