ルリが言葉と死闘を開始したと同時に奇妙な空間に転移したバウアー達が目覚めた。
「うぅ・・・ここは・・・?」
パンターG型の車内にてバウアーが第一に目覚め、周囲を見る。
「な、なんだ、この空間は・・・!?それに大部分が居なくなってるぞ!?」
周囲を見渡して、シュタイナーを始めとしたZbv組と正徳、ゾーレッツ、ハーゲン、ゴロドク、ヴェルナー、ハルス、STG達が姿を消していた。
彼等だけじゃない、イーディ分隊の面々や連合軍からの転移者、イムカ、アリシアを除くヴァルキュリア人達、芳佳を除いたウィッチ達までも姿を消していた。
同じく目覚めたカールは、目の前で倒れていたパッキー達の姿を見て驚く。
「ぶ、武装したウサギが・・・!」
「な、なに!?うわぁ・・・本当だ・・・!」
次に目覚めたゲイツが、元に戻ってしまったパッキー達の姿を見て驚愕した。
元居た世界の
「い、一体どうなってんだこりゃ・・・!?」
幾つものトンデモ無いものを見てきた先程目覚めたBJも驚くしかない。
驚きの声を上げる彼等のおかげでパッキー達は目覚めてしまった。
「こ、これは・・・元に、戻っている!?」
「お、おぉ~戻った!?」
「元に戻ってるぞ。一体どうなってんだ!?」
「元の姿に戻ってる・・・?」
ラッツ、ボタスキー、チコは元の姿に戻れて喜んでいるようだが、パッキーは残念がっていた。
「はぁ~とんでもない混沌(カオス)だわ・・・」
目覚めたハイトは、一連の光景を見て、頭を抱えた。
その次に目覚めたアリシアと芳佳は状況が理解できないでいた。
「ちょっと・・・これは・・・?」
「一体何がどうなっているのですか?」
周囲を見渡して、”元”の姿に戻ったパッキー達と周りに広がる真っ黒な光景を見て、キューポラに居るバウアーにアリシアと芳佳は聞いた。
「俺に聞かれても分からん。シュタイナー少佐達は消えるわ、武装したウサギと猫が現れるわ、奇妙な空間に居るわ、頭がどうにかなりそうだ・・・」
そう答えたバウアーは残った左目を擦って、現実か幻想かどうか確かめた。
未だに信じてもらえないパッキー等は、自分達が人間であった事を必死に伝えてなんとかバウアー達を納得させた。
「そうか・・・君達はパッキー達だったのか・・・そしてこれが元居た世界の姿なのか・・・」
「その通りだバウアー。俺を含めたラッツ。ボタスキー、チコは特殊な世界に住んでいた住人だ。詳しいことはとにかく言えんが・・・」
「まぁ、こんな何処かも分からない場所で長話をしていたら何時何者かに襲撃されるか分からんからな・・・詳しい事情はここが何処だか分かって、安全な場所を確保できてからだ」
パッキーの話を聞いていたBJが納得した後、周囲を見渡した。
その数分後、何か奇妙なとてつもなく大きな物体が彼等の前に現れた。
「な、なんだよアレ・・・!?」
「ありゃあ・・・宇宙人か!?」
「あぁ・・・神様・・・」
ボタスキーがその物体を見て声を上げれば、ラッツとチコが驚きの声を上げる。
「なによ・・・あれ・・・!?規格外じゃない・・・!」
「ね、ネウロイ・・・!?でもこんな形をしたタイプは・・・!」
アリシアが口を押さえながら言った後、芳佳が元居た世界で戦っていた”敵”と錯覚してしまう。
あのパンツァー・ゲイツや幾多もの奇怪的な物と戦ってきたBJでさえ、これには唖然するしかなかった。
「こいつはなんだ・・・?」
「分からない・・・俺にはさっぱり分からない・・・」
「大尉殿、我々は夢でも見ているのですか・・・?」
「お、俺に聞くな・・・夢だったら相当な悪夢だぞ・・・!」
ただ単に呆然としているカールが呟くと同時にパッキーも呟いて呆然。
照準器からそれを見ていたクルツは額に汗を浮かばせながらバウアーに話し掛けた。
