次に彼等は、沙耶の家がある橋の向こう側へ。
新たに少女ありすとパッキー達を仲間に加えた小室一行、そのまま彼等は橋の方へ向かう。
「昨日の惨事が嘘のように消えている・・・これはどういう事だ?」
ハンビィーの車体の上で橋の様子を双眼鏡で確認したコータは、昨日の出来事が嘘のように消えていることに驚く。
橋を封鎖していたワルキューレの部隊と警察は煙のように消えていた。
残っているのはゾンビ化して殺されたか、巻き込まれて殺された死体と空薬莢が至るところで転がっている。
そう彼が疑問に思っている間にハンビィーは川を渡河し始めた。
「凄いな、この軍用車は川まで渡れるのか」
ラッツは川を渡河するハンビィーに驚きを隠せないでいる。
それもそのはず、彼等の時代ではまだハンビィーが採用される前だからだ。
「それにしてもなんでわざわざ橋じゃなくて川を渡るんです?あっちの方が早く」
ハンドルを握る鞠川は、車体の上にいるパッキーに質問し、彼はその質問に直ぐに返答する。
「上に警官も女兵士も居ないとすると、地雷が張り巡らされているかもしれない。もし居たら検問に引っ掛かって日本の警官達に小火器類とこのハンビィーは没収されてしまう。これで理解いただけましたかな?ミス・マリカワ」
その返答に鞠川は「へぇ~そうなんだ」と呟いて納得する。
「歌が上手いな、ありすちゃん。合唱団に居たのかい?」
コータと一緒に歌っていたありすを見たラッツは彼女に問う。
「ううん、ありす合唱団に入ったこともないよ」
「こいつは驚いたな、そうとすると・・・家庭教師にでも教わったかな?」
「家庭教師?ありす家庭教師にも教わってないよ、自分で練習してるの」
「HAHAHA、将来は歌手ってところだな、これは!」
ありすの才能にラッツは笑いながら納得した。
「ありす英語でも歌えるよ」
先程のラッツの質問の答えに元気が出たのか、意気揚々と歌い出すありす、その歌を聴いていたコータが何か思い付いたのか。口を開く。
「ありすちゃん、とっておきの替え歌があるよ」
「どんな替え歌?」
興味津々なありすに不気味な笑みを浮かべながらコータは、その替え歌歌い始めた。
もちろん、子供のありすに取っては悪影響なので、直ぐに沙耶とラッツに叱られてしまう。
「あんた!子供に変な替え歌教えるのやめなさい!原曲は名曲なのよ!」
「こいつはイカれたミリタリーマニアだぜ」
車体の上でそうこうしている内に向こう側まで迫っていた、それを運転席にいる鞠川が車体の上にいる彼等に知らせる。
「みんな起きて、もうすぐ川を渡りきっちゃう!」
そして、ハンビィーは川を渡りきり、車体の上にいたキャット・シット・ワンと沙耶、コータが降りた。
「みんな~着いたわよ~!」
後部座席で寝ていた孝、麗、冴子、ルリも忘れずに起こす。
鞠川の掛け声で起きた麗は、隣で寝ていた孝の膝元に、涎を垂らし、可愛げな寝顔をして寝ている裸エプロンな冴子とメイド服なルリを目撃する。
麗が孝の膝元で寝ている2人を睨み付けているのを同時に孝が目を覚ました。
「良いご身分ね、孝」
孝は、麗が言っていることに少し戸惑ったが、下に視線を向けてみると、妖艶な裸エプロンの冴子と、可愛すぎるメイド服のルリを見て眠気が飛んだ。
その驚いた声で冴子とルリが目を覚ます。
「おはよう・・・小室君・・・」
「あ・・・おはよう・・・」
2人ともまだ眠気が覚めてないようで、目を擦りながら身体を起こしている。
孝を睨んでいた麗は、膝元に乗っているルリの身体を退けると、プンプンしながら車内から出た。
それを見ていた冴子とルリは、何のことだか分からないでいた。
