「ああ、クソッ!当たらない!」
銃口より飛ばされた鉄球が一発も頭部に命中しなかったことに孝は悔しがる。
そんな彼にコータは、魔改造SR-10で一番近い距離に居たゾンビの頭を撃ち抜いてから助言する。
「突き出すように構えて、胸の辺りを狙って!」
その助言を耳に入れた孝は直ぐにイサカM37を構え直す。
「突き出すように構えて・・・胸の辺りを狙って・・・撃つ!」
近づいてくるゾンビの脚部に狙いを定めて銃爪を指で引いた。
発射された無数の小さな鉄球は散らばり、何発かが頭部に命中、ゾンビの一体を沈黙させた。
「ひょっう!最高!」
一体のゾンビを倒して喜ぶ孝であったが、また次のゾンビが近づいてくる。
「次もって、あれ?」
隣で銃声が3発もして、ゾンビが地面に倒れ込む、孝は銃声が鳴った方を見ると、MK107を構えたバウアーがそこに居た。
次に冴子がハンビィーから飛び出し、近くに居るゾンビ達を木刀で効率よく始末する。
バウアーもこれに負けじと、自身が持つカービンライフルで麗に近づこうとするゾンビ達の頭を撃ち抜く。
2人の少女の戦闘力に見惚れていた孝は、沙耶の声で我に帰る。
「孝、後ろ!」
「あっ!?」
言われて振り返ると、一体のゾンビが彼の背後から襲おうとしたが、孝の反応は高く、直ぐにM37の木製ストックでゾンビを殴り付ける。
そして、トランクに詰め込まれていたルリは、勢い良くトランクから飛び出し、UMP45の安全装置を外し、銃口を丁度頭の辺りに向け、周りのゾンビに銃撃を開始した。
頭部を撃たれたゾンビ達はバサバサと倒れて行く、孝は咄嗟に伏せていた為に無事だった。
「気をつけろよ!全く!」
「ゴメン!」
銃爪を引きながら誤るルリ、孝も近づいてくるゾンビにM37を撃ちながら、ゾンビの掃討に戻り、何か思いついたかのように口を動かした。
「平野、パッキーさん達の車に付いてる機銃の銃声は?!」
「まだ聞こえてるよ!」
「よし、そのままみんな撃ち続けてくれ!」
「そんなに銃を撃ってると奴らが集まるぞ!?」
「そういう意味じゃないです、毒島先輩!銃声でパッキーさん達に!」
「成る程、そういうことか!」
孝の考えに冴子はゾンビを片付けた後に納得する。
数時間ほどゾンビと交戦する小室一行であったが、頼みのパーキンス達は一項に来ない。
そればかりかますますゾンビが増えて行くばかりである。
「フロイラインサエコ!」
「心得た!」
バウアーがMK107の再装填をし始めると、冴子はそれを援護するようにバウアーの周りに居るゾンビを排除して行く。
最初の孝の発砲から数時間後、厄介な敵が現れた。
今まで戦ってきた
最も前に居た冴子に目をつけると、唸り声を上げて彼女に襲ってきた。
他の奴らとは違ってこの”物”達は走って目標に向かい、奴らよりも強力な腕力で標的を掴み、噛み付くか、引き千切る。
ルリとバウアー、コータはそれぞれが持つ銃器で迎撃を開始した。
何体かは倒せたが、残り4体が、冴子に飛び掛ったが、孝のM37で地面に落ちる。
地面に叩き付けられた4体起き上がろうとしたが、バウアーと近くに居た冴子に止めを刺され沈黙する。
「まだ、あのゾンビが!」
コータが直ぐに新手の青目ゾンビに気付き、皆に知らせた。
先の海賊風と同じく唸り声を上げて、ゾンビを集め、孝達に襲い掛かる。
圧倒的な数のゾンビに圧された孝は、倒れ込んでいる麗の下へと訪れ、彼女に近付こうとするゾンビを始末し、彼女の近くに寄り添う。
「(もう終わりか・・・)」
孝は麗を抱きしめながら死を覚悟した。
だが、麗が持っていたM1A1スーパーマッチが目に入り、それを手に持った。
「ちょっと、何を・・・!?」
麗が孝の行動に疑問に思う、その孝はM1A1を外そうとしたが、しっかりと麗の身体にサスペンダーが巻き付いている。
外すのに時間が掛かると察した孝は、そのまま麗の身体ごと持ち上げ、M1A1を構え、迫ってきたゾンビに向けて発砲した。
反動で麗の身体にダメージが入り、声を上げているが、孝は銃声で気付かず、引き鉄を引き続ける。
「当たらない!」
勢い良く銃口から発射された7.62×51mmNATO弾が何発か飛ぶが、一発もゾンビに命中しない。
やっとのことで一体仕留めたが、また次のゾンビが2人に迫る。
「クソッ、またかよ!」
再び構えるが、そのゾンビ等はルリが持つP232で全滅し、彼女がP232の再装填を終えた後に2人の姿を見て、口を開く。