その奇怪な物体にハイトは見覚えがあった。
元居た世界でそれと交戦した経験があるからだ。
「造物主・・・!」
ハイトが発した言葉に一同が注目する。
「造物主だと!?あの目の前にいるあの奇妙な物体が神だというのか!?」
キューポラから今、自分達の前にいるのが神なのかをハイトに問うバウアー。
ラッツ、ボタスキー、チコはあれが神なのかが信じられないでいる。
呆然としきっていたカールも声を出してしまう。
「止せよ・・・あれが神だってのか・・・?とても神聖的な姿じゃないぞ、全く」
「その通りですよ・・・絵本で見たイメージとは違いますよ・・・!」
カールに続いて芳佳も驚きの声を上げた。
彼等が信じられないのも無理がない、自分達が想像していた神の姿とは全く異なるからだ。
その物体から声が機械的な聞こえてきた。
『我ハ造物主ナリ・・・別世界カラヤッテ来タ輩ヨ、今スグ裁キヲ受ケヨ・・・』
「今すぐ裁きを受けよ?もうとっくに裁きを受けてるのだがな」
BJが冗談交じりの言葉を発したが、奇妙な物体は続けた。
『オ前達ノ御陰デコノ世界ソノモノガ狂ッテシマッタ。マシテヤ異世界カラ余計ナ者達マデ来テシマイ、本来ノ予定ガ大幅ニ狂ッテシマッタ』
「この世界?あの死体がうようよしていたあちらのことか?」
『ソウダ。ダガ、修正ハ不可能ダ。オ前達ガ余計ナコトヲヤッテクレタカラナ』
「修正が不可能?人をあんな姿に変えて世界を滅茶苦茶にすることが計画だって言うの!?」
ゲイツがあの世界のアリシアが”造物主”のおぞましい計画を知り、声を荒げる。
『ソレガコノ世界ノ行ク末ダ。オ前達ガ邪魔シタ所為デ、我々ノ計画ガ台無シダ。本来死ヌハズデアッタ人物ガ生キテシマッテイル。コレモ全テオ前達ノ所為ダ』
「そんな行く末、間違ってます!」
「そうだぜ!人間をゾンビにするなんて頭がおかしい!!」
「お前、絶対に神じゃない!」
行く末と言う言葉を聞いて、芳佳が声を上げた。
それに続いてボタスキーとチコが造物主を挑発する。
次にハイトが、消えた仲間達のことを聞いた。
「ねぇ、あたし達の他の人達はどうしたの・・・?」
『本来生キテイル者ハ元ノ世界ニ返シ、死ンデイル者ハ死ンデ貰ッタ』
「造物主には慈悲という言葉もないのか・・・」
カールが呟いた後、造物主はそれでも続ける。
『世界ヲ破壊シタ輩メ。マァ良イ、オ前達ヤ余計ナ物ヲ呼ビ寄セタ発生点ハ排除シタ』
「発生源?いったい何のことだ!?」
パッキーは”発生源”が何なのかを造物主に聞き出そうとしたが、周りがサソリのような生物に囲まれた。
『モウ話スコトハナイ。オ前達ヲ排除スル』
「ハナッからそうするつもりだったか!徹甲弾装填、クルツ、目標は目の前にいる神だ!」
「
バウアーがクルツに造物主に向けて撃つよう命じた後、他の者達は周りにいた奇怪な生物等にそれぞれ手に持つ銃で攻撃を始めた。
「こいつ等、脚は脆いわ。まずそこを撃って!」
周囲を囲む奇妙な生物との交戦経験があるハイトは、全員に弱点を知らせた。
その助言の御陰で徐々に排除されていき、レーザー銃のような物まで持つ生物も居たが、撃つ前に排除されていく。
「あっ!」
「なんだ?クソッ、死に損ない共まで呼び寄せたか!」
ラッツがM16A1を構えながら、こちらに向けて走ってくるゾンビ等を目撃して声を上げて知らせた後、BJが悪態付いた。
「駄目です!全く物ともしません!!」
「クソッ、徹甲弾を・・・!」
パンターの車内にて、75㎜轍甲弾を物ともしない造物主にクルツの知らせにバウアーはどうやって造物主を倒せるか悔しながら模索していた。
「とんだ化け物だ・・・レーザーでもあれば・・・」