車内から出た孝は、まだ車体の上にいるありすに手を差し伸べたが、彼女は降りようとしない。
彼より長身なボタスキーが来たが、一向に降りようともしなかった。
「どうしたんだ一体?」
「ほら、怖くないからボタスキーお兄さんの所へr」
そこへ麗が割って入り、ありすを抱きかかえると、プリプリと怒りながら2人に告げた。
「孝と、そこのボタスキーさんは女の子の気持ちが分かってないようね!」
「待ってくれよ、ミヤモトちゃん。俺は一応女の気持ちを・・・」
そんなこともあって、女性陣は、男性陣が見えない場所で着替えを始めた。
もちろん、ありすも一緒である。
「パッキー、橋の所にこれと同じ車。色は一緒だけど、上に機銃が付いてる奴」
「ホントか?キーとエンジンが無事か調べに行こう」
チコが橋の下に小室達が乗る車と同じハンビィーを見つけたというので、パッキーとボタスキー、チコが調べに行く。
ラッツと孝、コータは周辺からゾンビが来ないか、目を光らせる。
「これか・・・っ!?」
ハンビィーを見つけたパッキー達は、そのM2重機関銃付きのハンビィーの周辺に人の気配を察知し、警戒し、手に持つライフルと構えながら近付いた。
「パッキー・・・ゾンビか?」
「ボタスキー、ゾンビ違う、こっちに気付くと隠れた。人が居る」
ボタスキーにそう答えると、チコはM16A1を構えながらハンビィーに近付いた。
到達すると、直ぐに車内を確認、運転席には頭を打って死んでいるワルキューレの兵士が一人だけ、パッキーはボタスキーとチコに左右から行くようにハンドサインで指示する。
「誰も居ない・・・」
「そうか・・・じゃぁ・・・出て来て貰おうか、そこの4人組」
後ろに振り返り、XM177を構えたパッキー、気付かれた4人は銃器を構えながら突っ立ていた。
「クソ、気付かれたぞ」
「お前の足音がデカイからだハーゲン」
「もうばれてる、ここは大人しくしよう」
後ろの4人は手に持つ二度目の大戦中に使われていた銃器を地面に落とし、手を上げる。
内一人は、ソ連赤軍の戦車兵の野戦服を纏っている、武装SSの戦車兵の一人はアジア人顔だった。
「ただの仮装した奴らじゃないな、転移者か?!」
英語で告げたパッキー、4人はある程度英語が分かるらしく、答える。
「そうだ、俺達は43年真冬のロシアから
「そのファシストの言うとおり、そして俺様の名はアナトーリイ・ゴロドク。ソビエト連邦の英雄だ」
ソ連戦車兵の男の言葉にパッキー、ボタスキー、チコは何となく納得し、機銃付きのハンビィーから死体を降ろし、そのハンビィーと一緒に小室達の元へと戻った。
「お~い、みんな。足をもう一つと新しい仲間を連れてきたぞ!」
ボタスキーは意気揚々と、見張りをする孝とコータ、ラッツに告げた。
「バカ、デカイ声出すな。ゾンビが寄ってくるだろう。それとハンビィーと新しい仲間だと?」
ハンビィーを人力で押しながら来るパッキー達を見て、ラッツは驚いた。
「出会った早々この中戦車ような車を押させるとは、アメリカ人は酷だな」
日本刀を腰に差した武装SSの戦車兵がパッキー達に悪態付く、それに答えてか、チコが言う。
「バートル、撃ち殺されないだけマシ。でもパッキー優しいから撃たない」
「そうか、人にも色々居るんだな」
バートルはチコの答えに笑顔で言う。
「あそこで着替えているのは?」
「ご婦人達だ」
着替えている女性陣に質問したハーゲンにラッツは笑顔で答えた。
そして着替え終わった女性陣が彼等の前に姿を現した、そしてルリの姿を見ると、新しく仲間に加わった4人は驚いた表情を見せた。
ばれたかな・・・?