「恋人だったら何しても良いんですか?」
「うわぁ、ちょっと、まr」
笑みを浮かべながら孝と麗を見るルリに孝は赤面し、慌てた。
彼等は救援を待ってひたすらゾンビとの死闘を続けてきたが、一項に頼りのパッキー達は来ない。
それから数時間ほどが経ち、空は夕暮れに染まっていた。
何時間経っても頼りのパッキー達は来ることも無く、徒に体力と弾薬が尽きてゆく、車内に居る鞠川は必死にエンジンを掛けるも、一項に掛かる事は無い。
その時、孝がゾンビの攻撃でイサカM37を落としてしまった。
我慢できなくなったのか、沙耶がハンビィーから降りて戦闘に参加する。
沙耶は近くに落ちていたM37を拾い上げると、銃爪を握り、構えようとしたが、目の前に眼鏡を掛けたゾンビが涎を垂らしながら沙耶に噛みつこうとしていたが、コータに助けられる。
「高城さん、突き出すように構えて、胸の辺りを狙って!」
「言われなくても分かってるわよ!」
コータに噛み付きながらも沙耶は、近付こうとするゾンビの胸部に向けて撃ち、ゾンビを倒した。
「数が多すぎる・・・!」
前で戦っていた冴子はゾンビを切り捨てた後に言う。
高城からM37を返して貰った孝も、焦りを見せ始めた。
「先生っ!車まだ動かないんですか!?」
「駄目なのっ!さっきからエンジンを掛けてるんだけど、何度やっても全然動かないのよ!」
エンジンを掛け続ける鞠川はパニックに陥っていた。
AR-10を撃ち続けていたコータも、ハンビィーの車内で震えるありすを見て、何かを思い付き、ありすに話しかける。
「コータちゃん・・・?」
「ありすちゃん、ジークと一緒に向こうへジャンプだ!」
コータはありすを抱きかかえながらありすに告げた、それを告げられた彼女は周りを怯えた瞳で見渡す。
「よし、ならついでに。バウアーさん!」
「はい!?」
迫り来るゾンビに向けてMK107を撃ち続けていたバウアーにコータは声を掛けた。
「ありすちゃんと一緒にワイヤーの向こう側へ!」
「〔すみませんが日本語分かりません!〕」
バウアーはコータの言っていることが日本語なので分からない、なんとかドイツ語を理解できるルリを呼んで通訳してもらう。
「なんでそんなことを?って」
「ありすちゃんにジークだけではちょっとっと!」
「〔ありすちゃんにジークだけでは不満だそうで〕」
「〔それじゃ一緒に行きます〕」
「一緒に付いて行くそうです」
「
承知したバウアーは、ハンビィーの車体の上に乗り込んで、ありすとジークを受け取ろうとしたが、ありすは拒絶の声を上げた。
「嫌っ!」
そのありすの目からは涙が零れている。
「ありすちゃん・・・」
「コータちゃんの顔、パパと一緒!みんなも!!」
この言葉にコータは軽いショックを受ける。
その時、ジークがありすから離れ、向かってくるゾンビ達に吠え始め、近くに居たゾンビの足に噛み付いた。
それを見た孝は何かを思い付き、、前に出てゾンビを攻撃する。
「一体何を考えているのだ?小室君」
息を切らしながら冴子が孝に問い、それに孝は答える。
「ジークの真似事!」
その返答に冴子は階段を上がって電柱まで向かい、手短な電柱を木刀で叩いた。
何体かは音に釣られて、冴子の方へ向かうが、大部分がまだハンビィーの方へと向かっていく。
「よし、僕も・・・!」
孝も向かおうとしたが、いつの間にか弾薬を補充していたルリが冴子の下へと向かっていくのを見て立ち止まる。
「おい、待て!」
その静止を聞かず、ルリは青目のゾンビにUMP45を撃った後、大きな声を上げた。
何体かは2人に向かって行くも、結果は冴子と同じ、彼女等の行動も無駄に終わると思いきや、ワイヤーの向こう側から女性の大きな声が聞こえてきた。
「そこの人達!離れなさい!!」
突如、ワイヤーの向こう側から防火服を着た集団が現れ、ホースをゾンビ達に構えて放水を開始し、ハンビィーの周りに居たゾンビを水圧で払う。
そして逸れたパッキー達も現れ、それぞれの銃器で孝達の周りに居る脅威を排除してゆく。
しかし、彼女達の退路は瞬く間に新手の青目ゾンビ達に塞がれ、迂回を余儀なくされる。
救出された孝が、何か合図をしているがルリは理解できない、冴子は理解できたようで、ルリの手を取って高城の家からワザと遠のく方向へと向かっていった。
これは・・・普通かな・・・?