「だが、連中はもう飛ばされて居るぞ」
飛んでくるレーザーから身を隠しながらパッキーがSTG達のことを言ったが、カールは今は居ないと否定した。
だが、応戦しているアリシアと芳佳を見て、あることを思い付いた。
「そうだ。メルキオット、例の得物は使えるか?!」
カールは直ぐにアリシアにヴァルキュリアの槍と盾が使えるかどうかを問うた。
「使えます!」
「よし!バウアーに攻撃を止めさせろ!お前と宮藤であいつを倒せ。雑魚は俺達が担当する。お前達は気にせずあいつを倒すのに集中しろ!!」
「「は、はい!」」
近付いてきた撃ち漏らしのゾンビを始末したカールにアリシアと芳佳は返事をして、それぞれの準備に入った。
パッキーは何故アリシアと芳佳に任せるのかを疑問に思い、ゲイツに話し掛けた。
「そう言えばなんでアリシアも何だ?彼女はただの義勇兵のはずだが・・・」
「お前はあの時居なかったな・・・恐ろしい物だぞ・・・」
「一体どんな物を見せてくれるのか・・・!」
応戦しながら答えるゲイツにパッキーは、この状況を打開してくれるアリシアに期待していた。
BJからの伝言でバウアーは即時攻撃を止めた。
「ふむ、奥の手を使うのだな?」
「そうだ。多分、あの二人ならやれるはずだ」
「メルキオットの超人的な力は信じられんが、宮藤という日本人(ヤパーニッシュ)の少女のあれは覚えている。我々は精々彼女達の障害を取り除くか、この場で敵を倒し続けるしかないだろう。クルツ、標的変更。周囲の化け物共を排除する!!」
「了解しました大尉殿!彼女等を邪魔をする奴らを片っ端から片付けます!」
「うむ、その息だ!」
笑顔で答えたクルツにバウアーはお褒めの言葉を彼にやった。
BJがパンターから離れたのを確認したバウアーは、目の前から群がってくる奇妙な敵に攻撃を命じる。
「弾種榴弾、目標は目の前の化け物共だ!撃て!!」
装填手が榴弾を装填したのを確認したクルツは直ちにバウアーに従い、発射ペダルを踏んだ。
75㎜の70口径の長砲身が唸りを上げ、榴弾が砲口から発射され、敵の群れの真ん中に命中、一気に数体ほど排除できた。
その頃には準備も終わり、ヴァルキュリア人となったアリシアと、ストライカーユニットを足に装着した芳佳は直ぐにでも造物主に接近して攻撃できるような準備が整った。
「出来ました!」
「こっちも!」
準備が出来たとアリシアと芳佳が知らせた後、パッキーは蒼いオーラに包まれて銀髪と赤目に変わったアリシアの姿に驚きながら、直ぐに攻撃するよう指示した。
「それがゲイツの言っていた奴か・・・直ぐに攻撃に向かってくれ!後のことは気にするな!!」
「え、でも!」
「良いから、行け!」
「「は、はい!」」
パッキーに返事をした二人は直ぐに造物主の攻撃に向かった。
飛び立とうとした瞬間、バウアー達が乗るパンターが敵のパンツァーファウストのような物を撃たれ、側面に被弾して履帯が切れて動けなくなってしまっていた。
「バウアーさん!」
「バカヤロー、早く行け!!」
「こっちは気にするな!ちょっと動けなくなっただけのことだ!!」
バウアーとクルツが助けに来た芳佳に気にせずに向かえと告げ、車内に戻ってまだ回る砲塔で戦った。
その間、パッキーとカール、ハイトがアリシアと芳佳の進路上の邪魔になる敵を排除する。
「行って神様をぶちのめしてこい!!」
ゲイツが言った言葉を聞き入れた二人は猛スピードで造物主に向かった。
向かいながらアリシアは振り返って、飛んできた手榴弾を投げ返すラッツと奮闘するチコ、叫びながらM16を乱射するボタスキー、M240軽機関銃を乱射しまくるゲイツ、同じくFAMASを乱射するハイト、正確にM1A1トンプソンでゾンビを排除していくBJ、狙撃するカール、負傷しながらも未だ銃を撃つのを止めないパッキー、弾薬が無くなるまで奮闘するバウアーとクルツ等を見ていた。
