麗に危機が訪れているとは知らずにルリは近くにあるビルの女子トイレの個室に居た。
「ふぅ・・・」
用を足した後、個室から出るルリ。
直ぐに麗の元に向かおうとしたが、床に落ちた9㎜パラベラムの空薬莢が目に入る。
それを手に取り、観察を始めた。
まだ熱を持っており、撃たれたのは数分前だろう、用が済んだ9㎜パラベラムの空薬莢を捨て、辺りを見渡す。
他にも何発か空薬莢が落ちている。
辿っていくと、血だまりを見つけた。
視線を前に向ければ、頭にケブラーヘルメットを被り、重装備をした兵士の死体がそこにある。。
顔を確認すると、ガスマスクをしておりどんな顔をしているか分からない。
恐る恐るガスマスクを取ってみると、綺麗な顔をした女性の顔があった。
衝撃でヘルメットが床に落ち、押さえられていた髪が広がる。
「こんなとこに綺麗な女性兵士の死体・・・?」
左腕に付けられているワッペンを確認した。
ワルキューレの絵が描かれ、下にラテン語で戦乙女と記されている。
その時、麗の悲鳴が聞こえた。
直ぐに彼女は女兵士の持っていた武器の短機関銃UMP45を回収し、麗の元へ向かおうとしたが、何者かに口を抑えられる。
必死に振り払おうとするが、中々離れない。
抑え付けていた相手がナイフを持っているのが見えた。
殺されると感じたルリは思いっきり蹴りを相手の身体与える。
衝撃で相手がルリの身体を離す、直ぐに振り返り、グロック26を抜いて相手が死にまで撃つ。
相手の姿はさっきの死体と同じ女兵士だった。
直ぐにUMPを拾って、麗の元へ向かう。
向かった先には暴漢が麗を裸締めをし、孝を脅していた。
もうサイドカーにガソリンは入れた後で、暴漢が麗にナイフを押し付けながらサイドカーに向かっていく。
ルリは暴漢に気付かれないように距離を縮める。
しかし、装備の音で暴漢が存在に気付き、舌打ちをしてルリの方を向く。
「ち、帰って来やがったか。よぉ!そんな物騒な物を渡して俺の所へ来いよ、この嬢ちゃんと一緒に可愛がってやるぜ!」
下品な笑い方をしてルリを見ながら言う。
その笑い方に腹を立てたのか、UMPの安全装置を外して暴漢の頭に照準を合わせて撃った。
銃口より発射された45.ACP弾は暴漢の眉間に食い込み、暴漢の息の根を止めた。
暴漢からの拘束を解かれた麗は直ぐに側を離れ、孝に抱きつく。
孝は麗を抱き返す、暴漢を何の躊躇いも無く殺したルリを見ていた。
「なにも殺すことはないだろう・・・!」
孝の言葉で麗もルリを憐れな目で見ている。
暫く沈黙した後、遠くから奴らの呻き声が聞こえ、これ以上の長居は無用と判断したルリは口を開く。
「ねぇ?そんな事してないで早く行こ」
上目遣いで孝を見るルリ、彼は人を殺したのに何とも思わないルリの態度の変わりように恐怖を感じる。
「(この娘はどんな考えをしている?それに対してあの変わりよう・・・どんな所で育ったんだ?)」
暫くルリを見ていたら、急かされた。
「ねぇ、早くしようよ!」
顔を見ながらルリは孝の学ランを強く引っ張る。
その時、微かに孝はルリから殺気を感じた。
少し驚いたが、ここで行動を示せば確実に彼女に殺されてしまう。
ルリ聞こえないように麗に耳打ちして先程の殺気を知らせた。
「麗、早くしよう。彼女に殺されるかもしれない」
「嘘でしょ、この娘が私達を殺すって・・・」
孝の行動に対してルリは小首を傾げて見る。
視線を感じた孝は気付かれたと思い、ルリに何でもないと言った。
そんな孝の行動に麗は疑問を抱いた。
サイドカーに孝と麗が乗り込むと、ルリが荷台に乗り込もうとした瞬間、彼女の行動が止まり、銃弾らしき物が地面に落ちた。
「どうしたの、ルリちゃん?」
止まったルリを見ながら麗が声を掛ける。
彼女が見れば、胸の辺りが赤く染まっていく、その後、ルリはその場に仰向けに成って倒れた。
倒れた場所は血に広がる。。
2人は彼女に近寄ろうとしたが、遠くから銃声が鳴り、2人の足下に着弾する。
「もう逃げるしかない、乗れ麗!」
「で、でも!」
「行かなきゃ殺される!早く!!」
麗は戸惑うが、孝の言葉でサイドカーに乗り込む。
そして2人は小さくなっていく倒れたルリを見ながら、後悔しながらその場を逃げ去った。
まだ彼女のライフポイントは残ってますよ。
次はヴィットマンの転移を書こうかな?