そして目の前に視線を戻し、芳佳と共に造物主へ突っ込んだ。
造物主は向かってきたアリシアと芳佳に強力なビームを放ち、二人を跡形もなく消そうとする。
「芳佳ちゃん!」
「はい!」
芳佳はアリシアの前に向かい、巨大なシールドを張ってビームを受け止めた。
このビームを防ぐのには相当な力と魔力が必要であり、芳佳は体中から来る苦痛に耐えながらシールドを張っていた。
アリシアは芳佳を助けに行こうとしたが、芳佳はそれを断って、自分を気にせず造物主に攻撃するよう悲願する。
「大丈夫!?芳佳ちゃん!!」
「私のことは気にしないで造物主に攻撃を!」
「え、えぇ!!」
黒い地面に着地したアリシアは槍の先端に最大のパワーを溜め、狙いを造物主に合わせる。
「(この一撃で確実に仕留めなきゃみんなが・・・)」
振り向かなくてもバウアーとパッキー達の現状は分かっており、芳佳がどれくらいで脱落するかも脳内で分かっている。
アリシアは全神経を右手に集中させ、狙いを造物主に定めた。
「いっけぇぇぇぇ!!」
叫びながら槍から青白い強力なビームを放った。
槍と先端から発射されたビームは造物主に命中した。
造物主が地面に落ちていくと、彼等が居る空間が眩い光に包まれ、アリシアの目の前も真っ白になった。
その頃、無人島に到着したオメガ・グループは、先に到着していた佐藤と中村との合流していた。
「おぉお前等、てっきりゾンビの餌食になってると思っていたぞ」
「それはこっちの台詞ですよ、佐藤二佐殿。まさかお前まで生きてるとはな?」
「んだとこの野郎・・・!この中村正徳様に向かって・・・!」
小松の皮肉混じりの言葉に中村はキレたが、お約束通り佐藤から鉄拳制裁を食らった。
「騒動を起こそうとすんじゃねぇ!このボケッ!!」
「ちくしょう・・・いつか殺してやる・・・!」
そう言いながら、中村は佐藤に殴られた頬を抑えながら仕事に戻った。
「中村三曹殿は相変わらず御大変で・・・」
「まぁ・・・あの人見た目も馬鹿そうですから・・・」
平岡と田中は中村に対して少し辛口なコメントを出した。
「まぁ、あいつは馬鹿だからな。それよりもだ。お前達に来て貰った理由がある。それはだ・・・」
佐藤が言い終える前に、大きな地震が彼等を襲った。
「な、なんだ!?」
「じ、地震ですよ!多分震度は・・・!」
「冗談じゃないよ!今更地震なんて!」
揺れる地面にバランスを崩しそうになる小松、平岡、田中。
無論、中村の方が地震にビビって、地面に伏せていた。
「ヒィ~怖いよ~お母ちゃ~ん!!」
他の隊員達はバランスを崩さぬよう、必死で動いていたが、佐藤はこれは地震じゃないと気付いた。
「こりゃ・・・地震じゃないな・・・だとすると・・・」
突然、中村の居る所だけが浮かび上がり、何かが空へと脱出しようとしていた。
「おい中村ァ!今すぐそこから離れろ!!」
「えぇ!?うわぁ、動いてる!動いてる!ひ、ヒィ~~~~!!」
落下したら死ぬところまで来る前に中村は飛んでそこから離れた。
もちろん着地に失敗して、豪快に転んだが。
謎の物体が空へ向けて飛び上がり、周りにいた隊員達と小松等、佐藤と中村はそれをただ見ていた。
「な、なんだよあれ・・・?」
「UFOじゃないですか・・・?」
「あんなUFOなんてあったけ・・・?」
天高く飛んでいった物体は成層圏を抜け出し、宇宙まで行くと、ブラックホールに飲み込まれて何処かに消えた。
そして、ルリと
彼女が持つkar98kの銃口から発射された7.92㎜弾の肩に食らった言葉は平然としていた。
「私も貴方の同じ様な物ですから・・・!」
そう言いながら言葉は右手に握られた鉈でルリに斬り掛かり、彼女は回避行動を取ったが、左胸を斬り付けられ、傷口から噴き出した血が言葉の身体に飛び散り、顔をやや赤く染める。
「フフ、逃げな続けなければ永遠に切り裂かれ続けますよ・・・!」
もう一度斬ろうとした言葉にルリは右手の小銃で殴り付けた。
怯んだのと同時にルリは、言葉から逃げた。
「逃がしませんよ・・・!」
直ぐに言葉は追ってこようとする。
その間にルリはkar98kに銃剣を着剣し、物陰に隠れて、傷口が治るのを待つ。
向かってくる足音を聞きながら、地面に落ちた石ころを拾い上げ、適当な場所へ投げた。
「そこですか・・・?」
石が投げられた方向に向かう言葉にルリは小銃で狙いを付け、躊躇いなく引き金を引いた。
「うっ!そこですか!」
ステップして一気にルリに接近した言葉は鉈を振り下ろした。
回避しきれず、右肩を深く斬られ、勢い良く血飛沫が上がり、彼女は激痛で声を上げしまう。
「痛いですか・・・?でもこの痛みは装置に近付くと消えますよ・・・!」
笑みを浮かべながら深く刺した鉈を進め、骨を切断しようとする言葉。
天井がルリの血で赤く染まって、血が水滴のように落ちる中、ルリは言葉に頭突きを食らわせた。
言葉は声を上げて額から血を噴き出して、痛みに悶えながら額を抑える隙に、ルリは銃剣で彼女を連続で刺突する。
銃剣で何度も突かれ、彼女の身体から
距離を置く為にルリはトドメに銃座で殴った後、直ぐに言葉から離れる。
離れた後に、M24柄付手榴弾を投げ込もうと思い、安全栓を抜いて紐を抜くと、刺されまくって再生中の言葉に向けて投げた。
数秒後には手榴弾が爆発、このタイプの手榴弾は破片を周囲に撒き散らす物ではなくて、爆発するタイプである為、身体の一部を吹き飛ばすことが出来る。
爆発と同時に聞けば卒倒しそうな音が鳴り響き、赤色の煙が上がり、言葉の右足がルリの元へ飛んできた。
「うわぁ・・・エイグイ・・・」
右足を見ながら口元を抑えて呟いた後、言葉の喋っていたことにあった"装置"を探した。
道中、武器庫に立ち寄って、kar98k専用の擲弾発射機を弾頭と共に入手し、装置の探索を再開する。
「装置に近付いたら痛みが消えるとか言ってたから倒せるかも・・・?」
独り言を呟いて、装置がありそうな場所を探した。
完全に再生することが出来た言葉は、再び鉈を握ってルリを探し始めた。
その間にルリは装置を見つけ出すことに成功する。
「あった・・・これかな・・・?」
部屋の真ん中に置かれた四角形の物体を発見したルリは、スイッチらしき物を探す。
「やっぱりこれがそうだ。押す前に準備を」
銃剣を抜いて、擲弾発射機を装着し、中に装填してあった弾丸を全て抜いて、専用の弾丸を装填した。
それと同時にM42ヘルメットの顎紐を外し、脱いで、何処か適当な場所に投げる。
その音を察知した言葉は直ぐに装置がある部屋まで向かう。
「見付けましたよ・・・!装置がある部屋に誘って私を殺すつもりですね?ですが、貴方と私はここで一緒に死ぬ運命なんですよ・・・!」
人間とは思えない脚力で喋りながら向かう言葉。
人並みならぬ彼女の足音を耳にしたルリは、出入り口に擲弾発射機を向け、言葉が来るのを待つ。
引き金に指を掛け、自分が居ると知らせる為に口で呼吸し、彼女を誘う。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
そして彼女の影が見えた瞬間、引き金を引き、擲弾を発射した。
爆発が起こり、肉が裂ける音がルリの耳に入った。
だが、言葉はまだ生きており、壁を蹴って、鉈を突き立て、一気に目の前まで接近して来る。
鉈がルリの腹を貫き、右手に握られたkar98kを落とし、着ている服を血で赤く染めていく。
今彼女の腹を突き刺している言葉は一糸纏わぬ姿で、少女とは思えない早熟な体付きが露わになっているのだが、今のルリの脳内にはそれを見ている暇無い。
ワルサーP38をガンホルスターから引き抜き、安全装置を外してから言葉に向けて撃ちまくった。
「ブハッ・・・無駄ですよ・・・貴方も同じなんでしょう・・・?」
血を吐きながら言う彼女の言葉の後に、ルリは引き金を引いても弾が出ないことを分かると、クリップで殴って言葉を自分の身体から離そうとする。
何度も殴っているが、一向に言葉は鉈を引き抜かず、痛みに耐えながらその手を強めるばかりだ。
どうやって抜け出そうかと痛みに耐えながら考え、左手でスコップを外して言葉の腹に思いっ切り突き刺した。
痛みに怯んだ言葉は鉈から手を離し、血が噴き出す腹を押さえた。
腹に突き刺された鉈を抜いて、それを捨てた後、装置のスイッチを強引に押した。
「自ら死を選びましたね・・・?では、一緒に地獄へ行きましょう・・・!」
「無理、だってマリお姉ちゃんが待ってるもん」
二人が言葉を交わした後に装置が作動、二人共の傷が急速に再生せず、血が止まらなくなる。
ルリは重い装備を捨て、身軽になった後、銃剣を抜いて、言葉が鉈を拾うのを待つ。
「おや?こんな状況でフェアーな戦いを・・・?変わってますね・・・貴方・・・」
「なんかフェアーに戦いたくなっちゃって・・・」
笑みを浮かべながらルリは言葉の問いに答え、蹌踉けながら言葉に斬り掛かった。
「へぇ~面白いですね。ルリちゃん・・・では、一緒に・・・!」
蹌踉けながら斬り掛かるルリに言葉は突き刺す。
だが、ルリは致命傷の部分を裂けて、言葉にワザと鉈をそこへ突き刺せ、言葉の胸に銃剣を突き刺した。
ルリの顔が言葉の血で赤く染まっていく中、胸に銃剣を刺されながら言葉は自分が負けたと分かり、その場に倒れ込み、遺言を残して息絶えた。
「負けちゃった・・・でももうじき貴方も・・・」
言葉の瞳から生気が失せた後、ルリは脇腹に刺さった鉈を抜いて、装置を壊すために這いずり、柄付手榴弾の安全栓を外して、氷見を引き抜き、装置の隙間に差し込んだ。
それから残った最後の力で装置から充分に身体を転がしながら壁にぶつかるまで離れた。
「やばい・・・死んじゃうかも・・・」
先の戦いで恐ろしいほど出血した為、身体が重く感じている。
このまま死ぬんだと思い、瞳を瞑った後、装置の隙間に差された手榴弾が爆発、そしてルリは気を失った。
その後、ルリが転移した世界でワルキューレによる一個師団分の戦力を使った彼女たった一人の為の大捜索が行われたが、結局は見付からず担当していた指揮官はマリの怒りを買って、責任を取らされ、銃殺刑と処された。
やがてその世界からワルキューレはまるで最初から居なかったかのように何の痕跡も残さず撤退した。
その後日、立ち入り禁止地域の古びた塹壕から血塗れの軍服を着た少女が現地の警察によって発見され、直ぐに身柄を保護された。
翌日、保護者と名乗る女性が現れ、少女を引き取ったとされる。
そして地獄の世界に転移した者達の経緯は一切不明とされ、彼等と共に行動し、生き残った者達もやがて復興の忙しさの余り、いつの間にか忘れてしまうのであった。
もう終わりです。思えば長かった・・・この二年間・・・
自分としては、なんだかこの終わり方に違和感を感じますが・・・
お気に入りを登録してくださった方々と感想をくれた方々、そして最後まで付き合ってくれた方々、本当にありがとうございます!!
後書きは後日、投稿させていただきますので。
では、自分はこの辺で。